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8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました
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印刷2010/12/28 23:59

インタビュー

8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました

 

敵は数万,GMは16人!

圧倒的戦力差で挑む手段はPrintScreenのみ!?


4Gamer:
 2002年から2003年頃は,BOTが大きな問題になっていた時期だったと思いますが,どのように対応していたのでしょうか。

画像集#024のサムネイル/8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました
新津氏:
 あのときは,廣瀬さんもBOTの取り締まりをしてましたよね。

廣瀬氏:
 手動でずっと追いかけてました。

畠山氏:
 当時のBOT対応はすべて手動だったので,現場に赴いてBOTかどうかの問いかけをしていました。その問いかけに対し,正常に対応できるかどうかを一人のGMが1体のBOTに行なっていたので,処分件数が全然伸びませんでしたね。

千葉氏:
 何が証拠になるのかといったことでさえ,手探りだったんですよ。詳細は公表はできませんが,BOT(と推測されるキャラクター)に,どう考えてもキャラクター操作を手動でやったらそんな動きはできないという行動をさせて,スクリーンショットを連打します。BOTの名前一つにつきフォルダを一つ作って,証拠のSSをガーっと撮って,そこからこのSSとこのSSが証拠になると思うので,処罰対象です! と,テキストをまとめて一体分の処理の確認をお願いします。私達GMには処分する権限がないので,証拠を確認する係がいるんです。

畠山氏:
 あの確認を通すのが大変なんですよ。これが証拠ですと提出しても,「ここの名前がオブジェクトと被って見づらいからダメ。もっと良い画像はないのか?」とか。

千葉氏:
 ほかにも,問いかけに反応しなかったというのがあったとしても,タイムスタンプが一定秒数以上だったら「その間に,たまたま離席していたんじゃないか?」って言われると,「そうですね」としか返せないので証拠不十分。一時間近くかけてSSを撮ってダメっていうのも結構あったので,GMが手動でやっていた頃は,プレイヤーのみなさんに満足していただける状態ではなかったと思います。

4Gamer:
 その頃はGMは何人ぐらいいたんですか?

畠山氏:
 15,6人いたと思いますね。夜勤は2人で,ひとりがずっとBOTを追ってて,もうひとりがサーバー管理をしていました。

新津氏:
 当時は現行犯で捕まえるしか方法がなくて,地道にパトロールをするしかなかったのと,GMのアカウントの権限も整備されていなかったんです。例えばBOTがテレポートをしてしまうと追跡方法がないのでひたすら徒歩で探さなければなりませんでした。そのため,どうしてもBOT一体につき1時間半から2時間ほどかかっていました。とにかく,BOTを追いかけても,BOTの抑制には繋がらなくて苦労した覚えがあります。

4Gamer:
 それが改善され始めたのはいつぐらいからになりますか?

広田氏:
 改善というか,GMは頑張ってくれているけど,もう埒があかないと。その当時ですと何万体といたわけでして,もう手動では無理だと判断しました。そこで私が社長に専門的に分析するチームを作らせて欲しいと直談判して,二つの課を作ったんです。
 まずBOTの傾向と対策みたいなものを“データ監視課”が分析します。そして分析したものを実行部隊として“ゲームサポート課”が取り締まるという形です。データ監視課は分析をして,接続IPだとか時間帯だとかを調べ上げ,実行部隊に計画を出させて取り締まりをやっていたわけです。そういう経緯がありまして,功を奏してきたのが2007年の冬ごろで,プレイヤーさんに80%削減するという目標を提示,実現できるようになってきたという感じですね。

4Gamer:
 2006年にゲームサポート課の立ち上げとなりますと,そこからでも大体1年ぐらいかかったということなんですね。最近は,BOTをあまり見なくなりましたが,いまのBOT事情はどんな感じでしょうか。

新津氏:
 まだ100%のBOTをシャットアウトできてはいないのですが,最盛期と比べれば,数%程度になんとか押さえ込んでいる状況ではあります。

4Gamer:
 最盛期は本当にすごい数でしたね……。

広田氏:
 そうですね。月に4万とか5万ぐらいのアカウントは停止していたんですが,止めてもまた同じぐらいのアカウントが入ってきてましたからね。

4Gamer:
 当時は新アカウント1週間無料とかあったじゃないですか。あれも原因のひとつだったような気がします。

広田氏:
 そうですね。フリープレイチケットだとか海外からの接続,IDのストックなどマクロで捉えていましたので,そういったものをひとつひとつ潰していって,最終的にはn-Protectなどで総合的に封じ込めるような対策を施しました。その中でも,やはりフリープレイチケットの廃止が大きかったかな。

新津氏:
 もちろん,営利企業ですから会員数を伸ばすための手段としてフリープレイチケットを廃止することについては,社内でもいろいろな意見がありました。ですがやはり,プレイヤーからの意見は,BOTに関するものが一番クローズアップされた問題だったので,会社としても全面的に対応しようとフリープレイチケットを始め,BOTの原因になりそうなものはいったん廃止,見直そうという決断を下しました。今ではその効果がようやく現れ始めて,BOT数の減少が目に見えるようになってきました。


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広田氏:
 ROは月額課金ですので,遊ぼうとすると最初から月1500円かかります。それだけでも,初めて遊ぶプレイヤーからすればハードルが高いので,お試し期間として3日間とか一週間とか遊んでもらってということでフリープレイチケットを始めたんですが,そこを逆手に取られてBOTに使われました。一週間あれば結構稼げますからね。

4Gamer:
 しかも,PCの電源さえ切らなければずっと稼働させ続けられました。

広田氏:
 ええ。メンテナンスが火曜日なので,それが終わった後に使えば一週間は動かせます。ですからフリープレイ期間が切れたアカウントに対して,1日1回バッチを挟んで自動的にキックするような機能も当時実装しましたね。

4Gamer:
 そういえば,BOTが蔓延していた当時はいろいろなツールが使えましたが,それらを使えなくしたのもセキュリティ上の施策になるのでしょうか。

新津氏:
 サードパーティツールも含めてBOTに悪用される可能性が高いと言うことと,ツール自体を利用してもかまわないと言う風潮が生まれることを問題視していました。BOTツール自体も某BBSサイトにアップロードされて比較的一般のお客さんも使える状態になっていたからです。さらに悪質なのが,BOTツール自体にウィルスが仕組まれていて,BOTを使ったプレイヤーさんがアカウントハッキングされたり,ゲーム内で「ボクBOTだよ」みたいに喋ったりして二次被害も発生するということもありましたので,そこも含めていったん排除しなくてはダメだろうということで禁止させていただきました。

4Gamer:
 ありましたね,自らBOTだと吹聴するBOTツールが。

太田氏:
 あれはひどかったですね。当時,ああいったツールの検証も品質管理課で受け持っていたんですが,担当のスタッフが解析するために,自分で動かしてみたりするわけです。実は,ツール専用に用意したアカウントを使って検証もしていたんです。

4Gamer:
 え,本サーバーの方で?

太田氏:
 ええ。BOTツールってそのままではテストサーバーに繋がるような仕組みをもっていないので,本サーバーしかなかったんですね。テストサーバーで動かすようにするには,プログラムをいじらなければならない場合があって,当時はそういうことができる技術がなかったので,本サーバーで試すしかなかったんです。で,案の定,そういう設定になってますから「ボクBOTだよ」と検証用のキャラクターがBOTとして動いてしまって……。

4Gamer:
 世間にはガンホースタッフのアカウントって知られていないんですよね?

太田氏:
 もちろんです。ですから,そのキャラクターが通報されてしまったこともあり,プレイヤーのみなさまに,ロクでもないことでご迷惑をおかけして申し訳ないと思っておりました。この場を借りてですが,当時ご迷惑をおかけしたプレイヤーの皆様にお詫び申し上げます。そういう失敗をしながらBOTの研究を重ねていきました。
 2007年からは対策が少し変わって,ログを使っての追跡や調査ができるようになりました。やっぱり一体一体取り締まっていても始まらないので,ログでいくつかの条件を満たしたものはBANに相当するね,というシステムを投入できるようになったんです。2007年以前にもそういう対策はしていたんですが,それぞれ条件が単発だったので,すぐに条件から外されてしまっていたんです。

4Gamer:
 BOTツール側に,すぐに対策を取られてしまうわけですね。

新津氏:
 BOTの問題が起こる環境として,RMTやアカウントハッキング,サードパーティツールを含めた不正ツールなどさまざまな原因が重なっていたため,ただBOTを追っているだけでは,問題の抑制に繋がりませんでした。
 当時はゲーム内のパトロールが主軸だったことと,GMグループはイベントやサーバー管理などそれ以外の業務もあってリソースを集中できなかった問題がありました。そこが弱点だと分かっていたので,専門のチームを立ち上げてBOTとRMTの両面の対策を打ち出したのも功を奏した一端だと思います。

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太田氏:
 2007年6月後半から10個以上の対策を複合的に組み合わせまして,一つ一つの対策の閾値を読ませないようにしました。ひとつの施策ですと穴ができますが,二桁組み合わせると相手も絞りづらいわけですよ。そういったところで,月に数万体のBOTが捕まえられるようになりました。でも,7月とか8月とか夏になりますと,捕まえた分のBOTが投入されるんです(苦笑)。

4Gamer:
 夏休みのバイトでしょうか(笑)。

太田氏:
 ニューアカウント1DAYチケット自体はタダなので,消されたら次,消されたら次とどんどん入れ替わってくるんですよ。そのあとの秋ぐらいにニューアカウント1DAYチケットが廃止されて,そこから急激におさまってきた感じですね。

4Gamer:
 ちなみに,RMTサイトに警告などしたことはあったんですか?

新津氏:
 業者に対しても警告措置などを行なったことはあるのですが,基本的には完全無視されていました。やはり法律的な問題が壁になってまして,RMT自体は違法じゃないので,彼らもそこを盾にして商売をしているわけです。我々も正論ではそこを突破できないので,無理なのであればRMT業者の実態を調べるために取り引きを持ちかけ,業者がどのような形でゲーム内通貨やアイテムの授受をしているか確認したり,資産をどう管理しているのか追跡調査したりしたうえで関連性のあるアカウントを調べてまとめて停止すると。

4Gamer:
 おとり調査ですね。

新津氏:
 はい。昔はそういった調査があまり行なわれていなかったので,いわゆる倉庫アカウントから直接取り引きしている業者もいました。しかし,取り締まっていくにつれて彼らもだいぶ警戒しだしまして,ときには8回ぐらい取り引きを重ねてもなお,顔を見せないような相手もいました。
 そういった場合も,地道に追跡調査をしてまとめてアカウント停止するなどしているうちに,彼らとしても1体BOTを動かしているだけなのに芋蔓式に倉庫アカウントまで一網打尽にされては利益が上がらないという構図ができつつあって,次第に撤退していったようです。

4Gamer:
 いまでもRMTは行なわれているんですか?

新津氏:
 完全にゼロにするのは難しいでしょうね。BOTから生み出される資産だけでなく,プレイヤーさん自身が売買してRMTマーケットに流通させることもありますから。そういった観点でみると,完全になくすことはできないかもしれません。ただ,もっともRMTを有効活用していたのがBOTですので,そのBOTを生み出す原因となるRMTにも手を打ち始めたわけです。

4Gamer:
 なるほど。ところで私は当事者ではないのですが,BOT関連の有名な話としてアサシンギルド事件(※)があるのですが,あれはどういう経緯だったんでしょうか。
※2006年にアサシンギルドを中心に起こった事件。ギルド建物内に閉じ込めたBOTをガンホーが開放し,一方で閉じ込めるために進路妨害をしていたプレイヤーがBANされたのではという噂が広まったこともあり,大きな騒動に……

新津氏:
 いろいろな話が流れたと思うのですが,実際にプレイヤーさんをBANしてはいないんですよ。あの件のポイントは2つありまして,まずBOTが活動していたということと,それを抑制するためにプレイヤーさんがBOTの活動を妨害していたということですね。

4Gamer:
 ええ。それでどっちが悪いって話になると,プレイヤー側からすればBOTだろうってことになるんですが……。

新津氏:
 その当時のパトロール部隊は別の部署だったんですが,プレイヤーから進路妨害されて転職しにいけないので何とかして欲しいという投稿と,BOTを何とかして欲しいって投稿があったんですね。あの件は,一般プレイヤーさんも巻き込んでしまう形で,BOTに抗議するプレイヤーが進路妨害をしていたという事実がありました。まずはそれを取り除こうということになって,いったん移動して下さいとお願いしたところ,それが「ガンホーはBOTを容認してプレイヤーを取り締まった」と誤解されて伝わってしまったわけです。

4Gamer:
 あの当時は「ガンホーは正規プレイヤーより,BOT優先か」みたいな書き込みがあちこちで見られましたね。

抗議デモとして,ギルド名をメッセージにしてGvGに参加するということもあった
画像集#037のサムネイル/8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました 画像集#038のサムネイル/8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました

新津氏:
 その当時,BOTの問題はプレイヤーさんとしても一番何とかして欲しいことでしたので,プレイヤーのみなさんの心象は良く理解できますし,そういう行動をとっても致し方ないと思う一方で,ほかのプレイヤーさんからの進路妨害に関するクレームを放置するわけにもいきませんでした。取り締まりの経緯を公開していたわけではありませんでしたので,GMと対象者の当事者間で対応を進めた結果,曲解されてしまったと。ただ,我々としてもそういう環境を配慮した上での対応をすべきだったんですが,マニュアル的な対応をしてしまったというところは反省しなければいけないかなと思っています。

廣瀬氏:
 誤解されるようなアプローチをしてしまったという面では,非常に反省しましたね。

新津氏:
 一般プレイヤーさんでさえ,BOTを活動させないために取り組まないといけないような非常事態でしたので,我々としても真摯に受け止めなければいけません。これまた誤解を招きそうですけど,そういう点ではとても意義のある経験をさせていただけたと受け止めています。

4Gamer:
 でも,一般プレイヤーがBANされていないことが分かって,いまさらながらにホッとしました。

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