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Replayは「20年前のゲームが,今なお私たちにとって機会になり得るか」という問いから始まった。当初は「昔の資料を引っ張り出して公開すれば十分」と考えていたが,実際に見えてきたのは過去の名場面だけではなかった。10年以上も生き続けてきたファンダムの記憶だ。ゲームが止まってもファンは止まらず,コミュニティに「また遊びたい」と投稿し,非公式のファンゲームを作り,ラップの歌詞を書き,「1年間毎日このゲームを遊びたい」と書き込む人さえいた。「私はIPとは結局,そのファンダムだと信じています。強く言えば,ファンがいなければIPはない」とオ氏。Replayは過去資産を取り出すのではなく,ファンの長年の記憶を“新たな創作につながる形”に整えることから始まった。
では,なぜ今なのか。かつても旧IPの活用は考えたが,コストが高すぎた。古いコードの構造を理解し,どのリソースがどこで使われているか手作業で確認する必要があり,経験豊富な開発者が必要で,一から作り直すほうが楽なことも多かった。だが今は違う。AIがコード分析・ファイル整理・リスク候補の洗い出しを助け,UGCエコシステムも成熟し,小さなチームでも商用ゲームを作れる。ファンの記憶が生きており,それを新たな創作の素材に変える道具とエコシステムが揃った――だから今動く,というわけだ。
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ただし記憶だけでは足りない。記憶が再び集まり,遊ばれ,語られる中心的な体験=Core(コア)コンテンツが要る。ファンが繰り返し遊び,語り,他人に勧める中心の場だ。このCoreをまず再建して初めて,幅広い年齢・性別に届くフランチャイズへと広がり,さらにグッズ・映像・展示といった二次展開が自然に続き,最終的にエバーグリーンIPと呼べるようになる。そこでReplayの第一歩は,原作をよく知る開発者を選び,強いCoreを作るための素材を準備することに置かれた。
公開するIPの選定基準は3つ。(1)今も愛するファンがいるか,(2)作り直すコードと資産が存在するか,(3)ドキュメントが残り,法務・運用上の問題なく外部提供できる形にパッケージ化できるか。この基準を満たすIPが選ばれた。現在Replayでサービス中のIPは状況がそれぞれ異なる。すでにCoreを持つIPは,既存体験を損なわずに拡張する明確な基準が要る「フランチャイズ段階」。一方,サービスが終了したIPは,ファンはいてもCore体験が失われているため,原作の手触りを再解釈し,ファンの記憶を最もよみがえらせるCoreコンテンツを作るパートナーが必要になる。単一の基準を当てはめず,各IPの状況に合うパートナーを探し,開発に本当に必要な資産を準備したという。
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ところが,パートナーに渡す資産を整理しようとフォルダを開くと,そこにはゲームリソースだけではない“流出厳禁”のものが眠っていた。外注契約書,開発者の履歴書,社外に出してはならない各種資料。最も衝撃的だったのは,2004年に開発チームが開いたワークショップの写真。「フォルダを開いたら,自分が知っている人の顔が写っていた。正直“これは始めるべきじゃなかった”と思いました」とオ氏は振り返る。こうして最大の懸念は,無検査・無審査でこれらを公開したら何が露出してしまうか,となった。
そこで問題を5つに分類した。(1)社内資料と個人情報,(2)絶対に共有してはならないもの(商用ミドルウェア,社内利用のSDK,外部連携モジュール,提携先の画像),(3)セキュリティと運用(認証ロジック・関数,内部サーバーアドレス,キーコマンド,運用ツール),(4)ログとダンプ(一見ただの参考データだが機微情報を含み得る),(5)IPの品質。とくに(5)は,基準なくライセンスを開放すると低品質コンテンツが積み上がり,復活を待つファンの期待をかえって損なう恐れがあるため重大だとした。要は「データが存在するか」ではなく,「外部に出して安全な状態にできるか」が問われた。
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これに対し構築されたのが「Replay Clearance」だ。原本素材を,パートナーに渡せる“安全な検証済みパッケージ”に変えるシステムである。原本コードとシーンのパスを入力するとAIが全ファイルをスキャンし,危険に見えるものをフラグ付けして報告する。人が全ファイルを見るのは不可能なので,システムが挙げた候補と例外に判断を集中させる。検出対象は,カメラ風ファイル名の画像やワークショップ写真,契約書・履歴書などの個人情報文書,パスワード・秘密鍵・トークンといったセキュリティキーワード,チートコードなどGM/管理ツールのキーワード,ログ・ダンプ・クラッシュファイルといった運用痕跡,再配布クリアランスが要るSDK・ミドルウェアなど。「すべての問題をなくすのではなく,リスクを可能な限り減らすことが肝心」だという。
例として,最近外部開発者に送ったサーバーコードが挙げられた。そこにはパスワード検証や暗号化関数の具体的な実装が残っていた。そのまま渡せば,旧ネクソンサービスの認証方式と実装が丸見えになり,「単なる漏洩ではなく,絶対に管理すべき領域の制御を失う」ことを意味する。古いコードゆえパートナーにとっても深刻なセキュリティ問題になりうる。そこで外部共有版には「ログイン検証が必要」という基本的な目的とロジックだけを残し,あとは強化が必要だと伝える。開発者が必要とするのは旧来のセキュリティ手法ではなく,「どう動くか,各ステップに本来何があったか」という流れのガイドなのだ。
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もう一つがクリーンルーム方式のコード書き換えだ。たとえばユニットの修理コストを計算するコード。パートナーは「この関数がどう動くか」を知る必要があるが,原本のまま渡すと運用パラメータや例外処理・サーバー検証フローといった,他のネクソンサービスに影響しうる機微な部分まで露出する。そこでロジックを読み,何をするかを理解したうえで,同じ機能を別の書き方で書き直す。開発者は必要な挙動を理解でき,ネクソンは原本ロジックを渡さずに済む。
外部ミドルウェアやSDK(サウンド/ログ/認証モジュール,各種プラットフォーム連携モジュール)も同様だ。社内利用,ライセンス範囲の違い,再配布権がない,ネクソン連携モジュールは露出厳禁??といった理由でそのまま提供できない。Replay Clearanceでこれらを特定・除去するが,ただ消すだけでは何も動かず,かえって混乱を招く。そこで「何を除去し,元々どんな機能を提供していたか」を説明し,最新技術や最新/無償ライセンスで置き換える方法をガイドとして補う。こうして渡されるのが,パートナーが実際に着手できるIPパッケージ(IP利用権とガイドライン+整理済みリソース+参照用の実装コード)だ。
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開発支援ツールも用意された。ピクセルアートのゲームでは,キャラの向き・装備・アクション・状態に応じて最大約400フレームもの画像が必要になる。これを毎回手描きするのは大変なため,原作のドット感・配色・シルエットを保ったまま素早く参照できるLoRAを支援ツールとして準備中だという(最終アセットを自動生成するものではなく,提供にはまだ時間がかかる)。さらに,旧ゲームをWebGLにコンパイルし,インストール不要でブラウザ上で遊べるよう移植。文章では伝えにくい「手触り」を直接体験させ,パートナーのオンボーディングや社内説明の負担を減らし,ユーザーを新作へ橋渡しするUA広告のランディングページにもなる。会場では『Tactical Commanders』『Elancia』がブラウザで動く様子が示された。
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原本のレビュー,コアパッケージ作成,開発支援ツール,契約・精算まで――大組織が必要になりそうなこの全体を,ネクソンはAIとごく少人数のチームで運営している。数千件の応募を選別する「Creator Lens」,Slack・Notion・Confluence・ファイルサーバーに散らばる情報を業務文脈に束ねて「これをやるべき」と能動的に指示する“チームリーダーの助手”「Merlin」,契約状況・審査段階・精算準備・オンボーディングを一元管理するダッシュボードなどだ。
だが本当に重要なのはツールそのものではない。PM自身が,本当に必要なツールを自分で作って使っている点だ。同チームは一時利用のアプリを作って数回で捨てる「インスタントツール」を多用する。残すと保守地獄に陥り,AIの進化が速いため過去のツールを使い続けると新技術を逃すからだ(実際Merlinも,Claudeが各種オフィスツールと統合され不要になった時点で“引退”したという)。「人が判断基準を決め,AIが反復作業を積極的に担う」からこそ少人数で回せた。なおCreator Lensは応募に優先度を付けるだけで,一件ずつ必ず人が確認し,法務・セキュリティ・会計など専門判断は社内部門の支援を得ている。
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設計はすでに稼働中だ。これまで1,000件以上の応募があり,数十のパートナーと契約済みまたは交渉中。パートナーはすでにパッケージを受け取り,開発段階にあるという。とはいえ構造を作れば全部解決,とはいかない。パートナーは原作ファンが受け入れられる解釈を見つけ,持続可能なビジネスモデルを設計し,ライブ運営までこなさなければならない。「ゲームを作ることと運営することはまったく別」。ネクソンの役割はIP開放で終わらず,IP理解とライブ運営のガイドライン,必要なレビュー支援を提供することだとした。
ロードマップとしては,これを一度きりの公開で終わらせず,IPを継続的に発掘・レビューしてパッケージ化し,クリエイターをオンボーディングしていく。まずパイロットIPと最初のパートナーで最初のユースケースを作り,次はサイクル全体を標準化・マニュアル化して新パートナーが試行錯誤なく次段階へ進めるようにし,同じサイクルを新IPへ広げてフライホイールを回しスケールさせる。「20年前のゲームが今も機会になり得るか,という問いへの答えはイエス。ファンが今も覚えていて,その記憶のうえに新たな作品を積み重ねられるなら」――クリエイターには成功の機会を,ファンには新たなコンテンツと記憶を――と締めくくった。
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Q&Aでは鋭い質問が続いた。あるメディアは「収益性が低くサービス終了した過去のゲームを,かつてのプレイヤーの情熱を“無償労働”に変えてよみがえらせている――歪んだ見方もできるのでは」と問うた。オ氏は「全社を代表はできない」と前置きしつつ,「IPを放置したというより,内部事情で諸要素を比較考量せざるを得なかった。AIとUGCの発展で,既存資産だけで高品質なゲームを作れる時代に入った今,外部に開いてネクソンと外部クリエイターが共に栄えるWin-Winのエコシステムを築く時が来た。『メイプルストーリーワールド』のような制作ツールに加え,Google Play・App Store・Steamといったより広いプラットフォームを舞台にするIP拡張の試みだと捉えてほしい」と答えた。
「アートやサウンドなど使いやすい資産を先に出して認知を広げる手もあったのに,なぜ最初から難しい道(クリエイターを募って制作させる道)を選んだのか」という問いには,「資産をそのまま出せばIPは“ただのアセット”で終わる。ブランドIPとは,ファンが今も覚え,活発なファンダムを持つもの。資産だけ出しても,運良く似たキャラが量産されても,それだけでは“ポロロ”級の自社IPにはならない。だからCoreをまず確立し,その周りに二次コンテンツが“衛星都市”のように生まれる形を狙い,あえて難しい道を選んだ」と説明した。
「新会長の就任後,クレイジーアーケードなどのサービス終了計画が報じられた。クラシックIPと位置づけ直したのはReplayを見据えた選択とも見えるが,再ローンチ後に再び収益性の問題が起きたらどうするのか」という質問には,「それは私たちが背負うべき負担。基本は外部クリエイター次第で,人為的に延命・復活させるための追加対応はしない。最終的には市場の選択だ。クレイジーアーケードやブームヒルのようなコンテンツの拡張可否はまだ決めていないが,機会を提供できるなら,本当に面白いゲームが出るよう支援するのが私たちの役割。ユーザーに受け入れられなければ,それは市場が自然に働いた結果だと思う」と率直に答えた。




















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