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世界的なヒット作となった放置型ペット育成ゲーム「My Talking Tom」制作チームが語る,ヒットするカジュアルゲームにおける“7つの掟”
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印刷2016/05/10 20:15

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世界的なヒット作となった放置型ペット育成ゲーム「My Talking Tom」制作チームが語る,ヒットするカジュアルゲームにおける“7つの掟”

 ゲームにはさまざまなジャンルがあるが,放置型というスタイルのゲームは,だいたいどんな時代でも一定のシェアを得る――そして,ときに爆発的な人気を得る可能性を秘めたジャンルだ。日本なら「ねこあつめ」iOS / Android)が近年における大ヒット作であるし,海外ではOutfit7の「My Talking Tom」iOS / Android)が概ねそのポジションにあると言えるだろう。

 ある意味で「よくある」ペット育成型ゲームであるMy Talking Tomは,2013年11月にリリースされるや世界各国で大ブレイクし,2014年の「世界で最もダウンロードされたアプリ」ランキングで3位,2015年に入っても6位を維持するという,ロングランタイトルとなっている。果たしてMy Talking Tomの成功の背後には,何があったのか。デベロッパであるOutfit7のRok Zorko氏が,Reboot Develop 2016でその秘訣を語った。

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「マイ・トーキング・トム」公式サイト



モバイルカジュアルゲームを成功させる7つの掟


 Rok Zorko氏は,My Talking Tomが成功した理由を大きく7つに分類して語った。順番に見ていこう。

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  • その1:幅広いプレイヤーをターゲットにする

 当然の話だが,カジュアルゲームをデザインする以上,誰でもプレイできるゲームでなくてはならない。「こういう人には楽しめない」というデザインでは,モバイルカジュアルゲームとして成功する可能性は極めて低い。これはゲームのテーマにもおいても同様だ。犬や猫といったペットは,原則として誰もが好きなテーマなのだ。
 ちなみにMy Talking Tomが猫をテーマとしたのは,「犬の3Dモデルに良いものがなかったから」だそうだ(Rok Zorko氏は当時3Dモデルのデザインもしていたらしい)。なんともはやな理由だが,2013年の段階においてもそういった規模で開発されるゲームが世界的ヒットにつながっていったというのは,非常に興味深いエピソードといえるだろう。

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  • その2:何をするゲームなのかが一言で言える

 近年のモバイルゲームにおいては,メディアを利用した大規模な(そして高額な)CMを除けば,ゲームが普及するきっかけとして「口コミ」を無視することはできない。そして,この口コミにおいて非常に大きなファクターとなるのが,「これはどんなゲームなのか」を一言で説明できることだ。実際,コンセプトが明確かつシンプルであることは,ゲームのタイトルにも現れるものだ(Zorko氏はその例として,「Temple Run」「Clash of Clans」を挙げた)。このことは,スクリーンショットやPVといった宣材を作るにあたっても,より狙いの定まった効果的な宣材作成を可能にする。
 加えて,制作チームで方針を共有するのも簡単だ。方針の共有ができていれば,チーム内から作品を改善するための意見が次々に出るようになるし,その意見の質も高まる。結果,より良いプロダクトとして完成するというわけだ。
 ちなみに同社の作品においても,この「一言で言える」部分をうまく作れなかったときは,タイトルは迷走し,ゲームの焦点は定まらず,案の定プレイヤーからの評価もあまり良くなかったという。

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  • その3:指1本でコントロールできること

 読んで字のごとくである。基本操作としてピンチイン/ピンチアウトが必要になるようだと,そこが脱落のポイントとなりやすい。

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  • その4:UIが簡単であること

 その3にも共通していることだが,奇をてらった「直感的で革新的な」UIを設計するのではなく,あえてみんなが慣れている,誰にでも分かるUIを用いる。つまり,ボタンはボタンらしくデザインし,あるいは何かをキャンセルしたいときは×ボタンをタップさせるのだ。
 My Talking Tomでも,実は当初,ゲームUIのいくつかが「直感的な」インタフェース(水のボトルを水入れにドラッグ・アンド・ドロップすると,水が補給される,といった具合に)であったという。だがテスト段階では,多くのプレイヤーから「どうやって水の補給をしたらいいのか分からない」という苦情が寄せられた。
 Zorko氏はしばらく悩んだが,1歳になる甥っ子がテレビのスイッチをひたすらカチカチさせて楽しんでいるのを見たとき,「これだ!」と閃いたという。1歳児でも「ボタンを押す」ことは理解できるのである。
 かくして水やりUIはシンプルでクラシックなボタン式UIとなり,テストプレイヤーから「どうやって水をあげていいか分からない」という苦情が出ることもなくなったという。

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  • その5:チュートリアルを入れない

 これはなかなか驚くべきノウハウと言えるかもしれないが,非常に興味深い話でもある。
 実はこれ,デザイナーの感覚ではなく実測データに基いたものだそうで,My Talking Tomが世界的に成功したのち,チュートリアルの必要性に疑問を感じていたデザイナーチームが,「チュートリアルがあるバージョン」と「チュートリアルがないバージョン」の2バージョンを密かにリリースしてみたことに由来する。しかるにこの2パターンのアプリは,継続率やARPPUを計測してみると,両者の間に有意な差は生まれなかった。
 もちろんこれは,My Talking Tomがチュートリアルなしでもスムーズにプレイできるデザインだから,というところはあるだろう。だが,それを含めてもなお,面白いデータと言える。

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  • その6とその7:時間制限を作るな,プレイヤーに考えさせるな

 時間制限はゲームに緊迫感を与えたり,あるいはプレイヤーのスキルをゲームの結果に反映させたりといった場合には,シンプルかつ有用なギミックだ。だがカジュアルゲームでは,時間制限はプレイヤーにとって負荷が高すぎる。
 これは筆者も個人的に観測していることで,例えばモバイルの3マッチパズルの場合,「一定回数以内にクリアせよ」というステージに対して,「一定時間内にクリアせよ」というステージのほうが,ワールドワイドなリーダーボードで上位を獲得しやすい。筆者の課金力(お助けアイテムによる補助)はゼロなので,このデータは「時間制限のあるステージに,より多くのカジュアルゲーマーが苦しんでいる」証拠と言えるのではないか。

 同様に,プレイヤーに「考えさせる」ことも負荷になりえる。が,Zorko氏はここで「考えさせるな」と「考えても無駄」は,まったく異なるということに注意が必要だと語った。モバイルのカジュアルゲームは,何も考えなくても前進できるゲームである必要がある。だがプレイヤーが考えることでより良い結果が得られる設計にすれば,より多くのプレイヤーが満足する。

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 合わせてZorko氏は,ランダム要素を強くしておくのも重要だと語った。運の要素が強いとゲームに変化が生まれ,リプレイ性が向上するだけでなく,スキルの不足が運で補われる展開も多くなる。
 また,プレイヤーに達成感を与えるのも重要だ。しかし何か派手な演出だったり,即物的なリワードであったりする必要はない。My Talking Tomの場合,ペットのレベルが徐々に上昇し,レベルアップの節目ごとに何らかのコンテンツが提供されるが,それもレベル15で終わる。それでも,レベルの数字が16,17と伸びていくことが重要なのだ(My Talking Tomの場合,プレイヤーがレベルのことを「ペットの年齢」と把握しているのも大きい)。

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Outfit7のCo-founder & VP of Products,Rok Zorko氏
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「赤」を越えたレッドオーシャン


 Zorko氏の掲げた7つの指標は,日本でモバイルゲームを開発している人から見たら,「何を今更」という指標かもしれない。そして実際,海外の技術講演でモバイルゲームの成功秘話を聴講すると,「それは数年前に日本でも聞きました」的な内容が語られることが多い。
 だが,これは逆に考えると,モバイルゲーム(とくにカジュアルゲーム)が成功するための知見は,世界中どこに行ってもだいたい共通しているということでもある。モバイルゲームの開発ノウハウは,いまやそれほど煮詰まっているのだ。

 この状況にあって,1歩抜け出すために何が必要なのかを探るのは,決して容易ではない。だが少なくとも,今からモバイルゲームに参入しようと思うのであれば,先人が自明としているノウハウを最低限理解しておかねば,土俵に上がることすらできないだろう。そういう意味でも,モバイルゲームをヒットさせることの難しさを痛感した講演であった。

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