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[GDC 2018]FFXVのゲームAIは,開発の工程にどう取り込まれたのか? 日本のゲームAI研究の第一人者が語る,FFXVのAI概論
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印刷2018/03/20 18:50

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[GDC 2018]FFXVのゲームAIは,開発の工程にどう取り込まれたのか? 日本のゲームAI研究の第一人者が語る,FFXVのAI概論

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION
 本日(2018年3月20日),ゲーム開発者による国際的な技術カンファレンス「Game Developers Conference 2018」が始まった。その初日に,ゲームにおけるAI技術が集中的に語られるAI Summitの中で,「EOS IS ALIVE: THE AI SYSTEMS OF‘FINAL FANTASY XV'」という講演が行われている。
 この講演はタイトルどおり,スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XV」PC/PS4/Xbox One 以下,FFXV)において使われているAI技術について,大きく7項目に分けてその概論を語るというものだ。スクウェア・エニックスのリードAIリサーチャーである三宅陽一郎氏が,全178ページのスライド(途中に複数本の動画あり)を30分で語り尽くしたこの濃密な講演の模様を紹介したい。

スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー 三宅陽一郎氏


「FFXVならではの体験」を作るために


 最初に三宅氏は,本作におけるAIのゴールとしては,大きく分けて3つが設定されていると指摘した。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION

 1つめは,FFXV世界に存在するNPCの行動を自動化することだ。本作において,プレイヤーは基本的にノクトを操作し,旅に同行する3人のNPCは自動的に行動することになる。この3人の行動が自然に行われることが重要だ。
 また本作には,街の中で暮らす人といった,いわゆるモブ的な存在も多数登場する。同様にプレイヤーが戦うことになる敵も,モンスターから兵士まで様々に登場する。これらのキャラクターにもまた,自動的に「それらしい」行動をしてもらうというのが,本作におけるAIの大きなゴールの1つとなる。

 2つめは,FFXV世界をひとつの「世界」として感じられるようなものにすること。FFXV世界には我々の世界に似た雰囲気のある原野や荒野から,これぞファンタジー世界と言うべき美麗な巨大都市まで,多彩な環境が設定されている。本作におけるAIは,これら特殊な状況をきちんと知覚し・判断し・行動する存在でなくてはならない。
 これを実現することによって,プレイヤーはより統一感のある「世界」を体験することが可能になるというわけだ。

 3つめは,本作ならではのユーザー体験を作り上げること。「すごいゲーム」には事欠かない昨今,ただ単に「すごいAIを使ったゲーム」というだけではなく,「これこそがFFXVだ!」と感じさせる作品を支えるものとして,AIが存在しなくてはならない。

 この大きな目標に対し,最も中心的となるのはメタAIキャラクターAIナビゲーションAIの3つの柱である(構造としては,メタAIとキャラクターAIを,ナビゲーションAIがサポートする形となる)。
 これら3つのAIが機能することによって,プレイヤーはかつてないゲーム体験を得られるはず――それが本作における大きなレベルでのAI設計となる。

 では実際に,メタAI・キャラクターAI・ナビゲーションAIについて,具体的にどのような機能が与えられているのかを見ていこう。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION
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ゲーム全体を監視するメタAI


 最初に取り上げられたのは,メタAIだ。
 AIにある程度詳しい人だと,「メタAI」という言葉を聞くと「Left 4 Dead」で採用されたAIディレクターのことを思い出すかもしれない。だが「Left 4 Dead」のディレクターAIは,敵を動的に配置することで戦闘の激しさや難しさ,プレイヤーが感じる驚きなどをコントロールしようというものであって,その機能は限定的だ。
 本作で想定されたメタAIは,「The Sims」で採用された,ゲームの進行全体に――The Simsで言えばキャラクターの行動方針を決め直したり,ステージに新しい物体を配置したり,地形を動的に変化させたりといった規模で――影響を与えるものとなる。

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 具体的には,例えば「戦闘中のキャラクターがどのような行動を取るか」という大きな方針の決定において,メタAIが利用される。
 本作では戦闘中,プレイヤーキャラクターが窮地に陥ると,仲間となるキャラクターが救援してくれる。だがここで「3人の仲間のうち,誰が救援に入るか」という問題が起こる。この問題に対し,本作のメタAIは最適な人物を選択して,その人物に「救援せよ」という指令を出す,という形で対応している。つまりメタAIは,戦闘における司令塔にもなっているというわけだ。
 ちなみに,同じ状況においてメタAIが存在せず,キャラクターAIだけで各キャラクターが行動してしまうと,「主人公のHPが大きく減った途端,盾役キャラは最前線から主人公のもとに駆け戻ってきて回復しようとし,支援キャラは後方から主人公に駆け寄ってきて回復しようとする」という,「ゲームあるある」な行動を取りがちだ。だがこれでは,「連携して戦っている」感が損なわれてしまう。

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専門技術が連鎖するキャラクターAI


 次に語られたのが,キャラクターAIである。
 三宅氏はまず,「知性と身体には深い関係がある」と指摘する。本作においてはこの問題について,「AIによる判断と,キャラクターのアニメーション(=キャラクターが実際に行う動作)がつながっていく」ポイントが着目された。

 簡単に言ってしまうと,実際に判断を行うAIを作ったり,あるいはそのAIに適切なデータを設定したりするのは,高度に専門化された知識と技術が必要になる。
 一方で,自然かつダイナミックな動きをするアニメーションを作るにしても,高度な知識と技術が欠かせない。
 ここにおいて,この2つを統合するとなると,「AI技術にもアニメーション技術にも熟達した技術者」が必要になる。しかもFFXV級のタイトルともなれば,1人や2人ではまるで人数が足りない。言うまでもなく,これはあまりに非現実的だ。

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 また,実際に知性とアニメーション(=実動作)を連結させているものは何か,ということを考えると,その中間には「身体」があることが分かる。
 例えば泳ぐのであれば,知性は身体に「A地点からB地点へと移動せよ」と命令し,身体はアニメーションに対し「移動中に川に入ったので泳ぐモーションを呼び出せ」と命令し,アニメーションは身体に「泳ぐモーション」を与え,身体は知性に「泳いでB地点に移動中」と情報を戻すのである。
 だが本作では,身体の状態に極めて多くのバリエーションがある(車を運転する,走る,泳ぐ,チョコボに乗る,剣を振るう,何かにぶら下がる,などなど)。そしてこれらの身体状況がどのような優先順位で適用されるべきかであったり,状況に対しておかしな適用がなされないことを保証したりといった技術は,プログラマーが管理する領域となる。
 つまり,三宅氏が理想とした「知性・身体・アニメーション」の連携を高いレベルで実現するには,愚直にやれば「AIとプログラミングとアニメーションに習熟した人材」が必要になるということだ。知性とアニメーションだけの段階より,難度は上がっている。

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 この難題に対して三宅氏が率いるチームは,「AIの設計・設定」「身体状況の遷移の設計・設定」「アニメーションの設定」が可能となるツールを制作し,それらのツールを統合的に利用できるような環境を作り上げた。
 AIと身体のグラフ設計はマウス1つで可能(スクリプトを書いたりする必要がない)となっており,ゲームデザイナーが自らAIを設計し,それを作り込んでいくことができるという。要は「とてつもない困難に対して,とてつもなく便利なツールで対抗しよう」という,正面突破である。

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独自開発された意思決定モデル


 本作のキャラクターAIの特徴は,これだけではない。AIと言ったとき反射的に思い浮かべる「自律的に判断する」という機能(意思決定)にも,工夫が凝らされている。

 まず,三宅氏は意思決定のプロセスを,以下の5段階に分割した。(2〜4のプロセスにおいては,随時「記憶」の参照や書き込みも行われる)。この5段階が循環することによって,身体を持った知性の活動は継続されていくことになる。

(1)外界の情報が,感覚器を通じて知性の領域に入ってくる
(2)外界の情報が要約され,処理しやすい形へと変化する(=認識する)
(3)情報をもとに,意思決定を行う
(4)決定された意志をもとに,具体的に身体をどう動かすかを決める
(5)具体的な身体の動きとして,外界に意志が反映される

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 さて,ここで問題になるのは主に(3)の,「情報をもとに,意思決定を行う」プロセスである。
 ゲームAIにおける意思決定のモデルには,すでに様々なものが利用されている。本作においては,なかでも「ルールベースAI」「ステートベースAI」「ビヘイビアベースAI」の3つが採用されているという。そしてここにおいても,ステートベースAIとビヘイビアベースAIをゲームデザイナーが簡単に設計・設定できるツールが作られている。

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 とはいえ,ツールを作ればそれで解決,というわけではない。それぞれのアルゴリズムには一長一短なところがあって,「どれか1つを選んで正しく設定すれば,キャラクターが理想的な意思決定をするようになる」というものではないのだ(例えばステートベースAIはキャラクターに安定した判断をさせたいときに便利だが,状況に自然に対応する判断をさせたいときはビヘイビアベースAIのほうが有利になる,といった具合である)。
 そこで本作のAIチームは,「両方の良いところを取る」という決断を下した。
 具体例を挙げると,まずはステートベースAIにおいて「このような行動をする」と判断したとしよう。そしてその判断がくだされた先で,より細かい決断を行うにあたってビヘイビアベースAIを使う,といった入れ子構造が可能となるようにしたのだ。
 もちろんビヘイビアベースAIを根っこにおいて,その個別の判断の下にステートベースAIによる判断を置く,ということもできる。また3重の入れ子構造を作ることも可能だ。

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 このような入れ子構造を持った意思決定システムを作るとなると,その作業は非常に複雑なものになり得る。だがこれについてもAI設定用のツールは対応しており,特別な知識がなくてもゲームデザイナーが設定・設計することが可能だという(もちろんデバッガーにも「目で見て分かりやすい」ものが作られている)。
 またこのツールには,同時に2つの問題について考えて行動する「パラレル・シンキング」機能も実装されている。
 加えて,特定のモンスター固有の判断パターンを,一般的なモンスターの判断パターンに追加する(いわば固有のモンスターごとに,一般的なモンスターの判断パターンをカスタマイズする)「オーバーライド」機能といったものも存在するという。

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キャラクターの移動を最適化するナビゲーションAI


 さて,本作のAIを構成する最後の大きな柱が,ナビゲーションAIである。
 ナビゲーションAIの紹介においては,「パスファインディング」「ポイントクエリ」「ステアリング」の3システムが重点的に語られた。ここでは特有のものとなる,ポイントクエリ・システムを紹介したい。

 ポイントクエリ・システムが司っているのは,主に戦闘における行動の最適化である。これは古くは「KILLZONE」が実装し,あるいはCRYENGINEやUnreal Engine 4も似たような効果が得られるシステムを有しているもので,「どこに移動して敵を攻撃すれば有利か」を自律的に判断して行動するシステムとなっている。

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 ポイントクエリ・システムにおいては,キャラクターが「その行動を行うにあたって最適な場所はどこか」という問題を,キャラクターの能力・現在地・現時刻を参照しながら決定することになる。
 仕組みとしては,行動を起こす対象となるオブジェクトを中心として「移動先の候補地」を選出し,そこから「ふさわしくない場所」を順次排除していく形だ。そして最終的に残った数か所に対して評価値を出し,最も評価値の高いポイントを「移動先」として選択する。
 このようにして「ふさわしくない場所」をフィルタリングしていくためのフィルタも,専用のエディタが用意されているそうだ。

 ポイントクエリ・システムは,戦闘をするときだけでなく,「主人公に対して仲間が話しかけるために移動する」といった状況においても活用されている。

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ツールによって「開かれた」技術へ


 これ意外にもさまざまに興味深い試み(例えば街の中にある椅子はそれ自体にAIが組み込まれていて,「NPCを呼ぶ」「人が集まってきたら,そのうちの1人にウェイターを呼ばせる」という行動を椅子が起こすことで,人々が自然な行動をする,など)が紹介された,盛りだくさんの講演であった。

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 ゲームAIが,これからのゲームにおいて極めて重要な要素となるだろうという観測は,多くのゲームデザイナーが語っている。
 一方で,ゲームはあくまで総合エンターテイメントである,という側面がある。ゲームの楽しさは,ゲームのメカニズムや数値のバランスといったところで留まることなく,グラフィックス・アニメーション・効果音・BGM・物語性などなど,極めて広範囲にわたった技術が有機的に結びつくことで,生まれてくる。そして,いずれのジャンルにおいてもスペシャリストが必要になっているのが現状だ。

 ここにおいて「こんなに素晴らしいゲームAIの理論がある」というだけでは,そのポテンシャルを十分に活かすことができないというのは,自明だ。より多くのクリエイターが,自分で直接「触れる」ものであってはじめて,様々な領域においてより有効にゲームAIを活用できる。
 スクウェア・エニックスのAIチームが「ゲームデザイナーが自分でAIを設計・設定できるツールを作る」方向に進んだのは,その判断あってのことではないだろうか。

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 もちろん,ここにはリスクもある。優れたツールによって,より多くのクリエイターが高度な作業にアクセスできるようになれば,統制の取れてない現場であれば無秩序に「よかれと思って自分が修正しておきました」が乱発し,ゲームが完成しない危機にすら陥りかねないというのは,これまでも何度か指摘されてきた(あるいは体験談として語られてきた)「危機」だ。
 また,高度な実装が可能となる多機能のツールであればこそ,そのツールをどのようにして使うかを学ぶための時間的コストは増大しがちである。大規模開発によって複数人が使うことを前提としたツールであればこそ,ツールに対する個々人の習熟度の差が顕著に発生し,それがゲーム全体での不統一感を醸し出す,などということもあるかもしれない。

 だが高度なツールによって,これまでは専門化でなくては手が出なかった領域に,よりカジュアルに接触できるようになるということが持つ意味は,そんな些細な懸念を吹き飛ばすほどに大きい。AI設計・設定の領域により多くの人間が関わり得るということは,優れた才能を持った人間がこの領域で活躍する可能性を,大きく高めるのだから。
 今後,スクウェア・エニックスが作るAAA級タイトルがどのように発展していくのか,目が離せない。

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