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Access Accepted第676回:Blizzard Entertainment設立30周年記念に寄せて(前編)〜ゲーム業界に出現した革新的な開発者集団
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印刷2021/02/22 00:00

業界動向

Access Accepted第676回:Blizzard Entertainment設立30周年記念に寄せて(前編)〜ゲーム業界に出現した革新的な開発者集団

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 北米時間2021年2月19〜20日,Blizzard Entertainmentのファンミーティング「BlizzConline 2021」がオンラインで開催された。「Diablo IV」「Diablo II: Resurrected」の新情報が発表されるなど,もしファンを集めてのリアルイベントだったら,どれほどの熱狂が巻き起こったか,と思われる内容だった。2021年2月は同社の設立から30年を迎える重要なマイルストーンなのだ。そんなBlizzard Entertainmentの過去と現在を概観する記事を,前後編に分けてお届けしたい。


吹けば飛びそうな,学生上がりの開発チームの誕生


 「World of Warcraft」「Diablo」「オーバーウォッチ」,そして「ハースストーン」など,リリースする作品がすべて大ヒットという印象のBlizzard Entertainmentが,カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のアーバインに設立されたのは,今から30年前の1991年2月8日のことだった。
 設立メンバーは,2019年4月までCEOを務めていたマイケル・モーハイム(Michael Morhaime)氏,現在も同社でチーフプロダクトオフィサーの要職に就くフランク・ピアース(Frank Pearce)氏,そしてゲーム開発の実質的な陣頭指揮を執り,現在は上級副社長を務めるアレン・アドハム(Allen Adham)氏の3人で,彼らはUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)でコンピュータサイエンスを専攻した仲間だった。アドハム氏が大学卒業祝いの名目で両親から借りたヨーロッパ旅行代,1万ドルが起業の資金として使われたようだ。

ゲーム業界ではかなりの老舗だと呼べる,30周年を迎えたBlizzard Entertainment。「Diablo」「Warcraft」「StarCraft」そして「オーバーウォッチ」という4つの超人気IPを抱える同社の歴史を追ってみよう
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 設立当時の社名はSilicon&Synapseと言い,Interplay Productions(現Interplay Entertainment)の開発した「J.R.R. Tolkien's The Lord of the Rings, Vol. I」「Battle Chess II: Chinese Chess」などを移植するといった仕事を受けていたが,1991年11月にスーパーファミコンの販売が北米で開始されたのを受け,Electronic Artsが1985年にリリースしたレースゲーム「RPM Racing」をリメイク。これが彼らにとって初の“移植ではない”タイトルになった。さらに1993年になると,Blizzard Entertainmentの作品にときどきカメオ的な登場する「The Lost Vikings」,そして,日本ではナムコから販売された「Rock n' Roll Racing」を,Interplay Productionsからリリースした。

「ロード・オブ・ザ・リング」で有名なニュージーランドの映画用小道具の製造メーカー,WETA Workshopに依頼にして,2007年に完成した「Orc Statue」。Blizzard Entertainmentのシンボルとして本社キャンパスの中央に立つ
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 小さなチームで複数のプロジェクトを行う混沌とした状況だったこともあり,よりエネルギッシュな語感のChaos Studiosに社名を変更したが,その翌年となる1994年に,地元で教育ソフトの販売を中心に活動していたパブリッシャのDavidson & Associatesに675万ドルで買収される。しかし同年,当時フロリダにあったChaos Technologiesが,社名が類似していることを理由に慰謝料の支払いを求めてきたため,裁判を回避することを目的に,再び社名を変更をすることになった。そして,法務部が登録商標を確認したうえで決まったのがBlizzard Entertainmentで,1994年5月以降に,この社名が使われている。

 いくつかのタイトルをリリースしたのち,1994年11月にBlizzard Entertainmentが満を持して世の中に送り出したのが「Warcraft: Orcs & Humans」だった。プレイヤーと相手勢力が同時に生産や建設,戦闘を行うリアルタイムストラテジー(RTS)のジャンル黎明期に誕生した作品で,1992年にリリースされたWestwood Studioの「Dune II: The Building of a Dynasty」に大きな影響を受けたという。さらに1995年,Westwoodが開発した野心作「Command & Conquer」が登場すると,Blizzard Entertainmentも同年中に「Warcraft II: Tides of Darkness」を発売し,両社は当時のゲーム市場を大いに盛り上げた。

Silicon & Synapseと呼ばれていた時代の貴重な写真。右端がモーハイム氏で,右手前の人物がアドハム氏。左手前に写るサムワイズ・ディディエ(Samwise Didier)氏は,現在もBlizzard Entertainmentのアートディレクターとして活躍している
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親会社のゴタゴタの裏で進んだ新規サービスの開拓


 Blizzard Entertainmentにとっての転機となったのは,1996年から1998年にかけて起きた一連の出来事だった。1996年2月,Davidson & Associatesは,旅行業で急成長していたCUC Internationalに買収され,Blizzard Entertainmentはその孫会社になった。CUC Internationalは,大手ゲームパブリッシャのSierra On-Lineも買収するなど,活発な動きを見せ,1997年には,ホテルや不動産などのビジネスを展開していたHFS Corporationと合併して,Cendantという大企業に成長する。しかし,1998年に入るとCUC InternationalがHFS Corporationとの合併前の3年間に5億ドルもの粉飾決算をしていたことが発覚してしまう。
 この時期については,13年前の2008年2月1日に掲載した本連載の第159回「巨人となったVivendiの歴史」に詳しいので,合わせて読んでほしいが,この事件によりCendantのゲーム開発部門がフランスのメディア企業Vivendiに売却されるといった混乱が起き,ゲームなど資産の1つとしか見ていない大企業の思惑に翻弄されることになった。

1997年1月にリリースされた「Diablo」。このゲームのせいで人生が変わったという人は少なくないはずだ
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 欧米の業界が買収ゲームのあおりで混乱に陥る中,一人気を吐いていたのがBlizzard Entertainmentだった。
 実は,Davidson & AssociatesはCUC Internationalへの身売りで得た利益を使ってカリフォルニアのレッドウッドシティにあったCondorという無名のスタジオを買収し,Blizzard Northとして発足させていた(Blizzard Entertainmentは,Blizzard Southに改称)。このBlizzard Northが1997年にリリースしたゲームが,アクションRPGの名作「Diablo」だったのだ。
 ゲーム史における「Diablo」の足跡については語る必要もないだろうが,海外ゲームに無関心だった日本の大手ゲーム誌が英語版の特集記事を組んだほど,日本のコアゲーマーの間でも大きな話題になった。さらに言えば,4Gamerが誕生したのも,編集長Kazuhisaが「Diablo」に熱中していたことがキッカケの1つであるし(関連記事),筆者が4Gamerで働くようになったのも,ひょっとしたら「駆け出しライターのくせに,Blizzard Northに突撃取材をしたことがある」のが大きな理由だったかもしれない。

これは「Diablo II」の画像だが,現在の「Battle.net」とは比べ物にならないほど原始的だったインタフェースが,ああ,懐かしい
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 「Diablo」のマルチプレイには,同時にスタートした「Battle.net」にアクセスする必要があったが,この無料のオンラインサービスも画期的だった。当時のオンラインゲームはインターネットプロバイダへの月額料金とは別に,「Internet Gaming Zone」「MPlayer Interactive」「DWANGO」「Heat.net」「Total Entertainment Network」といったさまざまなゲームポータルに別途,料金を支払うか,またはオンラインサービス料込みのプレミアム版を購入するのが当たり前だったからだ。
 Davidson & AssociatesとBlizzard Entertainment(2005年,VivendiによってNorthとSouthは統合される)にとって,Battle.netへの投資と運営は相当な負担だったはずだが,その頃,多数の加入者を誇っていたMicrosoftのInternet Gaming Zoneの会員数が60万人だったのに対して,Battle.netは1997年末までに125万人ものアカウントを保有するに至っている。Battle.netはオンラインのビジネスモデルを根底から変え,有料サービスは軒並み廃業するか,技術を売却するかして姿を消すことになった。「Diablo」で月額料金を徴収しても,少なからぬファンは食いついたのだろうが,現在の「(売り切りではない)サービスとしてのゲーム」(GaaS)という概念は,Battle.netと「Diablo」が開拓したと言っても過言ではない。


失敗を恐れず,常に大胆な行動を


 1998年3月,「Warcraft」シリーズでアートワークやシナリオを担当していたクリス・メッツェン(Chris Metzen)氏が率いる開発チームから「StarCraft」がリリースされる。制作が発表された当初は,「Warcraftを宇宙に持って行っただけの安易な作品」などと揶揄されたりもしたが,SouthからNorthに出向して「StarCraft」のプロデューサーを務めていたビル・ローパー(Bill Roper)氏が,「ゲームシステムはまったく異なる」と懸命に説明していたのを筆者は記憶している。

 「StarCraft」の最大の魅力は,「Warcraft」がヒューマン対オークという2勢力のシンプルな対立だったのに対して,「StarCraft」はテランプロトスザーグという三つ巴の戦いなったことにある。3勢力がジャンケンのような関係にあるという,戦術の厚みを増したゲームデザインは,とくにオンライン対戦モードで真価を発揮した。日本ではそれほど注目されなかったようだが,アメリカ,ヨーロッパ,そして韓国で大人気となり,eスポーツという新たなエンターテイメントの誕生を促すことになった。

 「StarCraft」の発売から1999年まで,Battle.netは800%の成長を果たしたとのことで,「Diablo」と「StarCraft」という革新的な2つの大ヒット作をリリースしたBlizzard Entertainmentの開発力を疑う人はいないだろう。

最近,プレイアブルなビルドがリークされた「StarCraft: Ghost」のゲーム画像。「Warcraft Adventures: Lord of the Clans」も数年前にロシアでリークされるなど,不思議な現象が起きている
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 もっとも,Blizzard Entertainmentがずっと,「出せば売れる」作品ばかりを作っていたわけではない。例えば,ローパー氏とメッツェン氏の黄金コンビは,1996年からポイント&クリック型のアドベンチャーゲーム「Warcraft Adventures: Lord of the Clans」の開発を指揮していたが,お互いが「Diablo」と「StarCraft」に時間を取られ,また,アドベンチャーゲームの開発は未経験ということもあって,2年たっても完成にたどりつけなかった。
 そのため,Infocomで「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy」の開発に携わった経験を持つスティーブ・メレツキー(Steve Meretzky)氏を1998年に招き,プロジェクトのテコ入れを図ることになる。同年のE3で,3Dグラフィックスを駆使したLucasArts Entertainmentの「Grim Fandango」が発表されるなど,アドベンチャーゲームは盛り上がりを見せており,多くのファンがBlizzard Entertainmentの新作に期待を寄せたが,結局「Warcraft Adventures: Lord of the Clans」は1998年8月までにキャンセルされた。

 さらに,絶頂期を迎えつつあった2002年に,アクションゲーム「StarCraft: Ghost」の制作が発表されているが,こちらもやがて姿を消した。正式発表が東京ゲームショウだったことからも分かるように,コンシューマ機市場を強く意識して開発が進められたプロジェクトだった。実際の開発を担当したのはサードパーティで,ステルスを重視した三人称視点のスニークアクションとしてマルチプレイモードもサポートする予定だったという。
 「StarCraft: Ghost」のほうは,開発中止が正式に発表されているわけではないが,2006年以降のイベントには登場せず,また,開発者向けイベントに登壇したモーハイム氏は本作について,「StarCraft」というブランドの価値を守るために“苦渋の決断を下した”ことを匂わせている。

Blizzard Entertainmentの顔役として日本でも知名度の高かったローパー氏だが,2003年にBlizzard Northの多くのメンバーと共に退社し,Flagship Studiosという新スタジオを設立した。ローパー氏には2004年にインタビューを行っているので,Blizzard Entertainment史の外伝として一読してほしい
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 「StarCraft: Ghost」には相当な開発費をつぎ込んでいたようだが,悪い話ばかりではなく,この作品のプロモーション映像を制作するため,それまで5人ほどしかいなかった映像制作スタッフを25人に増やしたという。「StarCraft: Ghost」における彼らの努力は残念ながら日の目を見ることはなかったが,この経験が「ハースストーン」「オーバーウォッチ」など,その後の作品のクオリティの高いCG映像制作に活かされ,それぞれのブランド価値を高めることに大きく貢献しているのだ。

 さて,2000年以降にリリースされたタイトルに話を戻すと,2000年6月の「Diablo II」,2002年の「Warcraft III: Reign of Chaos」と,ファンやメディアから高く評価されたIPの続編がリリースされる。とくに「Diablo II」の世界的な熱狂は誰でも記憶しているはずで,日本でも「Diablo IIで初めて海外ゲームをプレイした」という人も多いはずだ。
 ところが,親会社であるVivendi Gamesの経営が次第に悪化し,Sierra Entertainment系のスタジオが次々と閉鎖されるに至り,Blizzard Entertainmentは不安を覚える。2001年に拡張パック「Diablo II: Lord of Destruction」をリリースすると,すぐに次回作の開発に着手していたが,社長だったデイヴィッド・ブレヴィック(David Brevik)氏やビル・ローパー氏の不安は解消されず,2003年6月には多くのコアメンバーが退社してしまう。

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 そんな暗雲が立ち込めていたBlizzard Entertainmentが,さらなる飛躍のきっかけをつかむことになるのが,2004年にローンチされた「World of Warcraft」だった。これ以降の物語は,次回の後編でお伝えしたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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