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企業eスポーツ交流イベント「cogme cup EXTRA in RED° TOKYO TOWER」セッションレポート。eスポーツ部を設立するメリットとは
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印刷2023/02/20 19:04

イベント

企業eスポーツ交流イベント「cogme cup EXTRA in RED° TOKYO TOWER」セッションレポート。eスポーツ部を設立するメリットとは

 社会人ゲーマー向けブランド「cogme」(コグミー)を展開するエイプリルナイツは,2023年2月17日,企業eスポーツ交流イベント「cogme cup EXTRA in RED° TOKYO TOWER」を開催した。このイベントは企業eスポーツ部向け大会「cogme cup」の番外編で,会場では異業種交流会や,オフライン来場チームとオンライン参加チームによる「Apex Legends」の大会などが行われた。
 本稿では,このイベントのうちcogmeの取り組みが紹介された第2部と,企業eスポーツに注力している企業・地方自治体のプレゼンテーションが行われた第3部の模様をお伝えする。

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「ゲーマーが主役になれる社会を創る」ため,企業eスポーツに着目


 イベントの第2部にはエイプリルナイツ 代表取締役CEOの三瀬尚徳氏が登壇し,同社の概要およびcogmeの取り組みが紹介された。エイプリルナイツは,「ゲーマーが主役になれる社会を創る」をミッションに,「人生をゲームのように楽しもう」をビジョンに掲げた会社とのことで,2010年の設立以来,スタッフの採用要件は「ゲーマーであること」だという。

三瀬尚徳氏
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 その理由を三瀬氏は,同社がゲームではなく“ゲーマー”にフォーカスし,「ゲーマーの高いポテンシャルを証明していく会社」だからであると語った。すなわちゲーマーの多くは,ゲームのプレイ中にまず目標を設定したりプロセスを設計したりして試行し,そののち振り返って改善点を検討するという大きな特徴を持つが,それはビジネスにおいても重要なポイントとなるため,非常にポテンシャルの高い人達であるというわけだ。

 そんなエイプリルナイツが展開するcogmeは,「大人が誇れる趣味としてゲームをプレイしている」「ゲームが人を成長させるコンテンツとして認知されている」「多様性を認め合ってゲームでつながる」という世界観を目指しているとのこと。
 そのブランドメッセージは「『いっしょにゲームやろう!』このつながりを,社会人に広げたい。」というもので,三瀬氏は「子供の頃, 友達の家に行って一緒にゲームをやってすごくワクワクした気持ちを皆さんに持ち続けていただきたい」と説明した。

 cogmeは現在,4つのサービスを展開している。ブランド名と同じ「cogme」というサービスは,社会人が一緒にゲームを遊ぶ仲間を探すための招待制マッチングアプリだ。また「cogme club」は,ゲームを使ってオンライン・オフライン問わず社内のコミュニケーションを活性化させる企業向けのサービスである。さらに「社会人×ゲーム」をテーマにしたWebメディアの「cogmedia」も運営。そして企業eスポーツ部各自の活動の成果を発表する場となる場として,大会・cogme cupを定期開催している。

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 三瀬氏は企業eスポーツ部に着目したポイントとして,社内のコミュニケーションツールとしてeスポーツを活用しようとする事例は日本特有のものであり,海外ではあまり見られないことを挙げ,「企業や社会人に取って,価値観をアップデートするいい機会になり得る」と説明。さらに仕事が忙しくなったり,近年ではコロナ禍の影響によって働き方が大きく変わったりした結果,「社会人になると,人とつながりにくくなる」という課題が台頭していることを指摘し,「人とつながると,新しい知見や刺激を得られる。人とつながるためには,共通体験が必要。企業eスポーツ部の活動を通じて,人と強烈な感動を伴う体験を分かち合ってほしい」と語った。

 しかし,そうした思惑のもと各社に企業eスポーツ部が設立されたとしても,その活動を継続するには何かしらのモチベーションが必要となる。そこで活動の成果発表の場として,2020年4月にcogme cup #1を開催した。折しも1回めの緊急事態宣言が出たタイミングで,外出が制限されている中行われたこの大会には,「いいストレス発散になった」というコメントも寄せられたという。

 cogme cupのコンセプトは2つあり,1つは「単発イベントではなく,継続的に活動できる場の提供」。これは上記と同じく,継続的に活動できる場を作ることで,企業eスポーツ部の活動のモチベーションとしてもらうためである。
 もう1つは「大人が限りある時間と熱量を注ぐ価値のある大会であること」で,社会人ともなれば仕事はもちろん,それ以外にもやるべきことが多く忙しいため,それらと並んで時間と情熱を注ぐ価値を認めてもらえなければ,そもそも参加してもらえないというわけだ。

 cogme cupは過去5回開催され,それらすべてがオンラインで行われた。その実績は参加企業85社,参加者399名,協賛企業50社(全5回分),YouTubeでの配信再生数3万6000回(全5回分)となっている。最後の配信再生数3万6000回は,社会人向けのアマチュアeスポーツ大会としては,結構いい数字ではないかと三瀬氏はコメントしていた。

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 そうやって回を重ねるごとに順調に数字を伸ばしていったcogme cupだったが,実は2022年5月に開催した#4のときに壁にぶつかったという。参加企業60社(応募70社以上),参加者180名以上(控え選手含めず)という状況の中,エイプリルナイツの担当部署のスタッフはわずか3名。その圧倒的な人的リソース不足に,業務効率化を余儀なくされたそうだ。

 どのような手段で業務効化を図ったのかについては,3つの事例が示された。1つめは「スコア集計システムの開発」で,それまで手動で行っていたスコア集計を,ランキングを出して配信するまで自動化したシステムを自社開発したとのこと。高価な機材やソフトを使えば同じようなことは実現できるが,eスポーツ大会はあまり予算がないケースも多いため,こうして事例を公開することで参考にしてもらえたらと三瀬氏は話していた。

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 2つめは「Discord Botの開発」で,Discord上の各チームのチャンネル作成や,各チャンネルに参加できる権限の付与などを自動化した。これにより各チャンネルの作成がスムーズになっただけでなく,違うチームのチャンネルに入ってしまうといったトラブルもなくなったという。また参加者のチェックイン作業を,Discord上のボタンを1クリックで行えるようにしたことも紹介された。

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 3つめは「Tech系企業の強みを活かしたプロジェクト管理」で,三瀬氏は実際に大会運営に使っているツール群を紹介し,「大会の規模が大きくなっていくにつれ関係者も増えるので,導入コストが低いツールを活用するとコスト削減になる」と解説。とくにプロジェクト管理ツール「Notion」はUI/UXが優秀なため,エンジニアでなくとも使いやすいと話していた。

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 そうした効率化を経て開催されたcogme cup #5は極めて好評で,事後アンケートにて「イベント全体の満足度」と「イベント運営の進行・対応」の項目は,満足度100%という結果となった(※前者は「普通」という回答を含めた場合)。また「cogme cup出場を目指して企業eスポーツ部を設立した」「モチベーションがなかなか保てない中,cogme cupがあるから頑張れた」という声も寄せられたという。

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 加えて出場企業と協賛企業が協力して新たなeスポーツイベントを開催したり,企業同士が互いの製品を持ち寄ったコラボが行われたり,あるいは協賛企業のサービスを導入する参加企業が現れたりと,ビジネス面でもさまざまな効果があったそうだ。
 さらに三瀬氏は,新規参加とリピート参加のバランスがよいことを挙げ,「試しに1回やってみて『考えていたのと違った』と次から参加しなくなる企業が多い中,それを上回る形で新規参加企業が増えている」と話していた。

 最後に三瀬氏は,2025年までに実現したいこととして「企業eスポーツが企業課題を解決する手法のひとつとして認知される」「ゲームプレイ,または観戦や応援がメリットになる時代へ」「企業eスポーツの祭典を各社と連携して実現」の3つを挙げ,セッションをまとめた。


企業や地方自治体がeスポーツに取り組んだ事例3つが紹介に


 第3部では,2つの企業と1地方自治体から,eスポーツに関する取り組みの事例が紹介された。JCOM メディアソリューション本部 徳原氏は,自身が中心となって立ち上げた同社のeスポーツ部を紹介。

徳原氏
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 それによると,そもそもJCOM eスポーツ部は東京ゲームショウ2018のPUBG企業対抗戦出場のため設立されたとのこと。その約半年後,2019年3月に第1回PUBG MOBILE社内大会を企画・開催したところ,約30名が参加。このときはメディアソリューション本部の部長に開会の挨拶を依頼することで,“単なる遊びではない”感を出したという。
 これが好評だったので,同9月にはeスポーツ部の活動を通じて知り合った社外の企業eスポーツ部60名を招聘し,100名規模の第2回大会を開催。さらに当時の社長に開会のビデオメッセージを依頼することで,社内の誰からも文句が出ない形に持っていったそうだ。

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 2020年1月からはコロナ禍の影響を受け,eスポーツ部の活動はオンラインで参加可能な大会優勝を目標にすることとなった。競技種目も増やし,「Apex Legends」「eFootball」「VALORANT」の3部門を設立した。

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 こうしたeスポーツ部の活動を通じて得られたメリットとして,徳原氏は「地域,性別,年代,雇用形態の垣根を超えた社内コミニュケーションの実現」「さまざまな大会に出場することによる,他企業との繋がり」「コストのかからない企業PR」「愛社精神の醸成」「新規ビジネスへの活用」を挙げていた。

 物流会社・大阪デリバリーの副社長 木田氏は,同社にeスポーツ部を立ち上げた経緯や得られたメリットなどを紹介。それによると,とあるスタッフと面談する中で「将来はスポンサーを集めてeスポーツのチームを結成したい」
という夢を聞かされた木田氏は,会社で取り入れたら話題性があり、また,せっかくならそのスタッフにチームを率いてもらいたいとの想いから,社内にeスポーツ部を作り,そのスポンサーを大阪デリバリーが務めることを提案。さらに,知名度が高いわけでもない会社がeスポーツ部を作ったといっても話題にはならないと考え,週5日勤務のうちの8時間,すなわち丸1日分をeスポーツ部の活動に充てることにしたそうだ。それが2019年6月のことだった。

木田氏
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 そうしたeスポーツ部の活動は,社内ではまだ大きな効果を出せてはいないが,社外からは反響があったとのこと。まず木田氏の狙いどおり,「物流会社がeスポーツ参入!」と話題を呼び,日経新聞電子版や業界紙,ゲームメディアなどの取材を10回前後受けることとなった。また「物流×eスポーツ」で検索をかけると大阪デリバリーが上位に表示されるようになったため,SEO対策をしなくとも求職者や顧客先に見てもらえる機会が増え,結果として採用の応募数や新規の問い合わせなどが増加しているという。

 とくに効果が大きかったのは高校新卒者の採用で,高校1校あたりに2000社以上の求人票が届くという状況の中,eスポーツ部があることによって変わり種の中小企業として教師や生徒の目に留まるようになったとのこと。2019年には1ケタにまで落ち込んだ高卒採用者が,翌2020年には23名に増加。続く2021年,2023年には30名を超える結果となった。また,eスポーツ部を設立したいと考えている高校から相談を受けることもあるそうだ。

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 群馬県 産業経済部 戦略セールス局 eスポーツ・新コンテンツ創出課 課長 齋藤氏は,eスポーツを用いた同県の地方創生への取り組みを紹介。それによると,群馬県では「高い集客力(オン&オフライン・国内外)」「若者層への訴求力がある」「年齢,性別,身体能力等の差が出にくい」「オンライン参加が可能」といった4つの特性から,eスポーツに注目しているという。

齋藤氏
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群馬県が主催するeスポーツ関連イベント
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 齋藤氏は,それらの特性から「eスポーツは,地域課題を解決する手段として“最強”かもしれない」と語り,群馬県ではeスポーツを推進するために「実証」と「開催支援」という2つの方策を持って対応していることを紹介した。
 まず実証面では,世界遺産の富岡製糸場や,群馬県庁前 県民広場でeスポーツイベントを開催するなど,県民のeスポーツに対する理解を深めたり,実際に見てもらったりする取り組みを行った。

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 そうした取り組みを数年続けた結果,2023年には民間企業がeスポーツイベントを開催する運びとなったという。

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 また開催支援の面では,eスポーツを活用した地方創生を推進する団体などに,機材を貸し出してしていることも紹介された。

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イベント第4部では,cogme cupのエキシビションマッチが行われた。会場からは,過去5回のcogme cupにて10位以内にランクインした企業eスポーツ部8チームが参戦。残りチームはオンラインから参戦し,計20チームが腕を競った
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