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NHK「ゲームゲノム」Season2がスタート。記念すべき第1回は吉田直樹氏を迎えて「FF14」天地創造への想いに迫る
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印刷2024/01/11 08:00

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NHK「ゲームゲノム」Season2がスタート。記念すべき第1回は吉田直樹氏を迎えて「FF14」天地創造への想いに迫る

 “珠玉の名作を紐解き,文化としてのゲームを語り尽くす”をテーマとしたNHKの番組「ゲームゲノム」,そのSeason2が2024年1月10日にスタートした。

 ゲームゲノムは,2021年10月15日にパイロット版が放送され,2022年10月から12月まで,全10回のレギュラー放送が行われた番組だ。さまざまなゲームを取り上げ,各ゲームの文化的意義などを問う内容で,好評を博した。そんな番組のSeason2第1回に取り上げられたのは,スクウェア・エニックスが開発,運営するMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」(以下,FF14)だ。

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 新生となってからおよそ10年,いわゆる旧版から数えれば13年。今でこそ全世界に3000万のアカウントが存在する超大型タイトルへと成長したFF14だが,多くの人がご存知のとおり,その歩みは平坦なものではない。

 番組ではMCにダンサー/歌手の三浦大知さん,ゲストにゲーム好き芸人として知られる野田クリスタルさん,そしてFF14プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏を迎え,「天地創造」をテーマに,FF14の歴史と魅力を振り返りつつ,その内に秘められた想いが紐解かれていった。

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混沌こそが世界の真実


 番組内ではいくつかのキーワードが紹介された。1つめは「混沌こそが世界の真実」だ。

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 FF14といえば,ほかのMMORPGとは一線を画す壮大なストーリーが大きな魅力となっている。物語の舞台となるエオルゼアは,異なる種族,文化が複雑に交錯する世界で,そこには宗教的な対立や地政学的な問題などが渦巻いている。

 グリダニア,リムサ・ロミンサ,ウルダハというかつては強固な同盟を誇った三国と,大陸東からの侵略を試みるガレマール帝国。国と国の間で起こる大きなうねりの中に,冒険者として降り立ったプレイヤーが介入していくというのが,物語の序章となる。

 こういった国同士のいざこざに加えて,プレイヤーサイドの種族たちとの対立と和解が描かれるのが蛮族だ。イクサル族やアマルジャ族のように,いわゆる人間サイドとの軋轢から絶え間ない争いを続けている者たちも多い。人間たちは彼らを「蛮族」と呼ぶが,当然それは人間の価値観だ。蛮族からすれば,人間たちを自分たちよりも能力的に劣る存在と認識している場合もある。

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 現実の世界で異なる種族や宗教間の争いが幾度となく繰り返されてきたことからも分かるとおり,何らかの相違により生じる争いを,人々の生活から取り除くことは難しい。そしてそれは,FF14でも同じで,その現実に抗う人達も多い。

「立場,宗教観,感性,価値観を理解しようとすれば仲良くなれる種族はたくさんいるはず」(吉田氏)

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 また,蛮族とともにFF14にとって重要な存在となっているのが,祈りによって顕現する蛮神の存在だ。FF14では民族同士の争いを直接描くだけでなく,この蛮神をとおして多様な物語が紡がれていく。弱者が強者へ対抗する際の願いや想いの象徴としての蛮神。その蛮神を倒すのか否か,倒したとしてその後の世界は? この問いに対するさまざまな回答を我々はゲームをとおして知ることになるが,その1つを吉田氏が示した。

「(蛮神は)倒すだけでは解決できない存在。だから,呼ばなくて良い世界を作ればいい」(吉田氏)

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 宗教,立場,感性,価値観,そして想いと祈り。FF14は10年におよぶ歴史の中で,こういったテーマを鮮やかに描き出してきた。これこそ,同作がプレイヤーを引き付けてやまない理由の1つだろう。


役割がもたらす唯一無二の自分


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 FF14は,そのユニークなジョブシステムも大きな特徴だ。バトルにおいて,プレイヤーはタンクやヒーラーといった明確な役割を求められるが,武器を持ち替えることで任意のジョブになれる。そのアーマリーシステムによって,1つの技能に固執せずパーティの状況に応じて,任意の役割を担当できるのだ。

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 「ジョブを選べることで,自分が主人公であると感じられる。自分を投影できる」と三浦さんはコメントした。吉田氏もこれに同意して,一人で遊ぶゲームだと複数のキャラを操作してすべての役割をこなさなければならないが,オンラインゲームでそれを求めるのは精神的負担が大きい。ヒーラーは回復,アタッカーは敵を倒すことだけを考えるといったように,役割を明確にすることで達成感や手応えが得られると話す。

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「みんなが主人公で,みんな脇役ではない」(三浦さん)

 さらに,同作ではいわゆる生産職にあたるギャザラーとクラフターという職能のおかげで,バトルをしなくても自らの役割を見いだせるようになっている。

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 与えられたものを買ったり売ったりしながらバトルをするだけでは,ゲームとプレイヤーの1対1になってしまう。しかし,自身で獲得,生産したアイテムをマーケットに出せばどうだろうか。自分のアイテムを買ってくれる人がいる,自分の欲しいものを安く売ってくれる人がいる。ギャザラーやクラフターの存在は流通とプレイヤー同士のつながりを生み,それがFF14という世界の基盤を構築するうえで重要な役割を担ってきた,と吉田氏はまとめた。


破局と新生


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 気がつけばFF14が新生してからすでに10年の時が経っている。もしかすると,FF14の世界が文字通り一度“消え去った”ことを知らないプレイヤーもいるかもしれない。

 2010年に満を持してサービスが始まった旧版FF14は,残念ながらプレイヤーに受け入れられなかった。「ファイナルファンタジー」という強大なIPの影響はもちろん,先駆者である「ファイナルファンタジーXI」の成功もあり,プレイヤーの期待は破裂寸前の風船のように膨らみ,そして発売と同時に文字通り弾けた。茫漠と続く無味乾燥なフィールド,戦略性に乏しい単調な戦闘,そして頻繁に起こる不具合。開発,運営陣の気持ちを考えるといたたまれないが,「グラフィック以外のほぼすべてがダメ」というのが市場の意見だったと記憶している。

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 当初のFF14は,同作の立て直しのために白羽の矢が立った吉田氏ですら「さすがにこのレベルは……」と漏らすほどの状態であり,具体的な遊びの少なさも相まって,非難されても仕方のない作品,本気でやらないと立て直せないと感想を残している。

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 12月10日,突然発表されたMMORPG「FINAL FANTASY XIV」の,運営/開発チーム全面刷新。異例といえる今回の刷新だが,意図するところは何か,そして,新たなプロデューサーにして,ディレクターを兼任する人物として登場した吉田直樹氏とは,どんな人物なのか。これからのFFXIVのことを新プロデューサー兼ディレクター吉田氏に聞いてきた。

[2010/12/28 17:16]

 そして吉田氏がそんな同作を生まれ変わらせるために取った決断が「世界を一度破滅させ,ゲームそのものを一度終わらせる」というもの。これは単にサービスを終了するということに加えて,なんと物語上も一度世界を完全に破壊することを意味していた。要するに,新たなファイナルファンタジーXIVを外側からも内側からも完璧に作り直すということだった。

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 結果,旧版FF14は一度その役割を終え,2013年に改めて「新生ファイナルファンタジーXIV」として産声を上げた。その後の経過は推して知るべし,文字通り「天地創造」を成し,今なお快調にサービスを続ける作品へと成長を遂げている。

「世界が生まれ変わる(ゲームが作り直される)というのは事実だからストーリーにしてしまったほうがおもしろいと思った」(吉田氏)

 余談だが,吉田氏によれば,2012年にマヤ暦が終わり世界が滅亡するという言説が当時流れており,その中に隕石の落下が原因というものがあったそうで,そこからアイデアを受けて,旧FF14の赤い衛星を落とすという発想に至ったのだという。


対話が作る新たな地平


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 一度サービスの始まった作品を,完全に破壊して0から作り直すというのもゲーム業界の歴史において異例中の異例と言えるが,さらにFF14はゲーム外でもMMORPGを含むサービスとしてのゲームという領域において,重要な革新をもたらしている。

 それが定期的に行われているLIVE配信「プロデューサーレターライブ」だ。開発陣がプレイヤーに向けてサービス状況や開発内部の情報を発信するというこの試みは,なんと13年間で200回を超える配信が行われている。この番組のなかで,吉田氏を筆頭とした開発チームはプレイヤーからの質問や要望に何度も応えてきた。

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「MMORPGは世界に住むこともテーマ。運営は住民税をもらっている立場なので,暮らしている人々の声に耳を傾けるのも仕事。さらにそこから,運営が何を考えているか知ってもらえたほうがお互いに快適に暮らせるはず」(吉田氏)

 その例の1つが天候に関するもの。釣りをするプレイヤーにとってなくてはならない天候情報を知る術がなかった当時,プロデューサーレターライブ内で受けた要望が起因となり,街に天気予報士が実装されたのである。

 さらに物語面でも,蛮族クエストをとおして異種族間の絆を深めていくプレイヤーたちから,あるとき「そろそろ蛮族と呼ぶのはやめないか」という要望があり,そこから友好部族クエストという形に変えていくことになったそうだ。

 とりわけゲーム内で印象深く刻まれているのは,ファッションを楽しみたいというプレイヤーのために生まれた傘にまつわるエピソードだろう。海外のプレイヤーがとあるSNSに「あるFF14のプレイヤーの葬儀をゲーム内で行いたい」と呼びかけた。これはコロナ禍で実際の葬儀に参列できない現状への嘆きから生まれた小さな動きであったが,ゲーム内では多くのプレイヤーが快晴の中,傘を片手にその葬儀に参列したという。

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 吉田氏はこういった事例をうけて,たくさんのプレイヤーが暮らしていける世界を構築できたことはもちろん運営が誇るべきだとしたうえで「何よりも遊んでいるプレイヤーの心がFF14の中に息づいていることが,運営にとって最も誇らしいこと」だと結ぶ。

 月並みな言い方をすれば破壊と創造によってMMORPGだけに留まらずゲームというサービスに新たな地平を開いたFF14。今回同番組が言及した「天地創造」はまさに同作を形容するのにふさわしい言葉と言えるだろう。

 時折,召喚獣のフェニックスにも例えられるFF14の復活劇がゲームの歴史に残したものは多いが,同時にそれは容易に後を追えるものではないことを我々はよく知っている。吉田氏を中心に生み出されたFF14という新たな「世界」。そこで氏が望むのはただ純粋な願いだ。

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「たくさんの価値観が集まって,みんなが楽しく,さらにストーリーをとおして実生活で考えるきっかけを掴んでくれると,どっちの世界も楽しくなるのかなと思って,ずっとやっています」(吉田氏)

[ゲームゲノムSeason2 放送日程]
 2024年1月10日 放送開始(全10回)
 毎週水曜日 23:00〜23:29/NHK 総合(予定)
※「NHK プラス」で1週間見逃し配信あり

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