プレイレポート
[iPad]ゲームプラットフォームとしての可能性を検証,待望の国内発売まで1週間を切った話題のタブレット型端末iPadのインプレッション
国内発売まで1週間を切ったこのタイミングで,iPadの購入を検討している人や,iPadのことをもっとよく知りたいという人,「そもそもiPadってなんなの?」という人のために,あらためてiPadとはどんなデバイスなのか,ゲームマシンとしてどうなのかといったトピックについて,実機に触れたインプレッションを交えつつ紹介していこう。
iPadはどんなデバイスか,ざっくりおさらい
同社の発表文にもあるように,iPadは,Webの閲覧やメールのチェックのほか,音楽/映画を鑑賞したり,ゲームや読書を楽しんだりもできるデバイスだ。
とはいえ,同社はiPadを,Netbookを含む“一般的なPC”とは異なるカテゴリに位置づけている。採用されているOSはiPhone OSであり,“一般的なPC”のような感覚では操作できない点には注意する必要があるだろう。
資料によると,本体のサイズは約242.8×189.7mmで,A4サイズより一回り小さいくらいの大きさだ。マルチタッチに対応した9.7インチLEDバックライトディスプレイが,上面の8割ほどを覆っている。
厚さは約13mmで,下に掲載したiPhone 3Gとの比較写真からも分かるように,見た目には,iPhoneを厚みを変えずに引き伸ばしたといった印象。サイズが大きい分,かなり薄く感じられる。
実は私自身,実機に触れる前は全体の強度に不安を覚えていたのだが,思いのほか頑強だ。まあ,これだけの面積を持った液晶がむき出しになっているわけだし,画面を保護するケースなどは用意したほうがよさそうだが。
iPadには,Wi-FiモデルとWi-Fi+3Gモデルの2種類がある。重量は,前者が約680g,後者が約730gとなっており,数字だけ見ると軽そうに思えるかもしれない。しかし実際に手にしてみると,割とズッシリとした重さが感じられる。
例えば,iPadを片手で持ったまま長時間作業し続けるのはシンドいし,やはり落とすのが怖い。できるだけ,机やひざなどの上に置いて使いたいところだ。
Wi-Fiモデルは無線LAN,Wi-Fi+3Gモデルは無線LANおよびHSDPAネットワークを介してインターネットに接続する仕様になっている。
編集部が入手したiPadは,総務省による技術基準適合証明を取得していない米国版であり,電波法に抵触する可能性があるため,インターネットに接続してのWeb閲覧などは行っていない。この点はご容赦いただくとともに,国内版iPadでWebサイトを覗いたり,YouTubeで動画を楽しんでみたりするのが今から楽しみであることを付記しておこう。
さて,iPadの大きなウリの一つに,膨大な数のアプリが用意されていることが挙げられる。「iPadは面白そうだけど,結局何ができるの?」と思っている人は多いかもしれないが,すでにApp Storeで販売されている14万種ともいわれるiPhone/iPod touchアプリの大部分が,そのまま利用できるのだ(詳細は後述)。
もちろん,既存のアプリをiPadに最適化し直したものや,一からiPad向けにデザインされた専用アプリも多数登場しているので,iPadの購入直後から存分に楽しめるだろう。
さっそくゲームをインストールして遊んでみた。このプレイフィールはかなり新鮮
iPadを箱から出したら,まずはPCと接続し,iTunesとの同期を行う必要がある(iTunesを利用したことがない場合,PC/MacへのiTunesのインストールと同期が必要)。すでにiPhone/iPod touchを持っている人は,それらと関連づけられているiTunesと新たにiPadを関連づければ,iPhone/iPod touch用のゲームタイトルやアプリケーションが自動的に転送される。もちろん,あらかじめ入手しておいたiPad専用アプリケーションも,同様に転送可能だ。
というわけで,同期が完了したあと,さっそくiPhone/iPod touch用ゲームやiPad専用ゲームを遊んでみた。ジャンル別に,iPadに最適化された作品をいくつかピックアップして紹介しつつ,そのプレイフィールをお伝えしよう。
なお,それぞれの価格は5月21日時点のものなので,ご注意を。
<レーシング/フライトシム>
○Need for Speed SHIFT for iPad(1200円,Electronic Arts)
○Asphalt 5 HD(800円,ゲームロフト)
○Real Racing HD(1200円,Firemint)
○X-Plane for iPad(1200円,Laminar Research)
なかでも,フライトシミュレータの「X-Plane for iPad」では,テクスチャの緻密さが4倍に向上しているとのことで,空中戦の要素はないが,美しい景色を眺めながらの遊覧飛行が満喫できる。
Need for Speed SHIFT for iPad | |
Asphalt 5 |
ただし,標準で,画面上に表示されているブレーキ/アクセルボタンを指で押す方式が採られている「Need for Speed SHIFT for iPad」では,ゲームに夢中になり,ブレーキのつもりでアクセルを踏んでしまうといったことがあった。
iPhone/iPod touchと同様,方向キーやボタンが用意されていないiPadでは,レーシングゲームに限らず,このあたりの操作性の問題はどうしても起こり得る。
また,ある程度の重さがあるデバイスなので,持ち上げた状態で長時間遊ぶのはつらいと感じる人もいるかもしれない。私自身は,iPadを持つ両手を机の上に乗せることで対処しているが,私の小学生の子供達(11才と6才)はiPhoneで遊び慣れている分,それでもちょっと重く感じている様子だ。
ちなみに,これらのゲームを30分以上にわたってプレイしても,iPad本体はほとんど熱くならなかった。個人差はあると思うが,手のひらが汗ばんで,iPadが滑り落ちたりする心配はなさそうだ。
「Need for Speed SHIFT for iPad」紹介ページ(iTunesが起動します)
「Asphalt 5 HD」紹介ページ(iTunesが起動します)
「Real Racing HD」紹介ページ(iTunesが起動します)
「X-Plane for iPad」紹介ページ(iTunesが起動します)
<アクション/シューティング>
○Mirror's Edge for iPad(1500円,Electronic Arts)
○N.O.V.A. -Near Orbit Vanguard Alliance HD(800円,ゲームロフト)
○Tap Tap Radiation(無料,Tapulous)
iPhone/iPod touch向けにはリリースされていない“新作”という点でも,iPadゲーマー要注目の1本だ。
レーシング/フライトシムのところで指摘した,インタフェースの問題については本作でも同様で,逃げたいのに動いてくれず,よく見ると指がコントローラ以外の場所に触れていた……といったことが何度かあった。ただ本作では,各インタフェースの位置を微調整する機能が用意されているので,コントローラやボタンをより操作しやすい場所に置くことで,ある程度は押し間違いを解消できるだろう。
慣れてくれば,iPadを両手で持ち,左右の親指で操作できるようになるし,iPadを机に置いて,左右の人差し指などで操作するのもオススメだ。
なおiPhone/iPod touch版では,視点を変えようとすると,指や手が邪魔で画面がよく見えないといったことが起きたりするが,iPad版ではほとんど支障を感じなかった。
これまでのシリーズ作品では,レールに乗って流れてくるシンボルを,リズムに合わせてタップしていく方式が採られていたが,本作ではシンボルがさまざまな方向から飛んでくるうえ,タップすべき場所が移動したりもする。
アプリ自体は無料で,5曲をプレイできるので,この手のゲームが好きな人は,ひとまずダウンロードして遊んでみるといいだろう(追加楽曲が有料販売されている)。
「Mirror's Edge for iPad」紹介ページ(iTunesが起動します)
「N.O.V.A. -Near Orbit Vanguard Alliance」紹介ページ(iTunesが起動します)
「Tap Tap Radiation」紹介ページ(iTunesが起動します)
そのほか,個人的に楽しんでいるアクション/シューティングジャンルのゲームから,3作品のスクリーンショットを下に掲載しているので,眺めてみてほしい。
<ストラテジー/シミュレーション>
○COMMAND & CONQUER RED ALERT for iPad(1500円,Electronic Arts)
○Galcon Fusion(900円,Hassey Enterprises)
ストラテジーやボードゲームは,机に置き,画面に触れて操作できるiPadというデバイスによくマッチしたジャンルではないかと思っている。iPadを入手する前から,個人的にかなり期待していたジャンルの一つだ。
まず最初にピックアップした「COMMAND & CONQUER RED ALERT for iPad」は,Electronic Artsの人気RTSをiPadに移植した作品。画面に直接触れることで,マップのスクロールや拡大/縮小,ユニットの選択,そして攻撃目標の指示といった操作が行える。
もう一つの「Galcon Fusion」は,iPhone/iPod touchのほか,WindowsやMacなどに向けてリリースされているシンプルなRTS「Galcon」の続編にあたる。三角形のシンボルで表現された艦隊をほかの惑星に送り込んで占領していき,相手を全滅させるという内容で,ゲームはリアルタイムに進行するため,すばやい判断と的確な操作が重要だ。指でパパパッと操作しながら,マップ上の星を徐々に征服していく楽しみを,味わってみてほしい。
このジャンルのゲームとして,もう1作,「Warpgate HD FREE」という作品のスクリーンショットを下に掲載したので,そちらもご確認を。
ところで,先ほどN.O.V.A. -Near Orbit Vanguard Alliance HDの段でも指摘したが,iPhone/iPod touch用ゲームでは,操作を行っている指や手が画面を隠してしまうことが問題として指摘される場合がある。特定のユニットだけ選択したり,攻撃目標を正しく指示したりする必要があるストラテジーでは,このあたりの操作ミスが勝敗を左右しかねないからだ。
もちろんiPadでも,画面の上に手をかざせばその下の部分が確認できなくなるのは同様だが,COMMAND & CONQUER RED ALERT for iPadを遊んでみた限り,画面が広いおかげでiPhone/iPod touchほど支障は出ない。ユニットを選んだり,攻撃目標を設定したりするのも,より正確に行える印象である。
「COMMAND & CONQUER RED ALERT for iPad」紹介ページ(iTunesが起動します)
「Galcon Fusion」紹介ページ(iTunesが起動します)
<パーティゲーム>
○「PartyPlace - Marble Mixer for iPad」(230円,GameHouse)
最後に,1台のiPadを囲み,複数のプレイヤーで対戦できるタイプの作品を紹介しよう。「PartyPlace - Marble Mixer for iPad」は,画面の四隅からボード中央部のターゲットに向かってビー玉を弾き,合計得点を競い合うという内容で,最大4人でのマルチプレイに対応している。
ターゲットの中央には穴が開いており,そこにビー玉を落とさないよう,弾く力を加減するのがポイントだ。自分のビー玉をぶつけ,相手の玉をその穴に落とすことでも点が入るため,最終的には“玉の落とし合い”の様相を呈することがほとんどで,盛り上がること請け合いだ。
このような“みんなで楽しむタイプ”の作品は,画面サイズが小さいiPhone/iPod touchではどうしても実現しにくく,iPadならではのジャンルともいえる。これからより多くの作品が登場してくるはずなので,期待したい。
ちなみに,iPadを中央に置いて向かい合わせに座り,2分割された画面を使って対戦するアクションゲームなども登場しており,このジャンルにはいろいろな可能性がありそうな気がしている。
「PartyPlace - Marble Mixer for iPad」紹介ページ(iTunesが起動します)
同じゲームのiPhone/iPod touch版を拡大表示した画面と,iPad専用版の画面クオリティはどれくらい差がある?
iPhone/iPod touchアプリをiPadで立ち上げると,初回起動時は,画面の中央部分にiPhone/iPod touchの画面解像度のままのサイズ(480×320ドット)で表示される。このとき,画面右下にある「2x」または「2倍」と書かれたボタンを押せば,画面を2倍に引き延ばした拡大表示に切り替え可能だ。
なお,拡大表示したままの状態でアプリを終了すると,次回起動時は自動的に2倍のサイズで表示されるようになる。
それではここで,上で取り上げたN.O.V.A. -Near Orbit Vanguard Allianceを例に,iPhone/iPod touch版を拡大表示したときの画面と,iPad専用版の画面のクオリティを比較してみよう。
上のスクリーンショットから分かるように,1024×768ドットの解像度に合わせて開発された作品は,やはり格段に美しい。2倍に拡大表示されると,当然ながらゲーム画面が全体的に眠たくなってしまうのだ。
そういった事情により,iPadに最適化されたバージョンがリリースされているなら,それを入手するに越したことはないが,しかし同時に,iPhone/iPod touchゲームがiPadでプレイできる意義は大きいとも思う。というのも,これまでiPhone/iPod touchで遊んできた人ならば,今までに買いためたゲームが大きな画面で楽しめるからだ。
また,今回試したゲームの中には,画面サイズの関係上,iPhone/iPod touchでは操作しづらいのに対し,iPadだと思いのほかプレイしやすく,ずっと楽しめるようになったものもあった。
いわゆる“携帯型ゲーム機”とはまた少し異なる,“手に持って楽しめるゲーム機”だ
それでは,そろそろまとめに入ろう。
“携帯型ゲーム機”として見たとき,iPadというデバイスの特徴の一つは,そのサイズだといえる。画面解像度が高いので,より緻密な画面が楽しめる反面,そのサイズゆえ,いつでも好きな場所で遊ぶという用途には,やや不向きだ。
また,タッチパネルを全面的に採用しているというデバイスの性格上,インタフェースの作り込みがゲームの操作性に大きく関わってくることは,iPhone/iPod touchと同様だ。コントローラやボタンを押している感触がない以上,シビアな操作が要求されるアクションゲームなどをiPadで実現するのは困難な面があるのは否めない。
このような観点から,ニンテンドーDSやPSPは,iPadの直接の比較対象とはならないのかもしれないと感じている。気軽に持ち運んで,いつでもどこでも好きなゲームを遊べるという意味での“携帯型ゲーム機”というより,“手に持って傾けたり,画面に触れたりしながら楽しめるゲーム機”という表現が,個人的にはしっくりくるからだ。
何人かで集まったとき,iPadを囲んで,上で紹介したPartyPlaceをはじめとするパーティゲームに興じるのも,iPadならではの楽しみとなるだろう。
ところで,iPadゲームを購入するうえで一つ悩ましいことは,ゲームの場合,iPad向けバージョンは新作として別料金で販売されるケースがほとんどであること。できれば両方のデバイスで楽しめるようにしたいが,そうすると出費もそれだけ増えてしまうので,ゲームごとにプレイシーンを考え,iPhone/iPod touch版を買うか,iPad専用版にするか決めるといいかもしれない。
ともあれ来週末には,日本国内でも多くの人がiPadでゲームやアプリを楽しんでいることだろう。上で紹介したように,これまでとは異なる新鮮な“ゲーム体験”を与えてくれる,このiPadというデバイスが,日本のゲームファンにどのように受け止められるか注目するとともに,想像を超えた新感覚のゲームが登場することに期待したいと思う。
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