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南海電鉄がeスポーツで大阪の地域活性化を進める理由とは。ウェルプレイド・ライゼスト eスポーツビジネスセミナーレポート
“eスポーツ×地域創生まちづくり”の講演に登壇したのは,南海電気鉄道株式会社(南海電鉄)の執行役員で,2022年に同社で新設された,eスポーツ事業部の部長を務める和田真治氏。講演では主に南海電鉄がeスポーツ事業に参入した理由や経緯と,南海電鉄を中心に現在大阪で広がりを見せている,eスポーツにまつわる取り組み,今後の展望などが語られた。
南海電鉄がeスポーツ事業に参入したのは,現在南海グループ全体で2022年度から2024年度にかけて中期的なスパンで取り組んでいる事業計画,“共創140計画”の影響が大きいという。同事業では新規事業への進出,将来的に核となり得る事業をステークスホルダーとともにまさしく“共創”することが重要視されており,そのひとつとしてeスポーツという産業は適しているのでは……という考えからeスポーツに関心が集まり,社内にeスポーツ事業部が誕生。そこに大阪,なんばのまちづくりなどで新規事業の開拓に知見と経験があった和田氏が部長に選ばれ,本格的な活動がスタートした。
和田氏は現部署に所属する前に在籍していた“グレーターなんば創造室”で大阪・なんばのまちづくりに携わっていた経験から,今後日本の新しい文化になり得るeスポーツが,お笑い,映画,スケートボード&ブレイクダンスといった,文化の発信地として機能してきたなんばとは親和性が高いのではと推察。また,戦後まもない時期に球場の建設やプロ野球への参画,ボーイズリーグの創設など,野球を文化として日本に根付かせた一翼を担ったという自負と実績があったことが,「令和(で近いことをやる)ならeスポーツだろうな」と,和田氏の中では高い納得感を感じたという。
南海電鉄がeスポーツ事業に参入した経緯がひと通り語られると,講演の話題はここ数年の間に大阪周辺で行われた,eスポーツに関連する施策が紹介された。
南海電鉄がまず最初に目に見える形でeスポーツに関わったのは,2021年。同年の7月18日に開業したなんばスカイオに南海電鉄の直営施設,eスタジアムなんば Powerd by NANKAIがオープンした。eスポーツを楽しむメインストリームではなく,「街の公園みたいな,子どもと親が安心できる空間」をコンセプトに掲げ,既存のeスポーツ施設とは違った独自性を出した展開から南海電鉄のeスポーツ事業は始まった。
eスタジアムなんばでの取り組みで“熱”を感じた和田氏は,「検討しているだけではしかたない」と,社内決議でeスポーツへの本格参入を取り付け,2022年に他社や行政に対して大々的にアピール。その結果,南海電鉄が中心に開催していた関西eスポーツ学生選手権には,第4回目にして80近い企業や団体が協賛や後援に名を連ねるまでに成長した。さらになんば以外の地域,泉佐野市や岐阜県などにも,eスタジアムが開業するまでに至った。
和田氏は2022年,とくに印象に残ったイベントとして,8月に泉佐野市,ウェルプレイド・ライゼストと共に開催した,高校生を対象にしたeスポーツキャンプを挙げた。このeスポーツキャンプで和田氏は,まったく接点のなかった高校生の子たちが4日間のキャンプを経て仲を深めていく姿を見たり,参加した高校生の保護者から感謝の声が届いたことから,改めてeスポーツの力を実感したという。
大阪府泉佐野市が「eスポーツ先進都市」の確立を宣言。今秋,りんくうタウンにeスポーツ施設をオープン。プロを目指す選手を対象としたプログラムの実施も
大阪府泉佐野市が「eスポーツ先進都市・泉佐野市」の確立を目指す施策を発表した。関西国際空港からアクセスできるりんくうタウンを中心とした,eスポーツを推進するための3つの取り組みを2024年までに実施するという。本稿では記者発表会の模様をお届けする。
講演の最後に和田氏は今後の南海電鉄のeスポーツ事業のキーワードとして「プレイヤーファースト」「コミュニティファースト」を挙げ,eスポーツの正しい理解を世間一般に広め,文化として成長,成熟させていくのが,南海電鉄がeスポーツ事業でやりたいことと強調。そのうえでeスポーツが文化として日本に定着した時,「最初から(eスポーツ事業を)やってた南海に何かご褒美があったらいいな。いやらしい話ですけど(笑)」とオチ(?)をつけつつ,講演を締めくくった。
なお,本公演の模様は,ウェルプレイド・ライゼストのYouTubeチャンネルでアーカイブを視聴することが可能。詳細を知りたい人は,こちらを参照してほしい。
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