連載
マフィア梶田の二次元が来い!:第137回「仕事を納められないとんがりボウシと12月のライオン」
「俺の辞書にゃ“仕事納め”なんて言葉はないんだぜ」とニヒルに言い放ったところで,全然カッコよくないし気も晴れない12月中盤。皆様,いかがお過ごしでしょうか? 同じような境遇に置かれている方々はご愁傷様,早くも休日の予定に胸をときめかせているヤツは乳首擦れて痛痒くなれ。
さてそんな中,働き者の私めは,バンタンゲームアカデミーにて今年最後のトークライブを,12月23日に行います。今回は「STREET FIGHTER」シリーズのCGアニメーション制作などで知られるポリゴン・ピクチュアズから,デザイナーとして活躍中のバンタンOB,勅使河原一馬氏をお招きすることになりました。
デジタルアニメーション業界に興味のある方や,マフィア梶田のインタビュー仕事を生で見たいと思っている物好きさん,そしてクリスマス・イヴイヴの12月23日に暇で孤独でしょうがないというオマエラは「こちら」から御予約をどうぞ。ためになる話を聞きながら,一緒に世界を呪いましょう。
魔法が使えたり自分のお店を開けたり,夢いっぱいの自由な生活を楽しめるのが魅力の本作。番組では前々作「とんがりボウシと魔法のお店」を取り上げた時に,しこりん(岡本信彦さん)がポイズンクッキングを披露しましたが,アレからまったく成長しておらず,今回も保健所が鬼の形相で飛んできそうなブツを店に並べようとしておりました。創作料理って言えばなんでも許されると思うなよ。
また,「ときめきメモリアルGirl's Side」や「ラブプラス」シリーズなども手掛ける“LOVEPLUS PRODUCTION”の作品ということで,個性的なキャラクター達との恋愛要素もあったりするというのが非常に興味深いですね。
12月14日は何の日ですか? ……そうです,「3月のライオン」第8巻の発売日です。別のことを思い浮かべていた人達は,今すぐ書店へダッシュするか通販でポチってください。
野暮だとは思いますが一応説明しておくと,「3月のライオン」は,羽海野チカ先生による“将棋”を題材にした漫画です。幼い頃に事故で家族を失った孤独な若きプロ棋士“桐山 零”が,周囲の人々との交流を通して,棋士として人間として成長していく姿を描いています。
本作の凄いところは,将棋という難しいテーマを扱っていながら,万人の心に訴えかける物語を作り上げているという点です。棋界という厳しい勝負の世界や,学校で起きる出来事などを通して,人間の“生き方”を深く抉り出しています。
これまでの人生,さまざまな場面において勝ってきた人,負けてきた人……どんな人でも,あるいは零くんに,あるいは島田さんに,あるいはひなちゃんに共感せざるを得ません。
作中で紡がれる言葉の数々は,詩的でセンチメンタルな雰囲気に満ちているだけでなく,物事の本質を捉えていて,読み手の心にスーッと浸透してきます。対局シーンなんか,キャラクター達の緊張感が読み手である自分にも伝播してきて,気が付けば唇を噛み締めているんですよこれが。下手なバトル漫画よりも,読んでて熱くなってしまいます。
絵柄は女性的でガラス細工のように繊細なのに,時折キャラクター達が見せる眼光には恐ろしいほどの力強さが宿っていて,思わずゾクリとしちゃうんですよね。
同じヤングアニマルで連載している「ベルセルク」の三浦建太郎先生が,「3月のライオン」を「アニマル一男らしいマンガ」と評していましたが,個人的にも羽海野先生からは,魂レベルでの「男らしさ」を感じてしまいます。
そして,そんな羽海野先生の「男らしさ」が表紙からもにじみ出ている第8巻ですが,見どころタップリですよ。前半で作中イチ謎の多い存在である宗谷名人の秘密が明らかになるのですが,俺はこのエピソードを読んで,初めて彼を“人間”として感じられるようになりました。そして同時に,なんかこう「……可愛いな」と思ってしまいました……ぶっちゃけ,抱けるレベルで。
いやね,男女問わずこういうキャラには弱いというか,人外めいた存在がいきなり弱かったり頼りなさげなところを見せるのは反則というか……。イタズラしたい。
……まぁ,そういう展開は薄い本に期待するとして話を戻しましょうか。
さて,宗谷名人の秘密が明かされたあとに,いよいよ今巻のメインイベントとも言える柳原さん……表紙のお爺ちゃんが「絶対に負けられない対局」へと挑むエピソードがあります。これはね,読んでて緊張感がハンパないですよ。対局の相手は島田さんなんですが,彼に関しても,今までの話を読んでいれば負けられない立場だってことは痛いほど伝わってくるんです。どっちも応援してやりたい読者としては心臓に悪いですよもう。
でも……島田さんには悪いんですが,今回俺は柳原さんの勝利を祈ってしまいました。というか,このエピソードを読み進めていくうちに,みんな絶対にそうなっちゃいますって。表紙で柳原さんに絡みついている白い布のような物,これの意味を知っちゃうと,もう柳原さんのことを応援せざるを得ません。浪花節です……カッコ良すぎます! こんなにも血の滾る展開が描けるなんて,羽海野先生,やっぱり本当は男でしょ? 漢なんでしょ!?
個人的に,これまでで一番好きなエピソードとなりました。「3月のライオンは柳原回が最高傑作説」を唱えたくてしょうがないけど,もしかしたらこの先もっとスンゴイ展開が待ち受けているかもしれないと思うと……ぐあー! 早く続きを読ませろォ!!
俺はこれから羽海野先生に感想文メール爆撃を行うので,まだ「3月のライオン」を読んでない人は速やかにチェックするのです。悔しいけど,俺の文章力じゃ魅力の半分も伝えられないくらい面白いですから……ともかく実際に読んでほしいと,心からオススメできる作品です。
- 関連タイトル:
とんがりボウシと魔法の町
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