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インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載
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印刷2010/05/01 08:00

業界動向

インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載


クチコミって具体的にどういうものだろう


 プロモーションが売り上げに結びつかない,という話を先にさせていただいたところで,先ほどから何度も名前を挙げている「ラブプラス」を,成功事例として具体的に取り上げてみよう。

画像集#010のサムネイル/インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載
 同作は,まずその奇抜なゲームシステムとコンセプトが,最初の引きとなるトリガーの役割を果たした。それは「バーチャルな彼女」という分かりやすいキーワードとして読者に響き,マーケティングでいう最初の“注目”フェーズをうまく乗り越えた。記事のPV(ページビュー)も最初からそれなりにはあったタイトルであり,全くのノーマークという立ち位置ではなかったタイトルだ。

 しかし,少なくとも4Gamerに掲載されたラブプラスの記事とPVを見ていくと,同作のアクセスが大きく伸びた要因は,むしろその後にあったことが分かってくる。記事を読んだ読者が,開発者の強いこだわりや強烈な熱意を,あるいはレビューを執筆したライターの“異様なテンション”を感じ取り,「これはどうも凄そうなゲームだ」と吹聴して回った効果が大きかったのだ。そして実際に発売された後,プレイヤーは,自分たちが触れて感じた面白さを“説明するための材料”として,4Gamer上に掲載された記事を利用したのである。

 これらは編集部側の勝手な思い込みを書き連ねているわけではなく,時間によるPVの推移や,それぞれの記事へのリンク元のURL,そのリンク元(個人ブログなど)のエントリーが書かれた時間などをすべて照らし合わせた結果現れた,歴然たる事実だ。つまり「ネタ」で引き付けて,話題がうまくユーザーにアプローチできて,事実上のクチコミで情報が伝播していったという,メーカー→メディア→個人メディア→クチコミ爆発,という典型的な例を,カギとなる記事が自社サイトにあったことで目の当たりにしたわけである。

 小さいレベルでの事例であれば,思い当たるものも比較的多くあるが,この規模のものは,ほとんど記憶にない。文頭で触れたように「ネットのクチコミ効果」が目立った2009年の中でも,極めて大きなレベルの事例がこの「ラブプラス」だったのだ。

■ラブプラスの週間アクセス数&売り上げ本数推移
棒グラフが週ごとのアクセス数,折れ線グラフが週ごとの予約/売り上げ本数の推移である。中央付近の濃い色の棒グラフは発売週を表す。発売日の5週間前から,2009年末時点までの推移をひとまとめにしたものだ。ちなみに右の数値は販売本数の目盛りである
画像集#008のサムネイル/インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載

 これを具体的なプロモーション効果に照らし合わせたとき,どういったことが分かるだろうか。
 先に述べた,4Gamerに掲載された「異様なテンション」を持った記事であるが,この記事が「ラブプラス」のプロモーション上で果たした役割は,「告知」だけではなかった。これが極めて重要なポイントだ。ネットメディアの持つ特性,その一つに共感や納得を伝播させる媒体として,ある特定の記事や記述が利用されることが挙げられる。ここではそれを「シンパシー」と呼んでおくが,このシンパシーの共有,つまり特定の記事や記述を利用した共感の広がりが,大きな誌面を割いて掲載される広告以上の効果をもたらすことが多々ある。実は以前から見られた効果ではあるのだが,これが,先の記事の果たしたもう一つの重要な役割である。

 シンパシーの共有といっても,何も特別にややこしいことをするわけではない。最も小さいレベルであれば,とあるゲームのレビュー記事に対してリンクが張られ,「そうそう,まさにこんな感じ」といったコメントが付けられる,といった程度の事例を想定してもらえばよい。
 ゲームを遊んで「これは面白い!」と思ったとき,それが具体的にどう面白いのか。そこをしっかりと文章で説明することは,案外難しいものである。「ネットにおけるクチコミ」の発端を考えるとき,商品の魅力をユーザーがゼロから説明することは,かなりハードルの高いアクションであることに気づく。
 ゲームを実際に遊ぶ側,ゲームへの関心を強く示す側に存在する多くの個人には,不躾ながらそこまでの表現力を内包した文章を書くスキルがないし,それ以前に,そこまで苦労して他人に伝えようとする強い意欲も気概もないのだ。当たり前である。やったところで即座に返ってくるメリットなど何もないのだから。

 ところが,自分の思いを都合良く代弁してくれる記事が見つかったときに,その記事を紹介するだけならば誰にでも容易にできる。ネット上で「シンパシー」が感じられる記事を見つけたとき,ユーザーは,自分の感じた「面白い!」「これはすごい!」という感情を,ちょっとしたコメントとリンクだけで,場合によってはメッセンジャーやTwitterにURLを貼り付けるだけで,多くの人に正確に伝えることができる。
 つまり,ネット上に優れた記事(=レビューや掲示板の書き込みなども含んだ,自分で正確に説明しないで済む何か)があることが,このように「クチコミ」のアクションを取るための“配信コスト”(労力的なコスト)を下げる効果をもたらし,その結果,対象がより話題に上りやすくなる……という側面があるのだ。これこそが,情報の共有/伝播がたやすいネットメディアならではの特性であり,これからのプロモーションにおいて重要な意味を持つはずの要素である。

 クチコミとひとことで言っても,その形は千差万別である。莫大な時間を使ってファンサイトを立ち上げる人もいるし,多くの人に読まれる優れた批評を書く人もいる。あるいはレビューサイトに自身の考えを投稿するやり方もあるだろう。しかし忘れないでほしいのは,掲示板の書き込みや日記の投稿,メッセンジャーでの会話や Twitter上でのつぶやきなど,インターネットにおけるクチコミの多くは「軽い」ものであることだ。
 クチコミを広めるうえで必要な要素とはなにか。さらにそのクチコミに良い情報(リスペクトできる情報)を絡めさせるにはどうすればよいのか。クチコミという単語が持つ流行言葉的な意味合いに惑わされず,ユーザーにとってもメーカーにとっても「良い状態」になるような策が,今後ますます重要度を増していくことだろう。

2010年夏に発売が予定されている「ラブプラス+」(ラブプラスプラス)。更なる広がりを見せることができるだろうか
※画面は開発中のものです
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インターネット時代における「ゲームメディア」の役割


 グローバル化やオンラインへの対応,最近であれば,iPhoneやソーシャルゲームなどの新しいマーケットへの進出など,昨今のゲーム会社は,以前にも増して劇的に変化していく時代への対応を求められている。そしてもちろん,我々ゲームメディアという存在にもまた,時代に合わせた変化が求められていることは明白である。
 ユーザーが自由に情報を発信できる「1億総メディア」という時代における,商業のゲームメディアに求められる役割とはなにか。核となる情報とその広がりに関する考察を述べたところで,現在,我々メディアがどう振る舞うべきかを考えてみたい。

おかげ様で,4Gamer.netも今年で10周年。これからも“より便利なゲーム情報サイトのあり方”を模索していきます
画像集#015のサムネイル/インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載
 「考えてみたい」という話の割には,始まりが手前味噌な話で恐縮だが,4Gamerは2010年で設立10年を迎える。移り変わりの激しいWeb業界では,老舗と言われてもおかしくはない年月を経たメディアとなることができた。

 しかし,我々には伝統も格式もない。
 それは,悪い意味でのアピールではない。4Gamerは10年前,紙メディアの慣習を廃することをもってスタートを切って以降,今日まで,時代に対応し,時代の要請に沿ったあり方を意識し,変わり続けてきた。かつての美徳であった「不変」は悪でしかないのである。媚びへつらう意味での迎合ではなく,時代に求められるメディアの姿を見極めることに努めながら,10年の間,形を変え,対象を変え,必要とされ続けたという自負を持った上での自己紹介である。

 我々自身のそういった動き方に照らし合わせながら,昨年(2009年)の動向を見たとき,改めて強く認識したのは,ゲームメディアは「メーカーとユーザーの架け橋」であるべき,という基本的概念だった。それはつまり,先に挙げた「リスペクト」に値する要素を見極め,それを読者に喚起させる仕組みを用意する,言い換えれば,「シンパシー」を広げる媒介たる存在に「なっている」ことの必要性でもある。
 こう書くと新しい概念のようにも見えるが,この基本概念自体は,商業メディアが本質的に持っているべき基本要素の一つである。そして,これに基づいて行われるコンテンツ作り/取材力については,今なお商業メディアに一日の長があると考えている。もちろん,その上に組み上げられるものにネットの特性を活かしていけるのがネットメディアの持つ大きなメリットであり,4Gamerは今,そこに注目し,動いているのだ。

 あまり綺麗ごとばかりを伝えるのもしのびないので,身も蓋もない話を加えておくと,ゲームが売れるのは,あくまでもそのゲームに魅力があるからである。商品が売れるか売れないかの分岐点に“メディアのパワー”なる魔法の力が存在するというのは,メディアが自ら存続するがための言い訳であり,ある種の幻想に過ぎない。どれほど尽力し,持てる力を注ぎ込んだところで,「絶対に売れないもの」を売る力は手に入れられないのである。
 今,我々がメディアの役割として認識している重要さは,上記の幻想のまさに対極に置かれるものだ。大小を問わず,「売れる可能性がある作品」の売り上げを最大限まで引き上げるのが我々の役目であり,クリエイターが精魂込めて作った“作品”に込められたさまざまなアイデアやこだわり,そして作り手の思い,そうした伝わりにくいものを,伝えやすい形に落としこみ,ユーザー共通の話題になるきっかけとしての「最初の火種」を,最高の形で作り出すことなのである。

 さて,大層なことを述べた後に続けるのは辛いが,その役目をもって果たした実績に対し,魅力がユーザーに伝わり切らず,埋もれていってしまう作品のなんと多いことか。あらためて書き記すまでもなく,これらが埋もれ,売れない責任の一端は我々メディア側の対応にある。分かっていながらできていない,そのもどかしさを的確に表わすならば,ゲームという範囲においてゲームメディアの持つリーチ力には限界があるという,実にシビアな現実だ。
 たとえゲームメディアが1媒体しかなくても,100媒体がひしめいていても,このリーチ力の限界は変わらず同じところにある。なぜかと言えば「何より優先して積極的にゲームの情報を追う」人の数は,国内でいえば,現時点ではせいぜい数十万という規模だからだ。
 しかし,昨年のラブプラスやDemon's Souls,初音ミク -Project DIVA-などの盛り上がりは,インターネット上に期せずして備わった機能を適切に利用することで,ネットメディアはリーチ力の限界を乗り越えることができることを,改めて我々に感じさせてくれた。4Gamer上に掲載されたラブプラスの記事は,こちらが意識的に読ませる工夫を行なっていないにも関わらず,“4Gamer以外の読者”にも広く読まれた記事となっていたのだ。

 ■ゲームの情報が読者に届くまでのプロセス俯瞰図
メーカーからWebゲームメディアに送られた情報がどのように伝播していくのかを簡易的にまとめてみた
画像集#009のサムネイル/インターネット時代における「ゲームメディア」の役割――「テレビゲーム産業白書」に寄稿した記事の全文版を掲載

 コミュニケーションツールやソーシャルメディアが発達し,さらなる発展を遂げようとしている昨今,情報が伝播しやすいネットメディアでは,面白い記事/有益な情報はたちまち話題となり,元になったサイトそのものの属性を飛び越えて広く読者にリーチしていく。別にゲームメディアだけに限った話ではなく,これはインターネットを使っている多くの人が,容易に気付くことだ。
 一昔前は,雑誌が“小回りの効く情報メディア”だったが,今現在を考えれば,望むと望まざるとに関わらず,Webメディアがもっとも小回りの効く媒体であることは,まず疑いようがない。諸説さまざまではあるが,(広義の)ネットメディアの台頭によって,紙メディアが大きな痛手を負ったこともまた,状況的には疑いようがない。すなわちそれは,多くの人がネットメディアを必要としていることのあらわれでもある。

 あまりにも手前味噌な話が続くので,誤解のないように再度付け加えておきたいが,現状「ネット上で完結した」プロモーションの成功例は,ほぼない。まずネットで火が付き,「ネットで話題になっている」ということを話題にしながら,雑誌やテレビなどの従来メディアに伝播していく……。こういった流れの中で,既存のメディアの持つ大きなリーチ力は,成功に必要な要素であることに変わりはない。先のラブプラスはまさにこの形をたどったものだし,一昔前の例を挙げれば,「電車男」などがこの形で広がり方を見せたムーブメントの一つだった。
 重要なポイントは,これまでのメディアが,これまでのやり方でリーチ力を発揮できなくなってきたことと,それを補うだけの力を,インターネットというメディアが持つようになったことなのだ。

 ……では,どんな情報があれば必ず成功できるのだろうか。

 実に重要で,かつ関心の高いはずのこの疑問だが,もちろん,そこまで都合の良いプロモーションの黄金法則など存在しないし,明確な解もない。それがあるなら,誰も悩みはしないだろう。ただ,「ゲームそのものの魅力」と「書き手が真摯に向き合ってその作品を伝えること」を,好機を逸せずに行うことで,少なくとも「どうやって売ったらいいか分からない」といった,絶望的な状況からは脱却できる。そして,そういったアプローチの中から,必ずや第2,第3の「ラブプラス」は現れるのだ。

 激変する世界において,ゲーム業界全体が成すべきことはまだ数多くある。ましてやほんの10年程度の歴史しか持たないWebメディアにおいて,我々が成さねばならないことは,さらに多い。そこから何を選び何を進めていくにせよ,基本にあるのは,ユーザーとメーカーの両者が「利益」を享受することが業界の存続には不可欠であるという認識と,そこへの最良の架け橋となれるのが,我々メディアであるという自負,そしてそのために我々がなすべき役割を,誤ることなく認識することである。

 2010年は,その役割をこれまで以上に果たせるメディアとなれるよう,決意を新たにしつつ本稿をまとめたい。




「2010テレビゲーム産業白書」概要

商品名:2010テレビゲーム産業白書
発刊日:2010年3月29日 
発行: 株式会社メディアクリエイト
判型: A4版・288ページ
価格: 3万8000円(税抜3万6190円+消費税1810円)

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