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eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から
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印刷2019/04/09 12:00

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eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から

画像(009)eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から

 はじめまして。但木といいます。eスポーツという「ゲームの対戦をコンテンツにして大会を開いたり動画の配信をしたりする」業界で,アナリスト・プロデューサーとして働いています。2016年にゲーム業界に入り,そこからeスポーツに関わるようになりました。eスポーツで扱われるタイトルをプレイすることも,観ることも好きなのですが,ゲームは全然うまくないのが残念です。

 そんな自分がどうやってeスポーツの界隈で働いているのかというと,業界を俯瞰で分析するスキル……もう少し具体的に言うと,数字を使って資料を作ったりレポートを書いたりするスキルを駆使しています。「2016年からゲーム業界に」と書きましたが,その前はコンサルティング会社でデータ分析する仕事なんかをやっていたので,そういうことは得意中の得意です。
 例えば昨年,国内eスポーツ市場規模関連リンク)というものを計算しました。2018年の市場規模は48.3億円ですが,これはスポンサーシップ,チケット販売,アイテム課金・賞金といったカテゴリ別にさまざまな場所からデータを集め,ある部分は前提を置いたうえで計算ロジックを組み上げ,最終的な数字を算出しました。

世界屈指の盛り上がりを見せるIntel Extreme Masters Sydney(2017年)
画像(001)eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から

 2018年は,多くのメディアがeスポーツという単語を取り上げ,ある種のトレンドのようにeスポーツが扱われてきました。皆が「eスポーツはキテる」「これから流行る」「市場が成長する」となんとなく思っていたのですが,それを裏付けする数字がありませんでした。
 数字は「なんとなく」を“確信”に変えます。「国内eスポーツ市場規模は48.3億円,年間平均成長率は19.1%」という数字があれば,市場が大きくなっている,という仮説に証拠を差し出すことができます。
 私はeスポーツに関わる数字を作ったり,いろいろなソースから引っ張ってきたりして,仕事をしています。レポートを書くこともそうですが,eスポーツの番組・イベントの制作といった企画を作るときにも,数字を駆使して,関係する人たちを説得していきます。

 eスポーツを含むエンターテイメント業界には「当たるも八卦当たらぬも八卦」という思想が蔓延しているように思います。クリエイティブな世界に理屈は通用しない。何が当たるかはプロデューサーにもディレクターにもわからない。あれほど一世を風靡した「けものフレンズ」の第2期にだって,以前ほどの勢いがないのです。いわんやほかのコンテンツをや。
 いまeスポーツ業界を動かしているのは,関係者の熱意幻想です。「この大会を開催すれば,絶対に人が来る! この選手はすっげぇ人気があるから間違いない!」そんな主催者の熱意に負けて予算をとるスポンサーもいます。

弊社もEVO Japan 2018では主催者側に回りましたが,そりゃもう大変でした(編注)
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画像(006)eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から 画像(008)eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から

 もちろん熱意と幻想はeスポーツに欠かせないものですが,これだけでは長続きしません。いつか必ず冷める時がやってきます。大会が振るわなかったとき,思ったように視聴者が集まらなかったときに,スポンサーは蜘蛛の子を散らすように引き上げていくことでしょう。
 企画を作るときにも,企画が終わった時にも,数字が必要です。当たりそうか,当たらなさそうか,当たったか,当たらなかったか。客観的なデータを用いて分析することが,その先へとつながるアクションなのです。

 難しいデータサイエンスの知識は必要ありません。人工知能やビックデータ解析手法を取り入れる必要もありません。視聴者数,その性別や年齢といった属性,視聴者流入元の比率といった,複雑な計算なんか伴わない数字で良いのです。重要なのは,「その数字を用意できるように仕組みを作っておくこと」です。深い話はのちのちお話します。

画像(011)eスポーツの数字の話 Round00:まずは自己紹介から
 eスポーツに関連する数字をインターネットで探すには,コツが必要です。無料で公開されているデータはたくさんあるのですが,レポートの形式でまとめられていることも多く,そのほとんどが英語です(この業界で働くためには,英語がメチャクチャ大事ですよ)。ググる,の一歩先を行かないと,数字は見つかりません。
 ニューズーという調査会社が「グローバルeスポーツマーケットレポート」という資料を無料で公開(PDFリンク)しているのですが,一時期,あらゆるメディアがこの資料を使っていました。猫も杓子も「グローバルeスポーツマーケットレポート」の市場規模やらeスポーツファン数を引用していました。数字の探し方がわからないので,とりあえず誰かが見つけた数字に飛びついたのでしょう。

 本連載では,インターネット内外に転がっているeスポーツに関する数字を拾いながら,その数字の見かたや同種の数字の見つけ方といったことを書いていきます。私の仕事の“虎の巻”です。自分と同じスキルを持った人材が世の中にあふれていくことになるのですが,eスポーツ業界発展のために,そこは見なかったことにします。
 ですのでお願いです。数字を駆使して,企画を山ほど作り,あなたの上司やスポンサー,金融機関を説得して,お金を引っ張ってきてください。それがeスポーツの発展の礎となります。お金回りをよくして,eスポーツ業界を持続可能な産業へと成長させるためには,あなたの熱意と幻想,そしてキレのある数字が必要なのです。

 それでは次回以降も,よろしくお願いします。

著者紹介:但木一真
1985年生まれ。ゲーム業界/eスポーツ業界のアナリスト。カドカワ株式会社にて,ゲーム業界のマーケティング分析業務に従事しているとき,総務省より公表されている「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」を執筆したことをきっかけに,eスポーツ業界の専門家としてさまざまなレポートを発表。2019年4月よりフリーランスとして活動をはじめ,eスポーツ業界に関する記事執筆,コンサルティング,イベント・コンテンツのプロデュース業務を行っている。
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