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スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
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印刷2008/01/30 12:40

レビュー

Unreal Tournament 3

Text by 奥谷海人

»   2007年11月,欧米で発売された「Unreal Tournament 3」は,スポーツ系マルチプレイFPSの定番として,日本でも人気の高いシリーズの最新作だ。遅れに遅れたリリースだが,待ちわびていたという人も多いのではないだろうか。今回は,初代「Unreal Tournament」(1999年)からプレイしてきたという奥谷海人氏が,そんなUT3をレビューする。発売から2か月たった現状を含め,生まれ変わった新作の特徴と魅力とは?


アドレナリン全開で楽しむ高速アクション

 
Unreal Engine 3のショーケースともいえる「Unreal Tournament 3」は,アクション性のやたら高いスポーツ系FPSの代名詞的な存在である。戦略的なマップやチーム戦,クラスの役割など複雑化していくマルチプレイFPSジャンルにあって,この手の競技性の高いゲームは減少傾向にある。古いタイプのプレイ感覚といってしまえはそれまでだが,一つの「ニッチ市場」として狙う価値があるかも知れない
画像集#001のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
 Epic Gamesが開発しているゲームエンジン,Unreal Engine 3が初めてゲームに利用されたのは,2006年11月にXbox 360でリリースされた「Gears of War」でのこと。その後「BioShock」など,サードパーティから数々のライセンスゲームがマルチプラットフォーム展開で登場したが,Epic Games自身がPCゲームの開発にUnreal Engine 3を応用したのは,2007年11月7日のWindows版「Gears of War」,ならびに同19日にリリースされた「Unreal Tournament 3」(以下,UT3)でのことである。
 今回紹介するUnreal Tournament 3は,開発の最初の頃には「Unreal Tournament 2007」として知られていたタイトルだ。1999年に初代Unreal Engineを利用したオンライン対戦用FPSとしてリリースされた「Unreal Tournament」,そしてUnreal Engine 2を使って開発された「Unreal Tournament 2003」および「Unreal Tournament 2004」を経て,ようやくシリーズの第3世代が登場したわけだ。発売からすでに2か月以上が経過しているものの,今回はUT3の現状も踏まえたレビューをしてみたい。

 Unreal Tournamentといえば,SF的な世界観を持つスポーツ系FPSの金字塔として,世界中のアクションゲーマーによく知られているシリーズだ。UT3もその流れに沿って,オンライン対戦を主体にした内容になっている。シングルプレイ用のキャンペーンモードもあるにはあるが,コンピュータ操作のBOTキャラクター達との対戦を通してゲームモードの内容や武器の使い方,マップの状況や,ダブルジャンプやドッジングといった特殊な操作法などを学んでいく,“大幅に拡張されたチュートリアル”と呼ぶのがふさわしい。軸足はあくまでマルチプレイに置かれているのだ。
 今回は単なるスポーツとしての撃ち合いではなく,それなりのストーリーも用意されている。銀河の辺境を舞台に,重要な鉱物資源の利権を独占したい複数の巨大企業が傭兵を雇って勢力争いに明け暮れるというバックグラウンドに,主人公であるリーパー(Reaper)が傭兵の一人として絡んでいくというものだ。しかし,オンライン用対戦モードに,BOTとの戦闘とムービーを添えて無理やりお話にしている感がなきにしもあらずで,ストーリー自体は,それほど意味のあるものではない。
 つまるところ,UT3はシングルプレイモードに重点を置いているのではなく,好戦的なエイリアンとの戦い云々の重厚な世界観に浸りたいのであれば,「Half-Life 2」「Crysis」あたりをプレイすればいいだろう。本作の焦点は明らかにマルチプレイモードにあり,ほとんどのプレイヤーはキャンペーンを最後まで終えないまま,オンライン対戦の世界へと飛び込んでいくはずだ。アドレナリン大放出のまま速いペースの戦闘アクションを楽しむ体育会系のノリの対戦ゲーム,それがUT3なのである。

画像集#002のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
キャンペーンモードの主人公であるリーパー(Reaper)。未来の日系巨大企業Izanagiの私設部隊を統率するマルコム(Malcolm)に雇われた,Team Roninのメンバーだ。浪人?
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うしろにいるのがマルコム。主人公とはとかくウマが合わないらしい。キャラクターデザインは,ステロイドを服用し過ぎたような超マッチョで怖い感じのものばかり
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Team Roninのメンバー達。左端のジェシカ・アルバのそっくりさんは,ストーリーの中では紅一点のジェスパー (Jesper)で,リーパーの実の妹でもある。美人薄命というが……
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キャンペーンモードで利用できるオプションカード。仲間を増やしたり武器のアップグレードが行えたりと,どうしても勝てないマップなどで一度だけ使える
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もはや海外でデザインされるロボットとしてはデフォルトともいえるタコ型のDarkwalker。戦場にあって,ひときわ背が高く,すさまじい唸り声を上げながら周囲を圧倒する
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UT3の醍醐味は,やはりプレイヤー同士が敵味方に分かれての激しい対戦モードだろう。従来作のプレイヤーも,本作で新たに採用されたウォーフェアモードに挑戦しよう

よく計算された新ゲームモードが登場


画像集#008のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
UT3に用意されたゲームモードは6種類。どんなモードであれ,二つのチーム(または個人)が中央の要所や前線で激突するような,また,左右対称ながらも風景はまったく異なるような,絶妙なマップの作りになっている。ゲームモードによってHUD(インターフェイス)は微妙に異なるが,わざわざマニュアルを確認するほどでもない
 UT3に用意されたゲームモードは6種類で,前作より大幅に減っている。その六つとは,デスマッチ,チーム・デスマッチ,デュエル(Duel),キャプチャー・ザ・フラッグ,ビークル・キャプチャー・ザ・フラッグ,そしてウォーフェア(Warfare)である。このうち,デュエルは小さめのマップで1対1の戦いを楽しむものであり,ビークル・キャプチャー・ザ・フラッグは搭乗型兵器を駆使した旗取り合戦のため,逆に通常のキャプチャー・ザ・フラッグより広いマップを使用するモードである。
 マップは,多かれ少なかれ通路が円状に設置されて中心の広い場所に導かれていくような“アリーナ型”のものが多く,ゲームに参加したばかりの新参プレイヤーでも,迷ったり戦闘からはぐれてウロウロすしたりといったことはほとんどないだろう。リスポーン地点のそばには必ず何かしらの武器があるし,パワーアップは目に着きやすい広場に置いてあるといったように,古株のデベロッパらしい,よく計算されたマップ作りになっている。だが裏を返すと,どこから見ても当たり障りのない,個性がないマップともいえるわけだが。

 本作で新しく採用されているウォーフェア・モードは,前作のアサルト,ドミネーションやボミング・ランなどにあった要素を掛け合わせたもので,大きなマップの両端に設置されたベース内にあるパワーコア(Power Core)のシールドを破壊し,相手を無力化することが最終目的になる。ただし,マップにはノード(Node)と呼ばれるコントロールポイント(つまり拠点)が複数あり,これを指定された順に占領していかなければパワーコアにダメージを与えられないという込み入った仕組みになっている。
 ノードには,コントロールポイントとしての役割以外に,巨大な兵器が出現したり,橋や水門といった施設を利用できたりするという特色もある。戦略次第では劣勢からの大逆転も十分に狙える。ほかのモードに比べて長時間の集中が必要になるとはいえ,なかなか面白いゲームモードに仕上がっている。
 まあ,文字による説明ではややこしく感じるかも知れないが,UT3はとにかくプレイヤーに親切に作られている印象で,わざわざマニュアルを読んだりする必要なく,ゲームの概要はすべてプレイを通して把握できるようになっている。
 さて,UT3で最も重要な新要素といえば,やはりホバーボード(Hoverboard)だろう。これはプレイヤーの誰もが使用できる浮遊型のスケートボードで,そのスピードにより広大なマップを苦もなく移動できるし,ベースからノードへオーブ(Orb)を運んだり,フラッグを取って一目散に自分の陣地に引き返したりするような状況において,利用価値が高い。ホバーボードに乗った状態で右クリックすれば,近くの乗り物にくっついて移動するので,速度の違う乗り物の仲間に無理に合わせることなく,グループ行動が可能だ。

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今回初めて採用されたのが,大きなマップでも高速移動できるホバーボードだ。背中に背負っている光球が,ウォーフェアモードでノードを掌握するために必要なオーブ
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こちらはキャプチャー・ザ・フラッグモードで旗を背負ってのホバーボード移動。キャンペーンモードの場合,Field Lattice Generator(FLaG)という大それた名前で登場する
画像集#011のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
ロケットランチャーは速度が落ちたようで,敵にうまくかわされてしまうことが多くなった。ロケットなのに接近戦向きというのも妙な気がするが,ある意味UTっぽい
画像集#012のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
ウォーフェアモードで攻守の拠点となるノード。敵に奪い返されないようシールドを張ったり,武器のエネルギーをチャージしたりとさまざまな機能をもつ便利な場所だ
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「Unreal 2」以来ようやくストーリーの中核に躍り出たIzanagi Corporationは,未来でも伝統的な(?)サムライの銅像や瓦屋根を大切に継承している日本企業だ
画像集#014のサムネイル/スポーツ系FPSの金字塔「Unreal Tournament 3」のレビューを掲載
ロケット弾に比べ,150mmのウラニウム弾搭載というGoliath(ゴライアス)の砲撃はとても早くて強力だ。敵の集中砲火を浴びる前にあたりを制圧してしまえるかも

前作ほど骨太ではないが,男気溢れるスポーツ系FPS


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グラフィックスはさすがUnreal Engine 3だけあって,ゲーム中でもときどき立ち止まってあたりを眺めてしまうデキ。すでに「BioShock」といったライセンスソフトもリリースされているとはいえ,Unreal Tournament 3は同エンジンのショーケースであり,何枚ものテクスチャを重ね合わせたその作り込みはハンパじゃない
 UT3で扱える武器は,至近距離でショックウェーブを与えるImpact Hammer,ピストル型のEnforcer,猛毒の液体を周囲に振り撒くBio Rifle,相手を吹き飛ばして短期間戦闘不能に陥れるShock Rifle,攻撃だけでなく機器の修復も可能なLink Gun,マシンガン系のStinger Minigun,散弾銃のようなFlak Cannon,乗り物だけでなく対人用にも効果的なRocket Launcher,そして遠距離からの攻撃に強いSniper Rifleの9種類がある。
 さらに,モードによっては敵の大型兵器も一発で仕留められるLongbow AVRILという誘導ミサイルのほか,小型核爆弾で広範囲にダメージを与えられるRedeemerという携帯武器が出現するポイントもある。
 戦闘のスピードそのものは,第2世代のUTシリーズよりもスローに調整されており,オリジナルのペースに近い。重力が効いていて大ジャンプがしづらいものの,そのぶん初心者でもプレイしやすいと感じるのではないだろうか。武器の調整に関してもずいぶんと変更された印象を受け,Flak CannonやRocket Launcher,そしてRedeemerなどは以前よりも発射速度が遅く,威力や効果も弱まったようだ。

 同作のチャームポイントといえるのが,搭乗型兵器の数々である。ゲームでは,AxonとNecris軍の兵器が15種類用意されているが,ちょっとあり得ないほどマッチョなデザインのマシンばかりで,ビークル・キャプチャー・ザ・フラッグは個人的にも好きなモードの一つである。3人がかりで操作できるAxonのLeviathanはもちろんのこと,Necrisではタコ足系ロボットのDarkwalkerや,浮遊型のFury,クローキング機能を備えたNightshadeなどが登場。武器の威力や移動速度が下がったぶん,多くの乗り物が強すぎるように思える。

 BOT AIは本作でも重要な要素と謳われており,確かにゲーム中,ほかのプレイヤーと戦っているのかBOTと戦っているのか瞬間的に判断できないほどよく出来ている。キャプチャー・ザ・フラッグやウォーフェアのような複雑なゲームモードでも,BOTがちゃんとやるべきことをやってくれるなど,非常に好印象だ。ただし,こと乗り物になるとBOTの不器用な動きが顕著になる。タンクを崖に乗り上げて擱座させてしまったり,オーブを背負ったままホーバーボードで右往左往しているような場面をよく見るので,このあたり,さらなる改善を望むところだ。

 さて,残念なことに,発売後2か月経った現在でのUT3のプレイ人口は世界的にも多くなく,リアルな戦闘の醍醐味を味わえる「Call of Duty 4: Modern Warfare」や,カジュアル系で多彩なクラスを持つ「Team Fortress 2」に完全に人気を奪われているような格好だ。
 eSports系トーナメントの公式種目を狙っていることもあり,これまでのシリーズで成功したフォーミュラを極力変えないという開発方針があったのかも知れないが,全体的な目新しさや前作ほどの骨太さがなく,ややボリュームの欠けた内容になっているのは否めないだろう。
 「アリーナ型デスマッチを核とする昔ながらのFPSは終焉を迎えた」と切り捨ててしまうのは簡単だが,ひとたびプレイすれば,調整や新機能の妙が感じ取れるのは事実。最近,FPSをプレイし始めたという人であれば,スポーツ系FPSに逆に新鮮ささえ感じるだろう。PC版に付随しているUnreal Engine 3 Editorで開発されたMODの登場や,今後も頻繁に行なわれだろうコンテンツのアップデートにも期待できるはずだ。

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必要以上に緻密な構造物やテクスチャのテカり具合は,とくにインドア系マップで画面の敵を見づらくすることもある。これって贅沢な不満?
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自分のグロい死に様を見るのは悲しいが,筆者もこのスピードについて行けない年齢になったようだ。20分のゲームを数マッチこなすとドッと疲れる
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アリーナ形式のデスマッチでは,人数が多すぎると至近距離での撃ち合いが頻発してカオス状態に。こういう場合,使い勝手がいいのがミニガンか
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高速移動のできる小型車で敵の歩兵に突っ込み,轢き殺しまくるのも重要な戦法。対戦中,敵にこれがやたらと上手い人がいると,こちらは辛い
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もともとAI開発者だったSteve Pulge氏がリードデザイナーだけに,BOTのデキは上々だ。ただ,乗り物の運転やリスポーン直後の行動には難アリ
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誘導ミサイルで襲来するゴライアスを狙撃。狙われる側には画面にLock Onの文字が表示されるので,即座にジャンプアウトするのがラッキーだ
  • 関連タイトル:

    アンリアル トーナメント 3 英語版 日本語マニュアル付き

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