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印刷2024/02/15 18:00

インタビュー

[インタビュー]「Microsoft Flight Simulator」プロデューサーに聞く,「デューン 砂の惑星」とコラボした拡張コンテンツはなぜ生まれたのか

 3か月ほどの沈黙の経て,2024年2月14日に無料配信が始まった「Microsoft Flight Simulator」PC / Xbox Series X|S)の拡張コンテンツ「Dune Expansion」は,その名のとおり映画「デューン 砂の惑星PART2」にも登場するオーニソプターで飛行できるという異色の内容だ。

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 「Dune Expansion」の概要については,「こちら」の記事で紹介しているが,Warner Bros.およびLegendary Entertainmentとの提携によって開発が進められてきた。
 映像化するのは難しいとまで言われた原作の小説家フランク・ハーバートが描き上げた,「砂の惑星」こと惑星アラキスを映画版と遜色がないほどに再現。さらにトンボとトリを合体させたような独特のフォルムを持つ飛行艇 オーニソプター(House Atreides Ornithopter)を操り,いくつかのチャレンジを楽しめるだけでなく,ワールドマップでも空を飛べる。


地面スレスレを滑空するシチュエーションがお似合いのオーニソプター
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 そんな「Dune Expansion」はいかに生み出されたのか。Xbox Games Studiosで「Microsoft Flight Simulator」ブランドを統括しているエクゼクティブ・プロデューサー,ヨーグ・ニューマン(Jorg Neumann)氏にオンラインインタビューを実施し,開発プロセスを聞いてみた。


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 Xbox Game Studiosは本日,「Microsoft Flight Simulator」の拡張パック「Dune Expansion」を配信する。日本では3月15日に劇場公開が始まるSFアクション映画とのタイアップコンテンツでは,あのオーニソプターを操縦してアクティビティやワールドマップの飛行を楽しめる。

[2024/02/14 01:00]

「Microsoft Flight Simulator」公式サイト



4Gamer:
 お久しぶりです。本日もよろしくお願いします。
 2023年6月,「Dune Expansion」をアナウンスしたときは「11月中にリリースする」ということでしたね。

Xbox Game Studiosのエクゼクティブ・プロデューサー,ヨーグ・ニューマン氏。4Gamerでも幾度となくインタビューのお相手をしていただいている(写真は2022年11月取材時
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Jorg Neumann(以下,ニューマン)氏:
 ええ,ハリウッドのストライキに絡む不可抗力だったため,延期について我々にはどうしようもなかったんです。もちろん,11月にはリリースできる状態でしたが,3か月延びたことで完成度が上がったと好意的に捉えるようにしています。

4Gamer:
 Warner Bros.とLegendary Entertainmentと言えば,2022年5月にリリースされた「Top Gun: Maverick Expansion」以来のタッグになります。そうした経緯から「Dune Expansion」を開発することになったのでしょうか。

ニューマン氏:
 そう言っても差し支えないですね。「トップガン」との提携により,Legendary Entertainmentの首脳陣も「Microsoft Flight Simulator」のファンになってくれたんです。
 今回の幸運は,「DUNE/デューン砂の惑星」シリーズのメガホンを取るドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が非常に凝り性らしく,実際に「飛んでもおかしくない機体」をデザインチームに作らせていたことです。22トンもの材料を使ってオーニソプターの金属製原寸大モデルを3機も制作していますから,「本当に飛んだらどうなるんだろう」という想像が膨らみ,私たちに連絡をしてくれたのでしょう。
 我々にとっても非常に挑戦的な作業だったことは間違いありません。

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4Gamer:
 あのトンボのような形状がユニークですよね。

ニューマン氏:
 ハーバートの原作小説では「トリのように飛ぶ」という記述が少しあるだけで,実際にどのようなものを想像していたのかは,我々が想像するのにも限界があります。それをトンボのような翅で飛行し,ウミドリがダイブしたり,枝に留まったりするときのような着地の動きを表現したのは,映画制作陣のすごいところでしょうね。

4Gamer:
 リアル志向の「Microsoft Flight Simulator」がファンタジー作品と手を組んだこともユニークです。

ニューマン氏:
 「トップガン」の後に「ペリカン」(D77-TC Pelican。「Halo」シリーズに登場する降下艇)をリリースしているので,「Dune Expansion」が初のSFコンテンツではないのですが,1つのパッケージとしての内容の濃さは圧倒的ですね。Legendary Entertainmentのプロダクションデザイナーは,オスカー受賞経験もあるパトリス・ヴァーメット(Patrice Vermette)さんですが,「Microsoft Flight Simulator」でオーニソプターを再現することを非常に情熱的だと感じているようでした。
 オーニソプターの原寸大モデルはヨーロッパで制作し,そのままハンガリーのブダペストにある倉庫に保管されていました。開発チームはそちらに赴き,入念にスキャニングを行いました。コクピットの1つ1つのボタンや計器類がどのような意図で設置されているのかを,ヴァーメットさんにも説明していただきました。

画像集 No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]「Microsoft Flight Simulator」プロデューサーに聞く,「デューン 砂の惑星」とコラボした拡張コンテンツはなぜ生まれたのか

4Gamer:
 原寸大モデルがあるとはいえ,特定の物理モデルで制御する「Microsoft Flight Simulator」で異様な形状の飛行機を実現させるのは苦労があったでしょう。

画像集 No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]「Microsoft Flight Simulator」プロデューサーに聞く,「デューン 砂の惑星」とコラボした拡張コンテンツはなぜ生まれたのか
ニューマン氏:
 物理サーフェスが存在し,それが何らかの抵抗を生み出して機体を浮き上がらせるというのは現実でもゲームでも同じです。オーニソプターの場合,左右に4枚ずつの薄いブレード状の翅(はね)があり,それぞれが独立して急速に動き回ることで浮力を生み出し,ジェットエンジンでブーストさせることで前方への推進力となります。
 実際にあれだけの重い機体を浮かせたり,高速で移動させたりするには,さらに大きな翅が必要だと思いますが,少なくとも原理としては精密な物理演算によって描かれているのです。

4Gamer:
 プレイ中は動きが速すぎて目視できなくなるのですが,あの翅の1枚1枚が別々に動いているのですか!?

ニューマン氏:
 ええ,難しい作業だったようですが,それぞれがすごいスピードで動いています。これまでもヘリコプターやグライダー,デルタウイングのように独特な航空機を再現していますが,逐次アップデートされてきた「Microsoft Flight Simulator」の物理システムの高い適応力を見せつけるものに仕上がりました。

ジェット機に分類されながらも,どこでも着陸できるのがオーニソプターの面白さ。機体は思っていたよりも大きい
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4Gamer:
 トンボの脚を思わせるような大きなランディングギアも特徴的です。ゲームで表現する際に妥協した部分はありますか。

ニューマン氏:
 もちろん,物理的にあの重さのランディングギアは非現実的です。サイズも大きく面積があるので,空気抵抗は大きくなります。ゲーム内で飛ばしてみるとよく分かると思いますが,ランディングギアを伸ばしたままの飛行と,格納した状態の飛行ではスピードや安定感は大きく異なります。

4Gamer:
 「ダイビング」(ダイブ)の感覚が堪らないですね。

ニューマン氏:
 ぜひ,ワールドマップでも試してみてください。アルファテスト中,ニューヨークの摩天楼で成功したときは興奮しました。
 エンジンを止めて翅を一旦格納し,ほぼ垂直に落下しながら地面すれすれで翼を広げるように空気抵抗を利用し,再び滑空していく。これは,ほかの航空機では実現できません。皆さんにとってスリリングな体験になるはずです。

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4Gamer:
 「Microsoft Flight Simulator」では光の加減から天候まで,リアルタイムデータが用いられていますが,「Dune Expansion」ではどのように対応していますか。

ニューマン氏:
 その作業も大変だったところです。映画版のプロダクションデータには惑星を再現した2Dマップもあり,首都アラキーンへと続く北側部分のマップを採用しました。そのデータの中には太陽や月の移動に至るまでの克明なリサーチや記述もあり,それを考慮しながら我々のプログラム上で太陽の光度を調整しています。
 ご存じのように,ゲーム中は太陽の角度や湿度などによって空の色がリアルタイムで変化しますが,それを「DUNE」らしくするのが難しかったですね。開発チームはオフィス内に映画のポスターやスクリーンショットを張り巡らせて,黄銅色に染まる世界に目が慣れるようにしていたそうです。

4Gamer:
 レスキューミッションで描かれる「コリオリスの嵐」は,リアルタイムに表現できないようなものなのですか。

ニューマン氏:
 ええ,地球上を表現するための物理効果や気象データを用いて,あれだけの長大な砂嵐を再現することは難しいですね。ワールドマップでは世界中で観測されているリアルタイムデータを元に何千ものメタポイントを設定し,その気温や風速,湿度などの情報から大気の流れを演算していますが,空想の惑星ではどうしようもありません。
 コリオリスの嵐はミッション内の特定の時間帯に発生する気象としてカスタマイズされたものです。

コリオリスの嵐が迫る。何気にNPCも細かく描かれている
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4Gamer:
 「Dune Expansion」の登場により,「Microsoft Flight Simulator」の未来へのドアが開かれたような印象があります。Warner Bros.とLegendary Entertainmentの提携することで,「マトリックス」のネブカデネザル号,「ハリー・ポッター」のニンバス2000といった拡張コンテンツの可能性はありますか。

ニューマン氏:
 タイアップコンテンツとして「Dune Expansion」は非常に面白い試みであるのですが,やはり特別なものだと思います。今回の話が決まった直後,本当にファンが求めるコンテンツなのかが不安になり,「次のコンテンツにふさわしい航空機」を皆さんに投票してもらったことがありました。
 いくつかのオプションにオーニソプターを含ませておいたのですが,投票の結果は2位だったので胸を撫で下ろしました。物理モデルとして特徴的なオーニソプターだからこそ,それだけ航空機マニアから支持を得られたのでしょう。

4Gamer:
 「Microsoft Flight Simulator」のメインデベロッパであるAsobo Studioが開発を担当しているそうですが,同作はワールドアップデート,シムアップデート,シティアップデートなどのラインが増えています。

ニューマン氏:
 そのとおりですね。「Dune Expansion」は別働隊を編成して作り上げたのですが,その担当者は新加入のアンドレイ・ソロミキン(Andrey Solomykin)という,これまでフライトシム系の作品に従事してきたソフトウェアエンジニアです。シニアプログラマーとして,今後の「Microsoft Flight Simulator」でも腕を発揮してくれるでしょう。

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4Gamer:
 2024年も忙しい1年になりそうですね。

ニューマン氏:
 ハハハ(笑)。「Microsoft Flight Simulator 2024」のことですか? まだ何も話せることはありませんが,コミュニティストリーミングでは事前質問を受け付けているので,「それほど遠くない時期に詳細を伝えられる」と思ってください。
 昨夏の制作発表では,Microsoft GamingのCEO,フィル・スペンサー(Phil Spencer)から「2025年に延期できないけど大丈夫?」なんて心配されましたが,タイトルどおりに年内のリリースは守れそうです。「空に関する職業訓練」とも言える新しい切り口は,多くのゲーマーを驚かせるでしょう。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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