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NHN PlayArtがGame Jamを開催。29時間でゲームをゼロから作り上げるイベントをレポート
集まった有志の中から即席チームを編成し,短時間でお題に沿ったソフトウェアやサービスの企画/開発を行う催しを,IT業界では“ハッカソン”という。ハッカソンとは“ハック”と“マラソン”を組み合わせた造語である。ゲームに特化したハッカソンは,国内外で“Game Jam”という名前で開催されることが多く,具体的にはワールドワイド規模での“Global Game Jam”や,日本国内では“福島Game Jam”などが行われている。そんなGame Jamを,今回はNHN PlayArtが主催したというわけだ。
4Gamerの読者的には,「NHN=ハンゲーム=オンラインゲーム運営会社」という印象が根強い人も多いかもしれない。同社は2013年4月に,NHN JapanからNHN PlayArtへと社号を変えているが,実はそれを機にゲームの開発業務にも本格的に取り組んでいる。今回のGame Jam開催には,そういった同社のスタンスを外部に向けてアピールしたいという狙いもあるようだ。
初めて会った人同士が29時間でゲームを作る
スケジュールとしては,初日の午前11時に,それぞれ4〜5名によるプロ・アマ混合のチームを編成(事前に編成されていたチーム分けの発表)。そのあとはゲームの企画および開発に没頭し,翌日の16時には遊べる形にしたうえで会場内でプレゼンテーションを行う。つまり,初顔合わせ同士のメンバーとともに,たった29時間でゲームをゼロから作り上げてしまおうというわけだ。当然,ゆっくり寝る暇などない。
今回のイベントはUnity Japanのバックアップを受けており,プラットフォームにはUnityが指定されている。あとは「オープニングからエンディングまで1分間」という条件が用意され,そこから外れていなければ何を作るのもチームの自由だ。
Game Jam(ハッカソン)の未経験者にしてみれば,「初顔合わせの人同士でゲーム開発なんてできるの?」と思うかもしれないが,実際には必要最低限の環境は揃っていたりする(ことが多い)。
例えばGame Jamに参加したいと考える時点で,ゲーム開発に興味はたっぷりとあるはずだし,過去のGame Jamの参加経験者だっている。今回はUnityを採用することが事前に告知されていたので,その経験者もそれなりに含まれている。
チーム分けの際は,そういった知識や経験に応じてバランスよく配分される。また作業中は,企画・開発がある程度進んだ段階で簡単な進捗確認も行う。そのため,極端な話,やる気だけは誰にも負けないゲーム開発の未経験者が5人集まって「どうしよう?」と頭を抱えるようなことには,基本的になりにくい。
とはいえ,29時間という制約が厳しいことに変わりはない。たとえ本業のゲーム開発者であっても,Game Jamの環境は苛酷そのもので,その独特な緊張感はほかでは体験できない大きな醍醐味だという。会場の隣には仮眠室も設けられていたが,現場では1〜2時間程度の仮眠を取っただけで,あとは終始作業に没頭し続けたという人も多かったようだ。
はたして,どんなゲームができあがったのか?
さて,今回参加した6チームは,29時間の末,なんとかゲームとして動く形にできたようだ。実際どのようなゲームができ上がったか,ざっと紹介していこう。
アイドルが公演中に衣装を素早く着替える,いわゆる“早替え”をモチーフにしたゲーム。衣装のアバターアイテムをドラッグ&ドロップして,4名のキャラクターそれぞれに対して絵合わせを行っていく内容だ。メンバーが2人欠員して開発は苦労したものの,高得点を出すとアイドルのご褒美グラフィックスが見られるというお約束要素は,忘れずに盛り込んだそうだ。
見下ろし視点の2D迷路を探索して,王様に“蕎麦”を届けるゲーム。企画段階で「プレイヤーが1分間ノリノリになれる要素ってなんだろう?」と考えた結果,“勇者,蕎麦”のキーワードが最後まで残り,とりあえずゲームに落とし込んでみたらこうなったそうだ。勇者だけでなく開発者もノリノリだったことがうかがえる。
部屋の中にある鍵を一通り拾うと,隣の部屋へ続く扉が開くという仕組みで,ゲーム中はテンポよく画面が切り替わっていく。個人的に,今回発表された6作品の中では,最も完成度が高いように思えた。
一時期,爆発的なブームを巻き起こした「Cookie Clicker」をモチーフにしたゲーム。60秒間ひたすらクリックし続けてキャラクターを増殖させるという,まぁ,そのまんまの内容だ。
もちろんCookie Clickerをモチーフにしているので,増殖を手伝ってくれるオートカーソルや,Grandmaならぬ助手の女の子も登場。ちなみに増殖させる“ぶにゃ”というのは,NHN PlayArtのキャラクターで,主催者に対する心憎い配慮が光る。
“東北ずん子”(ずんだ餅のイメージキャラクター)への溢れんばかりの愛を表したいという想いを込めて作られたゲーム。台座からこぼれ落ちないように,ブロックを積み上げていくというパズルゲームの内容で,東北ずん子とは直接の関連性がない気もするのだが,とりあえず登場させずにはいられなかったらしい。開発時は,参加予定のリーダー役の人がドタキャンしてしまい,チームをまとめあげるのに苦労したそうだ。
1本あたり5秒前後でクリアできる“ゆるい”“くそげー”を片っ端からクリアしていくという,「メイドインワリオ」ライクなゲーム。企画段階では,30分で50種類ものミニゲームのアイデアを出せたものの,いざ開発する段になると,数が多いためプログラム担当(Unity経験者)の負担が半端なく,今回のGame Jamでは初めて“完徹”を経験したそうだ。
女の子のキャラクターを3人称視点で動かし,60秒の制限時間内に迷路から脱出するというゲーム。女の子(ドロイメライちゃん)がジャンプしたり倒れたりするモーションには,結構こだわったとのこと。集まったメンバーの中にデザイナーが一人もいないことが判明したときは絶句したが,Asset Store(Unityの開発用リソースを公開しているサービス)を利用しまくってなんとか完成まで漕ぎ着けたそうだ。
それにしても,これらのゲームがたったの29時間でちゃんと完成したというのは驚くばかり。
今回作られたゲームは,商用向けにリリースするというわけでなく,最優秀賞を決めてすらいない。それでも,参加者達は極限状態におけるゲーム開発そのものを心底楽しんでおり,プレゼンテーションの終了後は別チームで作られたゲームを見にいったり,そこかしこで歓談する様子が見受けられた。
NHN PlayArtは,今後,優秀な人材発掘目的でもGame Jamを定期開催する予定とのこと。また,一般向けのGame Jamはほかにも開催されているので,興味を持った人は気軽に参加してみてはどうだろうか。
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Unity
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