そうだ アニメ，見よう：第208回は新挑限氏原作の「じいさんばあさん若返る」。美男美女の姿に戻った老夫婦のほのぼのコメディ

　「幼なじみになじみたい」や「アンダーテイカー」で知られる漫画家・新挑限氏が，2019年にTwitterとpixivで発表したのが本作「じいさんばあさん若返る」（MFC/既刊7巻）だ。その後，ニコニコ漫画を経て「コミックアルナ」での連載が開始されており，単行本のシリーズ累計部数（電子版を含む）は140万部を突破している。
　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第208回のタイトルは，同作をアニメ化した「じいさんばあさん若返る」（毎週日曜日24：30〜TOKYO MXほか）。制作は月虹，シリーズ構成は「オーバーロード」や「ソードアート・オンライン」の菅原雪絵氏，監督は「アイシールド21」や「プリキュア」シリーズなどを手掛けた西田正義氏が務めている。

「じいさんばあさん若返る」

　青森で何十年もリンゴ農家を営む老夫婦の正蔵（CV：三木眞一郎）とイネ（CV：能登麻美子）は，周囲がうらやむほどの“おしどり夫婦”だ。

　ある日，畑で見つけた不思議な「金色のリンゴ」を食べた2人は，翌朝に目覚めると若い頃の姿に戻っていた。かつてイケメンだった正蔵と美人だったイネ。若返ったその姿に，息子の義明（CV：興津和幸）やその妻・楓（CV：櫻井 智），孫の未乃（CV：三上枝織）はもちろん，周囲の人々は驚くばかり。イケメン好きの未乃は大喜びし，好みのタイプの正蔵にときめく楓は，義父のことが気になって仕方がない。

　近所でも2人のことは評判になり，いつものゲートボール場ではちょっとしたアイドル並みの扱いに。そんな周囲の騒ぎをよそに，正蔵とイネはマイペースに，じいさんばあさんらしく日々を過ごしていく。
　今までと変わらず夫婦仲良く，そして今まで以上にパワフルに――。

主人公は80代後半の老夫婦

　世界でも指折りの「超高齢社会」である日本。2040年には，65歳以上の高齢者が約4000万人となり，全人口の約35％を占めると予測される。そんな現代の世相を反映して……かどうかは分からないが，片田舎に住む老夫婦を主人公に，2人の巻き起こした奇跡を，面白おかしく描いているのが「じいさんばあさん若返る」だ。


　舞台となるのは青森県の弘前市。リンゴ農家を営む正蔵とイネは，静かに暮らしていたが，80代も後半となると体のあちこちにガタが来ていた。病院や薬だけでは誤魔化しきれず，余命もそろそろ……という，そんなある日，10〜20代の見た目に突如若返る。しかも見た目だけでなく，体力も元通りに復活していた。

　周囲の人々もはじめは驚くが，やがて「若返ったんだー」と割と軽いノリで受け入れていく。頭柔らか過ぎじゃない？ と思わないこともないが，そこを突っ込むのはヤボというものだろう。
　美男＆美女の老夫婦を中心に，2人の息子夫婦や南町老人会の人々などの人間模様を，コメディタッチで描いている。ちなみに，老人会の御婦人たちは，ひそかに正蔵のファンクラブを結成しているのだとか。正蔵モテモテだ。

高齢者特有の問題

　原作は，ショートストーリー仕立てで物語が進行するが，アニメ版では各エピソードをつなぎ合わせて構成している。そのせいなのか，かなりのハイペースで物語が進行しているので，テンポよくストーリーを楽しめるのがうれしい。


　各エピソードは基本，ほんわかとしたコミカルなお話となるが，ところどころで2人が高齢の老人であることを思い起こさせるシーンも登場する。若返ったはいいが，何歳まで生きられるのか？　そんな思いに囚われる2人にとって，やはり“死”は近しいものなのだろう。
　そうした高齢者特有の悩みや，死生観から目を背けないのも，本作の見どころと言える。難しい問題であっても，長い年月を寄り添ってきた2人だからこそ出せる答えもある。2人が出した結論に注目してほしい。

元の姿に戻るのはなぜ？

　若返るといっても不安定なものらしく，第3話で正蔵が元の姿に，第4話でイネが記憶までも若返ってしまう。夢の中に出てくる「砂時計」次第なのだが，振り回される2人はたまったもんじゃない。
　これには，「姿を戻すことで，あくまでもお互いの内面に好意を持っているのだと示す」という，原作者の意図があったとのこと。姿が変わっても“おしどり夫婦”は変わらないということだろう。


　SFや異世界もの，ラブコメディなど，多彩なジャンルのアニメが放送されている2024年春アニメの中でも，異色の存在と言える本作。ジェットコースターのように物語が展開するよりも，深夜にほっこりとした気分になりたいという人におススメの作品だ。

TVアニメ「じいさんばあさん若返る」公式サイト

TVアニメ「じいさんばあさん若返る」公式X

放映データ
2024年7月〜
毎週日曜24：30〜TOKYO MXほか

キャスト
正蔵：三木眞一郎
イネ：能登麻美子
未乃：三上枝織
詩織：東山奈央
将太：寺島惇太
義明：興津和幸
楓：櫻井 智

スタッフ
原作：新挑 限（KADOKAWA「コミックアルナ」連載）
監督：西田正義
シリーズ構成：菅原雪絵
キャラクターデザイン：たかはし なぎさ
サブキャラクターデザイン：濵田悠示、田邉真帆
美術監督：石田知佳
色彩設計：佐々木 梓
撮影監督：田村 淳
編集：柳 圭介
音響監督：阿部信行
音響効果：鈴木潤一朗
音響制作：オンリード
音楽：長谷川智樹
オープニング主題歌：「君がおじいちゃんあたしがおばあちゃん」コレサワ
エンディング主題歌：「添い遂げYO-YO!!」正蔵（CV:三木眞一郎）＆イネ（CV:能登麻美子）
アニメーションプロデューサー：平田 実
アニメーション制作：月虹

■Blu-ray情報

じいさんばあさん若返る
Blu-ray BOX
2024年7月24日（水）発売

品番：ZMAZ-17531
価格：27,500円（税込）
収録話数：第1話〜第11話＋特典映像

◆毎回特典
(1)原作・新挑限 描き下ろし漫画
(2)原作・新挑限 描き下ろしアウターケース
(3)キャラクターデザイン・たかはしなぎさ 描き下ろしデジパック
(4)特製ブックレット＆原画集
(5)特別番組〜斎藤家へようこそ！〜（出演：三木眞一郎、能登麻美子、三上枝織、東山奈央）
※2024年3月1日にYouTubeにて公開された映像を収録
(6)オーディオコメンタリー【最終話】
(7)ノンクレジットOP・ED
(8)PV・CM集
※商品仕様・価格などは予告なく変更になる場合がございます。