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オンラインセミナー「ゲーム業界 LIFEVERSE」をレポート。東洋証券のアナリストがゲーム会社の成功と失敗,今後の生き残り施策を解説
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印刷2023/07/14 15:00

業界動向

オンラインセミナー「ゲーム業界 LIFEVERSE」をレポート。東洋証券のアナリストがゲーム会社の成功と失敗,今後の生き残り施策を解説

 東洋証券は2023年7月7日,オンラインセミナー「ゲーム業界 LIFEVERSE(ライフバース)」を開催した。このセミナーは,ゲーム分野を通じて投資に興味を持ってもらうという狙いで行われている。同社のゲーム業界担当アナリストである安田秀樹氏が,ゲーム会社の七転八倒の歴史や生き残り施策について解説した。

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 東洋証券は,オンラインセミナー「ゲーム業界 スフィンクスの謎」を,2023年4月7日に開催した。本セミナーは,ゲーム分野を通じて投資に興味を持ってもらうという狙いがあるとのことで,同社のゲーム業界担当アナリスト 安田秀樹氏が,ゲーム業界の謎や迷信について解説した。

[2023/04/14 11:00]


ソニーグループ編 大成功と大失敗を繰り返す理由


 ソニーグループ編では,安田氏が過去20年にわたるソニーグループのゲーム事業の業績推移をプロットしたグラフを示し,「PlayStationは安定的に売れて,業績もそんなに大きく変動していないイメージを持たれているが,実際に数字を見ると時期によって良かったり悪かったりと変化している」とコメント。さらにグラフから分かることとして,「PS3は失敗だったこと」「PS Vitaは相当不振だったこと」「PS5は利益が出ているが,PS4にはおよばないこと」「PS4から急成長していること」の4点を挙げた。

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 PS3の失敗に関して,安田氏は自社開発のCPU「Cell Broadband Engine」を理由に挙げた。このCPUの開発には5000億円以上が投じられたが,思ったほどPS3が売れなかったため,2000億円を超える大きな損失を出したとのこと。安田氏は「アナリストの立場から言うと大失敗」と指摘した。

 「PS Vitaは相当不振だった」と安田氏が判断した理由は,販売台数が非開示になっているからだという。なおPlayStationプラットフォームの中で販売台数が非開示なのは,PS Vitaだけである。またPS5の利益がPS4のそれにはおよばないことについては,「2022年の利益が2500億円程度で,すごく微妙な感じがする」とコメントしていた。

 PS4からゲーム事業が急成長している点に関しては,ソニーグループにおけるゲームのダウンロード販売比率のグラフが示された。安田氏は「ゲームをパッケージで買わずに,ダウンロードで買う人が増えている傾向がある」「パッケージは中古で売買される問題がある」と指摘する。ゲームのパッケージを中古で売買されると,ゲーム会社に売上が入らない──すなわち中古市場に利益が流出していたが,ダウンロード販売が普及したことによって,きちんとプラットフォーマーやサードパーティにも利益が還元されるようになっていると説明を加えた。

 なおパッケージ販売と比較すると,ダウンロード販売は3倍くらいに売上が上がるという。安田氏は「PlayStationのビジネスモデル展開は素晴らしい。SCE(当時)のCEOだったアンドリュー・ハウス氏は,大きく赤字になったPlayStationをよく立て直した」と称賛していた。

グラフが途中で切れているのは,2018年に決算の基準が変更されたからとのこと
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 ソニーグループ編のまとめとして,安田氏は「PlayStationは失敗続きだが,ユーザーを失望させてしまうのでそれを認めない」と語り,「ソニーグループのゲーム事業はコアゲーマーがいるので安定している」という誤ったイメージがあるのは,競合である任天堂のイメージのせいではないかとの持論を示した。


任天堂編 運を天に任す? 圧倒的資金力


 任天堂編では,同社の1981年以降の業績推移が示された。このグラフを見ると,任天堂は2012年から3年間,売上高が大きく落ち込み赤字になっているが,これはスマートフォンゲームやPS4にシェアを奪われたからである。

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 その時期について,安田氏は「任天堂にとって非常に厳しい時代だった」と表現し,さらに「実は任天堂も失敗したゲーム機を出している。とくに据え置き型は,大失敗していることも結構多い」とコメントすると,任天堂の歴代ゲーム機の成否を記した表を示した。
 また,表には入っていないが,大失敗の例として1995年発売のバーチャルボーイを挙げ,「見た目があまりよくないうえに,立体視だから遊ばないと何が面白いのかまったく分からない。遊んでいる姿も,周りから見ると何をしているのかまったく分からないので,買ってもらえなかった」と解説した。

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 安田氏は「バーチャルボーイを含め,NINTENDO64,ゲームキューブ,Wii Uといった大失敗が多い任天堂だが,携帯機がカバーして全体としては成功が多いので,業績は安定していた」と総括する。そして,「語弊があるかもしれないが」と前置きしたうえで「ソニーグループと比較して,任天堂はごまかし方がうまくなくて,誰が見ても分かるくらい大失敗することが多い。結果,社名のように運を天に任せる会社だと思われている」との持論を示した。

 ただ,そうした大失敗をしてもいいように「任天堂はたくさん現金を持っている」と指摘する。任天堂の現金・預金+有価証券の推移を示したグラフを見ると,Wii Uが失敗したときには5500億円以上の現金を失っているが,Switchでは1兆円以上現金を増やしているのが読み取れる。

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 任天堂編をまとめとして,安田氏は「任天堂のゲーム機は,世間に思われているほどビジネス的に失敗していない」「失敗したときは,多額の現金が必要になる」「Switchの成功で,今の任天堂は多額の現金を保有している」という3点を挙げた。また,先日の株式総会における質疑応答では,次世代機の転売対策について「需要を満たす数を生産して出荷することが最重要」と回答したことを理由に,「保有している現金を,次世代機の普及のためにどーんと使うのではないか」と予想を立てていた。

特定の技術の成熟度,採用度,社会への適用度を示す「ハイプ・サイクル」の解説もなされた
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ゲーム業界編 ビジネスモデルが変わる!?


 ゲーム業界編では,ソニーグループがこの10年で急成長した理由が挙げられた。
 1つはソニーグループ編で示されたように,ゲームのダウンロード販売率が上がったことにより,安定的なビジネスができるようになったこと。もう1つの理由は,周辺機器ビジネスの拡大にあると安田氏は捉えている。
 実際,大きく売れたとは言いにくいが2023年2月にPS VR2が発売されており,同年5月にはPS5でリモートプレイをするための新アクセサリの発表があった(関連記事)。安田氏によると,こうした周辺機器はゲーム機本体と比較して,かなり利益率が高いそうだ。「ソニーグループにとっては,重要な収益源になっていると考えている。任天堂も含めて,今後はますます周辺機器で利益を出すことが大事になる」と話した。

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 続いて,Switchの販売台数の推移が示された。Switchは2017年3月発売なので,すでに7年目に突入しているが,映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の公開や「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下,ティアキン)モデルのSwitch本体の発売により,週あたりの販売台数が平均9.47万台に伸びている。
 なお,7年目に入っても比較的売れていたPS2やニンテンドー3DSは週あたり2万台だった。安田氏は「一旦,販売台数が下り坂に入ると挽回は難しいはず。映画や限定モデルの効果も時間経過で減衰していくはずなのに,販売台数をずっと維持している。正直すごいこと」とコメントしていた。

 さらに,安田氏は「いろいろ理由はあると思うが,1つハッキリしているのは,ゲーム機の販売台数は性能やプレイできるタイトルで変わるわけではない」と持論を示した。その理由として,ティアキンモデルのSwitch本体がゲームソフトを同梱していないことなどを挙げ,「性能も基本的なデザインも変わっていないのに,ティアキンをモチーフにした装丁にするだけで売れたということは,外見がとても大事だということを教えてくれている」と語った。

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 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の全世界興行収入は1900億円を突破し,「アナと雪の女王」のそれを超えたが,並行するように「マリオカート8 デラックス」など,マリオ関連のゲームタイトルの販売本数が軒並み伸びたとのこと。安田氏は「映画が販促につながったと捉えている」と見解を述べた。

 一方,ティアキンも発売から3日間で全世界の実売本数が1000万本を超え,ギネス世界記録に「最も早く売れた任天堂ゲーム」として登録された。安田氏は「遊べば圧倒的に面白く,かつ一目で面白さが伝わる独創的な商品,サービスの企画開発という任天堂の方針が功を奏してきた」と述べた。

 ゲーム業界編の終盤,日本のアニメが世界で人気を集めていることに話題がおよんだ。安田氏はソニーグループの事業説明会にて,ソニー・ミュージックエンタテインメントがサウジアラビアを有望市場に挙げていたことを紹介し,「中東圏は人口構成で見ても若者が多いので,将来有望だと思っている。そうした中,日本のアニメが人気だということはとても楽しみ。これから2030年代にかけて,日本の文化が広く世界に拡散し,日本のコンテンツ産業は飛躍的に拡大していく」とコメントしていた。

 また,セミナーの司会を務めたVTuberの日向猫(ひなたね)めんまさんによると,世界中から配信を視聴してもらえているとのこと。「以前から日本のアニメは国境を越えて愛されているし,コロナ禍以降,VTuberという新しいアニメーション媒体が活発になったりして,日本のアニメ業界は大きな成長を遂げています。そうした状況はこれからも続いて,世界に向けてどんどん発信されていくと思っています。VTuberという媒体を通して,日本のアニメーションをより身近に感じてほしいです」とアピールしていた。

 アニメの好調に合わせて,ゲームも一般化しているという安田氏。ゲーム業界に着目するようになった20年前は,日本のアニメや操作の難しい3Dゲームは世界で展開することが難しいとされていたが,今ではむしろ世界で人気となっている。安田氏は「2030年代がとても楽しみ。その頃には,アニメやゲームの業界はもっと大きくなっていると予想しています。多くの人々に日本の文化を知ってもらえるし,旅行などで日本に来て,さらに知ってもらえる。そういう世界がやってくる」と語り,今回のセミナーをまとめた。

次回セミナーも開催される予定だ
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