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小さなスタジオが大きくなっても守ったもの。“不便さ”がリアルを生む「Kingdom Come: Deliverance II」の没入感重視設計[GDC 2026]
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印刷2026/03/13 11:41

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小さなスタジオが大きくなっても守ったもの。“不便さ”がリアルを生む「Kingdom Come: Deliverance II」の没入感重視設計[GDC 2026]

 アメリカ・サンフランシスコで開催された「GDC Festival of Gaming 2026」(以下,GDC 2026)で,「Getting the Sequel Right with 'Kingdom Come Deliverance II'」と題したセッションが行われた。

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 魔法もドラゴンも登場しない中世ヨーロッパを舞台としたリアリズム志向のオープンワールドRPG「Kingdom Come: Deliverance」。その続編である「Kingdom Come: Deliverance II」は,前作から何を受け継ぎ,何を変えたのか。
 また,独立系スタジオとしてスタートしたWarhorse Studiosが,最初の成功作によってチームと作品の規模が大きくなったことで,自分たちらしい作品作りにどう取り組んだのか。デザインと制作体制の両面から,続編開発の実例が紹介された。

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 登壇したのはWarhorse Studiosのクリエイティブディレクター,Prokop Jirsa氏だ。
 まずJirsa氏は,シリーズの出発点となった「Kingdom Come: Deliverance」の開発を振り返った。

 現在ではSteamでも高い評価を得ている同作だが,開発当初は資金調達に苦労し,コアなテーマもあって大手パブリッシャの支援を得ることができなかった。そこでチームはクラウドファンディングを実施し,コミュニティの支援によって開発を実現させた。

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 発売直後のゲームは技術的にかなり荒削りな状態だった。バグも多く,プレイ体験にフラストレーションが溜まる部分があったことは,当時のプレイヤーならご存知の通りだろう。そののちチームは約14か月にわたって修正と改善を続け,ゲームは徐々に完成度を高め,最終的に高い評価を得た。

 1作目の結果,大きな資本を得てスタジオ規模も拡大。より高いクオリティとボリュームで2025年2月に発売された「Kingdom Come: Deliverance II」は,高い期待の中で発売1年で500万本を販売するヒット作となり,プレイヤーの高評価も得た。

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 そんな2作目は,1作目の経験を踏まえどう作られたのか。チームが掲げた方針は非常にシンプルだった。

 「1作めのままに。ただしより大きく」

 つまり,荒っぽさも含めて本質は変えず,なおかつ大きなゲームとして作り上げようという考えだ。
 今回の講演では,この方針のもとでチームがどのようにゲームのビジョンを守りながら,システムデザインやナラティブを発展させていったのかが語られた。

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 まずJirsa氏が語ったのは,「ゲームの価値とは何か」というテーマだった。
 ゲームの価値は,シンプルに「楽しさ」で説明されることが多いが,氏は「ゲームの価値はそれだけではない」と考えているという。

 その例として挙げられたのが山登りだ。山を登る行為は決して楽ではない。疲れるし,汗もかく。それでも頂上に到達したとき,大きな満足感がある。それは単純な「楽しさ」とは少し違う種類の体験だ。

 同じことは映画にもいえる。たとえばスティーヴン・スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」は素晴らしい映画で得るものも大きいが,見終わったあとに「楽しい映画だった」と表現する人は少ないだろう。ゲームも同じだとJirsa氏は説明する。

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 心理学では,人の幸福には2つの種類があるとされている。
 1つは楽しさや快適さといったヘドニックな幸福。もう1つは意味や達成感,自己実現などに関わるユーダイモニックな幸福だ。

 ゲームはこの両方を扱えるメディアであり,必ずしもすべての要素が「楽しい」必要はない。没入感や達成感,学び,あるいは意味といった要素もまた,ゲームに価値を与えるものだ。

 そのためWarhorse Studiosでは,場合によっては楽しさを少し犠牲にしてでも没入感を優先するという判断をすることもあったという。
 こうした考え方は「Kingdom Come: Deliverance」シリーズの設計にも大きく影響している。

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 続いてJirsa氏は,ゲームデザインの話題として没入感(immersion)と摩擦(friction)という2つの概念を紹介した。

 まず没入感について。Jirsa氏は,昔のMMORPGを例に挙げた。
 たとえば「EverQuest」や「World of Warcraft」では,クエストを進めるためだけではなく,「ただその世界に存在したい」という理由でログインすることがあったという。
 Warhorse Studiosが目指したのは,そうした感覚をシングルプレイRPGで実現することだった。

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 開発チームの1人は,このゲームを次のように表現したという。

 「このゲームの主人公は世界そのものだ」

 Jirsa氏自身もこの言葉をとても気に入っていると語った。

 そのためゲームデザインの基盤となったのがリアリズムである。
 これは単に歴史ゲームだからという理由ではない。ファンタジーでもSFでも同じで,プレイヤーが「この世界ならこうなるはずだ」と感じることをきちんと実現することが,没入感を生むと考えているからだ。

 たとえばゲーム内には入浴のシステムがある。
 正直に言えば,ゲームプレイとしてはほとんど意味のない要素だ。しかし,それがあることで世界はよりリアルに感じられる。

 同様に,NPCがプレイヤーの格好にコメントする仕組みもある。
 裸で歩いていれば「服を着ろ」と言われるし,身なりが悪ければそれを指摘される。ゲーム進行には関係ないが,世界が生きているように感じられる要素で,こうした積み重ねによって没入感が作られている。

 本作には,膨大な量のセリフが収録されている。「Kingdom Come: Deliverance II」には約25万行のボイスがあり,そのうち10万行はオープンワールド内のバリエーション台詞だという。大きな作業量になるが,世界をリアルに感じさせるうえで重要な要素だと氏は語った。

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 もう1つの重要な概念が摩擦(friction)だ。これは,ゲームデザインの中であえて不便さを残す考え方を指している。

 多くのゲームでは,プレイヤーがストレスを感じないようにシステムをできるだけスムーズにする。しかし「Kingdom Come」シリーズでは,必ずしもそれが最善とは限らないと考えているという。

 その例として挙げられたのが鍛冶のシステムだ。UIはほとんどヒントを出さず,作業の効率も決してよくない。システムデザインとして見れば,決して理想的とは言えない作りだ。

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 それでもチームはあえてこの形を選んだ。理由はシンプルで,そのほうが本物の作業のように感じられるからだ。
 このように,少しの不便さや手間を残すことで,プレイヤーが世界の中で実際に何かをしている感覚を強める。それが没入感を生む重要な要素だと氏は説明した。

 次に話題はナラティブデザインへと移る。
 Jirsa氏によれば,オープンワールドRPGで物語を伝えることは,映画などと比べて非常に難しいという。
 映画では観客は最初から最後まで集中して物語を追うが,RPGのプレイヤーは自由に行動するからだ。

 プレイヤーはメインストーリーを進めることもあれば,サイドクエストに寄り道することもある。狩りやミニゲームに時間を使うこともあるし,数日プレイをやめてからまた戻ってくることもある。

 つまりRPGでは,物語が断続的に体験されることになる。そのため,ストーリーを伝えるのは非常に難しい媒体だという。

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 しかし一方で,RPGには映画にはない強みもある。それがキャラクターだ。
 プレイヤーは長い時間をかけてキャラクターと関わるため,物語の中で人物を深く描くことができる。
 この点は,ほかのメディアよりも強い部分だと氏は語った。

 そのため開発チームは,キャラクターの関係性を自然に描くためにいくつかの手法を取り入れた。
 その1つが移動中の会話である。

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 プレイヤーが馬で移動している間,キャラクター同士が会話を交わす仕組みだ。長い会話でも,移動というゲームプレイの最中であれば自然に聞ける。
 もう1つは,世界の情報をゲーム内に埋め込むことだ。書物や文書,伝承などをゲームの中に配置することで,プレイヤーが世界観を自分のペースで知れるようにした。

 するとプレイヤーはゲーム外でも歴史を調べ始め,コミュニティの中で議論が生まれる。こうした広がりもまた,RPGならではの魅力だと氏は説明した。

 またJirsa氏は,個人的にお使いクエストが嫌いだとも語り,クエストには必ず,新しい知識や印象に残る瞬間を入れるようにしていると明かした。もしそうした要素がなければ,そのクエストは却下することもあるそうだ。

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 講演の最後にJirsa氏は,開発者に向けた5つのアドバイスを紹介した。

 1つ目は「自分のデザインを守ること」だ。プレイテストは重要だが,すべての意見に従うべきではない。チームが目指している方向を見失わないことが大切だと氏は語る。

 2つ目は,ゲームの価値は楽しさだけではないということ。没入感や達成感,意味といった要素もまた,プレイヤーにとって大きな価値になる。

 3つ目は,キャラクターの成長を計画すること。長い時間プレイヤーと関わるRPGでは,キャラクターの変化や関係性の積み重ねが重要になる。

 4つ目は,記憶に残る瞬間を作ることだ。Jirsa氏は「お使いクエストは作るな」と半ば冗談めかして語りつつ,クエストには必ず印象に残る体験を入れるべきだと強調した。

 そして5つ目は,セリフは声に出して読めというアドバイスだ。ライティングの質は,実際に声に出してみるとすぐに分かるという。

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 こうした考え方の積み重ねによって,Warhorse Studiosは「Kingdom Come: Deliverance」の個性を保ちながら,続編である「Kingdom Come: Deliverance II」をより完成度の高い作品へと進化させていった。
 セッションは,スタジオが最初の成功のあとにどのように成長していくのかを示す,実践的な開発事例として締めくくられた。

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