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Access Accepted第625回:FrogwaresとFocus Home Interactiveの間で起きた版権譲渡拒否問題
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印刷2019/10/28 00:00

業界動向

Access Accepted第625回:FrogwaresとFocus Home Interactiveの間で起きた版権譲渡拒否問題

画像(001)Access Accepted第625回:FrogwaresとFocus Home Interactiveの間で起きた版権譲渡拒否問題

 クトゥルフ神話をテーマにしたRPG,「The Sinking City」の成功で知名度を上げたウクライナのFrogwaresは,探偵アドベンチャー「Sherlock Homes」シリーズで知られたメーカーだった。ところが最近,同社の販売を担当するフランスのFocus Home Interactiveが,販売契約の期限が切れたタイトルの版権をFrogwaresに戻すことを拒否したうえに,ストアページから削除するという出来事が起きている。今週は,その現状と背景を探ってみたい。


FrogwaresがパブリッシャのFocus Home Interactiveを“告発”


 北米時間の2019年9月26日,Frogwaresが異例のリリースを発信し,同社の現状をゲーム業界内外に訴えた。ウクライナのFrogwaresは,クトゥルフ神話をモチーフにしたオープンワールドのRPG「The Sinking City」を6月にリリースして高い評価を受けたデベロッパだが,彼らが発信したリリースは「ゲーム業界のカーテンの向こうで起こっていることをお話したい」という言葉で始まっており,2008年から2014年までFocus Home Interactiveをパブリッシャとしてリリースしていた探偵アドベンチャー「Sherlock Homes」シリーズの現状を説明する内容だった。

現在,PlayStationおよびXbox向けの販売が一時差し止めになっているFrogwaresの「The Testament of Sherlock Holmes」
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 リリース文はFrogwaresの公式ブログにもアップされているので,気になる人は読んでほしいが,30万本というスマッシュヒットを記録した「Sherlock Holmes Crimes & Punishments」(2014年)をはじめ,「The Testament of Sherlock Holmes」(2012年),「Sherlock Holmes versus Jack The Ripper」(2009年),そして「Magrunner:Dark Pulse」(2013年)の4タイトルが,PlayStation StoreやXbox Liveなどのフロントページから削除されているというのだ。

 その理由としてFrogwaresは,すでにパブリッシャ契約が切れているにもかかわらず,Focus Home Interactiveが,「Content ID」「Title ID」と呼ばれる版権の譲渡を拒否したことで,これらの作品を販売することができない状況に陥っていると述べている。今のところ,この件についてFocus Home Interactiveからの公式声明はないが,Frogwaresによれば,「契約満了後でもContent IDやTitle IDの移譲を行わないのがポリシーだ」とFocus Home Interactiveから連絡があったという。

 今ひとつ状況が把握できないところもあるのだが,Frogwaresが「Sherlock Holmes」シリーズのIPの所有者であることはリリース文にも明記されており,だとすればパブリッシャとの契約期間が終わった作品をFrogwaresが自由にできると考えるのは当然だろう。筆者にとって聞き慣れない「Content ID」や「Title ID」という言葉に焦点が当てられているが,これらは1作品につき1回だけ発行され,以後の変更は認められないものなのだろうか。

 Frogwaresは以前から,独立したゲームメーカーとしての立場を築こうとしており,主要タイトルの欠如は同社にとって大きな問題となり得る。現在は各ストアと連絡を取り,事態の打開を図っているようだが,Frogwaresの発表を読む限り,Focus Home Interactiveが必要のなくなった版権を開発者に戻さず,嫌がらせをしているようすらに感じられて,印象はあまり良くない。

今回の記事と直接の関係はないが,Frogwaresの新作は,オーイズミ・アミュージオから「The Sinking City 〜シンキング シティ〜」として10月31日に発売される予定だ
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 一方で,現在のフランスにおいては「The Sinking City」「Sherlock Holmes」シリーズなど,いわゆる“AAタイトル”をめぐる,ちょっとした争奪戦が行われているということは知っておくべきだろう。AAタイトルとは,大手企業の生み出す超大作(AAAタイトル)ほどの予算や開発規模ではないが,それなりに作り込まれ,一定のファン層にアピールできる作品を指す。Focus Home Interactiveがパブリッシングする作品でいえば,「Farming Simulator」シリーズや「Call of Cthulhu: The Official Video Game」など,二ッチジャンル向けで,かけた予算も大きくはないが,業界では無視できないタイトル群だ。


フランスでAAタイトルを扱う2つのパブリッシャ


 Focus Home Interactiveは,本連載の第527回「Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー」で紹介したように,主に海外で作られたソフトをフランス国内で販売するローカルなパブリッシャとして,1996年にセドリック・ラギャリック(Cédric Lagarrigue)氏が立ち上げた歴史あるメーカーだ。2001年からは,フランスのCyanide StudioやNadeoなどと提携し,両社の看板シリーズである「Cycling Manager」「Trackmania」の販売を開始。さらに2006年には,始まってから3年が経過したオンライン配信サービス「Steam」でタイトルをリリースする“サードパーティ・パブリッシャ”としていち早く名乗りをあげ,順当にライブラリを増やしてきた。
 上記の記事にもあるように,同社の方針は独立系のデベロッパと協力して,AAタイトルを比較的二ッチな市場に送り出し,育てていこうといったものだ。そのため,古くから付き合いのあるCyanide StudioやFrogwaresなどを買収することはなく,あくまでも企業同士の対等な関係を続けてきたという印象がある。

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 そのFocus Home Interactiveと並ぶフランスのパブリッシャが,Bigben Interactiveだ。創設はさらに古く,なんと1981年にゲームハードの周辺機器を販売するメーカーとしてスタートしたという。社名はイギリスのロンドンを連想させるが,本拠地はフランス北部のレスカンという街で,現在,香港やカナダにも支社を持っている。2001年には,ヨーロッパにおけるDreamcastのハードウェアやソフトウェアの販売権をセガから獲得し,ゲームのパブリッシングにも事業を拡大しており,ゲームイベントでは自らの出自を誇るように,デザインの異なるコントローラをブースの壁にズラリと並べるというスタイルの出展を長く続けていた。
 主力ソフトは,Eko SoftwareやKylotonn Entertainmentといったフランス国内のデベロッパが開発した,ちょっとマイナーなレースゲームが多かったこともあり,日本のメディアにBigben Interactiveの名前が載ることはあまりなかったように思う。イベント取材を長く続けている筆者だが,同社を取材したのは,今年6月のE3 2019が初めてのことだった。

 Bigben Interactiveは2018年以降,ゲームのパブリッシングビジネスを急激に拡大してきた。その嚆矢と呼べるのが,同年5月に発表されたCyanide Studioの買収だ。上記の「Cycling Manager」シリーズや,ウォーハンマーの世界観とアメフトを融合した独創的な「Blood Bowl」シリーズ,さらに,ゴブリンを主人公にしたアドベンチャー「Styx」シリーズなど,創業以来,Focus Home Interactiveと18年にわたって二人三脚で成長してきたCyanide Studioだけに,2000万ユーロでの買収劇は驚きだった。
 日本でも大きな話題になった「Call of Cthulhu: The Official Video Game」を最後に,Focus Home Interactiveとの関係は終わり,「Werewolf: The Apocalypse - Earthblood」以降の作品は,Bigben Interactive傘下のスタジオとして開発が進められている。


版権譲渡拒否の背景にあるもの


 Bigben InteractiveとCyanide Studioの交渉は,2018年のかなり早い時期から行われていたようで,買収を阻止できなかったFocus Home Interactiveのラギャリック氏は株主からの突き上げを受けて2018年3月に辞職に追いやられ,株価も急激に下がるなど,同社は一時混沌とした状態に陥った。その後,新たなCEOとしてユルゲン・ゴールドナー(Jurgen Goeldner)氏が就任し,自社イベントで予定されている多くの新作を紹介することで,その状況をようやく落ち着かせている(関連記事)。

複雑な会話システムを持つため,日本語版未発売なのが残念なFocus Home Interactiveの「The Council」。開発したのは,Cyanide Studioのスタジオの1つBig Bad Wolfで,このメーカーもBigben Interactiveの傘下に入っている
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 Bigben Interactiveは2018年に,上記のEko SoftwareとKylotonn Entertainmentを買収して傘下に収め,さらに2019年7月にはFocus Home Interactiveから「Greedfall」が発売される直前だったデベロッパのSpidersも買収。まるでFocus Home Interactiveと関係が深いデベロッパを引き剥がしにかかっているようだ。

 Focus Home Interactiveは2009年,NadeoをUbisoft Entertainmentに買収されており,ほかのパブリッシャによる「敵対的買収」に対して,なぜ予防策を取らないのか,不思議にさえ感じられるが,同社の「傘下スタジオを持たない」というポリシーは一貫しているようで,ゴールドナー氏は今後の方針として,フランス以外の能力あるデベロッパとの連携を深めていくことや,同社が弱かったモバイル市場への参入などを表明している。

30人のメンバーで開発したという,SpidersのオープンワールドRPG「Greedfall」。独特のアートワークが特徴で,同社作品の中では過去最高の評価を得ている。こちらも現時点で日本語版がアナウンスされていないのが残念だ
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 ともあれ,Focus Home InteractiveがFrogwaresへの版権譲渡を拒否したのも,背景にこうした事情があっったからかもしれない。つまり,1年半ほど続くFocus Home InteractiveとBigben Interactiveとの確執が,今回の出来事の遠因ではないかというわけだ。Cyanide StudioやSpidersと異なり,独立性を維持しようと努めているFrogwaresが,これまでデベロッパの独立性を尊重してきたFocus Home Interactiveと揉めているのは皮肉だが,どちらにとってもメリットのある,うまい落としどころが見つかるように願う。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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