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世界大会の勝ち方教えます。「ラグナロクオンライン」の世界大会RWCをテーマにしたガンホー中村氏による特別講演をレポート
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印刷2010/12/01 11:00

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世界大会の勝ち方教えます。「ラグナロクオンライン」の世界大会RWCをテーマにしたガンホー中村氏による特別講演をレポート

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 11月27日,東京都調布市にある電気通信大学西9号館で,IGDA(国際ゲーム開発者協会)日本 デジタルゲーム競技研究会が主催する第8回研究会が開催された。デジタルゲーム競技研究会とは,e-sports(競技性の高い対戦型ゲームを用いたスポーツの1ジャンル)の研究や勉強会を行っているIGDA内のグループだ。

 今回,e-sportsの一つとしてMMORPG「ラグナロクオンライン」(以下,RO)のギルド世界一を決定する「Ragnarok Online World Championship」(以下,RWC)を題材に,ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下,ガンホー)が担った役割や,大会に向けた数々のアプローチについて,パブリッシング部第一企画課主任の中村聡伸氏による「Ragnarok Online World Championshipにおける,日本国内での取り組みのお知らせ」という特別講演が行われた。10月に開催されたRWC2010の興奮も一段落したところだが,この先のRWCについても触れられている発言を聞くことができた。その様子をレポートしよう。


RWCを経てRJCを実施!

いかにしてプレイヤーの興味を引くのかがポイント


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ガンホー・オンライン・エンターテイメント パブリッシング部第一企画課主任 中村聡伸氏
 講演は,ROとRWCについての説明から始まった。現在,ROは世界80の国と地域でプレイされており,総会員数は5000万人以上。日本では2002年12月にサービスが開始され,今年で8周年を迎えた。
 キャラクターを育てるためにモンスターを倒すMMORPGとしての基本的な部分から,育ったキャラクターの実力を試すために行う対人戦(PvP)や,それをさらに大規模化したギルド同士による攻城戦(GvG)などへ行き着くプレイヤーも少なくない。だが,育てたキャラクターによっては勝敗に大きな差がでてしまうこともある。そこで,プレイヤーの知識とテクニックを同じ条件下で競い合う共通のルールを用意して,その中で勝敗を決めるというRWCというものが作られていったという。

 RWCの基本的なルールは,決められたマップ上で7vs.7の戦いを行い,相手を全滅させる(制限時間内に双方が生き残っていた場合は,生き残っていたプレイヤーの数が多い方の勝利)こと。レベルは職業ごとに決められており,試合前に準備のために支給されるゼニーの金額も一定だ。
 このルールの下,プレイヤーには制限の中から生まれる戦略の構築,正確さとスピードというアクション,そしてそれらを十分に生かすためのチームワークなどが求められる。これらの要素は,ROが見下ろし型のゲームということもあってか,それぞれのチームがどう戦っているかが一目で分かるため,プレイヤーだけでなく観戦者も見て楽しむことができるなどの特徴を挙げていた。

 RWCは,2004年に試験的に韓国で開催され,14地域からギルドが集い,覇を争った。2007年以後は,毎年大会が行われるようになっている。大会ごとに参加地域数が上下しているのは,北米などで毎回地域を選ぶ基準が異なるためだという。

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 続いて,大会そのものの認知度についての話となった。2004年のRWC開催を受け,ガンホーは2005年より国内大会としてRagnarok Online Japan Championship(以下,RJC)を開催することとなった。

 RJCはオンラインで予選を行い,8チームに絞ったのち,オフラインで決勝戦を行う形をとっている。しかし,ROユーザーの中でも対戦をする人間は多いとはいいがたい。そこで,すべてのROユーザーへのアプローチとして,大会と同時にイベントを行うことで会場に来てもらい,そこでRJCを見て興味を持ってもらうという施策をとったそうだ。これは入場無料のイベント「ラグナロクオンライン ファン感謝祭」として実施されており,限定グッズの販売や最新情報の公開,来場者特典などのコンテンツを盛り込み,プレイヤーが来やすい,来たくなるような環境を用意してRJCへの観戦を促している。

 「ファン感謝祭」の来場者数は年々増加しており,運営側でも「そろそろ(毎年開催している)ディファ有明からの引っ越しを考えないといけない」,と嬉しい悲鳴を上げているのだそうだ。

 それと同時に,RJCなどの試合で何が起こっているのかを初心者にも理解してもらうための試みについての説明も行われた。ガンホーとしては,最初の段階として,RJCやRWCなどの大会への認知度を上げていくことが大事だと考えており,まずゲームに興味を持ってもらい,そこから対戦の楽しさを覚えてもらう。そしてルールを理解して作戦を立てることの楽しさといったものを感じてもらえればと思っている。その施策として,対戦時に解説を入れたり,休憩時間に職業や対戦するマップについてスライドを用いて解説したり,観客に理解を高めてもらうように努力しているという。中村氏自身,2006年に初めてゲストとして大会の解説を行ない,それ以来,少しでも試合内容を理解してもらうにはどうしたらいいか,ということを考えていると語っていた。

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RWC 2010の一幕
 その一方で,ルールに大きな変化のないRJCやRWCでは戦術が定番化しつつあり,強い人は強いままというマンネリ化の様相を呈していた。そこでRJC2010では,戦術構築の楽しさを再認識してもらうため新しいルールの導入,つまりコスト制の採用に踏み切ったという。そしてもう一つの試みとして,各ブロック代表ギルドの戦績とプロフィールを公開した。これは,「自分達はブロックの代表なんだ」という自覚を促す狙いで実施したそうだ。
 同時に公式ブログなどで大会の模様をリアルタイムで報告し,会場に来られないプレイヤーに対してもフォローを行い,離れた場所にいながらも一体感のある大会運営を心がけたとのこと。
 さらにRWC2010では,インドネシアに行けないプレイヤーのためという位置づけで,Ustreamやニコニコ生放送による大会の生中継を行い,のべ4万人ほどが視聴したという。

 しかし,大会の認知度を上げるためには,さらなる日本代表の強化が不可欠だと中村氏は力説する。マイナーな競技もオリンピックでメダルを取ることで一気に認知度があがるという例を挙げ,日本代表にも高成績を収めてもらい,そこからROというゲーム,そしてRWCやRJCという大会を認知してもらえるようになりたいと熱く語っていた。

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プレイヤーを完全にバックアップして勝てる環境を構築

今後はそれプラス「プレイヤーの自覚」が鍵を握る!?


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 中村氏は,大会の認知とともに行っている施策として,日本のギルドチームを強化することについても説明した。
 日本代表ギルドは,RWC2004を始めRWC2007,RWC2008では成績が低迷していたのだが,RWC2009ではついに念願の優勝,RWC2010では準優勝という高成績を残せるようになった日本代表。その大きな要因の一つとして,中村氏は練習環境の改善を挙げる。純粋に対戦回数を増やすことを第一と考え,日本代表戦の予選をトーナメントからリーグ戦へと切り替えた。これは一発勝負で決まるトーナメントよりも,総合的に実力のあるギルドを選出することが目的だという。同時にさまざまなタイプのギルドと戦う機会を増やすことで,基礎的な強さの部分を強化する意図もあった。
 代表ギルド選出後には,予選で破れた強豪ギルドなどに協力を仰いで強化試合を実施。さらに韓国の強豪ギルドとの交流戦も行った。だが,2か国による交流戦は不公平感があるというクレームがあったので,やり方を考えたほうが良いと語っていた。また,事前に大会で使用されるマップを公開し,大会で使用される英語クライアントを使うなど,大会と同じ練習環境の構築も行ったうえで本大会に備えてもらっているそうだ。

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 一方で,代表選手のメンタル的な部分のサポートも欠かさずに行ったと中村氏はいう。これはお国柄というのもあるのかもしれないがと前置きをして,「選手としてというよりも招待されているがゆえに“お客さま”という意識が先に働いてしまいがちなためで,それを大会に出て戦うんだ! という意識に持っていかせるように心がけた」と語る。具体的には,SNSで応援メッセージを募集し,それを印刷して現地に持ち込み,当日のパーティで「日本の皆さんからメッセージを預かってきた!」とその場で手渡すという手段をとったのだという。選手達の表情も変ったようで,また後でそのときの話を聞くと「(応援メッセージを見て)泣きそうになった」と話していたという。

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 さらに,ガンホーはここ2年の勝因の分析も進めていた。RWC2009は念願の日本開催であり,初めてホームとアウェイの差を実感したという。これは,プレイヤー/観客からの応援を受けやすいということだけでなく,対戦相手の情報などが得やすい環境が,勝利につながったと分析している。それを受けてRWC2010では,通訳を始めとしたガンホースタッフが日本代表ギルドに常に付き添うだけでなく,他国の試合の動画などを逐一選手に提供するといったサポート体制を確立。この体制は今後も続けていくとのことなので,来年のRWCも期待したくなるところだ。

 もう一つの要因として,強豪ギルドの存在を挙げた。現在日本では「Dekopin(大会ごとにギルド名を変えているが,基本的にメンバーはほぼ同じ)」と「Greensleeves」の2強状態となっている。同レベルの実力を持つギルドが切磋琢磨するというこの環境は理想的だと話す。しかし,こうした環境はガンホー側が用意しようと思ってできるわけではなく,そういったギルドを増やしていくためには,競技人口の底上げを図っていくしかない。

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 そして今後の課題として,3つのポイントが挙げられた。一つは「この先10年続く競技を目指す」ということ。せっかくプレイヤーが強くなっても,競技自体がなくなってしまったらなんの意味もない。この競技は来年も再来年も,10年後もやっているんだという安心感がないと,競技に参加する人がいなくなってしまうということだ。「ROプレイヤーの増加,そして大会の認知度を高め,毎年大会を欠かさず行い,2020年,2030年とこの競技を続けられるようにゲームを維持しなければならない」と話していた。

 二つ目は「日本代表選手を最強にする」ということ。これは実力という意味でもそうだが,選手としての自覚を強く望んでいるという。例えばメディアの取材に対して選手から「顔の写真はNGで」「動画はご遠慮下さい」などと言われてしまう現状がある。中村氏は通常のスポーツなどの選手であれば,代表として誇りを持ってカメラに向かうが,まだRWCやRJCではそういった状況になり得ていないと考えていると話す。RWCやRJCで高い成績を収めたことは誇らしいことと胸を張って,取材などにも応じられるような環境を作っていきたいと述べた。

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 最後に「より進化した内容にする」という点を挙げた。ルールを複雑にすることが進化ではないと前置きしつつ,同じルールばかりでは飽きてしまい進歩がない。さらにROはMMOでありシステムのバージョンアップは宿命でもある。現在,日本や韓国,台湾などでROは3次職を順次実装しているが,他地域では未実装となっている。そういった点も踏まえ,来年以降のRWCのルールはどうするのかといった問題も抱えており,今後どのようにRWCやRJCのルール作りをしていくかしっかりと考えなくてはならないとした。
 「まだまだ問題点はあるとは思うが,より多くの人に見てもらい,楽しんでもらいたい。そして選手達が誇りを持って参加できる環境を作っていきたい」と講演を締めくくった。

 RWCやRJCなど,こうしたゲームの大会を伝える場合,その結果を重視したものがほとんどであり,裏側や事前の段階でガンホーを始めとした運営がどのような活動をしていたのかをお伝えする機会はあまりない。その意味でも今回の講演内容は,RJCやRWCなどに参加していないプレイヤーにも,興味深い話だったのではないだろうか。
 また,RWC2009,RWC2010での好成績を糧として,これからも厚いサポート体制を敷いてもらえるというのは,出場を目指すプレイヤーにとって非常に心強いところ。来年のRJCやRWCについてはまだ何の発表も行われていないが,どのような名勝負が繰り広げられるのか,そしてどのような結果をもたらしてくれるのか,今から楽しみだ。

「ラグナロクオンライン」公式サイト

  • 関連タイトル:

    ラグナロクオンライン

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