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「SimCity」はマルチプレイをメインにしたシミュレーションに。EA,ロンドンで開催したメディア向けイベントで,SimCityのデモプレイを公開
「シムシティ」公式サイト
会場でのプレゼンテーションは,SimCityのデモプレイが行われ,それをメディアに見せつつ説明がなされるというスタイルで行われ,デモプレイ後には質疑応答の時間もとられた。説明を担当したのは,Maxisの副社長でジェネラルマネージャーでもあるBret Berry氏で,ゲームの実際のプレイはプロデューサーのJason Haber氏が受け持った。ただし,デモ版のグラフィックスは製品版と同等ではなく,またユーザーインタフェースも仮のものであるため,写真撮影は禁止。というわけで,このページに掲載しているのは,公開されたアートワークだ。
Bret Berry氏 |
Jason Haber氏 |
制作の発表後,2012年3月にサンフランシスコで開催されたGame Developers Coference(GDC 2012)で,まずゲームエンジンである「GlassBox」の説明が行われるという,変則的なプロモーションでスタートした本作だが,情報公開第2弾となる今回はゲームの概要について紹介が行われ,6月に開催されるE3ではマルチプレイの詳細が説明される予定とのことだ。GDC 2012のときは,基本的にゲームエンジンのレクチャーということで,スライドやムービーに出てきたゲームの画面はまるでFlashゲームのようにシンプルだった。とはいえ,2012年3月7日の記事で掲載したアナウンスムービーは驚くほどリアルな映像になっており,「どっちが本物?」と思った人もいるはずだ。
会場のディスプレイに映し出されたゲーム画面は,その中間といったところで,プリレンダのCG映像ほどではないが,GDC 2012のときに比べればはるかにレベルアップしており,木々や建物のディテールはかなり細かい。特徴的なのはゲーム画面にチルトシフトの手法が使われていることで,街のミニチュア感がかなり強調されている。Berry氏によると,こうしたユニークな画面作りもゲーム制作の目的の一つであるという。
SimCityは“マルチプレイ”をメインにしたシミュレーションゲームであるとBerry氏は説明する。完全なオフラインモードはなく,ほかのプレイヤーと協力したり競争したりすることで面白く遊べるようにデザインされているとのことだ。
また,作れる街は標準的なもののほか,工業に特化した街や観光をメインにした街など,さまざまなタイプの街作りが可能になっている。そのため,例えば住宅地や娯楽施設に力を入れた街作りをするプレイヤーと,地下資源の採掘や工業をメインにした街を作るプレイヤーの街をリンクして,相互に協力することで,より大きな都市の開発をするというマルチプレイが楽しめるわけだ。
デモプレイの街の市長は上記のJason Haber氏なので,ここでは,街を「ジェイソンシティ」と呼ぶことにしよう。ジェイソンシティをズームアップすると,道行く人々や車などが見える。これらはすべて「エージェント」だとBerry氏は説明した。彼のいうエージェントとは,ゲームエンジンであるGlassBoxの用語で,簡単にいうと複数の属性を持ち,ほかのエージェントに影響を与えることもある実体だ。エージェントである住民には属性として,それぞれに自分の目的があり,また車には1台1台,目的地があるという。そんな住民達を幸福にしてあげることが,市長の目的になるわけだ。
Berry氏はここで,これまでファンが強い要望を出しつつもこれまで実現しなかった,「曲がった道を作りたい」という望みが本作でついにかなったと述べ,それに応えてHaber氏が,ゆるやかなカーブを描いた道路を街に付け加えた。長年のファンなら,ここで,おおっという声が出るかもしれない。
さらに,Haber氏がその周辺を住宅地に指定すると,やがて資材を積んだトラックがやってきて,住宅建築が始まった。こういった,道を作る,土地の属性を指定する,といった作業を行うたびに独特の効果音が流れるのだが,これは,インタフェースを面白くして,街作りの作業が楽しくなるようにしようという設計理念に基づくもの。住宅地を指定する際はフェンスを棒で叩くような効果音が聞こえてくる。ゲームの雰囲気は全体的に軽やかだ。やがて住宅が建ち並ぶと,家々の前に「For Sale」の看板が現れ,やがてそれらの家を買った人々が,引っ越しトラックに乗ってやってくるという。
かくしてジェイソンシティは繁栄を続け……と思ったが,市役所の前でデモをしている人が画面に映し出された。彼らは何を求めているのか? というわけで登場するのが「データレイヤー」だ。これは,街全体の状況を見るためのユーザーインタフェースで,例えば「ハピネス」のデータレイヤーを選ぶと,ほとんどの家々の上に笑顔のアイコンが浮かび,それらの人々が幸福に暮らしていることが分かるという感じ。とはいえ,街の南のほうの家の上には,怒ったような顔のアイコンが表示されている。
そこで,「電力」のデータレイヤーを見ると,どうやらその地区の電力が不足しているらしいことが分かった。街の情報を見るには,例えば住民の頭上に考えていることが吹き出しとして浮かぶ,市長に手紙が届くなど,都市建設シムではいろいろなユーザーインタフェースが使われてきたが,本作ではこのデータレイヤーがメインになるとのこと。簡単に街の情報にアクセスできるようにすることが,データレイヤー採用の理由だという。
ともあれ,ジェイソンシティには,北に1基の風力発電施設があるが,これだけでは拡大を続ける街の電力を賄いきれないらしい。そこで,市長は火力発電施設を建設することにした。こうしたさまざまな建物もまたエージェントで,火力発電所の場合,ここに労働者がやってくることで操業が始まり,石炭を消費して電力を生み出す。
建物はアップグレードすることが可能で,火力発電所の場合,発電装置を増やして生み出す電力を増強できる。そして,この施設の建設によって電力だけでなく仕事も生まれ,ハピネスのデータレイヤーの情報からは人々の幸福度がアップしたことが分かった。
めでたしめでたしと思いきや,話はそう簡単ではない。Berry氏は,あらゆる施設にはメリットとデメリットがあると語る。火力発電所の場合,コストがかかるほか,大気汚染の問題を持っている。そのあたりは,さまざまな物資を生み出す工場も同じで,仕事や,住民が必要とする商品が得られる一方,環境を汚染し,長期的に人々の健康を損なったり,人々が街を出ていく理由になったりするそうだ。とはいえ,少なくとも今のジェイソンシティでは,人々の幸福度がアップしたのだ。
ここで,画面をスクロールすると,ジェイソンシティの南に小さな街があることが分かった。この街,多くの家の屋根にグラフィティが描かれ,サイレンを鳴らしたパトカーがひっきりなしに行き来するという,どう見ても治安が悪い地区だ。夜になっても街に明かりが灯らず,その暗さが犯罪を生み出しているらしい。どうやらこの街も電力不足に陥っているようだ,というわけで,ジェイソンシティから送電線を引き,この街に電力を供給することにした。
――あたりが暗くなると小さな家々に明かりが灯るという,この夜のシーンは幻想的で,非常に魅力的だった。無数の小さな光が,まるでそこに人々が暮らしているような雰囲気を醸し出している。
さて,ゲームが進むといくつかのイベントが発生する。登場したのは,大音量でロックを流す派手なバンだ。乗っているのはもちろん良からぬ人物で,彼はとあるホテルの前にバンを止めると,中に入っていく。やがて,ガソリンをまくらしき音が聞こえ,続いてバンが急発進して姿を消すと同時に,ホテルから煙があがり始める。あろうことか,彼は放火魔だったのだ。
火の手はすぐに激しくなったが,うかつなことにジェイソンシティには消防署がないではないか。というわけで,あわてて消防署を建てる。ちょっとゲーム的だ。消防署や警察署などの建物には,カバーできる範囲が設定されており,火事の現場からあまり遠いところに消防署を建てても意味がない。もっとも,建物をアップグレードして,例えばガレージを増築して消防車を増やしたり,火の見やぐらを建てることで,カバーできる範囲を拡大することが可能だ。
今回は,ホテル火事が延焼して周辺が火の海になる前に,なんとか火災を食い止められた。このようにして,ゲームは進んでいく。
詳しくは説明されなかったが,この放火魔だけでなく,今回も「災害」の要素が用意されており,日本人にはなじみ深い“怪獣”も出現するかもしれない。
ここでデモは終了し,簡単な質疑応答が行われた。
まずゲームのタイトルが,「SimCity 5」ではなく「SimCity」であるのはなぜかと理由を訊かれたBerry氏は,ナンバリングタイトルは,従来作に何かを付け加えたようなイメージを与えると答えた。しかし今回は,ゲームエンジンやグラフィックス,そしてユーザーインタフェースなどをすべて一新した,まったく違うゲームであるため,あえてナンバリングを避けたとのことだ。また実際問題として,10年近く前にリリースされた「SimCity 4」を知らないプレイヤーも多く,すでにナンバーにあまり意味がないとも考えられるとのこと。
ゲームそのものは,これが初めてのSimCityという人でも,あるいは従来作のファンでも十分に楽しめるように作られているそうだ。
マルチプレイについては,上記のようにE3で詳細が発表される予定で,多くは語ってもらえなかったが,例えばグローバルリーダーボードが用意されたり,複数の街がシームレスにコネクションできたりするような仕掛けが用意されるという。また,地域の共同プロジェクトや,グローバルレベルでの宇宙開発など,プレイヤーが協力して行うイベントもあるという。
なお,すでに述べているとおり,本作にオフラインモードはないが,友達と遊ぶ,誰でも参加できるオープンな状態にするというチョイスがあるとのことだ。
協力のほかに,資金や人口などでほかのプレイヤーと競う仕組みも考えられている。
対応機種はPCで,現在のところコンシューマ機への移植は考えられていない。ただ,なるべく多くの人々にプレイしてもらえるよう,ハイスペックPCでもロースペックPCでも遊べるというスケーラビリティが追求されている。
発売時期は,現在のところ2013年で,詳しい日付などについては発表できる段階ではないようだ。ただ,スケジュールは順調で,遅れることはないとのことだった。
これまで海のものとも山のものともつかなったSimCityの輪郭が,だいぶはっきりしてきたようだ。さまざまな改良は行われているものの,SimCity本来のエッセンス,つまり子供が砂場で遊ぶような面白さは十分に継承されているという印象の発表だった。次のE3で明らかにされるというマルチプレイなど,情報公開第2弾も楽しみに待ちたい。
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