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1990年代のゲームをフィーチャーした「あそぶ!ゲーム展 ステージ3:デジタルゲーム ミレニアム」が開催中。今日のゲーム市場はここで築かれた
コンピュータゲームの最初期をフィーチャーした「あそぶ!ゲーム展 ステージ1:デジタルゲームの夜明け」,家庭用ゲーム機が普及し始めた時代をフィーチャーした「あそぶ!ゲーム展 ステージ2:ゲームセンターVSファミコン」に続く今回は,家庭用ゲーム機に光学ドライブや高度な3D映像処理機能が搭載されて,ゲーム市場の大きな転換点となった1990年代を中心に,2000年代初期までの時代がフィーチャーされている。
なお,チケットは常設展示の観覧も含めて大人510円/小中学生250円(各税込)。会期は2019年4月7日までと予定されており,週初の平日および年末年始は休館となる。
格ゲーの一大ブーム
ちなみに,代表的なeスポーツ大会の1つである「Evolution Championship Series(EVO)」の前身的なイベントが始まったのも,この時期だ(具体的な起源については諸説ある)。
ジャンルの細分化とキャラクタービジネスの確立
格ゲーコーナーに続くのは,“ジャンル細分化時代のデジタルゲーム”と題されたコーナー。ここには「ぷよぷよ」や「レイフォース」といったアーケードゲーム,「ときめきメモリアル」や「ポケットモンスター 赤・緑」といった家庭用ゲームが展示されており,ハードのスペックアップで多様性が爆発的に増大した時代の雰囲気を感じられる。
ここで注目してほしいのが,これらのタイトルの要素が,今日のタイトルにも多く引き継がれているというところ。「ポケットモンスター」や「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」などのシリーズは言わずもがな,直接的なところだと「ときめきアイドル」(iOS / Android)や「ラブプラス EVERY」(iOS / Android)は「ときめきメモリアル」の系譜,PC/PS4版が先月発売された「428 封鎖された渋谷で」は「弟切草」の系譜を継いだものであると言えるだろう。間接的なところで言うと,「レイフォース」の“誘導レーザー”という演出は,近年のタイトルでも見られるものだ。
ビジュアルやサウンドといった演出面を重視したタイトーの「レイフォース」 |
コンパイルの「ぷよぷよ」は,パズルゲームにRPG「魔導物語」のキャラクターと“漫才デモ”を導入して,キャラクター人気の獲得に成功した |
32bit機の衝撃
1990年代のゲーム市場を語るにおいて外せないのが,いわゆる“32bit機”のゲームハードだ。今回,とくにPlayStationは“プレイステーションによる変革”という独自のコーナーとしてまとめられている。当時の筆者はセガ派だったので「ぐぬぬ」と思わなくもないが,「リッジレーサー」や「メタルギア ソリッド」といった“新世代”を強く感じさせてくれたタイトルや,ネジコンやPocketStationといった新しい形のデバイスが,当時の世の中に強いインパクトを与えたのは確かだ。
PlayStationコーナーに隣接する“32ビット機戦争と広がるデジタルゲームの楽しみ方”コーナーには,セガサターンやニンテンドウ64,
また“広がるデジタルゲームの楽しみ方”を紹介するものとして,LSIゲームの「たまごっち」やバーチャルボーイの「レッドアラート」,PC-9800(PC-9821 Xa13での展示)の「東方Project」シリーズ初期作,PCの「Half-Life」や「ウルティマオンライン」(接続サーバーは現行のもの)も展示されている。
早すぎた立体視ゲーム機・バーチャルボーイ。試遊できるレッドアラートは,バーチャルボーイ用ソフトの中でもとくに評価の高い,後方視点系のシューティングゲームだ |
企画者がイグノーベル賞を受賞したり,新語・流行語大賞に選出されたりした初代「たまごっち」。ちなみに,来月には最新機種である「たまごっちみーつ」が発売される |
新基軸を模索するアーケードゲーム
家庭用ゲーム機のさらなる進歩
最後の“21世紀の始まりを告げる家庭用ゲーム機”コーナーでは,PS2やゲームキューブといった,21世紀序盤に活躍したハードが展示されている。この時代になると写実性を意識した3Dグラフィックス表現が可能となっているので,退出したあとに入口から入り直して「バーチャファイター」などと見比べてみると,10年足らずの間に起こった技術発展に驚けるだろう。また,PS2で標準となったDUALSHOCKやゲームキューブのコントローラは,改修を加えられつつ現行ハードにも継承されているので,現在への直接的な繋がりを感じられるポイントだ。
そのほか,ゲームにおける本格的なAIの導入事例としてドリームキャストの「シーマン」が展示されていたり,ネオジオやNAOMIといった家庭用ゲーム機とアーケードゲームの共通企画採用例が展示されている。
筆者は3年前のステージ1から「あそぶ!ゲーム展」を見てきたが,ゲームに関して特定時期のシェア争いやプラットフォーム展開に留まらず,10年単位で市場を総括するような企画展は珍しく,その意味で非常に有意義なものだと感じられた。これまでの開催を見逃したという人も,会場で販売されている前々回・前回のカタログを読むなどして,ゲームの歴史に想いを馳せてほしいところだ。また,地方在住で来館が難しいという人も,函館開催や香川開催といった前例があるので,そういった機会に期待しよう。
遠藤雅伸氏 |
馬場 章氏 |
4Gamer:
「あそぶ!ゲーム展」最終章にあたってのコメントをお願いします。
遠藤雅伸氏(以下,遠藤氏):
「3回やろう」という前提でスタートした企画なんですが,そもそも3回できるかどうか分からなかったんですよ。それが,状態の良い機械を用意できて,素晴らしい形で開催できたので良かったです。3回目は現代につながる部分でして,僕としては「ゲーム業界の一番濃いところ」だと思っています。
馬場 章氏(以下,馬場氏):
最終章なので,現在までのゲームを取り上げたかったのですが,1990年代以降はゲームソフトやゲーム機があまりに多すぎました。でも「どうしても2000年を越えたい。今世紀までつなげたい」という思いがあったので,2001年まで取り上げています。
2018年10月は,一番最初のコンピュータゲームの1つと言われる「Tennis for Two」が1958年10月に発表されてから60年目となるんです。東洋的な考え方で言うと還暦,人生が一周して原点に戻る年を迎えたわけですよね。そんな年に,eスポーツという新しい動きが出てきたり,WHOでゲーム依存症が新しい疾病として認定されたり,正と負の動きが出てきているわけです。それらについて原点に戻って考えたいというのが,「あそぶ!ゲーム展」の隠された狙いとしてありました。
デジタルゲームが続く限り,それを巡って考えなければいけないことはたくさんあると思いますので,その確認のために,実現するかは分かりませんがステージ4やステージ5も続けていきたいですね。
4Gamer:
この企画展の見どころを挙げるとしたら,どこでしょうか。
遠藤氏:
ただ見るだけでなく,展示品を遊べるところですね。ゲームって,過去の記憶がナラティブ(プレイヤーの主観的な物語)になって,そのタイトルの良さとして語られるんですけれども,プレイすると「このゲームはこうだったのか」という再発見があるので,そこに展示の意義が強いかなと思います。
馬場氏:
IPホルダーとの兼ね合いもあって全部のゲームを遊べるわけではありませんが,大半は試遊できる形で提供できているので,「あそぶ!ゲーム展」のコンセプトは貫けたと思います。また,ステージ1から続く特徴として,ゲームを作ってきた開発者,ゲームで遊んできたプレイヤー,ゲームを売ってきたバイヤーといった各方面の視点から取り上げているので,多角的に見ていくことができます。
4Gamer:
1990年代になじみの薄い20代以下のゲーマーに見てほしい部分などはありますでしょうか。
遠藤氏:
「今でも続いているシリーズ,最初はこうだったんだ」という驚きとか,技術的な進歩とかが面白いんですけど,なかなか分かりにくいんですよね。そう言えば,アーケード基板は見どころかもしれません。今のアーケードゲームは軒並みPCで動いていますが,それと異なる“ゲーム専用の汎用ハード”は,若い人だと勉強になるかなと思います。
馬場氏:
私としては,「知らないゲームで遊んでください」ですね(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
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