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ナマで鑑賞する殺陣の迫力に圧倒。「誰ガ為のアルケミスト」の「舞台版『聖石の追憶』〜闇ヲ見つめる者〜」公演レポート
今回は本番直前のゲネプロを鑑賞する機会に恵まれたので,タガタメファンの筆者がレポートをお届けしよう。いわゆる“2.5次元舞台”を初めて鑑賞した感想なども交えているので,このジャンルに詳しくない人も,ぜひ一読してほしい。
『舞台版「聖石の追憶」〜闇ヲ見つめる者〜』
公式サイト
本公演のシナリオは,ゲーム内における長編ストーリーのひとつ「聖石の追憶」を題材に,舞台向けのアレンジが加えられたものとなっている。最初にゲーム内情報を補足しつつ,未経験者でも分かるように舞台のあらすじを解説しよう。
タガタメの舞台となるバベル大陸には,古来より,大陸の秩序を守る「聖教騎士団」なる組織が存在している。現在の聖教騎士団はザイン団長を筆頭に凄腕のメンバーが揃っており,いち国家以上の戦力を持つのだが,国家レベルの紛争には介入しない。内政干渉による国際問題となりかねないからだ。あくまでも大陸全体の秩序を守るべく,人知れず暗躍しているのだ。
しかし,そんな聖教騎士団ですら危機感を覚える事態が発生する。あまりにも強大な力を持ったオライオンがワダツミ国を滅ぼし,さらなる侵略を行おうとしているのだ。
……ところが,実はクダンシュタインの元についたバシーニは,オライオンが聖教騎士団に送り込んだスパイだったのだ。
オライオンはバシーニに対し,クダンシュタインを配下に引き入れる指示を出す。他方,ワダツミに到達したクダンシュタインらはクウザと再会するも,その彼もまたオライオンの軍門に下っていた。危機を感じたザインらの聖教騎士団はワダツミに全軍を集結させ,オライオンとの直接対決を迎える―――。
とにかく殺陣がスゴい!
筆者は,マンガ・アニメ・ゲームを題材とした3次元への展開,いわゆる2.5次元舞台を鑑賞するのは今回が初めてである。そんな筆者の率直な感想としては,もう何から何まで圧倒された。
まず,役者による格闘シーンの殺陣が,とにかく凄い。個々のアクションはスピーディで,それだけでも見応えは十分にあるのだが,この媒体が“舞台”であることが魅力を何倍にも高めている。
というのも,役者の動きとは別に,剣戟のSEや照明などが決まったタイミングで繰り出され,双方がピッタリ合っているのだ。つまり,これらのアクションはアドリブではなく,すべて計算された動きなのである。
役者の衣装はゲームの再現度が高く,それだけに普通に動き回るだけでも大変そうだ。ザインの肩当てはゴツいし,クダンシュタインの槍はデカいし,女性陣はヒールも履いている。ブンブン振り回す武器も精巧で,主要キャラだけでなくアンサンブル(役名のないキャラ)も含めた登壇者全員の息が合ってないと,いつ怪我をしてもおかしくなさそうだ。そんなハイレベルな殺陣が,約2時間の公演中,これでもかという位に繰り広げられるのである。
騎士団長にふさわしく大剣を豪快に振り回すザインや,身をかがめながら素早い連続攻撃を繰り出すバシーニ,蹴りなどの体術も駆使するカノンなど,各キャラの動きもゲーム内のイメージと瓜二つだ。また,主に魔法で戦うオーティマやカグラなどのキャラは,格闘シーンこそ抑えめなものの,魔法属性に合った色の照明が当てられ,こちらもとてもカッコいい。
もちろん,大技を繰り出すときは「世界を導く光に抱かれよ!」(ザイン),「華麗じゃないわ!」(ヤウラス),「残念でした,これにて終了です」(オーティマ)などなど,ゲーム内で幾度も耳にしている台詞も発してくれる。そのため公演中は,まるで聖教騎士団がステージ上に実在しているように思えた。
ゲームを知らなくても楽しめるが,知っていればより楽しめる舞台構成
ゲーム内の「聖石の追憶」は全11章で構成され,群像劇と呼ぶにふさわしいボリュームがある。仮にゲームプレイを通しで行なうと相当な時間を要するだろうが,それを約2時間に凝縮した舞台構成にも唸らされた。
聖石の追憶のストーリー全体を見ると,カノンの成長プロセスや,悪役としてのソルの存在など,欠かせないエピソードがいくつもある。その点,本公演では,「聖教騎士団vs.オライオン」というシンプルな対立構造が中心にあり,それ以外の枝葉のエピソードは思い切って省かれているのだ。
前述のとおり,本公演は殺陣だけでも見応えがたっぷりあるので,たとえば出演する役者がお目当てで鑑賞するようなタガタメ未経験者でも,流れを理解しやすかっただろう。
ちなみに,各登場キャラが求める“強さ”の性質がそれぞれ異なるというのは,本公演におけるもうひとつの大きなテーマとなっている。戦いを通じてお互いの“強さ”がぶつかり合い,双方の価値観に少しずつ影響を及ぼすというのは,ゲームとはまた違った視点だ。
ゲーム内における聖石の追憶は完結しており,プレイヤーなら聖教騎士団とオライオンの戦いがどのような決着を迎えるのかもご存じだろう。しかし,だからといって舞台の面白さが削がれるようなことはまったくなかった。むしろ,よく見知っているストーリーが,けっして広いとはいえない舞台上でどのような工夫や演出で実現されているのかをひとつずつ確かめるのは,とても興味深かった。
なかでも,タガタメのキーポイントのひとつである,いちど亡くなった人物を召喚して使役する“錬金術”の演出はお見事で,目の当たりにしたときは「そう来たか!」と思わず身を乗り出してしまった。
生身の人間が目の前で演じる舞台の迫力に圧倒
筆者は今回の取材中,思わず1300枚以上の写真を撮影してしまったのだが,これらを眺めていても,ほとんどのシーンで役者の眼にも力がこもっており,一瞬一瞬に全力で取り組んでいることが伝わってくる。そういった演技が1回限りでしか観られないという点には,ある意味で儚さも感じるのだが,それだけにプロの役者としての生き様のようなものをまざまざと見せつけられた思いだ。
仮に,本公演が映像として収録され,後からBlu-ray等で鑑賞できたとしても,その感動の質はまるで違ったものになるだろう。
この舞台を見る前までの筆者がまさにそうだったが,「ゲームの舞台化」「2.5次元舞台」と聞いて,ある種のイメージ(偏見)を思い浮かべる人もいるだろう。しかし筆者は今回の舞台を見て,それらの偏見が見事に打ち砕かれてしまった。
本公演の鑑賞後は,ゲーム内で各キャラを目にするたびに役者の姿を思い浮かべるようになったし,もういちど聖石の追憶を通しでプレイしたくなったし,そして,タガタメという作品に対する愛着がいっそう深まった。
それだけに唯一惜しいと感じたのが,舞台である以上,実際に劇場まで足を運ばないことにはその魅力に触れられず,また映画などと比べてその機会がどうしても少なくなってしまう部分である。ただ,見方を変えると,アプローチ次第で今後さらに盛り上がる余地があるということなので,さまざまな方法でその魅力を伝えてほしいと思う。
そんなタガタメの舞台化だが,千秋楽の終了後に,「完全新作となる続編」が2020年3月に予定されていることが発表された。少なくともタガタメの熱心なファンなら観る価値はあるので,次の機会では先入観などを捨てて,ぜひ劇場まで足を運んでほしい。
「舞台版『聖石の追憶』〜闇ヲ見つめる者〜」主要キャスト:
クダンシュタイン役 橘 龍丸
クウザ役 柏木佑介
カノン役 花影香音
カグラ役 吉川 友
オーティマ役 松本ひなた
モンゼイン役 伊勢大貴
セーダ役 花奈 澪
オライオン役 永田 彬
ヤウラス役 桃月なしこ
チハヤ役 仙石みなみ
バシーニ役 山口大地
ザイン役 中村誠治郎
『舞台版「聖石の追憶」〜闇ヲ見つめる者〜』
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(C)誰ガ為のアルケミスト 舞台版「聖石の追憶」制作委員会