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印刷2012/09/29 00:00

インタビュー

そもそも表現というのは,全部タイムトラベルなんですよ――「タイムトラベラーズ」の原点は,「時をかける少女」にあり!? 大林宣彦監督の思想にイシイジロウ氏が迫る

 レベルファイブが発売中の「タイムトラベラーズ」PlayStation Vita / ニンテンドー3DS / PSP)は,タイムトラベルというモチーフを,ストーリーの中だけでなく,ゲームシステムそのものにも組み込んだSFアドベンチャーゲームである。
 物語では2031年4月の東京を舞台に,謎のテロリスト「スケルトン」が目論む東京の消滅を,5人の主人公がいかにして阻止していくのかが,それぞれの視点を通じて描かれている。そしてこの物語において最も大きな鍵となるのは,新道みことという高校3年生の少女である。

 高校生の少女が物語の鍵を握るタイムトラベル作品というと,多くの人が筒井康隆氏の小説「時をかける少女」を思い出すのではないだろうか。とくに,この小説を原作に1983年に大林宣彦監督がメガホンを取った原田知世主演の同名映画は,ある年代以上の男性に大きな衝撃を与えたと言われている。
 実はタイムトラベラーズのディレクターを務めたイシイジロウ氏も,その一人だ。イシイ氏にとって,中学生時代にこの作品に出会ったことが,ゲームクリエイターとして生きることになった一つのきっかけであるそうだ。

大林宣彦監督イシイジロウ氏

 今回4Gamerは,ゲームにはほぼ接することなく生きてきたという大林監督と,イシイ氏による対談に立ち会う機会に恵まれた。
 話題は,「映画とは?」「表現とは?」「映画が持つゲーム性とは?」「タイムトラベルとは?」,そして「タイムトラベラーズと大林監督の最新作『この空の花 ―長岡花火物語』の共通点とは?」など多岐にわたっため,記事のボリュームもなかなかのものになったが,お二人のファンや,タイムトラベルに興味のある人,映像表現における演出技法に興味のある人ならば,楽しめる内容になっている。ぜひ最後までお読みいただきたい。

大林宣彦監督作品「この空の花 ―長岡花火物語」公式サイト

「タイムトラベラーズ」公式サイト



「時をかける少女」を観て

自分でも映画を作りたいと考えた(イシイ氏)


イシイジロウ氏(以下,イシイ氏):
 実は……はじめましてじゃないんですよ(と,一枚の写真を取り出す)。


大林宣彦監督(以下,大林監督):
 これはずいぶん昔ですね。自分が着ているものに記憶がないもの。

イシイ氏:
 確か1987年です。兵庫県伊丹市で第一回の伊丹映画祭という催しがあって,私が19歳ぐらいの頃,そこでスタッフをやっていたんです。そのときにお願いをして一緒に写真を撮っていただきました。

大林監督:
 ほー,そうでしたか。息子みたいに若いですね(笑)。

イシイ氏:
 あれから20年以上経って,こういう形でお目にかかることができて,とても光栄に思っています。

大林監督:
 こちらこそ。

イシイ氏:
 実は私自身,中学生の頃はアニメが好きで,いつかアニメを作る仕事をしたいと思っていたんですね。実際の人間を動かすより,絵を描いているほうが好きなタイプだったので。でも大林監督の「時をかける少女」(1983年公開)を観て,「実写を作るのも凄く面白そう」と初めて思ったんです。とにかく自分でも映画を作りたいと考えるようになって,8mmカメラを買ったりして……紆余曲折を経てゲームの道に入りました。
 そして先日,「タイムトラベラーズ」という,タイムトラベルを題材にしたソフトを作ったんです。この作品って,時をかける少女がなかったら,生まれなかったソフトなんです。そこで今回は,時をかける少女やタイムトラベルのこと,大林監督の最新作「この空の花 ―長岡花火物語」(以下,この空の花)のことなどを,いろいろとお聞きしたいと思って,やって来ました。

大林監督:
 はい,分かりました。
 実は先ほど,タイムトラベラーズのプロモーションビデオを観させていただいて,凄くびっくりしたんですよ。今のゲームは,こんなことになっているのかと。
 というのも,僕はこういう映画を作っている人間だから,20年以上前にゲームのプロデューサーから,いいアイデアはないかと相談を受けていたことがあるんです。

4Gamer:
 え,そうなんですか?

大林監督:
 ええ。ただそのときは,「一に大事なのは“心理”であり,表現としては心を宿す“残像”である」というような話をしたら,そこで終わっちゃったんです(笑)。
 なので,ゲームというものは,心理とか残像といったものとは関係ない世界なのだろうと思ったまま,今日までまったく縁がなかったんです。僕は何事もオール・オア・ナッシングで,何かを始めると徹底的にのめり込むんですけど,知らないものは知らないまま生きてしまうので。

4Gamer:
 20数年も前だと……確かに大林監督のおっしゃるような表現は難しかったでしょうね。

イシイ氏:
 ゲーム機の性能や技術的な問題もあって,その時点では作り手にできることも限られていましたから。

大林監督:
 それがね,こうしてプロモーションビデオを観てみると,僕が思っていたゲームとは違うんです。いつの間にか,こういうことになっていたのかというところに,まず驚きました。
 ゲーム機で観る動画は,秒何コマで動いているんですか?

イシイ氏:
 一応,60フレームまで出るようになっています。
 ではせっかくなので実機でご覧ください。

大林監督:
 つまり,1秒に対して60枚のソースがある?


イシイ氏:
 基本的にはそうですが,登場人物が大勢出てくるシーンでは,30フレームに落としたりしています。ちょうど実写の高速撮影でも,暗くなると秒30コマしか撮れなくなるとか,そういうイメージですね。

大林監督:
 つまり動画としては,かなりリアルに動くわけですね。

イシイ氏:
 はい。ただ,動きだけではなく,気持ちとしては監督が作られてきた映画と同じように,人を感動させるには? 驚かせるには? 何かを心に残すには? という気持ちを込めています。


誰かが決めた不自由な「映画」の便法

そこから外れるものを作ってきた(大林監督)


4Gamer:
 イシイさんは,例えばカメラワークや演出などに関して,大林監督の作品から影響を受けている部分はありますか?

イシイ氏:
 いやぁ,大林監督の演出手法って難しいんですよ。ハリウッドライクなもののほうが,むしろ技術的には分かりやすくて真似しやすいぐらいで。
 例えばタイムトラベラーズの冒頭では,大林監督が映画に入れる「A MOVIE」への敬意を込めて,「A GAME」と表示させていますが,どうやってもそういうもの……凄く分かりやすいオマージュになってしまうんですよ。だからどうしても,影響を受けたなんて簡単には言えないですね。
 僕が大林監督から与えられた感動を,どうにかして今の若い人達に伝えられないか……という気持ちは持っているつもりなんですけど。

大林監督:
 なるほどね……。僕の作るものは,そういう意味では皆さんがおっしゃるような「映画」でもないですからね。

4Gamer:
 え,それはどういう意味ですか?

大林監督:
 つまりね,「映画」というのは2時間程度の劇映画か,短編と長編を含めたドキュメンタリーという,二つのジャンルだけになってしまっているんです。これ以外だと,せいぜい「文化映画」であるとか。
 これは,お客さんがおとなしく座って観ていられる時間が2時間程度だろうとか,行き帰りの交通の便を考えたらこれぐらいの長さがちょうどいいだろうとか,あるいは一日に何回上映すればいくら稼げるとか,そういう興行的な理由が先にあって決まっていったものなんですよね。
 でも……,そんなの誰が決めたの? って,僕は思うわけ。

4Gamer:
 そこに違和感があるということですね。

大林監督:
 僕の場合,我が家に映写機があったから,映画館で映画を観るようになる前に,映画を作り始めているんです。だから,「映画」という興行や上映の制度からは何も学んでません。
 つまり,僕のお師匠さんは,エジソンなんですよ。エジソンが映写機というものを発明してくれたから,僕は映画を撮っているんです。エジソンが発明したときの映画には,さっき言ったようなルールなんて何もないでしょう?
 1秒のものがあってもいいし,100時間のもの,あるいは一生観続けるものがあってもいい。劇やドキュメンタリーだけじゃなく,論文があっても,俳句があっても,和歌があっても,詩があってもいいんです。そういう可能性が映画にはあるはずなのに,今は商業的な意味での「映画」ばかりになってしまっている。そのことが,僕にとってはとても不自由なんですよ。

イシイ氏:
 テクノロジーから直接アイデアを作っていくという姿勢は,ゲーム制作にも似た要素がありますので,よく分かります。

大林監督:
 だから,この空の花にしても,時をかける少女にしても,いわゆる商業映画という形,「映画」としての文法にはとらわれていないんです。
 例えば,劇映画は物語を客観的に観るものだから,レンズ目線なんて絶対にダメだし,7:3の構図が美しいとされています。目線にもイマジナリー・ラインというものがあって,Aという人とBという人が向かい合っているシーンを撮るときは,Aがキャメラの右を向いて,Bがキャメラの左を向く。そうすることで向かい合っているように見える,と。こういうのは,文法というより便法に過ぎないし,便法の中で撮るというのは非常に不自由だと思うので,それを外したところで自分は映画を作り続けてきました。
 でもお客さんって実は,文法や便法なんて気にしないんですよね。

イシイ氏:
 大林監督の作品を観ていると,強烈に引き付けられる部分がありますが,確かにそれは映画の文法――というより便法ですが――それを外している部分だったりします。

大林監督:
 こういう風に,僕の映画はあまりに自由だから批評家が認めなかったけど,観客は「僕の気持ちにぴったりだ」と受け止めてくれたので,これまで映画を撮り続けることができたんです。
 そういうことがあるから,僕は「映画監督」とは名乗らないで,「映画作家」と名乗っているんですよ。

4Gamer:
 批評家が認めない,というのはどういうことなんですか?

大林監督:
 商業的なルールや批評というジャンルから,はみ出してしまうんでしょうね。
 でもね,僕は僕という個人の芸術を作っているから,誰の「映画」にも似ないし,僕の映画を批評することは僕という人間を批評するようなものだから,放っておいてくれていいんですよ。僕は僕でしかないんだから。


そもそも表現というのは

全部タイムトラベルなんですよ(大林監督)


4Gamer:
 以前,ゲームのプロデューサーから相談を受けることになったというのも,「映画」の文法や便法にとらわれない大林監督だからこそ,だったのかもしれませんね。

大林監督:
 ゲームを含め,新しいジャンルを開発しようという人は,僕の発想にヒントがあるんじゃないかと思うのかもしれないですね。
 ただね,僕にとって映画は,もともとゲームなんです。そしてゲーム性というのは,タイムトラベルそのものなんですよ。

4Gamer:
 えっ!?

大林監督:
 つまりゲームって,遊ぶ人が時空間を掌握できるものでしょう? 映画も,目線を一つずらすことだけで時空間が変わるんです。これは「映画」の文法にもあること。
 例えば,松竹は“家庭の和”を描く映画会社で,登場人物の目線がぴたっと合えば,それで家庭円満が描けるんです。ところが小津安二郎さんのような,商業映画の監督というよりは,やっぱり映画作家とでもいう人達は,そこで目線をずらすことで,家族の崩壊を描いてしまう。これは,便法を逆利用して,シナリオにはないドラマを描くといういたずらをやってるわけです。
 小津風のずらし方も,松竹映画の文法どおりの「映画」も,一つの表現方法だとは思うんですけど,そこからさらに違うことをやってみたい。そうなると,この空の花みたいになってくると。

4Gamer:
 タイムトラベルが異なる時空間を描くものであるとするならば,それはSF的なタイムトラベルだけに限った話ではないということですか?

大林監督:
 ええ。そもそもね,僕は実写もアニメも,ジャンルに分けて考えないんですよ。絵で描くからアニメーションで,実写で撮るから実写映画というのも,極めて不自由な分け方でね。
 映画っていうのは,動かない写真が何枚も積み重ねられることで動く,つまりアニミズムというものですね。そして動かないものに命が与えられて動くのが,アニメーションであるという言い方をしてしまえば,映画はアニメーションでしょう。さらに,時空を超えるという意味では,タイムトラベルでもあるんです。

4Gamer:
 そこでいう,タイムトラベルの定義について,もう少し教えてください。

大林監督:
 そもそも表現というのは,全部タイムトラベルなんですよ。俳句だって,たった17文字で宇宙まで描いている。
 「古池や 蛙飛び込む 水の音」という俳句に出会ったとき,その音が今日なのか昨日なのか,明日なのか10万年前なのか,100万年前なのか,それはそれぞれが思い描くわけでしょう。芭蕉がこの句を発表したのが1686年だから,その頃のことだ! なんて思うことには,何の意味もない。

4Gamer:
 現象を説明しているわけではないですしね。

大林監督:
 これが世界中の人々の心を打つのは,時空を超えているからなんです。つまり表現者というのは,時空の事実を見るのではなく,時間というものが持っている正体というか,真(まこと)というかね,そういうものを見つけて残すことが使命なんです。それを受け取った人は,その表現と対話することで,自分自身も時空間を超えることができる。
 例えば,今,病気で命が尽きようとしている人が,「自分の命も永遠である」という希望を持てるかもしれない。「自分がここにいるのは,戦争で生き残った人,震災で生き残った人達がいるからである」という,命のありがたさを見つけるかもしれない。そういうことが,たった17文字から感じ取れるんです。
 僕の映画は,どれもタイムトラベルがテーマになっているんですけど,別に意図的にタイムトラベルものを作ろうと思っているわけではないんですよ。

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