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灯台が主人公のアドベンチャー「Keeper」の世界を作る環境アート。奇妙で手作り感あるビジュアルを生む少人数チームの工夫[GDC 2026]
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物語は,長いあいだ忘れ去られていた灯台が目覚め,霊力を帯びた1羽の海鳥とともに理解を超えた場所を目指して旅をするというもの。ただ,登場するキャラクターにセリフがなく,さらに世界観や状況を説明するナレーションもないため,グラフィックスから情報を読み取りながらプレイを進めていくことになる。
UIもほとんど表示されない世界は美しく,手作り感のあるアートと,不思議でどこか温かみもある世界観が印象的な作品だ。
[プレイレポ]灯台が歩き出した? Double Fine Productionsの新作「Keeper」が描く,世界を照らす不思議な旅
Double Fine Productionsが2025年10月17日にリリースした「Keeper」は,灯台が主人公のアクションアドベンチャーだ。セリフだけでなく,物語・世界観を説明するナレーションもないが,画面の中からキャラクターの感情が伝わってくる不思議な作品となっている。
アメリカ・サンフランシスコで開催された「Game Developers Conference 2026」(以下,GDC 2026)の2日目には,セッション「The Modular and Expressive World Art of 'Keeper'」が行われた。
ステージには,同社でPrincipal Environment Artist(主任環境アーティスト)を務めるNick Maksim氏が登壇し,本作の世界を形づける環境アートについて解説した。
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セッション全体を通して語られていたのは,小規模なチームでありながら,いかに独自性の高いビジュアルを成立させたかという点だった。中心にあったテーマは,モジュラーアセットの再利用性と,手作業ならではの表情をどう両立させるかである。
Maksim氏によれば,「Keeper」が目指していたのは,手作り感があり,シンプルで,どこかシュールな世界だったという。
さらにシネマティックなムードを重視しつつ,作品全体に「予想外の生命感」を通わせることが大きな目標だったと話す。
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特筆すべきは,そうした強いアートビジョンを支えていた環境チームが,実質ごく少人数だったことだ。
限られた人員で制作を進めるため,高い再利用性を持つモジュラーな仕組みが不可欠だった一方,単なる効率重視では終わらない,作家性の宿った空間づくりも求められていた。
その解決策として紹介されたのが,「Keeper」独自の環境制作パイプラインである。
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工程は大きく3段階に分かれていた。第1段階では,一般的な立方体ベースのラフなブロックアウトではなく,セミハイポリのモデルを用いて,早い段階から世界のムードや構図,ライティングの方向性を確認していたという。
この判断がとても重要で,単にレベルの構造を組むのではなく,「その場所がどう感じられるか」を最初から検証することで,作品全体のトーンを見失わずに済んだそうだ。
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その初期モデリングで大きな役割を果たしたのが,3Dモデリングソフトウェア「Adobe Substance Modeler」だった。
VRベースのこのツールは,現実の粘土造形に近い感覚で扱えるのが特徴で,とくに木や岩など有機的な形状を素早く作るのに向いているという。
Maksim氏は,枝を引き出し,ひねり,太さを調整していく操作を例に挙げながら,2D的なインタフェースのソフトよりもはるかに直感的で,制作の流れを止めにくいと説明した。自然なうねりや抑揚を与えやすく,シルエットの面白さを素早く追求できたことも大きかったようだ。
VR空間のなかで常に多角的にモデルを確認できるため,偶然生まれる“良い崩れ”や“良い違和感”を拾いやすい点も,「Keeper」のシュールで生命感のある造形と相性が良かったのだろう。
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第2段階では,デジタル彫刻ソフトウェア「ZBrush」による表面の作り込みや,テクスチャ,マテリアルの整備が行われた。
ここで紹介されたのが,講演内で「MRMN」(Mask, Roughness, Mask, Normal)と呼ばれていた独自のマテリアル運用だ。法線やマスク,ラフネスなどの情報を効率的にパックし,限られたメモリで最大限の表現を引き出す設計になっている。
技術的にはかなり踏み込んだ説明もあったが,重要なのは,こうした最適化が単なる軽量化のためではなく,世界全体の一貫した質感表現を支える基盤になっていたことだろう。
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また,タイル状のテクスチャセットを用いることで,1つのアセットに対して地面からの汚れ,上部にのせた苔,エッジの色味変化などを柔軟に加えられるようにしていたという。
これにより,同じモデルでも配置場所やライティング条件に応じて異なる表情を持たせられる。設定を複数のアセットにコピーする仕組みも用意されており,シーン全体の色調整を効率よく行えた点も小規模チームらしい工夫だ。
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第3段階でとくにユニークだったのが,手描きのストローク表現である。
「Keeper」では,画面内の硬いポリゴンの輪郭や,モジュラーアセット同士の接合部が目立ちすぎないよう,アーティストがストロークを個別に配置している。これは単なる装飾ではなく,シルエットを柔らかく見せたり,ノイズを抑えたりしていたほか,場合によっては絵画的な被写界深度のような効果まで担っていたという。
制作当初は別の方法も試していたが,画面上でストロークが増えすぎたり,見え方が不安定になったりしたため,最終的にはUnreal Engine内で使える専用のストロークツールを開発したとのこと。これによって,アーティストが必要な場所に必要なだけ筆致を足せるようになり,作品全体の統一感が大きく高まったようだ。
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セッション後半では,「Essence Morph System」と呼ばれる独自技術も紹介された。
これは距離フィールドの表現などを利用し,オブジェクト同士を有機的に変形・補完させる仕組みで,ゲーム内では橋の変形などに使われているという。
見た目の新しさだけでなく,既存のアセットをより多彩に再利用できるため,これも少人数開発において非常に効果的だった。島そのものが生きているような感覚や,プレイヤーを導くような不思議な存在感も,このシステムによって支えられているのだろう。
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講演を通して印象的だったのは,「小規模だから妥協する」のではなく,「小規模だからこそ,変化に強く,再利用しやすく,それでいて手触りを失わない仕組みを徹底して作る」という姿勢だ。
Maksim氏は最後に成功のポイントとして,「アートに合ったパイプラインを選ぶこと」「進行中の変化に対応できるツールを作ること」「メッシュ同士の干渉を早い段階から意識すること」,そして「制作途中でもより良い方法があれば柔軟に取り入れること」を挙げた。
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「Keeper」の環境表現は,単に美しい背景を作る話ではない。限られた人数と予算のなかで,世界そのものに手仕事の痕跡と奇妙な生命感を宿らせるために,ツール,工程,技術,美術が一体となって組み上げられていた。
その実践例として,この講演はインディーから中規模開発まで,多くのクリエイターにとって学びの多いセッションになったことだろう。
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- 編集部:Junpoco
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