インタビュー
「アイアン・スローン(Iron Throne)」“日本ユーザー向けの施策”の狙いとは。日本人声優の起用や,和風英雄を実装
バトルロイヤルやチームデスマッチといった手軽に対人戦を楽しめるコンテンツを始め,CPUやほかのプレイヤーと擬似的に戦える「次元戦」,RPG風のシステムでストーリーが展開する「タウンモード」など,ソロプレイ向けコンテンツが豊富に用意されているのも大きな特徴だ。
グローバルリリースから約6か月が経過した本作について,開発を担った4PLATのCEO 姜 在鎬(カン ジェホ)氏に再び話を聞く機会を得られたので,本稿でその内容をお伝えしよう。
「アイアン・スローン」公式サイト
「アイアン・スローン」ダウンロードページ
「アイアン・スローン」ダウンロードページ
まずはグローバルリリースから
現在までを振り返ってもらった
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。リリースから6か月が経過した「アイアン・スローン」ですが,プレイヤーの反響や運営方針を振り返ってみて,どのような心境かをお聞かせください。
姜 在鎬(カン ジェホ:以下,姜氏):
振り返ってみると,アップデートで多忙を極めた6か月間だったなと感じます。ローンチ後は当初から予定していた「大陸占領戦」を夏に導入しましたが,それだけでは足りないと感じていたので,タウンモードに新たな街,「氷の国の街・ノルデンス」を追加しました。
また,大陸占領戦についても,元々は1つのサーバーで24の連盟が戦闘を行うコンテンツでしたが,これを複数のサーバーが一緒に戦える形に発展させ,現在はサーバーを3つずつカップリングさせています。システムとしては最大8つのサーバーまでカップリングが可能になるよう開発しており,そういった意味ではバトルの楽しさを追求してきた6か月間であったとも感じられますね。
4Gamer:
プレイヤーからの反響はいかがですか。
姜氏:
プレイヤーの反響が目に見えて分かる部分として,プレイしてくださった方々の評価という点では,高評価をいただいています。ダウンロード数自体はリリース前に期待していた数値に届いてはいませんが,「アイアン・スローン」はノンIPのオリジナルタイトルながら,平均評価4.5を記録しました。
また,戦略ゲームでもっとも大きなマーケットであるアメリカで,比較的高い水準を記録するなど,持続的な成長を遂げています。ほかにも,韓国で開催された「G-Star 2018」のゲーム大賞で“優秀賞”を獲得でき,「アイアン・スローン」の新しいゲーム性や,新しいチャレンジはしっかりと評価されたと感じています。
4Gamer:
アメリカが最大のマーケットではあると思いますが,アメリカに次ぐマーケットとなると,どういった地域になるのでしょうか。
姜氏:
そうですね。アメリカに次ぐマーケットとなると,サウジアラビアといった中東になりますね。そして実は,3番目が日本なんですよ。
4Gamer:
日本が3番目とはちょっと驚きです。
姜氏:
はい。私もそこまで高くなるとは思っていなかったのですが,割合的には少ないものの,「アイアン・スローン」のプレイヤー数が3番目に多いのは日本です。ただ,ゲームの中で日本のプレイヤーは,それほど活発というわけではないんです。
4Gamer:
といいますと?
日本のプレイヤーは戦闘を控える特徴があるほか,現在40ほどまで増加したサーバーに日本人プレイヤーが散り散りになっていることで,日本人同士のコミュニケーションが少なくなっているのが原因だと感じています。
グローバルタイトルである「アイアン・スローン」では,日本ユーザーも英語を使ってゲームをすることが多くなるため,相手が日本人であっても,それを知らずに英語でのコミュニケーションをとり,ある程度コミュニケーションをしたあとに「あっ,あなたは日本の方だったんですね」となるのです。ですので,日本人同士でも互いが日本人と分からずにプレイしているため,結果的に日本人プレイヤーは,ゲーム内でそれほど活発ではないと見えてしまうわけです。
4Gamer:
なるほど。英語が得意じゃないプレイヤーの場合は,必然的にコミュニケーション自体も減りますし,英語を使っても互いが英語を使っていたら,相手が日本人だとはなかなか分からないでしょう。
姜氏:
それはとてももったいないことだと感じているので,少しでも緩和しようと施策も考えています。
4Gamer:
ちなみに姜さんとしては「アイアン・スローン」と他のIPとのコラボなどはお考えだったりするんでしょうか。
姜氏:
もちろん考えていますし,その点についてはオープンです。これからは日本のIPを含めて積極的に取り組んでいきたいと思っていますよ。
和風英雄や五稜郭に建った城のスキンが追加
日本人声優の起用も
4Gamer:
続いてアップデート情報についてお聞きしていこうと思います。日本向けのアップデートが実施されましたが,その意図などをぜひ教えてもらえますか?
姜氏:
「アイアン・スローン」は世界的に一定の評価をいただいていると思っています。そして日本では,レビューを通じて「このゲームはスルメゲーだ。やればやるほど面白いのに日本人が少なくて寂しい」という評価もいただきました。
この「スルメゲー」という部分は,私としては最大の褒め言葉だと感じました。これは私が元々考えていた,長い時間楽しくできる,やり込めるゲームを作りたいというものと同義だからです。
しかし,ゲームの中で同じ日本人プレイヤーが少ないということは,日本プレイヤーへのアピール不足であり,改善しなければいけない点だと強く感じています。そして,そのためには何が必要かと模索したときに,「コンテンツ」「イベント」「広告」という3つを考えました。
4Gamer:
ではその3つについて,順に教えてください。
姜氏:
はい。まずコンテンツですが,これはプレイヤーさんから要望の多かった英雄の追加という形で対応しました。元々日本風の英雄として,親を失い混沌の軍勢と戦うため,はるか遠い国に来た「コノエ ミコト」というファンタジーな女性のサムライがおりましたが,この英雄に加えてさらに今回,「コノエ ゲンザブロウ」という年老いた男性のサムライを追加しました。こちらはいなくなった孫を探すため,遠い国に来たサムライというバックグラウンドストーリーがあります。
戦闘を多く楽しめるワールドマップで自分をアピールできる要素として,城の外見(スキン)も追加しています。こちらは五稜郭をベースにしたものです。日本的なものを考えたときに,現存する多くの城を利用するということも考えましたが,やはりファンタジーなので,せっかくなら実際には存在しない城を,五稜郭の上に建てるという形で実現しました。
4Gamer:
なるほど。
姜氏:
五稜郭には過去訪れたことがあるのですが,かなり広いんですよね。そんな広い場所に城が建ったら,とても大きい城ができたのではないかということで,イメージが固まりました。さらに織田信長をイメージした戦闘的な君主のプロフィール画像も追加しました。
4Gamer:
イラストからはまさに織田信長のような雰囲気を感じられますね。このほかにも追加されるものはあるのでしょうか。
姜氏:
はい。これは日本の方から2番目に要望の多かったものなのですが,キャラクターボイスです。今まではすべて英語でキャラクターが喋っていたんですが,日本の有名な声優さんを24名起用しまして,すべてのコンテンツの吹き替えをしていただきました。
4Gamer:
それはかなり大がかりなものだと思うのですが,やはりボイスの要望は多いんですね。
姜氏:
実は日本だけでなく,ほかの国でも英語によるボイスより日本の声優さんによるボイスのほうがはるかに人気があるんです。それに,日本の声優さんはプロフェッショナルでほかの国々とは質が違うんです。格上といいますか。これにより,コンテンツとして外見とボイスという2種類をアップデートしました。
手塚秀彰さん(ゲンザブロウ役) |
木下紗華さん(マリア役) |
清水理沙さん(ミコト役) |
三上 哲さん(リベラトゥス役) |
佐倉綾音さん(ローレン役) |
4Gamer:
アップデートに合わせてどういったイベントが実施されているんでしょうか。
姜氏:
はい。日本向けのイベントとして「4649(よろしく)日本」というイベントを開催します。現在サーバーの数は45あるのですが,今回のアップデートで46番目のサーバーをオープンしました。そして,日本のユーザーの方を46番目と49番目(順にオープン)のサーバーに集中させたいと考えました。もちろん46番と49番のサーバーのどちらにもグローバルな方々はいらっしゃいますが,日本の方をなるべく多くその2つのサーバーに振り分けて,日本人のコミュニティや日本人の連盟を作りやすくしていこうということなんです。ネーミングについては,私がポケベル世代なので,そこから名づけました(笑)。
4Gamer:
サーバーの46と49で4649日本というわけですね。
姜氏:
そしてその46番と49番のサーバーでは,最初の1週間,プレイヤーの成長を手伝うアイテムを毎日配布しました。使用することで一定時間,周囲のモンスターを検索して自動で討伐する機能を使うためのアイテムで,新しく始めてくださった日本プレイヤーさんのレベルアップを応援できればと考えました。
4Gamer:
すでに始めているほかのプレイヤーに追いつきやすくなりますね。
姜氏:
サーバー間での戦争もあるので,そういった面はもちろん考慮していますが,育成の負担を軽くするという目的が大きいです。
そして3番目の広告についてですが,こちらはマックスむらいさんにご協力いただきまして,「アイアン・スローン」の動画をアップしています(関連記事)。
以上のような内容が12月と翌年1月で行うアップデート計画となっています。
4Gamer:
ちなみに,今までの情報のほかに,日本向けだけではないアップデートも用意されているのでしょうか?
姜氏:
12月でいうとクリスマスイベントもありますね。また,来年以降,段階を経ていろいろなアップデートに取り組んでいく予定ですが,とくに力を入れていくのはバトルコンテンツで,兵種の特性をより活かして戦うようなアップデートを予定しています。これによって,兵種の構成で戦闘の結果も大きく変わるようになるので,戦略性もより深まっていくと思います。
それとは逆に,より気軽にバトルを楽しめるような施策も組み込んでいきます。中でも分かりやすいのが,バトルで敗北したあとの回復をしやすくする施策ですね。戦略ゲームの場合,戦闘の比重が重く,負けた場合の損失が大きいので,それを回復するための時間もかかります。その時間を緩和するようなアップデートを行う予定です。このように,いろいろな面で戦闘をもっと楽しめるような方向性を考えています。
4Gamer:
すると,戦闘のサイクルは早くなりそうですね。
姜氏:
そうですね。元々「アイアン・スローン」では兵の損失などがないようなバトルコンテンツも多いのですが,それをさらに拡張し,大陸占領戦で失ったものを少ない資源で回復できたりするようなアップデートにします。
あとは,英雄のスキルと特性をより深めるアップデートを来年予定しています。今まで英雄は外見中心で,能力値にそれほど差はありませんでしたが,これからはそれぞれに相性を組み込み,英雄ごとの個性を出していこうと考えています。これにより,英雄ごとにいろいろな戦略を考えながら遊んでもらえるようになると思います。
一気に話してしまいましたが,今後は英雄のアップデートも含めて,バトルコンテンツを多様化して拡大していくような方向性を目指していこうと考えています。
今まではスポーツゲームのように気軽に遊べる戦略ゲームだったものを,これからはRPG的な要素も多く取り込んでいる戦略ゲームに発展させていきたいですね。
4Gamer:
日本向けアップデートの内容も今後拡充されていくんでしょうか。
姜氏:
日本向けという点では,日本に関するストーリーの追加をしていきたいなと考えています。これは少し時間がかかるとは思うのですが,タウンモードなどで「コノエ」に関する物語を追加できればと考えています。
4Gamer:
サムライや城といった要素は日本向けではあると思うのですが,ほかの国のプレイヤーさんにも受け入れてもらえるんでしょうか。
姜氏:
現在販売している英雄が7名いるのですが,実は「コノエ ミコト」の所有率が45%で,ダントツ1位なんですよね。「アイアン・スローン」自体は90%以上が日本人以外の人が遊んでいるグローバルタイトルにも関わらず,その中で45%がこのサムライを選択しているわけですから,圧倒的です。
ほかの国からするとサムライはファンタジーなんです。そのうえで日本のサムライに関する良いイメージがあり,それを使いたいという強い気持ちがあるのだと思います。私も単純に中世ヨーロッパのような世界観にとどまらず,どんどん拡大していきたいと思っていますし,その中で日本のすばらしい物語に関する要素も入れていきたいと思っています。
4Gamer:
とても嬉しいお言葉ありがとうございます。それでは最後に,日本のユーザーへメッセージをお願いします。
姜氏:
約6か月が経過したタイミングでこうしてお話をさせていただきましたが,今まで足りなかった日本の方々に対するコンテンツやイベント,そういったものを今回からはたっぷりやろうと思っていますので,ぜひとも「4649日本」に参加して,一緒にプレイしていければと考えております。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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