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[OGC2008#02]近未来社会の枠組みとインフラを構想する対談「『スノウ・クラッシュ』から『電脳コイル』へ」
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印刷2008/03/01 12:00

インタビュー

[OGC2008#02]近未来社会の枠組みとインフラを構想する対談「『スノウ・クラッシュ』から『電脳コイル』へ」

写真右奥が,GLOCOM 主任研究員 鈴木 健氏で,左手前が駒澤大学 グローバルメディア・スタディーズ学部助教授 山口 浩氏
 「スノウ・クラッシュ」とは,ニール・スティーヴンスンが1992年に著したサイバーパンク小説で,「メタバース」という仮想世界概念や,オンラインゲームで広く行われる「アバター」なる用語の使い方の,発祥といえる作品である。そして「電脳コイル」は,NHK教育テレビで2007年5月12日から12月1日まで,毎週土曜日の6:30PM〜7:00PMに放送されていたアニメで,仮想空間でなく,現実世界にコンピュータネットワークで作り出されたレイヤーを重ね合わせた,いわば拡張現実世界の日常を描く。こちらはとくに,一部熱狂的ファンによってさまざまな情報が流布されていることから,よくご存じの読者も多いことだろう。
 つまり標題の「『スノウ・クラッシュ』から『電脳コイル』へ」とは,「Second Life」に代表されるメタバースの電脳空間でなく,コンピュータによる拡張現実の可能性や姿について,考えてみようという意味だ。
 GLOCOM(国際大学)の仮想世界研究会では,「電脳コイル」で描かれているような拡張現実に新しい可能性を見,それを支えるインフラの現実性や,そこで社会はどのような組織で運営されるべきかといった議論を,未来社会のあり方の探求として行っているという。
 そのエッセンスを明かすのが,同研究会に属するGLOCOM 主任研究員 鈴木 健氏と,駒澤大学 グローバルメディア・スタディーズ学部助教授 山口 浩氏とによる対談セッションというわけだ。

 その方向性と内容,話題となる事柄などについて,両氏にインタビューしてみたので,その折のやりとりをお届けする。未来の社会デザインを考える講演のプレビューとして,あるいは「電脳コイル」が描き出す,不思議なリアリティにあふれた世界への導入部として,ご一読いただきたい。


仮想空間でなく,日常空間にネットワークを重ねる


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。もともと対談形式の講演ということで,どう聞いたものか迷うところなのですが,主たる題材は話題の「電脳コイル」だということですね。取り上げるのはアニメ版ですか,それとも小説版ですか?

鈴木 健氏:
 背景設定についてなので,どちらでもOKですね。両者は微妙に違うのですが,そこはOKだと思います。

4Gamer:
 なるほど。では「OGC 2008」でいま拡張現実を講演する切り口とは,どんな感じになるのでしょうか?

山口 浩氏:
 そうですね,まず表現作品のなかに描かれた仮想社会の姿が,実在の仮想社会サービスのあり方に,ある程度影響を及ぼしているのではないか,というのが出発点です。
 「Second Life」の開発者達の頭の中には,「スノウ・クラッシュ」があったと思いますし,欧米で仮想社会の話が取り沙汰されるとき,「スノウ・クラッシュ」が念頭に置かれていることが多いと思うわけです。

4Gamer:
 そこであえて「電脳コイル」を提案する?

山口 浩氏:
 ええ。だけども,というのが我々の話で,「スノウ・クラッシュ」的,「Second Life」な――

鈴木 健氏:
 つまり別の世界を作る,ということですね。

山口 浩氏:
 そう,そこで自由なことができますよ,というだけじゃなくて,リアルの世界に仮想世界が埋め込まれているような形もあり得るよね,と。それを我々は「電脳コイル」に見せられたわけです。

4Gamer:
 そうですね。

山口 浩氏:
 そういう風に考えていた人が以前にいたのか,よく分かりませんけれども,あまり聞いたことがなかったんですよ。非常に新鮮かつ,可能性を感じさせるものだった。
 今後の仮想世界サービスを考えたとき,「Second Life」を「終わった」と言う人もいるし,あまり伸びてないねという人もいる。要するに一時期の盛り上がりの反動で,下がっている状態だと思うんですけど,普通の人にとって入りにくい世界だろうということは,誰しも納得できると思うんですよ。とくに入る必要もないし。

4Gamer:
 ええ,そのとおりです。

山口 浩氏:
 そこで,リアルの世界に埋め込まれているような仮想世界があるとしたら,それは普通の人が普通に使っている,インフラ的なものになっているかもしれないよと。そういう新しい世界があるんじゃないですか? ということに着目したわけです。

鈴木 健氏:
 そうですね。

4Gamer:
 そうすると,「電脳コイル」に描かれているものとか,その延長を対象として,現実とオーバーラップしてくる仮想世界について語っていくと。

鈴木 健氏:
 そうですね。そして,そこにはいろいろなレイヤーがあると思うんですよ。技術的なレイヤーだとか,社会制度のレイヤーとか,身体や心がどう変わっていくか,とか。それらを総合的に,つまり浅く広く話せればよいのではないかと。

山口 浩氏:
 GLOCOMでは仮想世界研究会というのをやっていて,鈴木 健さんがチーフを務め,我々も参加しているのですが,そこで着目したのが「電脳コイル」だ,という流れなんですよ。

鈴木 健氏:
 もともとは,「Second Life」が一昨年(2006年)末から勃興してきて,「Second Life」のような仮想世界における社会制度の可能性を議論すべく始めたんですけど,微妙に行き詰まりを感じたときに「電脳コイル」がやってきて,「これだ!!」みたいな感じになったのです。オーギュメンテッド・リアリティ(拡張現実,強調現実)には可能性があるので,盛り上げていこうかと。今年の3月から5月の間に,何度か研究会を行う予定です。

4Gamer:
 そうすると,「電脳コイル」が真っ正面に来ると。ううん,ますます何を聞くべきかというところですが。先ほどの身体性と,サイバーパンクSFのダークフューチャー的な文脈からいくと,「電脳めがね」って,近代秩序的にかなり危うい存在ではないですか? 子供がある年齢で掛けて,精神治療的に使われることもあるという……。

鈴木 健氏:
 それは,ミシェル・フーコー的に,ミクロに捉えた場合ですか?

4Gamer:
 そうです。拡張現実を,子供の内面に踏み込んで社会化(教育)に使うとか,けっこういろいろ踏み越えちゃってるなあと。

鈴木 健氏:
 ああ。それは小説版に寄ったお話ですね。

山口 浩氏:
 アニメではめがねをもっと社会インフラ的に捉えていて,大人も使っているんですね。そして,子供は遊びに使っているという。

鈴木 健氏:
 一番ポピュラーな使い方は,自動車のナビゲーションシステムなんですよ。電脳ナビという。電脳医療も,精神的な治療に使うというよりは,お医者さんが診察するときに使うとかいう設定のほうが強いですね。アニメ版でも,精神的な治療の設定が最後のほうに出てきますが,それはワンプロットで,実験的に行われたという設定です。社会全体に適用されているわけではないのです。

山口 浩氏:
 注目しているのは,世界全体にインフラ的に張り巡らされた仮想世界という部分のほうです。現在でいえば,携帯電話みたいなものですね。

鈴木 健氏:
 携帯電話やインターネットのメタファーに近い存在として,めがねがあるのです。その上で何をやるかは自由ですしね。

4Gamer:
 じゃあ,身体秩序=権力とか,そういう角度で斬り込むべき感じではないのですね?

鈴木 健氏:
 ないですね。もちろん,ありとあらゆる技術は権力の道具として利用可能なので,当然そういった場面は出てきますし,むしろ,そういった側面を描いていることが重要なんじゃないかと思います。

4Gamer:
 一種の批評性を持っている?

鈴木 健氏:
 むしろ,そうだと思います。とはいえ電脳医療については,肯定でも否定でもなく,淡々と描いている感じではありますが。

山口 浩氏:
 その意味で,姿勢としては両面を描いている感じですね。仮想世界での活動に,遊びとして熱中している子供に対して,大人達が「もうやめろ」と言って,めがねを取り上げたりする。めがねのなかに見える仮想世界はニセモノだという論理が出てくるわけですね。仮想世界に入り浸っていることで,事故に遭う子供が出てくるとか,そんな感じです。
 それに対して,本当にニセモノなのかという自問自答を,主人公達がすることになるわけです。

4Gamer:
 ええ,そうですね。

山口 浩氏:
 物理的に存在しないものとのインタラクションで自分が感じたもの,痛みなどの感情は本物だよね,というくだりが出てくるわけです。それについては,「オンラインゲームのなかのものは,ニセモノなのか」という,まったくパラレルな問題がすでに存在していて,キャラや資産はニセモノだけど,他人と交流して得たものは本物だよね,という議論にもなるわけです。良いものも悪いものもあるだろうし――

鈴木 健氏:
 当然犯罪も起きるわけです。

山口 浩氏:
 作中で子供達がやってることも,大人がやったら犯罪だろうなと思えることもあるわけで。ハッキングとか。

4Gamer:
 「バグ」を捉まえたりとか。

山口 浩氏:
 それはそれとして,社会のあり方として,ちょっと考えてみてもいいんじゃないかと。

4Gamer:
 小説版のなかで,主人公の妹さんが,めがねを通さずに「電脳ペット」を見ているらしいところなどがありますよね? あれは,そうした社会のあり方が身体化していく過程,と読むべきなんですかね?

山口 浩氏:
 うーん,小説版はまだ完結してないですから,どう落とし込むのかまだ分からないところがありますが,裏設定として,拡張現実でなく脳と直接交信している部分が出てくるわけです。そうした子供達が出てくるという。

「電脳コイル」のDVDパッケージ。Amazon.co.jpの規約に従い,以下に販売ページへのリンクを示す。興味のある読者はぜひ
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ロボットを同僚と見なす日本人,仮想現実に対しては?


鈴木 健氏:
 ええと,話が作品論に流れてしまっているのですが,この二人で語るべきは社会設定の部分かなあと。「スノウ・クラッシュ」がメタバース的なものに対して大きな影響を与えているという事実がある。それに対して「電脳コイル」が描いている世界観があるわけです。両者がどう違うのかとか,どう面白いとか,どんな可能性があるのかとか,どう変化していくだろうとかいった話を,メインに持っていきたいと考えています。

山口 浩氏:
 いまのオンラインゲーム業界が提供している仮想世界/コミュニティサービスが,「スノウ・クラッシュ」的なものであるという捉え方が一つ。それに対して,今後のサービスが「電脳コイル」的発想を取り入れていくと,より多くのお客さんにアピールできるかもしれないよ,と。思いきりビジネスに寄せた言い方をすれば,そうなります。

4Gamer:
 社会の大枠に関する提言である,と。

山口 浩氏:
 このお話に関して,少しジャンルを変えて説明するなら,「ドラえもん」と「鉄腕アトム」が日本のロボット産業に与えた影響を考えてみてください,となります。
 日本の技術者に「こんなものを作ってみたい」という意欲を与えてきたことと,それから,出来上がったロボットを人々が仲間として受け入れたという,この二点が重要です。
 アメリカで同じことをしようとしたら,労働組合と大トラブルになったのに対して,日本ではスムースに導入でき,世界のロボットの7割が日本製だよ,とそういう状態になったわけです。

4Gamer:
 いわゆる産業用ロボットのお話ですね。

山口 浩氏:
 そうです。日本が最初に産業用ロボットを導入したとき,女の子の名前をつけて可愛がっているのを見て,アメリカの人達はぎょっとしたわけですけれども,日本ではそういう土壌が「ドラえもん」と「鉄腕アトム」によって築かれていたのです。

鈴木 健氏:
 「鉄腕アトム」がロボット産業に与えた影響について議論をするのと,同じようなことをしたいわけです。じゃあ,どこらへんが大事なのかというと,「Second Life」はマウスとキーボードで操作しますよね。そうすると広がりに限界があるというのが一つめです。Linden Lab.のボードメンバーであるミッチ・ケイパーが最近,3Dカメラを使ったインタフェースで「Second Life」を操作できるようにしましょうといった試みを始めているとおり,すでによく知られた論点なわけです。

4Gamer:
 確かに,それだけならとくに斬新な気はしませんね。本当に手間が省けるの? というか。

鈴木 健氏:
 そう。結局それでも3DカメラをPCの前に置いて,人がその前に座っていれば操作できるということでしかない。見ぶり手ぶりでアバターをコントロールすることは可能でしょうけれども,そこまでです。

4Gamer:
 映画「マトリックス」で描かれた,かえってまだるっこしいんじゃないかと思われる,あれに近いですね。

鈴木 健氏:
 で,問題は,オーギュメンテッド・リアリティのように,日常世界にオーバーレイしていく,入っていくという方法のほうが広がりが大きくて,それは要するに,PCと携帯電話の違いに似ています。インフラ産業になることを考えたとき,わざわざその前に座って使わなければいけない,現在のPCのような機器を前提にするよりも,どこでも使えるもののほうが可能性があるのは当然です。

4Gamer:
 それはそのとおりですね。

鈴木 健氏:
 それを踏まえたうえで技術的に考えたとき,どうやって実現すればいいのだろうかと。ハードルはいくつかあって,例えばそれだけのカメラや無線基地局をどうやって配置するの? とかがそうですね。また,「電脳めがね」というツールが出てきますけど,それだけ薄いものに回路を組み込んで,無線でつながってて,そのための電力供給もできると。それはどう実現するの? といったことも問題になります。

4Gamer:
 ああ,そこまで具体的に考えてみるわけですか。

鈴木 健氏:
 そうです。それに加えて,オーバーレイされるもののレンダリングはリアルタイムでなくてはならない。ここも大きなボトルネックで,既存のオーギュメンテッド・リアリティの技術だと,マーカーを置いて,その上にアバターを乗せるというのが主流でした。
 それに対して,AR Tool Kitなどでは,特徴点抽出によって,実写映像にリアルタイムでマーカーを設定して,そこでアバターを動かすといったことが,可能になりつつあります。例の,ダース・ベイダーが竜安寺の石庭で動き回ってるやつとかですね。
 最近の研究成果ですが,動画からリアルタイムに特徴点を抽出し,それを基準にアバターを置いたりもできるようになりました。

4Gamer:
 なるほど。現実空間にレンダリングオブジェクトを重ねるための基礎技術が整ってきたと。

鈴木 健氏:
 それの何がすごいかというと,動画ではカメラも動いていますよね。その動く映像からちゃんとリアルタイムで特徴点を抽出できるんですよ。

4Gamer:
 動画を解析して,そこに一定の座標を確保し続けられるわけですね。

鈴木 健氏:
 つまり,そこをそのまま3D空間として再現できるのです。このくらいできるようになると,多分ソフトウェア的には「電脳コイル」みたいなことができるようになりつつあるということです。
 問題はデバイスのほうで,そちらはこれからブレイクスルーしないといけない。

4Gamer:
 燃料電池にしても,めがねに積むのは厳しそうですしね。

鈴木 健氏:
 ただ別の側面では,技術の進歩を今後どう生かしていくのか,という問題でもあります。仮想世界は計算量が半端でなく多いわけです。CPUや回線のスピード,HDDの容量が大きくなってくると,それをどう使うのが有益かというのが問題になってくる。
 実際,回線やHDDのコストが下がったからこそ,写真や動画の共有サイトが成り立つようになったわけで。

4Gamer:
 そこを延長して考えてみる,と。

鈴木 健氏:
 ムーアの法則みたいなもので考えたとき,あるタイミング以降,いくら写真や動画をアップロードしても,使いきれなくなるんですよ。僕もファンの法則――サムスンのフラッシュメモリ開発部長が述べた,「単価あたりの容量が1年で2倍に伸びる」というもの。サムスンはいまのところ8年連続で達成している――に基づいて計算してみたんですが,2020年のiPodには,日本のキー局の過去のテレビ番組が全部入るんですよ。PB(ペタバイト)近くまでいくと,ダウンロードする必要すらないことになる。

4Gamer:
 2の12乗倍,つまり4096倍ですか……。160GBを基準に考えると,約655TB。うーむ,これは確かにすごい。

鈴木 健氏:
 同様に回線もCPUも単価あたりの性能が上がっていくことを考えると,仮想世界や3Dゲームには相当な可能性があるわけですが,そこで障壁となるのは,やはりインタフェースですよね。どうやったら日常に入り込めるか,というところで。
 いまサービスされているメタバースというものには,どこかで限界が来るんだろうなという気がしていて。やはり「電脳コイル」的世界に可能性を感じますね。

4Gamer:
 メタバースの場合,どれかが卓越したものになれる理由というのが,あまり思いつかないんですよね。さまざまな世界が展開して,豊かになるところまでは想像できても,どれかが標準になれる根拠が分からない。

鈴木 健氏:
 なるほど。

4Gamer:
 そこと比べたときに,日常と一体化できる拡張現実というのは,立ち位置が違うので,これは卓越できるかもしれないなあと。

山口 浩氏:
 技術的な障害となり得る部分,部分はあると思うんですけど,それぞれ進歩していますからね。めがね型のディスプレイはすでにありますし,電源についても,作中で着用者が動くことによって発電するという仕組みが出てきます。

鈴木 健氏:
 ああ,出てきますね。



Second Life


あと5年から10年で,拡張現実の社会が始まる?


山口 浩氏:
 技術的なことは正直よく分かっていないんですが,それほど決定的な障害ではないだろうと。なので,最後にくるのは,どうやって使うかではないかなと。
 そこにはいろいろな意味合いがあって,個々の人がどうやって使うかという面もあるし,それを維持/管理する人がどうでなければならないか,とか。

4Gamer:
 そうなると,否応なく権力論も含んでしまいますね。

山口 浩氏:
 作中だと,政府が民間企業に委託して……という構図が出てきますけれど,そこを考えていくと,いろいろ問題が出てくる。この,現実世界と仮想世界の間については,もともと仮想世界研究会で話題となっていたことでもあります。

鈴木 健氏:
 例えばインターネットのWWW(World Wide Web)の場合,キャリアとキャリアの間をつなぐのがTCP/IPという共通プロトコルで,個々のキャリアの中では何を使ってもよい。
 ドメイン管理のためにはDNSサーバーが立っていて,これは分散管理型になっている。だから,勝手にWebサーバーを立ち上げてもかまいません……とか,そういう設計思想,アーキテクチャになっているわけですね。
 では,「電脳コイル」のオーギュメンテッド・リアリティの社会インフラは,どういう設計にしたらよいかというのが,いまから考えるべきことだと思います。

4Gamer:
 なるほど。

鈴木 健氏:
 日本の携帯電話のようなものがよいのか,水平分業型のものがよいのかとか,いろいろな可能性があり得ますよね。「電脳コイル」で描かれているなかで,一つ面白いなと思ったのが,オートマトンの「サッチー」(注:作中で,バグや不正プログラムを検出/駆除すべく,街を巡回している見張り役プログラム)が,神社に入れないというシーンがあるじゃないですか?

4Gamer:
 ええ,ありますね。

鈴木 健氏:
 あれがけっこう面白くて,どうしてかというと,「サッチー」が郵政局の管轄で,神社は文化局の管轄だからです。縦割り行政の弊害で入れないみたいな。

4Gamer:
 ああ,そういうことだったんですね。

鈴木 健氏:
 この,縦割り行政の弊害で入れないというところが面白くて,まずあの世界は,基本的に一つなんですよ。仮想世界なんだけど,その仮想世界自体は一つで,大黒市という市が運営しているんですね。1個の地域に1個の仮想世界しかなくて,しかも空間ごとに縦割り行政が行われている。
 その空間,物理的な土地の所有者が,その仮想空間の何を見ていいかを決定できるというアーキテクチャなんですよ。これがとても面白くて,例えば僕がGLOCOMを出て六本木ヒルズの中に入ったとき,そこに僕のアバターを表示するかどうかは,僕が決めてよいというアーキテクチャもあり得ますよね?

4Gamer:
 あり得ます。それはそれで分かりやすい考え方の一つですね。

鈴木 健氏:
 ところが「電脳コイル」の世界では,それは六本木ヒルズのビルのオーナーとか,もしくはオフィスを借りている人が決めるというルールになっているんですよ。

4Gamer:
 作品としては,ですね。

鈴木 健氏:
 そう,作品としてそうなっている。それはどっちのほうがいいのか,という話があり得ますよね。「電脳コイル」はただでさえ,「これ本当に小学生向けか?」と思うほど入り組んでるわけですから,ましてある人々と別の人々が,違う仮想世界を見ていたとしたら,もう何が何だか分かりませんよね?

4Gamer:
 まあまず,会話がかみ合わない恐れがありますよね。そもそも作中人物同士からして。

鈴木 健氏:
 でも,そういったことがこれからは起き得るわけです。いままで我々がコミュニケーションするときの基盤は,あくまで物理世界にあって,「ここにコップがあります」と言ったときも,同じものを見ていることが想定されるから,それでコミュニケーションが成立するわけです。

4Gamer:
 そのとおりですね。

鈴木 健氏:
 ところが,それが全然見えない人がいるとすると,それは変ですよね。

4Gamer:
 まあ,成り立たないですよね。

鈴木 健氏:
 電車の中で携帯電話で話していると,相手の話がその人以外に聞こえないので,すごく違和感がある。それでマナー違反になるわけです。それに対して,電車の中で人が二人話していても,それは自然です。

4Gamer:
 システム全体が,そのコミュニケーションの外にいる人からも見えているから,だと。

鈴木 健氏:
 そうです。マナー違反は,見えていないところから起こるわけです。何をコミュニケーションしているのか分からないということは,人間にとってすごく怖いことですから。そういうことが,これからはすごい頻度で起こる社会になるかもしれない。
 もう一つの問題は,まさに「電脳コイル」が描いている交通事故とかが代表なのですが,ある物体が見えているか否かというのは,安全にかかわります。赤の信号が青に見えているといった食い違いがあったら,渡ってしまいますよね? つまり,交通信号をオーギュメンテッド・リアリティでオーバーライド可能にすることには,すごく問題があるということになる。

4Gamer:
 そこもまた,食い違いが許されない部分であると。

鈴木 健氏:
 そう。そうすると,例えば交通信号については,国が独占的にやったほうがよいのかもしれない,といった議論になるかもしれません。で,たぶん「電脳コイル」の世界とは,そういう世界なんですよ。ところが,我々の側には「見る自由」みたいなものがある。その折り合いをどうやってつければよいのか,これから議論しましょうってお話です。

山口 浩氏:
 いろいろな問題が出てくることは予測されるわけですが,インターネットを街の中全体に広げてしまうことにはそれなりの意義があるだろうと。例えばビジネス面で見たとき,プリクラのフレームみたいなものを,街を歩いている自分の周りに表示できたりする。ファッションアイテムとして使えるわけです。服に自由自在に模様を入れてみたり。そういった形で,一般的な人々が一般的に利用する範囲内で,いろいろビジネスチャンスがあると思います。現在ある仮想世界サービスも別に悪くはないけれど,そういった面に目を向けてみたらどうですか,という提言が一つ。

4Gamer:
 仮想世界内で実現していることを,実世界に持ち出すという意味での,オーバーラップですね。

山口 浩氏:
 まあ,現実世界との折り合いって,けっこう暗い話が多いので,そうそうバラ色な話ばかりはできないと思うんですけど,定まった答があるわけではないので,いろいろ考えてみたいなと。

4Gamer:
 例えば,先ほどの同じものが見える/見えないといった問題も,htmlをどう解釈するかはブラウザ次第であるという形で,すでに起きていることの延長として存在するわけですよね。

鈴木 健氏:
 そうです。ブラウザの世界は基本的に自由ですよね。W3Cが一応「こういうふうにしましょう」とは言うけれども,それに違反するブラウザを作ったところで,別に訴えられるわけじゃないし。

4Gamer:
 拡張現実がコンピュータによって構築される世界であれば,別のソフトウェアで同じシステムを読み込む/読み出すことも,できてしまうことになる。

山口 浩氏:
 ポイントは「目との距離」だったりもします。ある程度距離があれば物理世界と仮想世界は別のものと認識されますが,ヘッドアップディスプレイに重ねて表示されるとなると,もう分からない。そうなったら,なんらかの制限が必要という話になる。

鈴木 健氏:
 携帯電話のフィルタリングどころの話ではなくて,やはり1個の世界に統一しましょうといった議論になると思うんですよ。

4Gamer:
 そうしないと,いろいろたいへんそうですよね。

山口 浩氏:
 統一されると仮定するならば,「電脳コイル」を生み出した国としては,ほかの国の規格を使いたくないじゃないですか(笑)。

4Gamer:
 なるほど(笑)。つまり現実的な構想をある程度固めて,コンセプト提案すべきだと。

鈴木 健氏:
 それをあらかじめ考えて,実装していくといった流れがこれからあるんじゃないかと。実際,ここから5年ないし10年以内だと思いますよ。インフラを作っていくのは。

Second Life Second Life


汎用性でなく身体性を選んだ(?)Wii


4Gamer:
 インタフェースの問題は,やはりかなり大きいと思いますけれども,逆にPC上の操作でかまわないものであれば,サービス多様化のスピードは現在よりさらに増すでしょうから。

山口 浩氏:
 だとすれば携帯電話サービスみたいに,根っこの部分だけはちゃんと揃えておかないといけない。基層を揃えておけば,その上でサービスがわあっと盛り上がれると思うんですね。そこが十分に魅力的で,説得力があれば国際的な競争力も持ち得るわけで。

4Gamer:
 規格と土壌,どちらにしてもアーキテクチャそのものですね。

鈴木 健氏:
 最初のアーキテクトデザインに引っ張られるので,やはりまずしっかり考えておかないといけない。あまりにも日本独特の制度に偏ったアーキテクチャを作っても,世界に出て行けません,みたいなことになりますし。

4Gamer:
 ありそうな話ですね(笑)。

鈴木 健氏:
 で,例えば勝手に誰かがサービスを立ち上げられるのが,Webが普及した理由なので,そうであったほうがよいのかもしれないし,一方でカメラや無線通信といったハードウェアのインフラが必要なので,そこをどう考えるかは難しいですしね。

山口 浩氏:
 OGC 2008に来られる方々というのは,もしそういう世界が来たとすると,そこでの主要なプレイヤー(市場参画者)になり得るはずなので,いまから少しツバつけときませんかと。

鈴木 健氏:
 「Wii」とか,身振り手振りに近い入力を考えているようですけど,その比でないくらい“身体的”なゲームが,例えば作れるはずですからねえ。

4Gamer:
 まあ,「Wii」自体も,しばしば議論の対象ですけどね。

鈴木 健氏:
 どういう議論ですか?

4Gamer:
 いや,見た目先行で最終的な合理性にまだ到達していない,ということです。インタフェースが持つ宿命として,最初に分かりやすいことと,慣れたあとに使いやすいことは別で,「Wii」は前者で卓越していた。でも,後者で考えたとき,パッドコントローラに優る汎用性が実現しているかというと,それはどうも違うらしい。
 何か新しい作品が出てくるたびに,新しいインタフェースを提案している。これはこれでいいの? ということです。そのやり方だと,統合インタフェースの決定版はいつまで経っても出来ないわけだよね,という話です。

鈴木 健氏:
 なるほどなるほど。

4Gamer:
 全体のインタフェースは,一つ一つの分かりやすさを含み込んだ形でないと,いけないのかなあと。「Wii」は「Wii」であって,まだ先の長い研究課題だねえと。まあ,そこにいち早く着手したことが,任天堂さんの慧眼かな,ということです。

鈴木 健氏:
 むしろ,汎用インタフェースを放棄しているのかもしれないですけどね。見ていると。

4Gamer:
 ああ,そうかもしれませんね。

山口 浩氏:
 任天堂的おもちゃ観があるかもね。

鈴木 健氏:
 インタフェースの旧来的な考え方というのは,環境と身体との関わりを細くして,そこに万能性/汎用性を設けましょうというものでしたよね。いまの任天堂を見ていると,そうした考えとは逆に進んでいて,汎用性をなくしましょうという方向性で考えている気がするんですよ。あるいは,身体的な動きを捉えていきましょうというか。

4Gamer:
 日常の所作を先に考えて,それに合ったインタフェースを装備すればよいと?

鈴木 健氏:
 そうそう。それをどんどん作りましょうというか。

4Gamer:
 それはそれで,適正な価格,受け入れられやすい形で提供されれば,それでいいんじゃない? という?

鈴木 健氏:
 というふうな感じだと思うんですよ。

4Gamer:
 まあ確かに,それも一つのアイデアではありますよね。任天堂さんならば,できる。

鈴木 健氏:
 ただ,デバイスとインタフェースはまた別で,ワンデバイスで汎用インタフェースが出来ればよいわけですよね。それを実現するには,やはり3Dカメラとかで画像解析を行って……という,ミッチ・ケイパーが考えている手法で実現できそうです。別にあれは,「Second Life」でやらなくてもよいわけで,実現可能性はそれなりにあるかと。そして「電脳コイル」も同じような世界です。
 ……でも,「電脳コイル」でも,相変わらずキーボード使ってますよね(笑)。

山口 浩氏:
 字を書くにはあのほうが速いんですよ。

4Gamer:
 「攻殻機動隊」のなかで,ロボットだか電脳化した人だかが,指の先からさらに何本も枝を出してキーボード叩いてますよね。いや,あの世界観ならジャックインしちゃえばいいんじゃないかと,思うんですけど(笑)。

山口 浩氏:
 原作の漫画で出てきた博士の場合,電脳化はイヤだけど,スピードについていきたいから,手のほうを変えたという話でしたよね。自分より若い電脳技師に,脳をいじられるのがイヤだから(笑)。

鈴木 健氏:
 ちなみに,普通の人がジャックインする時代は,だいぶ後かなあと考えています。10年20年では,そうならないだろうなあと。

山口 浩氏:
 頭の外部から信号を取るものが少し出始めていますよね。

鈴木 健氏:
 いまのところの技術では,2bitとか3bitとかしか取れないですから,「テトリス」が精一杯かなあと。人間の身体運動から50kbit取ってくるといったことを考えると,相当難しいですよね。ジャックインじゃないとしても,何年後のことかなあと。ジャックインは早くても50年,100年オーダーな気がします。

山口 浩氏:
 まあ,カメラによる解析入力と,パワードスーツ系はあり得ますよね。だから,「電脳コイル」そのままの世界が来るという話ではないにせよですね――

4Gamer:
 けっこういい線行ってるんじゃないかと。

鈴木 健氏:
 「攻殻機動隊」にしても,ウィリアム・ギブスンあたりから始まる流れにしても,SFから出発しているので,仮想世界と現実世界が,ものすごく密結合してるんですよ。いきなりジャックイン可能とか。「電脳コイル」も後半そうなるんですけど,少なくとも前半に関してはそういう部分がなく,「いやこれ,10年後くらいにできるじゃん」という感じのものだけで構成されている。それが,可能性としてけっこう面白いところかなあと。

Second Life Second Life Second Life


シミュレートせず,自然界の情報を取り込むという手法


4Gamer:
 例えばソニーさんが「AIBO」を作ったとき,まあ,あれはあくまでおもちゃなんですが,ロボットというのは当面,ヒューマンインタフェースとしての役割を果たしていくのがよいのではないか,という見解を披露したりしていました。
 一方で「電脳コイル」にも電脳ペットが登場して,これはときにインタフェースとして機能したり,解析ツールとして使われたりしていますよね? 全的な仮想現実構想とはまた別に,これに近い存在が実現するとしたら,どんな形でしょうね?

山口 浩氏:
 AIBOから出発するならば,“見守り”インタフェース的なものでしょうかね? カメラで情報を受け取り,それに従って行動したり伝達したりするという。あるいは,遊び相手,話し相手とか。
 リアルの世界のロボットは,リアルの世界でのアバターになり得るわけですが,ロボットと仮想世界のアバターはまた,離れた存在であり得る。「ヒノキオ」という映画がありましたけれども,あれはまさにアバターですよね。

鈴木 健氏:
 「電脳コイル」の電脳ペットはアバターでしょうね。ソニーの土井さんは,インテリジェント・ダイナミックス研究所を立ち上げましたよね? 要するに,カオス力学系的なものと,身体性認知科学,ロボット工学,ブレイン・サイエンスなんかを結びつけて,最終的には見ていて飽きないロボットを作りたかったんですよ。
 AIBOって飽きちゃいますよね? AIBOの初期バージョンはジェネティック・アルゴリズム(生成型アルゴリズム。自分自身のプログラムを変えていく仕組み)を使っていたりしますけど,結局普通のプログラマーが頑張って作ったというものなので,やっぱり飽きちゃうんですよね。

4Gamer:
 「その意気や善し」の域を出ない,と。

鈴木 健氏:
 飽きないペットの身体運動を作ることは,原理的にすごく難しい。例えばカオス力学系の発想だと「カオスねこじゃらし」というのがあって,アメリカではヒットしています。これは,カオス的遍歴という現象,複数のカオス素子を疎結合させたカオス結合系で,結果として生まれた動きを猫に見せても飽きないという。
 AIBOでやりたかったのはこれに近いものなんですけど,結局失敗しているわけです。それが実際に可能かどうかはけっこう難しい問題なんですね。そして,いまロボットをやっている人達の関心の方向性というのは,原理レベルで飽きないものを作り上げるんじゃなくて,いわゆるGoogle的アプローチ,つまり元になる情報をインターネットからざーっと集めてきちゃって,それで動きのパターンを作ろうじゃないかというものです。

4Gamer:
 う,うーん。そういう問題なんですか。

鈴木 健氏:
 例えばロボットの動きが100万パターンあって,それで飽きるというならば,もっともっといっぱい作ればいいじゃないかと。あるいは本当にいるペットからデータを取ってきて,毎日100通り追加されていくとなれば,飽きないだろうと。

4Gamer:
 つまりは量的解決ですね。

鈴木 健氏:
 そう,だからGoogle的アプローチ。本質的なAIじゃなくて,最終的にはこの世界全体が持っている情報を使っちゃえと。そういう方向に向かっていくと思います。そういうアプローチであれば,いろいろ面白いことができるのかなあと。ニュースが人間を作る,みたいな(笑)。

4Gamer:
 まあ,意味合いは違いますけれども,現実の生物も外界からの刺激を受容して,反応しているわけですからねえ。単にパターンの材料として使うとなると,それよりは一段低いものかもしれないですけど。

山口 浩氏:
 まあ,変化の相を捉えたうえでの入力,ということにはなると思いますけどね。

鈴木 健氏:
 結局,ゲームを作るときもいまは,ゲームクリエイターが世界の設定なんかを作っているわけですよね。オンラインゲームはCGMなどを取り入れていますけれども,そうでなくて物理世界自体を使っちゃえば,その複雑性たるやすごいわけですよね。

4Gamer:
 ま,まあそれはそうです。

鈴木 健氏:
 その複雑性を使ってしまうようなやり方ができないかなあと。オブジェクトは自然が作る,という。カメラで撮影したら,それがどんどんオブジェクト化されていくような。
 AIにせよ,古典的なゲームデザイン手法にせよ,すごい人が作ればすごいゲームになるという発想ですよね。次に,世の中には60億人いるんだから,60億人の脳を結合させればすごいことができるよね,というのが,WikipediaやCGM,またオンラインゲーム的なアプローチであるわけです。次なるアプローチは,自然現象を使ってしまえとなるのかなあと。

4Gamer:
 何か受容体を作ってしまえばよいと。

鈴木 健氏:
 正直なところ,物理的な計算を行うためのCPUリソースを考えたとき,物理世界自身に“計算”させてしまったほうが速い可能性があるわけです。川の動きをシミュレートせず,川を撮影して片っ端からデータ化したほうがよい場合もあるだろうと。
 コンピュータに必要な計算をさせていたところから,CGMで人間の脳という計算機にリソースを広げた。次なる流れは,物理現象自体を計算結果として使っちゃえ,となるのかな,と。

4Gamer:
 シミュレーション的手法にこだわる必要はないと。キャプチャーして解析しちゃえと。

鈴木 健氏:
 Google的手法が,人間とコンピュータのハイブリッドであったのに対して,人間とコンピュータと自然現象のハイブリッドになるわけです。それがたぶん,「電脳コイル」で見ている世界なんですよ。

4Gamer:
 なるほど。電脳ペットから,えらく包括的なところまで行きましたが。

鈴木 健氏:
 ええ。それが次のビッグ・パラダイムかと。

4Gamer:
 では最後に,講演を聞きに来てくれる方に向けて,あらためて「お楽しみにね」的なまとめを一つお願いします。

山口 浩氏:
 すぐさまビジネスで使えますといったお話ではないし,目の前の問題を解決しますということでもたぶんなくて,日々のビジネスに勤しんでいる方々には,かなりとっつきにくい話のような気がします。ですが,ちょっと頭を柔らかくして考えてみていただけませんか,と。そうした方々に聞いていただいて,自分なりに思うところがあって,それを発信してという流れが出てくると,それこそみんなの知恵で,新しいことができるかもしれないなと思っています。新しいネタがあるかもしれませんので,一緒に考えてみませんか? というところです。

鈴木 健氏:
 技術が技術として単独で存在しても,話としてイメージが湧かないじゃないですか。「電脳コイル」は,「ああ,これができるのか,こんなふうになるのか」といったインスピレーションのきっかけとして,すごくよく出来ているんですね。相当考えて作られていて,新しい発想をもらえるので,まずはぜひ,「電脳コイル」を見てください。僕らが何をしゃべることも,見るきっかけになればいいかな,くらいに思っています。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


 カルト的な人気を誇るアニメ「電脳コイル」を,サイバーパンクの文脈でGLOCOMの研究会が語るという話だったため,てっきりその人文社会的な文脈,そこにおける倫理や権力,イデオロギーのあり方等々を肴にするのかと思っていたが,あにはからんや,そのまた基層となるテクノロジーと社会インフラを,いたって現実的な提言として語るのだという。
 言われてみれば,「電脳コイル」で描き出される社会とそのインフラ自体,現存するインターネットや携帯電話の物語的メタファーであると同時に,頑張れば実現できなくもなさそうな,想像の及ぶ世界である。

 もちろん,“目に見える仮想世界”を描いているだけに,セキュリティ用オートマトン「サッチー」が神社に立ち入れないシーンは,縦割り行政の弊害であるとともに,神社が果たすべき(?)アジールとしてのイメージを重ねたものだろうし,お札(ふだ)の形をしたパッチファイルなども,コンピュータのロジックを日常的なふるまいに置き換える面白いアイデアであるわけだが(それゆえインタビュアーとしては当初,こちらがセッションのテーマだと思っていたわけである。分衆社会と前近代とか),基礎となる社会インフラ部分を中心に見ても,実に深く作り込まれている。

 このインタビューでも,講演の意義と,話題の実現可能性の一端は示せたと思うが,当日はもっと具体的な話が,視覚イメージを伴って語られるはずだ。この機会に侮りがたいアニメ「電脳コイル」をぜひ見つつ,あるいは見返しつつ,3月14日の第3講,会場Bで12:15PMから1:00PMに行われる,セッション本番を待ってほしい。
  • 関連タイトル:

    Second Life

  • 関連タイトル:

    Second Life(Macintosh)

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