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Access Accepted第401回:ゲーム開発者に求められる「自分のストーリー」とは何か
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印刷2013/11/18 12:00

業界動向

Access Accepted第401回:ゲーム開発者に求められる「自分のストーリー」とは何か


 学生のプロジェクトとしてスタートしたアクションRPG「FORCED」。スタッフ全員が寝食を共にするという生活を続けながら,3年余りの開発期間を経て,2013年9月に正式発売された。何度も資金難にも陥るなど,スムーズな開発ではなかったものの,画像共有サイトに掲載した1枚の写真が多くのファンの関心を集めたことで,なんとか完成にこぎ着けたという。今回は,ゲーム開発者がゲーマーの注目を集めるために必要な「自分のストーリー」とは何かについて紹介したい。


画像シェアリングのニーズにフィットした「Igmur」


 日本でも少しずつ一般化してきた「画像共有サイト」だが,アメリカの「Imgur」もその一つだ。「Imgur」と書いて「イメージャー」と呼ぶそうだが,「ハズレのないイメージサイト」をモットーに,高い人気を集めている。
 日本の掲示板ように匿名ではないが,アメリカにもインターネットユーザーがニュース記事やウワサ話をアップロードし,それについて自由に意見交換できる,「Reddit」「Digg」などのサイトが人気を集めている。このImgurは,そうしたサイトからの画像シェアリングの要求にうまく合致したことで,現在は1日に100万近くの画像がアップロードされ,35億ビュー/月を超えるほどに成長したという。

Igmurに掲載された画像の一部。同サイトの書き込みには,彼らの7か月にわたる不法占拠がテレビニュースとして流れたことを記憶しているデンマーク人のものもあった
Access Accepted第401回:ゲーム開発者に求められる「自分のストーリー」とは何か
 このIgmurで過去最高の閲覧数を獲得したのが,アクションRPG「FORCED」「Steam」でリリースしたデンマークのインディーズゲームデベロッパ,BetaDwarf Entertainmentがアップした,「スタートアップ企業の驚くべきストーリー」(An Incredible Start-Up Story)という一枚の画像だ。一枚といっても,何枚もの写真を縦につなげたもので,サイズは600×10000ドットにもおよぶ。
 その一部を掲載したが,お分かりのようにグラフィックスノベルのような構成になっており,その内容は,彼らがどのようにして「FORCED」を作ってきたかを紹介したもの。

 反企業的なカルチャーの強い欧米のインターネットユーザーは,こうした自己アピールや商品の宣伝に対しては辛辣になることが多いが,BetaDwarf Entertainmentの画像は非常に大きな反響を呼んでいる。その理由は,自分達の事情を赤裸々に,かつ面白く語っているからだろう。彼らのストーリーを要約すると,以下のような感じだ。

 コペンハーゲン近郊のオールボー大学に通う大学生数人が,なるべく金をかけずにゲームを作る方法を模索していた。そんなときに見つけたのが,大学構内で誰にも使われていなかった空き部屋だ。オリジナルメンバーの8人は,ただちに自分達のアパートを引き払い,冷蔵庫やマットレス,電子レンジなどを持ち込んで,その部屋に引っ越した。もちろん,不法占拠だ。
 お互いの作業を邪魔しないよう,全員で同じ時間に寝て同じ時間に起床するという,まるで軍隊のような団体生活を送っていた彼ら。話を聞きつけた学生が集まり,その頃には15人ほどに増えていたという。


7か月におよぶ不法占拠の果てに


 そんな生活が7か月ほど続いたが,ある日,大学当局に見つかって部屋を追い払われる。そこで,メンバーのうち8人は,コペンハーゲンから遠い場所にある家賃の安い一軒家を借りて共同生活を続けることにした。残りのメンバーは自宅からここに通い,アーティストはリビングルーム,プログラマーらは地下室という感じで,夢の作品作りに明け暮れたという。


 しかし,全員の貯金も一年ほどで使い切ってしまい,途方に暮れることに。苦肉の策として選んだのがクラウドファンディングサイト「Kickstarter」だった。目標額は4万ドルと少なめで,とにかく完成まで生き永らえるのが目的だったようだ。
 当初,投資はなかなか集まらなかったが,この頃,仲間の一人がImgurに画像の前半部分をアップすると,数日間で100万ものアクセスを記録。それが話題になったことで,最終的にKickstarterでは,1900人を超える投資者から6万5000ドルを得ることに成功した。

 KickstarterとIgmurで予想以上の反響を得たBetaDwarf Entertainmentのメンバーは,すぐにコペンハーゲン市内のオフィスに引っ越し,ゲームのブラッシュアップを続けた。コペンハーゲンに移ったのは,大きな都市のほうがパブリッシャを見つけやすいと思ったからだ。節約のため,アパートなどは借りず,オフィスに寝泊まりしながらゲーム開発を続けていたという。

 大学の空き部屋で作業を始めてから,すでに2年半が経過していたが,この時点でもパブリッシャは見つからず,Kickstarterで得た資金も底を尽き始める。ここでギブアップすることもできただろうが,交渉の末に銀行から20万ドルを借りることに成功し,4か月後の2013年9月に,ようやく「FORCED」のリリースにこぎ着けることができたのだ。

Co-opに重点を置いた,BetaDwarf EntertainmentのアクションRPG「FORCED」。現時点でのメディアの評価は100満点中71点ほどで,「中の上」といったところだが,ゲームの面白さだけでなく,開発者達の努力を認めてゲームを購入した人も少なくないようだ
Access Accepted第401回:ゲーム開発者に求められる「自分のストーリー」とは何か

「FORCED」公式サイト

Steam「FORCED」紹介ページ


 価格は約20ドルで,初週の成績は7万本ほどだったとのこと。「Steam」への手数料などを差し引くと利益を出すまでには至っていないようだが,食うや食わずの団体生活の中から1つの作品を生み出したことに対する,彼らの達成感も大きいようだ。

 「FORCED」がリリースされてから1週間,ゲームメディアのレビューもなかったとのことで,BetaDwarf Entertainmentがまったく広報活動を行っていなかったことが分かる。それでもある程度の成績を挙げられたのは,画像を掲載したIgmurの存在と,話題が広がる舞台となったReddit,そしてクラウドファンディングサイトであるKickstarterのおかげだろう。


ゲームのために“自分のストーリー”を売る


 「SPORE」のゲームエンジン開発を担当したこともあるインディーズゲーム開発者のクリス・ヘッカー氏は,以前,Game Developers Conferenceのレクチャーにおいて,「インディーズゲーム開発者は,ただゲームを売るだけでなく,自分のストーリーを売るべきだ」と熱弁をふるっていた。
 「自分のストーリーを売る」(Sell Your Story)とは,「毎年何百作と生み出されるゲームの中で消費者にアピールするには,自分のことを知ってもらうべき」という意味だ。

 考えてみれば,名作といわれるインディーズゲームには,必ずと言っていいほど「開発者のストーリー」が存在する。「Minecraft」は,「たった一人の開発者が,コツコツと作ってきたゲーム」であり,「World of Goo」は「大手企業を飛び出した2人の開発者が,コーヒーショップでゲームを考えた」ことが話題になった。thatgamecompanyの「flOw」やValveの「Portal」は,学生の卒業プロジェクトが進化して大成功したというシンデレラストーリーだ。

 自分のストーリーは,著名なゲーム開発者にもあり,例えばウィル・ライト氏「SimCity」が奇抜過ぎて,どのパブリッシャにも相手にされなかったという逸話を持っているし,「Ultima」のリチャード・ギャリオット氏は「父親が宇宙飛行士で,高校時代から学校のコンピューター室に入り浸っていた」というバックグラウンドが,「Ultima」をプレイしたことのない人にさえ知られている。
 つまり,ゲーマーが開発者に求めるのは,ゲームそのものの斬新さや面白さだけでなく,それを作った「開発者(達)の顔」が分かるストーリーであり,パーソナリティそのものなのかもしれない。

 もちろん,ライト氏やギャリオット氏は,大ヒット作を生み出したからこそ,雑誌やニュースサイトなどで自分のストーリーを語る機会が得られたわけで,現在のインディーズゲームシーンにおいては,当初のBetaDwarf Entertainmentがそうだったように,自らの存在を知ってもらうことさえも難しい。
 しかし,画像共有サイトやSNS,そしてクラウドファンディングサイトといった新しいサービスが登場し,資金をかけずに情報を発信できるようになった今,自己アピールする機会は飛躍的に増えている。今後,こうしたサービスを有効活用してユーザーの興味を掻き立てることが,インディーズゲーム開発者に求められそうだ。

寝食を共にしてゲーム開発を行ったBetaDwarf Entertainmentのスタッフにとって,「FORCED」の開発を終えたときの達成感は大きかったはず。ゲーム作りに情熱を持つ彼らの次回作も気になるところだ

 現在,大手メーカーのビッグタイトルのほとんどは,無数のスタッフによって共同制作され,「開発者の顔」が見える作品はごくわずかだ。「自分のストーリーを売る」ことでゲーマーの興味を引くという手法は,インディーズゲーム開発者だけでなく,ゲーム企業にとっても重要視されていくのではないかという気がする。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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