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「Core i7-4770K」&「Core i5-4670K」レビュー。デスクトップPC向けHaswellはゲームで速いのか
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印刷2013/06/02 00:01

レビュー

ついに登場した「Haswell」の特性とゲーム性能を明らかにする

Core i7-4770K
Core i5-4670K

Text by 宮崎真一


i7-4770K。入手できたのは性能評価用エンジニアリングサンプルで,性能は製品版と同じとされる一方,ヒートスプレッダ上の刻印は製品版と異なっている。なお,i5-4670Kも入手したのは性能評価用エンジニアリングサンプルだが,入手元の都合により,こちらの写真は掲載できない
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 開発コードネーム「Haswell」(ハスウェルもしくはハズウェル)と呼ばれていたCPUが,第4世代Coreプロセッサとして,2013年6月4日に正式発表となる見込みだ。6月2日0:01をもって,正式発表を待たずに一部の製品が店頭販売され始めたことで,俄然興味が出てきたという読者も少なくないのではなかろうか。

 別途お伝えしているように,第4世代Coreプロセッサにおける重要なキーワードは,省電力化と,強化された統合型グラフィックス機能だ。では,そんな最新CPUは,単体GPUと組み合わせて用いる前提で話をするのが半ば前提となる我々ゲーマーにとって,どのような意味があるだろうか。4Gamerでは「Core i7-4770K」(以下,i7-4770K)と「Core i5-4670K」(以下,i5-4670K),2つのデスクトップPC向けクアッドコアモデルを入手できたので,簡単な基礎検証も交えつつ,3Dゲームにおける性能を検証してみたい。


i7-4770Kとi5-4670Kのテストを実施

組み合わせるマザーボードはIntel製「DZ87KLT-75K」


3次元トライゲート・トランジスタを用いる22nmプロセス技術で製造されるCPUという意味ではIvy Bridgeから変わりないHaswell(上)。下に示したのはIvy Bridgeのダイイメージで,左端のグラフィックス機能部分を除けば,大きな違いはないように見える
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 Haswellこと第4背世代CoreプロセッサがどんなCPUであるかは,上でも紹介したアーキテクチャ解説記事を参照してほしいが,ざっくりまとめるなら,従来の主力製品である「Ivy Bridge」(アイヴィブリッジ,開発コードネーム)をベースに,性能面のチューニングを施しつつ,省電力性能をいっそう強化してきたCPUと述べていいだろう。Intelによれば,Ivy Bridge比で10〜15%程度の性能向上が見られるとのことである。

 今回取り上げるi7-4770Kとi5-4670Kは,順に「Core i7-3770K」(以下,i7-3770K),そして「Core i5-3570K」のそれぞれ後継モデルにあたる。そんな両製品の主なスペックを,i7-3770Kや,「Sandy Bridge-E」ベースの最上位モデル「Core i7-3970X Extreme Edition」(以下,i7-3970X)とともにまとめたものが表1だ。
 i7-4770Kとi5-4670Kの違いは,「Intel Hyper-Threading Technology」(以下,HTT)の有無と動作クロック,そして共有L3キャッシュの容量が8MBか6MBかといった部分だ。なお,プロセッサナンバーの末尾に「K」が付いていることからも想像できるとおり,両者とも倍率ロックフリー仕様となっている。

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Socket H2とも呼ばれるLGA1150対応ソケット
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 いま表1でも示したように,i7-4770Kとi5-4670Kはいずれも,新しいLGA1150パッケージを採用しており,対応CPUソケットは「Socket H2」とも呼ばれるものへと変更されている。端的に述べると,Ivy Bridgeや,“その前”の「Sandy Bridge」(サンディブリッジ)こと第2世代Coreプロセッサが採用していたLGA1155パッケージとは物理的な互換性が失われているので,この点は注意してほしい。

i7-4770K(左)とi7-3770K(右)の底面。比較的よく似ているが,切り欠きの位置は異なる
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 なお,今回のCPUは単品での入手となったので,CPUクーラーは従来のIvy Bridgeで製品ボックスに付属するものを装着することにしたが,とくに問題なく利用できた。ソケット自体はLGA1155との互換性を失ったものの,CPUクーラーの互換性は維持されているようだ。

CPUの装着方法はIvy Bridge時代と変わらない
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Z87 PCH
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 LGA1150に対応したチップセットシリーズは「Intel 8」となるが,今回は本シリーズのデスクトップPC向け最上位モデル「Intel Z87 Express」(以下,Z87)を搭載し,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)95WまでのHaswellをサポートするIntel製のLGA1150対応マザーボード「DZ87KLT-75K」を入手できたので,これを用いてテストを行っていきたいと思う。

 先にDZ87KLT-75Kを概観しておくと,まず,デスクトップPC向けマザーボードでキモとなるPCI Express(以下,PCIe) x16スロットの数は3本となっている。レーンはCPUに近いほうから16/8,0/8,4という構成になり,8レーン×2接続での2-way SLIもしくは8レーン×2+4レーン×1の3/2-way CrossFireがサポートされる。

DZ87KLT-75K(左)。製品ボックスには2-way SLI用のブリッジコネクタが付属していた
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チップセット側で提供する機能は,マザーボードメーカーやPCメーカーがカスタマイズできる
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 Intel 8シリーズチップセットの特徴としては,PCH(Platform Controller Hub,いわゆるチップセット)でサポートされるPCIe 2.0およびSerial ATA 6Gbps,USB 3.0のポート数がマザーボードメーカー(やPCメーカー)レベルでカスタマイズ可能である点が挙げられる。
 Intelはこれを「Intel Flexible I/O」と位置づけ,最大ではPCIe 2.0が8レーン,Serial ATA 6Gppsが最大6ポート,USB 3.0が最大14ポートを利用できるようにしてあるのだが(関連記事),DZ87KLT-75Kの場合,チップセットでサポートされるPCIe 2.0レーンは,2基のLANコントローラに1レーンずつ,Thunderboltに4レーン,mini PCIe/mSATAスロットに1レーン,さらにPCIe x1スロットが3本と,いきなり最大の8レーンを超えてしまう。ではどうやっているかというと,答えは簡単で,オンボードのPLX Technology製PCIe 2.0ブリッジチップ「PEX 8606」の活用によって実現しているのである。

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拡張スロットの構成。PCIe x16 ×3,PCIe x1 ×3,PCI×1となっている
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PCIe 2.0ブリッジチップであるPEX 8606をPCIe x1レーンの拡張に用いる

 Serial ATA 6Gbpsは,Z87 PCHによって6ポート用意され,それとは別に,PCIe x1接続のMarvell製Serial ATA 6Gbpsコントローラ「88SE9172」によって,2ポートを追加した,合計8ポート仕様となる。88SE9172はPEX 8606の“下”に,PCIe x1スロット×3ともどもぶら下がる格好だ。
 なお,前出のmini PCIe/mSATA接続を実現するのは,ASMedia Technology製のコントローラ「ASM1061」である。

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オンボードのSerial ATA 6Gbpsは計8ポート。うち6ポートがZ87 PCHによってサポートされる
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mini PCIe/mSATAスロットを搭載。コントローラはASM1061となっていた

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I/Oインタフェース部。右端に見えるのがThunderbolt端子だ。USB 3.0の6ポートはハブ経由で,Z87直結のポートはピンヘッダとなっている。左端の黄色いUSBポートはUSB 2.0サポート。1000BASE-T LANは「Intel I217V」「Intel I210」による2系統となる
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電源部には大きめのヒートシンクを搭載
 ちなみに,先ほど話が出たThunderboltとは,Intel 7シリーズチップセット搭載マザーボードの一部でも実装されている技術で,IntelとAppleが共同開発したもの。Mini DisplayPort互換の接続端子で,PCIe 2.0 x4の帯域幅を持つデータ伝送機能と,DisplayPort 1.1a互換のディスプレイ出力を持っている。
 I/Oインタフェース部にはThunderboltのほかにHDMIも用意されるため,最大では2画面出力が可能だ。

 電源フェーズ数は見る限り6+2の構成で,Intel製マザーボードでおなじみのドクロがあしらわれた大型のヒートシンクを搭載するのが特徴的。メモリスロットは4本で,デュアルチャネルのDDR3 SDRAMおよびDDR3L SDRAMがサポートされる。メモリコントローラを持つCPUがDDR3-1600までしか対応していないものの,マザーボード自体はデュアルチャネルならPC3-19200(DDR3-2400),シングルチャネルならPC3-21300(DDR3-2660)を動作させられる設計になっている。

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ヒートシンクを取り外したところ
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電源部。6+2フェーズ構成のようだ

なお余談ながら,製品ボックスには,Bluetooth 2.1とIEEE 802.11g/n無線LANを利用可能にするモジュールが付属している。USB 2.0のピンヘッダに付属のケーブルで接続し,5インチベイのカバー裏などに貼り付けて使うイメージだ
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比較対象にはi7-3770Kとi7-3970Xを選択

オーバークロックでは定格電圧のまま4コア4.3GHzに到達


 テストのセットアップに入ろう。
 今回利用したシステムは表2のとおりで,比較対象には,表1でもその名を挙げたi7-3770Kとi7-3970Xを用意した。Ivy BrideおよびSandy Bridge-Eの最上位モデルと性能を比べてみようというわけである。
 i7-4770Kとi5-4670Kのテストにあたって用意できたマザーボードがIntel製で,一方,4Gamerでは通常,テストにASUSTeK Computer製マザーボードを使っている都合上,メーカー(やフォームファクタ)が異なる点はご了承のほどを。

SMD-32G28CP-18ML-Q
メーカー:サンマックス・テクノロジーズ
問い合わせ先:パソコンショップ アーク
パソコンショップ アーク販売価格:3万5980円(税込,※2013年6月2日現在)
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 テストに用いるGPUは,「性能面でボトルネックとなる可能性が低いハイエンドモデルで,一般的であり,かつ,消費電力が極端に高くないもの」として「GeForce GTX 680」(以下,GTX 680)を用意した。グラフィックスカード自体は4Gamerで独自に用意したリファレンスデザイン採用モデルとなる。
 組み合わせるメモリモジュールは,今回新たに,秋葉原のPC&PCパーツショップであるパソコンショップ アークの協力で,JEDECのDDR3L-1866仕様に対応した,サンマックス・テクノロジーズ製の容量8GB版PC3-14900モジュール4枚セット「SMD-32G28CP-18ML-Q」を用意できたため,i7-4770Kとi5-4670K,i7-3770Kのテストにはここから2枚を用いることにした。なお,i7-3970Xはクアッドチャネルアクセスとなるので,4GBモジュール4枚で容量を揃えている。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。「3DMark」(Version 1.1.0)では,描画負荷が極めて大きく,いきおいCPUの性能差が表れにくくなる「Fire Strike」のExtremeプリセットを省略した。
 レギュレーションで規定するとおり,CPUのテストにあたって用いる解像度は1280×720・1600×900・1920×1080ドットの3パターンで,負荷設定は「標準設定」(※「BioShock Infinite」は「High」)となるが,「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)だけは,標準設定だとスコアの頭打ちが発生することが確認できたため,「Ultra設定」を用いている。この点はあらかじめお断りしておきたい。
 なお,CPU側のHTTならびに「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)は,いずれも有効化できる場合,効にしてテストを行っている。

「CPU-Z」(Version 1.64.2 x64 Beta)実行結果
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Silver Arrow SB-E Extremeを取り付けたところ。PCケース内で運用する場合はエアフローを逆にすべきだが,今回はPCケースに組み込んでいないので,写真のような向きとしている
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Intel Extreme Tuning Utility。CPUの動作倍率は定格だと2コアまでが最大39倍,3コアだと38倍,4コアだと37倍なのが分かる
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Intel Extreme Tuning Utilityには標準で負荷テストツールが用意されている
 さて,テスト結果の考察へ入る前に,簡単なオーバークロックを試してみたい。
 前述のとおり,今回入手したi7-4770KにはCPUクーラーが付属しなかったため,LGA1150&1155パッケージのCPUをテストするにあたっては基本的に,i7-3770Kの製品ボックスに付属するクーラーを用いている。だが,それではオーバークロック動作には不足だろうということで,オーバークロックの検証時だけは,4Gamerで独自に用意したThermalright製クーラー「Silver Arrow SB-E Extreme」を使うことにした。

 また,オーバークロックには,Intelからマザーボードメーカーに配布され,カスタマイズされたうえで登場すると見込まれるツール「Intel Extreme Tuning Utility」の“Intel純正版”を用いることにした。これを使えば,Windows上からベースクロックやコア電圧,それに動作倍率などを簡単に変更することが可能になっているからだ。
 ちなみにIntel Extreme Tuning Utilityだが,CPUとメモリ周りに対する負荷テスト(ストレステスト)が用意されていたり,負荷をどの程度かけて,どの程度の時間実施するかを設定できたり,設定内容をプロファイルとして読み書きできたりと,使い勝手はかなりよい印象を受ける。

 今回はテストスケジュールの都合上,設定を詰める時間を確保できなかったため,コア電圧を「Default」のまま変更せずに,4つのコアの動作倍率を一律にどこまで引き上げられるかを試すことにした。

電圧設定が定格のままでも,4コアすべてを4.3倍設定にした状態で安定動作した
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 オーバークロックの試行にあたっては,Intel Extreme Tuning Utilityに用意されたストレステストを8時間連続して実行し,その間に問題が生じなければ「安定動作している」と判断することにしたが,結論からいうと,今回の条件では,動作倍率43倍,4コアすべて4.3GHzで動作させるのが限界だった。もっとも(後述するCPU温度を見てもらえば想像できるように)かなりの余裕はあったので,電圧設定などを適切に行えば,さらに高い動作クロックを狙えるのはまずもって間違いないだろう。

 なお,せっかくオーバークロックでの安定動作を確認できたので,以下,アプリケーションベンチマークでは,4コアすべてを4.3GHzで動作させた状態でもテストを行うことにした。そのときCPU名は「i7-4770K@4.3GHz」と表記する。

※注意
CPUのオーバークロック動作は,CPUやマザーボードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,CPUやメモリモジュール,マザーボードなど構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


i7-3770Kと似た傾向を示しつつも

キャッシュ周りに革新を確認できるHaswell


 ……と,ここでいつもならゲームでの性能検証結果を見ていくのだが,冒頭でも触れたように,まずはi7-4770Kとi7-3770K,i7-3970Xの3製品でプロセッサとしての基本性能を確かめてみたい。要は,Ivy BridgeやSandy Bridge-Eとの特性の違いを見てみようというわけである。
 ここで用いるテストアプリケーションは「Sandra 2013」(SP3a Version 19.44)。本段落で取り上げるテストにあたっては,スコアがバラつく可能性を排除すべく,HTTとTurbo Boostを無効化している。

 というわけでグラフ1は「Processor Arithmetic」の結果だ。「Dhrystone」は整数演算の古典的なテスト,Whetstoneは浮動小数点演算の古典的なテストで,前者はSSE 4.2,後者はSSE3を用いたときの性能をそれぞれ見ることができるが,ここではさすがにコア数で上回るi7-3970Xが頭一つ抜け出している。i7-4770Kとi7-3770Kは,整数演算性能で若干のスコア差が出ているものの,浮動小数点演算性能ではほとんど同じスコアとなっており,総じて大きな違いはないと述べてよさそうだ。

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 グラフ2の「Processor Multi-media」は,AVX命令を用いたマルチメディア系演算の性能を見るテストだ。グラフに見える4つのテストは上から順に整数演算性能,32bit単精度浮動小数点演算性能,64bit倍精度浮動小数点演算性能,そして単精度と倍精度混在の浮動小数点演算性能を見るものとなっているが,整数演算性能でi7-3770Kに約76%のスコア差を付け,さらにコア数が1.5倍のi7-3970Xに対しても約23%高いスコアを示すなど,i7-4770Kの結果は非常に景気がいい。AVX周りに相当な改良が加えられているのが窺い知れよう。

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 暗号化性能を見るグラフ3の「Cryptography」には,AES(Advanced Encryption Standard)256bitのエンコード/デコードを行う「Encryption/Decryption Bandwidth AES256-ECB AES」と,CPUべースのアクセラレーションを用いずに「SHA2」(Secure Hash Algorithm 2)でハッシュの計算を行う「Hashing Bandwidth SHA2-256 AVX」の結果を並べてあるが,i7-4770Kは,同じ4コアプロセッサであるi7-3770Kに対して前者で約8%,後者で約3%のスコア差を付けた。Ivy Bridge比では若干の性能向上があった,といったところか。

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 演算性能そのものからは少し離れて,グラフ4はコア間のデータ転送レートをテストする「Multi-Core Efficiency」の結果である。
 i7-3970Xでは,CPUコアとL3キャッシュとを結ぶリングバス(Ring Bus)が二重化されているため,i7-4770K比で約45%高いスコアを示すのは納得といったところだが,i7-4770Kは,アーキテクチャ解説記事にもあるとおり,L3キャッシュとCPUコアを結ぶリングバスの帯域幅が拡大されたことで,i7-3770Kからおおむね10%弱のスコア向上が見られる。Intelが公開している資料を見る限りは,L2とL1もIvy Bridgeと同等か,高いスコアが出るはずなのに,「4x 64kbytes」など,いくつかの項目でスコアが下がっているが,正直,これの理由はよく分からない。
 なお,スコアの詳細は表3にまとめたので,合わせて参考にしてもらえればと思う。

画像集#039のサムネイル/「Core i7-4770K」&「Core i5-4670K」レビュー。デスクトップPC向けHaswellはゲームで速いのか
※単位:GB/s
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 メモリおよびキャッシュ周りのレイテンシを見る「Cache & Memory Latency」の結果がグラフ5だ。ここでは縦軸がレイテンシとなるため,スコアは小さいほうが高速となる点に注意してほしい。

 i7-4770Kのスコアで注目したいのは,メモリコントローラのレイテンシが下がっていることだが,これもアーキテクチャ解説記事で触れてあるとおり,Haswellではロード/ストアの効率が引き上げられているので,これは妥当な結果といえるだろう。
 一方,L3キャッシュのレイテンシが若干上がった理由は分からないが,帯域幅を増やす方向の最適化を行った結果として,レイテンシが若干犠牲になった……という可能性は考えられる。
 こちらもスコアの詳細は表4にまとめたので,興味のある人は合わせて確認してほしい。

画像集#040のサムネイル/「Core i7-4770K」&「Core i5-4670K」レビュー。デスクトップPC向けHaswellはゲームで速いのか
※単位:ns
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 先ほどMulti-Core Efficiencyのスコアを見たときに,L1&L2キャッシュは強化されているはずと述べたが,それはキャッシュとメインメモリの帯域幅を見る「Cache Bandwidth」の結果だとはっきり確認できる(グラフ6)。そのスコアはi7-3770Kの2倍近く,i7-3970Xよりも20〜30%程度高い。L3キャッシュの範囲に収まる「2MB Data Set」で例外的にi7-3770Kよりもスコアを落とすのは解せないが,総じてキャッシュおよびメモリ周りでは帯域幅が向上していると断じてよさそうだ。
 なお,表5はスコアの詳細となる。

画像集#041のサムネイル/「Core i7-4770K」&「Core i5-4670K」レビュー。デスクトップPC向けHaswellはゲームで速いのか
※単位:GB/s
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 メインメモリに絞って帯域幅を確認する「Memory Bandwidth」の結果がグラフ7だ。クアッドチャネルアクセスとなるi7-3970Xが突出しているのをさておくと,i7-4770Kがi7-3770Kを若干上回る結果となっており,ここは「Cache Bandwidth」のスコアを踏襲したスコアになっているといえそうである。

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ゲームを前にしたCPU性能はIvy Bridgeとほぼ同じ

Intel 8シリーズのBIOS最適化はまだこれからか


 4Gamer的な本題であるゲーム性能に話を移そう。
 ここからはi7-4770K@4.3GHzとi5-4670Kにもご登場いただくが,グラフ8に示した3DMarkの結果は気になるものとなった。3DMark自体がマルチスレッド処理へ高度に最適化されているため,6コア12スレッド対応のi7-3970Xが定格動作するなかでは最も高いスコアを示し,また4コア4スレッド対応のi5-4670Kがスコアを落とすというのはまったくもって妥当なのだが,問題はi7-4770Kとi7-3770Kの力関係だ。i7-4770Kはi7-3770K比で約97.5%のスコアに留まっているのである。これはどうしたことだろう?

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 その理由は,3DMarkの詳細スコアをまとめた表6を見ると説明がつきそうだ。というのも,まったく同じグラフィックスカードを用いた比較で,i7-4770Kのスコアがi7-3770K比で約97.3%に留まっているからである。CPU性能の比較である「Physics Score」でi7-4770Kがi7-3770Kとほとんど同じスコアにまとまっていることからしても,3DMarkのスコアで生じたスコア差はマザーボードによる違いによるものと見てよさそうだ。
 これがIntelとASUSTeK Computerの違いによるものなのか,出たばかりのZ87マザーボードと,十分に“枯れた”「Intel Z77 Express」マザーボードの違いなのかはなんとも言えないが,Z87マザーボードにハードウェア,ソフトウェア(≒UEFI)的に最適化の余地が残っているのは間違いなさそうである。

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 なので以下,その点を踏まえて話をしていくことになるが,「Far Cry 3」だと,最もCPU性能が影響する1280×720ドットでi7-4770Kとi7-3770Kのスコア差は10%以上に開いてしまった(グラフ9)。4コアをすべて4.3GHzで動作させるi7-4770K@4.3GHzはさすがに順当なスコアの伸びを示すが,定格動作でのスコア差はさすがにちょっと気になるところである。
 なお,i5-4670Kのスコアが最も高く,i7-3970Xのスコアが最も低いのは,異常ではない。ゲームのように,マルチスレッドに対応すれども全面的な最適化がされていたりしないアプリケーションでは,HTTを無効化した4コア4スレッド対応のCPUのほうが高いスコアを出すことが多いのだ。ちなみにこれは,4Gamerで行ってきた過去のCPUレビューでも出ていた傾向だったりする(関連記事)。

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 一方,グラフ10の「Crysis 3」は,さすが最新世代の「CryENGINE」採用タイトルというか,スレッド数に応じたスコアになった。
 もっともご覧のとおり,標準設定でも十分にグラフィックス描画負荷が高いため,CPUごとのスコア差はほとんどない。なので「今回テストに用いたCPUなら,どれを選んでも同じ」という見方のほうがより正しい。

画像集#045のサムネイル/「Core i7-4770K」&「Core i5-4670K」レビュー。デスクトップPC向けHaswellはゲームで速いのか

 「BioShock Infinite」のスコアは「6コア12スレッド対応だとオーバースペック過ぎるが,4コア8スレッド対応まではおおむねスペックどおり」というものになっている(グラフ11)。ここでも「Maximus V GENE」と組み合わせたi7-3770Kのスコアが良好だ。

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 グラフ12に示したSkyrimにおけるスコアの傾向はFar Cry 3と同じになった。i5-4670Kが頭一つ抜け出し,一方でi7-3970Xはスコアを大きく落としている。
 i7-4770K@4.3GHzがi5-4670Kの後塵を拝しているというのはなかなか示唆的である。

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 「SimCity」のテスト結果をまとめたグラフ13は,BioShock Infiniteを踏襲するものとなった。i7-4770Kとi7-3770Kはほぼ同じスコア。i7-4770K@4.3GHzは2製品と比べて1600×800ドット以上で若干高めのスコアを示すが,体感できるようなレベルではない。

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 Haswellにとってのベストケースとなったのが,グラフ14にスコアをまとめた「F1 2012」である。i7-4770Kはi5-4670と一緒になってi7-3770Kに4〜9%程度高いスコアを示した。Haswellにおけるキャッシュやメモリ周りの改良がゲームにおいてもスコア差を生む可能性があることが,このデータからは見て取れよう。

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アイドル時の消費電力が

Ivy Bridgeより下がったHaswell


 i7-4770KのTDPは84Wで,i7-3770TKの77Wから多少なりとも増大しているが,実際に消費電力は増えているのだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみることにした。
 テストにあたっては,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,システムに負荷をかけ続けるストレスツールの「OCCT」を30分間実行し続けた時点を「高負荷時」としている。

アイドル時はコアクロックが800MHzまで低下するなど,Haswellでもその挙動はIvy Bridgeと変わりない
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 その結果がグラフ15となるが,プロセスルールが1世代古くCPUコア数も多いi7-3970Xが突出する形となったとのをさておくと,アイドル時の消費電力において,i7-4770Kがi7-3770Kよりも12W,i5-4670Kが13W低い結果となった。もちろんマザーボードが異なり,とくに今回はフォームファクタすら異なる――DZ87KLT-75KはATX,Maximus V GENEはmicroATX――ので,直接の比較を行うのはなかなか厳しいのだが,基板サイズの小さなMaximus V GENEのほうが消費電力的には有利と思われるだけに,このスコアには相応の意味があると述べていいのではなかろうか。
 一方,高負荷時の消費電力は4条件でほぼ同じ。i7-4770K@4.3GHzの消費電力がi7-4770Kから大して上がっていない点は注目してよさそうだ。昇圧を伴わないオーバークロックなら,消費電力の増大量は最小限に抑えられそうである。

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 アイドル時と高負荷時に,モニタリングツールの「HWMonitor Pro」(version 1.16)からCPUの温度を取得した結果がグラフ16となる。テストにあたって,システムは,24℃の室内で,PCケースに組み込まず,バラック状態に置いてある。

 ここではi7-4770K@4.3GHzの温度が極端に低いが,これは前述のとおり,このテスト条件だけCPUクーラーにSilver Arrow SB-E Extremeを用いているためだ。
 i7-4770Kのスコアは,アイドル時,高負荷時ともi7-3770Kより若干低め。ただし,マザーボードが異なることを踏まえると,ほとんど同じと見るのが妥当だろう。

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CPUの基本性能は向上もゲーム性能はほぼ現状維持

省電力性の向上は大きなメリットになり得る


 以上のテスト結果から言えることは,

  • デスクトップPC向けHaswellでは基本性能がデスクトップPC向けIvy Bridge比で確実に向上した
  • しかし,それはゲームを前にすると大きなメリットにならず,ゲーム用途での性能はほぼ現状維持となる
  • ハードウェア,もしくはUEFIレベルでIntel 8シリーズには最適化の余地がある
  • アイドル時の省電力性はデスクトップPC向けIvy Bridgeよりさらに高まった

といった感じである。もっとはっきり言うと,Sandy Bridge世代以降のCore i7&i5上位モデルをベースとしたゲームPCを構築しており,そのCPU性能に満足しているなら,買い換える理由はあまりない。“CPUパッケージ変更のターン”で,マザーボードごとシステムを入れ替えねばならない割に,得られるメリットが大きくないからだ。

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 ただ,Sandy Bridgeより前の世代のシステムを持っている人や,競合製品を持っている人が乗り換える対象としてのHaswellには魅力が多い。性能は間違いなく高くなり,省電力性は確実に向上しており,さらにチップセットレベルで提供される機能も最新のものになっているのだから,選んで後悔することはないだろう。
 Ivy Bridgeがいつの間にかSandy Bridgeを置き換えたように,Haswellもおそらくそうなるはず。そして,これからゲーム用のデスクトップPCを手に入れようと考えている人達が「真っ先に検討すべきIntel製CPU」の座を,これからしばらくの間,占め続けることになるはずだ。
 どうしても最上位モデルでなければイヤだというのでなければ,ゲーム用としては,i5-4670Kがけっこうオススメである。

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    Core i7・i5・i3-4000番台(Haswell)

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