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HPのゲームPC「OMEN by HP」,その実力やいかに? GTX 1080&Skylake搭載のコンパクトデスクトップ「Desktop PC 870」レビュー
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印刷2016/09/14 12:30

レビュー

GTX 1080&Skylake搭載,コンパクトなゲーマー向けPCの実力は

OMEN by HP Desktop PC 870-072jp

Text by 米田 聡


OMEN by HP Desktop PC 870-072jp
メーカー:HP
問い合わせ先:日本HP 問い合わせ先一覧ページ
BTO標準構成価格:24万9800円(税別)
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 米国の大手PCメーカーであるHPは,同社が展開するゲーマー向け製品群を,「OMEN by HP」というブランドに集約した(関連記事)。それまでは,ノートPCにだけ使っていたOMENブランド名を,デスクトップPCや液晶ディスプレイなども含めたゲーマー向けブランドに再編したわけだ。

 今回取り上げる「OMEN by HP Desktop PC 870-072jp」(以下,870-072jp)は,そのOMEN by HPのデスクトップPC第1弾シリーズ「OMEN by HP Desktop 870」の上位モデルとしてHPの日本法人である日本HPから登場した製品だ。
 果たしてゲーマーは,OMEN by HPをどう位置づけるべきなのか。その特徴や性能をチェックしてみたい。


コンパクトな筐体にGeForce GTX 1080を搭載するイマドキの仕様も,メモリ周りの仕様は「論外」


筐体デザインは基本的にHP ENVY Phoenix 850と同じ。ただし,OMEN by HPロゴマークのシールと,「OMEN」の刻印がフロントパネルに入っている
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 OMEN by HP 870は,2015年7月に登場したゲーマー向けデスクトップPC「HP ENVY Phoenix 850」と同じ,165(W)×410(D)×400(H)mmというサイズの筐体を採用しつつ,フロントカバーをOMEN by HP仕様のものに変更した製品だ。内部的には,CPUの冷却システムに簡易液冷クーラーを標準搭載したのが新要素となる。

 ラインナップは,CPUに「Core i7-6700K」(以下,i7-6700K),GPUに「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)搭載カードを採用する上位モデルの870-072jpと,CPUに「Core i7-6700」,GPUには「GeForce GTX 1070」を採用する下位モデル「OMEN by HP Desktop PC 870-071jp」の2モデルとなっている。
 両モデルの主なスペックはのとおり。870-072jpのスペックはBTO標準構成そのものという理解でいい。
 CPUとGPU以外では,ストレージ構成が異なっているのが大きな違いと言えるだろう。とくに今回の主役である870-072jpの場合,Serial ATA 6Gbps接続で容量512GBのSSDに加えて,Serial ATA 6Gbps接続で容量2TBのHDDを2台搭載するという,かなり余裕のある構成なのが目を引くところだ。

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 一方で大いに気になるのは,BTO標準構成のメインメモリがPC4-17000 DDR4 SDRAMのシングルチャネルアクセスとなっているところだ。よく知られているように,一般PC用途はともかく,ゲーム用途だとデュアルチャネルとシングルチャネルでは性能にかなりの違いが出るわけだが,驚くべきことに,原稿執筆時点において,日本HPはBTOオプションにメモリ増設の選択肢を用意していない。

 後段であらためて紹介するが,OMEN by HP Desktop 870シリーズ自体はメモリスロットを4本搭載するので,ユーザー側でアップグレードすること自体はできる。しかし,「ゲーマー向けBTO PC」の設定として考えるなら,この初期仕様は百歩譲っても論外と言わざるを得ないだろう。
 日本HPによれば,8GBメモリ×4枚という構成を10月には用意するとのことだが,市場で先行するブランドをこれから追撃しようという新興勢力が,こういう基本的なところで躓くのは本当に残念で,もったいない。


そつのない外観デザインを採用するOMEN by HP Desktop 870


 ……気を取り直して,実機の外観からチェックしていこう。
 先ほどサイズの話は済ませたが,印象で語らせてもらうなら,(かなり)大きめのブックサイズといったところ。「薄型PCとは言えないまでも,一般的なデスクトップPCよりは幅が狭い」といった大きさだ。重量は実測約11kgなので,家庭内で持って運ぶくらいならできるだろう。

あらためて870-072jpの外観をチェック。写真だとかなり小さく見えるのではないかと思うが,実機はそうでもない
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 ちなみに筐体は,前側が若干持ち上がるような傾斜が付けられていて,奥側の高さは385mmと若干低くなる。床の上に置いたときの使い勝手を考慮して,傾斜をつけているのだろう。

前側が高く,奥側が低くなった形状がよく分かる左側面(左)と右側面(右)。HPのデスクトップPCは,一般的なタワー型筐体とは逆に,本体正面向かって左側面側にマザーボードを設置しているため,側面吸気孔も右側にある
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本体中央上部に薄型のBDドライブを備える
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 前面パネルは非常にシンプルで,中央上寄りに薄型のBDドライブが装備されているだけ。そのBDドライブを挟むように2本のLEDによるイルミネーションがある。LEDイルミネーションの光は前面を光らせるだけでなく,側面前側のスリットから洩れるようになっており,これによって側面前側も光っているように見えるという仕組みだ。

 このLEDイルミネーションは,プリインストールアプリの「HP OMEN Control」を使って,約1677万色から任意の色を選んで光らせたり,CPU負荷に応じて色を変えたりといった設定が可能となっている。
 試用した個体はどういうわけか白および青系の色が光らなかったため,イルミネーション機能を試すことはできなかったのだが,ともあれ,CPU負荷に応じて色が変わるというのは,ちょっと面白いかもしれない。

LEDイルミネーションの発光色やパターンを制御する「HP OMEN Control」。CPU負荷に応じて色を変化させる設定が可能だ
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LEDイルミネーションの色を赤(左),黄色(中央),緑(右)に設定してみたところ
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 頻繁に利用する電源ボタンやUSBポートは,本体前側の天板にまとめられている。見た目はすっきりしていて良いのだが,USBポートなどは向かって後ろ向きに装備されているので,机上で使うときには手探りになるのが少し使いづらい。筐体全体のデザインともども,床置きが前提の設計ということなのだろう。

電源ボタンは本体天板右側に装備されている(左)。これは割と押しやすい。本体天板にあるインタフェースは,左からUSB 3.0 Type-A×2,USB 2.0 Type-A×2,4極3.5mmミニピンのヘッドセット端子,SDカードスロットとなっている(左)
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 それ以外のインタフェース類は背面側に集中している。こちらはごくありきたりなデスクトップPCの背面という印象で,特筆すべき要素は見当たらない。

背面側。統合型グラフィックス機能のHDMI出力が2基あるのがちょっと珍しい程度で,これといって特別なところはない。GTX 1080側のビデオ出力インタフェースは,DisplayPort×3,HDMI×1,DVI-D×1と,Founders Editionと同じ構成だ
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内部へのアクセスは容易。メモリモジュールとストレージの交換を行える


 続いて内部も見ていこう。870-072jpのサイドパネルは,手回しのビス1本で外すことができるので,内部へのアクセスは容易だ。

サイドパネルは手回しのビス1本(赤丸内)で外せる仕組み
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 もっとも,870-072jpの内部で,ユーザーが比較的容易に手が入れられそうなのは,先ほど「後段であらためて紹介する」としたメモリスロットを除けば,ドライブベイくらいである。
 メモリスロットは前述のとおり4本で,ドライブベイは3.5インチモデル対応のものが3基だ。試用した870-072jpでは,SSDを1基,HDDは2基搭載しているので,3基すべてが埋まっていた。

870-072jpの内部を覗き込んだところ。大きなグラフィックカードが中央にあって,それを迂回するようなケーブル配線になっているので,ややごちゃっとした感がある。メモリスロットは奥まったところにあるが,アクセス性はまずまず。写真左下,本体前面側には3基のドライブベイも確認できよう
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 ドライブベイは斜め上を向いており,このあたりからも床置き時のメンテナンス性を確保しようとした印象を受けるが,このレイアウトを選択しなければ,あと1基くらい2.5インチドライブベイを取り付けられるような気はしなくもない。

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本体を寝かせた状態でドライブベイに寄ったところ。写真右側(=本体上側)に向かって傾斜するレイアウトだ
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試用機のSSDとHDD
 なお,試用機が搭載するSSDは,Samsung Electronics製のSerial ATA(以下,SATA)接続型SSD「PM851」の容量512GBモデルだった。PM851は,同社がOEMメーカー向けに出荷しているSATA 6Gbps対応のSSDで,TLC型3D NANDフラッシュメモリを採用した「SSD 750 EVO」に近いスペックの製品だ。高性能がウリとなっているハイエンドSSDほどのスペックではないが,OSに加えて数本のゲームをインストールするだけの余裕がある512GBという容量は評価してもいいかもしれない。
 データ保存用のHDD 2基は,Seagate Technology製BarraCudaシリーズの「ST2000DM001」。RAIDでも組んであるのかと思ったが,Windows上からは普通にDおよびEドライブに割り当てられていた。

 そんな本体のデザインで面白いのは,グラフィックスカードが金属製の固定具で筐体にがっちり固定されており,取り外そうと思うと難度がやや高い点だ。しかも,その固定に使われているネジはトルクスビスで,ブラケット部分を固定している金属製のカバーもトルクスビスと,カードを交換させまいという強い意志を感じる(?)仕様になっている。

グラフィックスカードは金属の固定具でガッチリと固定されている(左)。固定具はトルクスビスを使って2か所でネジ留めされているため(右写真赤丸内),容易には外せない。そのうえ,ケース側のトルクスビスにはアースが共締めされている
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搭載していたグラフィックスカードは,GTX 1080のFounders Editionそのままだった
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 適切なトルクスドライバーさえあれば,グラフィックスカードを取り外すことは不可能ではないものの,この構造を見る限り,ユーザーがカードを交換するということは,まったく考慮していないようだ。HPとしては,ストレージやメモリモジュールを交換したり追加したりするのは構わないが,着脱時にスロットが壊れる恐れのあるグラフィックスカードにはアクセスしてほしくないということなのではなかろうか。
 ちなみに,搭載されていたグラフィックスカードはGTX 1080のFounders Editionそのもので,特別なものではなかった。

DTS Studio Soundがプリインストールされているが,ゲーム向けのプリセットがなかったり,マイクのバックグラウンドノイズ除去がなかったりと,ゲーム用途に最適なソフトではない
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 ちなみに,ユーザーが利用できる空きスロットは,PCI Express(以下,PCIe) 3.0 x1スロットが1つあるだけ。カードによる拡張は,あまり考慮されていないようだ。
 もし筆者が,PCIe 3.0 x1スロットに何かを装備するとすれば,サウンドカードを選ぶだろう。というのも,870-072jpのサウンド機能は,マザーボード上に搭載したRealtek Semiconductor製のHD Audio CODEC「ALC3863-CG」を使った,ごくありきたりなものだからだ。
 一応,バーチャルサラウンド機能や音質補正などを提供するソフトウェアスイート「DTS Studio Sound」は利用できるが,これ自体がゲーム用とは言い難かったりもする点も押さえておきたい。

 本稿の序盤で紹介した簡易液冷CPUクーラーは,いわゆる「よくあるタイプ」である。ラジエータは120mm角ファン付きで,筐体背面側のケースファン取り付けスペースに固定されるという仕様だ。ポンプの回転数など,簡易液冷クーラー自体の詳細なスペックは明らかになっていない。
 なお,マザーボード上,簡易液冷クーラーの近くには「IPM17-TP」というシルク印刷も見えるが,「IPM」で始まる型番は,HP製デスクトップPCのマザーボードによく見られるものだ。HP専用に,台湾もしくは中国のODMメーカーが委託生産したものらしい。

HPの大きなロゴマークが描かれた簡易液冷システム。PCIe x16スロットの側には,マザーボードの型番らしき,IPM17-TPというシルク印刷も見える
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 筐体上側に取り付けられた電源ユニットは,定格出力500Wのもので,サイズは一般的なATX電源ユニットとは違うものだった。SFX電源ユニットよりもやや大きい程度といったところか。電源ユニットが故障しても汎用品は使えそうもないので,メーカー修理に頼るしかなさそうだ。

 以上のように,870-072jpはストレージやメモリスロットには容易にアクセスできる一方で,グラフィックスカードは交換しづらく,デスクトップPCとしては拡張性がやや低い製品といえる。パーツを交換しつつ末永く使う人というよりは,メーカーの手厚いサポートに期待するタイプの人に向いた製品という印象を受けた。


液冷システムの効果をオーバークロックでチェック


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 外観と内部のチェックに続いては,870-072jpの性能をテストといきたいところだが,i7-6700K+GTX 1080の性能は,4Gamerですでにテスト結果をお伝え済みだ。
 そこで今回は,メインメモリを8GB×1のシングルチャンネル構成と,4GB×2のデュアルチャネル構成にした状態で,どれだけゲームにおける性能が変化するのかを調べつつ,870-072jpの特徴でもある簡易液冷システムの効果を,簡単なオーバークロックで検証してみることにした。
 オーバークロックは自己責任であり,行った結果,システムが不安定になったり,最悪,PCが壊れたとしても,メーカー保証の対象外となる。もちろん,筆者,4Gamer編集部も保証しないので,オーバークロックを試そうという場合はくれぐれも注意してほしい。

 デュアルチャネル構成でのテストに使用したメモリモジュールは,サンマックス・テクノロジーズ製の「SMD4-U16G28M-21P-Q」で,容量4GBのPC4-17066 DDR4 SDRAMの4枚セットから2枚を選んで,DDR4-2133の15-15-15-36設定で使用している。

 さて,まずは事前検証の必要なオーバークロックだが,870-072jpには,メーカー製のオーバークロックツールやそれに類する仕組みが存在しない。アンロック版CPU+簡易液冷という仕組みを採用してはいるのだが,オーバークロックを推奨しているわけではないようだ。

 というわけで今回は,Intel純正のクロック設定ツールである「Intel Extreme Tuning Utility」を利用してみたい。

Intel純正のクロック設定ツールであるIntel Extreme Tuning Utility。画像はテスト時の設定にした状態で,拡大すると全体像を表示する
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 4Gamerベンチマークレギュレーション18.0から以下に挙げるテストを選択のうえ,すべてのテストが安定して動作するクロック設定を探ることにした次第だ。

  • 3DMark:
    Fire Strike,Fire Strike Extreme,Fire Strike Ultra,Time Spy
  • Far Cry Primal
  • Tom Clancy's The Division(以下,The Division)
  • ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(以下,FFXIV蒼天のイシュガルドベンチ)

 テスト解像度は,1600×900ドットと1920×1080ドットの2パターンとした。使用したグラフィックスドライバのバージョンは,テスト時点で最新となる「GeForce 372.70 Driver」。Windows 10 Homeのビルドナンバーは「10586.545」である。

 というわけで結論から言うと,今回のテスト条件では,2コア以上に負荷がかかった状態では4.4GHz,1コアのみに負荷がかかった状態では4.6GHzまでクロックが上がる設定で,安定動作を確認できた。
 今回は,この設定(以下,グラフ中に限り「4.4GHz OC」)と,定格動作時(グラフ中では「標準」),およびメインメモリを4GB×2のデュアルチャネル構成(以下,グラフ中に限り「4GB×2」)に変更した状態でベンチマークスコアを取得し,そのときのCPU温度も見てみようと思う。

シングルチャネルアクセスの悪影響は大きく,スコアは振るわず。OCの効果も限定的


 スコアを見ていこう。まずグラフ1はFire Strikeの3条件における総合スコアをまとめたもの,グラフ2,3は「Graphics score」「Physics score」のスコアを抜き出したものだ。シングルチャネル構成とデュアルチャネル構成の違いはほぼなく,OCの効果も,総合スコアを見る限りは限定的である。

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 グラフ4は,同じく3DMarkからTime Spyの総合スコアをまとめたものだが,デュアルチャネル構成のスコアが,シングルチャネル構成はもちろん,OC状態のスコアをもわずかに上回っている点に注目してほしい。DirectX 12版テストとなるTime Spyでは,CPUのオーバークロックよりも,メモリアクセス方法を改善させたほうが,性能に与える影響が大きいわけだ。

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 グラフ5,6はFar Cry Primalの結果である。870-072jpの標準仕様であるシングルチャネル構成は,デュアルチャネル構成に対して,「ノーマル」プリセットで約85%,「最高」プリセットでも85〜93%程度のスコアしか示せていない。870-072jpのシングルチャネル構成は,明らかに性能面で足を引っ張っている。

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 The Divisionの結果をまとめたグラフ7,8でも,標準のシングルチャネル構成は,デュアルチャネル構成に置いて行かれ気味だ。
 870-072jpのスペックからするとより現実的なグラフィックス設定プリセットである「最高」だと,相対的なGPUボトルネックにより,シングルチャネル構成はデュアルチャネル構成の98〜99%というスコアを示すため,無視できるレベルといえばそれまでだが,同じメインメモリ容量で,アクセス方法が変わっただけで若干ながらもスコアが落ちるのは,やはり看過できまい。
 なお,CPUのオーバークロックは,ゲーム性能にほとんど何の影響も及ぼしていない。

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 グラフ9,10にスコアをまとめたFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチは,GTX 1080にとって十分に負荷の低いテストということもあり,より負荷の高い「最高品質」であっても相対的なGPUボトルネックは生じにくい。その結果として,標準のシングルチャネルアクセスは,デュアルチャネルアクセスに対して,90〜94%程度というスコアに留まった。
 相対的なGPUボトルネックが発生しづらいことから,CPUのオーバークロックにも相応の効果は認められるが,それでもメインメモリのアクセス方法をデュアルチャネル構成した場合ほどのメリットは生んでいない点にも注目しておきたい。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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簡易液冷システムは,オーバークロック性能よりも静音性を重視


 これらのテストを実行中,CPUクロックやCPUコア温度,CPUパッケージ温度を記録するソフトウェア「HWiNFO64」を常駐させておき,CPUの温度を記録してみることにした。

 各テストにおけるピーク時のCPUコア温度をまとめたのがグラフ11だ。純粋なCPUテストを含む3DMarkが最もCPU温度が上がりやすく,標準時が74℃であるのに対して,OC時には88℃まで上昇した。

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 ちなみに,オーバークロック時でも,870-072jpの動作音はほとんど変わらなかった。本機から生じる騒音は,グラフィックスカードのファンの回転音が支配的で,CPUの冷却に伴う音はその影に隠れてしまう程度だ。870-072jpの簡易液冷システムは,OCよりも静音化を重視した設定になっていると考えるのが適当ではないだろうか。


コンパクトでハイスペックな点は魅力

デュアルチャネル構成を早急に選べるように


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 それではまとめに入ろう。
 内部チェックの段でも述べたが,グラフィックスカードの交換がしにくい点や拡張性に乏しいことを考えると,870-072jpはパーツを交換しながら使い続ける自作PC的な使いかたを求める人向けの製品ではなく,製品寿命が尽きるまで,ハードウェア構成には手を入れずに使う人向けの製品といえそうだ。

 比較的コンパクトで,最新パーツで固めたゲーム用PCを求めているという人であれば,候補にあげたくなる870-072jpだが,いかんせん,メインメモリにシングルチャネル構成しかない現状が,すべてを台無しにしているといっても過言ではない。
 テスト結果が明らかにしたとおり,シングルチャネル構成は,ゲーム用途におけるPCの性能を無駄に損なうだけである。製品価格を安く見せかけるためにシングルチャネル構成を選ぶのは,ゲーマー向けPCにおいては完全な間違いであるということを,そろそろ大手PCメーカーにも理解してもらいたいものだ。
 BTO構成で,早急にデュアルチャネルの選択が可能になることを期待したい。870-072jpがゲーマーの選択肢となり得るタイミングは,少なくともそれ以降だろう。

HPのOMEN by HP Desktop 870製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    OMEN(旧称:OMEN by HP)

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