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Pascal世代初のミドルクラス市場向けGPU「GeForce GTX 1060」発表。GTX 980の性能を249ドルで
同時にNVIDIAは,電源部の強化などを行い,より高いブーストクロックで動作するように設計した高付加価値版リファレンスカード「Founders Edition」も同299ドル(税別)で用意している。
従来的な感覚だと,「下二桁60型番」のGeForceでリファレンスカードが流通するのはかなり珍しいのだが,なら上位モデル「GeForce GTX 1080」「GeForce GTX 1070」と同じようにGeForce GTX 1060のFounders Editionを日本でも購入できるかというと,実はそうではない。発表時点でNVIDIAは,Founders Editionを「NVIDIA.com限定」としているからだ。
これまでNVIDIA.comで販売されてきたハードウェア製品は,日本から直接は購入できなかったが,NVIDIAに確認したところ,そのルールは今回も変わっていないとのこと。つまり,北米大陸在住の家族や友人,もしくは転送業者を使わない限り,日本からGeForce GTX 1060 Founders Editionを購入することはできないわけだ。
その意味で,日本におけるGeForce GTX 1060搭載カードの価格は,249ドル(税別)のほうが基準となるだろう。
GP106コアを採用し,GTX 1080比で2分の1のシェーダプロセッサを統合
GeForceで下二桁60型番のGPUは伝統的に,「前世代のハイエンドGPUと同程度の性能をお手頃価格で」というのが基本コンセプトだが,「GeForce GTX 960」の後継となる新製品でもNVIDIAは,前世代のハイエンドモデル「GeForce GTX 980」の性能を249ドルで得られるというメッセージを明確に打ち出している。
ではその気になるアーキテクチャは……といきたいのだが,今回の発表にあたってNVIDIAが明らかにしているのは,GeForce GTX 1060の搭載するGPUコアが,TSMCの16nm FinFETプロセス技術を用いて製造される「GP106」であるということを除くと,下のスライドのみとなる。
また,全世界のレビュワーに対して送付したFounders Editionのクーラー取り外しを(少なくとも今のところは)禁じているため,基板からああだこうだと推測することも難しい。
さて,上の貴重なスライドを見てみると,シェーダプロセッサ「CUDA Core」の数は1280基で,これは「GP104」コアを採用するGeForce GTX 1080のちょうど半分となる。なので,過去のNVIDIA製GPUの例からしても,GP104の規模を半分にしたようなGPUコアアーキテクチャを採用している可能性が高い。
要するに,“ミニGPUコア”たる「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)数は2基で,GPCあたりの演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)数が5基ではなかろうか,ということだ。
報道関係者向け事前電話会議でGeForce GTX 1060の概要を説明したNVIDIAのJustin Walker(ジャスティン・ウォーカー)シニアGeForceプロダクトマネージャーは,「(1.7GHzという高いブーストクロックを実現できたのは)NVIDIAが抱えるエンジニアリングチームの成果だ」と強調していた。
また,NVIDIAはそれに加えて,「GeForce GTX 1060は,比較的容易に2GHzまでのオーバークロックが可能である」というメッセージも発している。上位モデルと同様に,GP106コアでも,自己責任を覚悟すれば,2GHz超級のGPUコアクロックを狙えるわけだ。
組み合わされるグラフィックスメモリは,容量6GBでデータレート8Gbps(=動作クロック8GHz相当)のGDDR5。接続インタフェースは明らかになっていないが,6GBという容量からすると,192bit接続の可能性はあると思う。
NVIDIAは,具体名を避けつつも,「最も近い競合製品に対し,平均して性能は15%,電力効率は75%高い」と主張していたりもするので,そのあたりがGeForce GTX 1060の性能や消費電力を推し測るためのヒントになりそうだ。
GeForce GTX 1060 Founders Editionの場合,基板長は実測174mm(※突起部除く),カード長は同249mmで,クーラーがカード後方に伸びた格好となっているのだが,電源コネクタが,その「カード後方に伸びたクーラー」の端に付いているのである。この手のカードデザインだと,一般には「基板の端,すなわちカード全体としては側面左右中央より若干後方寄りのところに補助電源コネクタが来る」のが普通だったのだが,おそらくは電源ケーブルの取り回しやすさを重視して,コネクタを引き回しているのだろう。
NVIDIAはPascal世代のGeForceで,GeForce GTX 1080&1070のSLI対応を事実上2-wayまでに絞ったり,新しいSLIブリッジ「SLI HB Bridge」を採用したりと,SLIの扱いをPascal世代で変えてきているが,GeForce GTX 1060におけるSLI非対応もその一環なのだろうか。
ついに立ち上がる「Ansel」。VR関連の新情報も
Pascalアーキテクチャを採用するGeForce GTX 1060は,GP104コアを採用する上位モデルと同様に,新世代のゲームキャプチャ機能「Ansel」(アンセル)と,VR(Virtual Reality,仮想現実)コンテンツの実行を高速化する機能「Simultaneous Multi-Projection」(サイマルテイニアス・マルチプロジェクション,以下 SMT)に対応する。
それもあってかNVIDIAは,GeForce GTX 1060の発表に合わせて,AnselとVRに関する情報のアップデートも行っている。
Anselという機能を一言で説明するのは難しいので,詳しくは西川善司氏による解説に当たってほしいのだが,簡単にいえば,「いま見えている画面を取得する」という従来の画面キャプチャではなく,カメラの位置を動かしたり,ポストプロセスフィルタによるエフェクトを追加したり,異なる色深度に設定したりしたスクリーンショットを撮れる機能である。また,解像度も表示しているものより大きくしたり,カメラの位置を中心とする360度の世界をキャプチャしてVR体験できるようにしたりすることもできる。
つまり,非常に多機能なキャプチャツールであり,それゆえに,対応タイトルでしかAnselは利用できない。そのため,具体的にいつ,どのタイトルで利用できるようになるかの情報が望まれていたのだが,ついに第1弾タイトルが7月中に登場する運びとなった。
具体的には,「The Witcher 3: Wild Hunt」と「Mirror's Edge Catalyst」(邦題 ミラーズエッジ カタリスト)の2本である。
VR Funhouseは,SMTやVR向けPhysXといった,NVIDIAによるVR開発者向けフレームワーク「VRWorks」をフル活用したコンテンツとしてユーザーに訴求され,同時にオープンソースとして,VR開発者に向けたサンプルとしても訴求される予定だ。
その立ち位置もリリースタイミングも,明らかに「RX 480対抗」なGeForce GTX 1060
以上,GeForce GTX 1060と,その関連情報をまとめてみた。その発表タイミング,そして製品の位置づけから「Radeon RX 480対抗」と言い切っていいだろう。
ただ,北米市場におけるメーカー想定売価で言うと,Radeon RX 480のグラフィックスメモリ容量4GBモデルが199ドル(税別),同8GBモデルが239ドル(税別)なのに対し,GeForce GTX 1060は249ドル(税別)と,10〜50ドル高い。米ドルベースでは直接競合しないものの,近しい価格なのは間違いないところで,両製品が日本市場でどういう戦いを繰り広げることになるのかは,とても気になるところだ。
なお,ここまで示してきた写真でも分かるように,Founders Editionのカード自体は4Gamerでも入手済みなのだが,現在はドライバがないため,動かすことができない状態である。
対応ドライバを入手し次第,テストを開始できるはずなので,結果のレポートをお楽しみに。
NVIDIAのGeForce製品情報ページ
※2016年7月11日追記
初出時,グラフィックスメモリ8GB版Radeon RX 480の北米市場におけるメーカー想定売価は,業界関係者から聞いた「229ドル」を記載していましたが,239ドルだとAMDが明らかにしたため,記事をアップデートしました。
- 関連タイトル:
GeForce GTX 10
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