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VRゲームの時代はやってくるのか? Oculus RiftにProject Morpheus,Project NEO,そしてCardboardまでVR HMD動向総まとめ
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印刷2014/12/27 00:20

業界動向

VRゲームの時代はやってくるのか? Oculus RiftにProject Morpheus,Project NEO,そしてCardboardまでVR HMD動向総まとめ

Rift
Rift
Rift
 Oculus VRが仮想現実(Virtual Reality)対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,VR HMD)「Rift」を発表して以来,業界的にこれらの新デバイスに向かう傾向が加速している。2014年度では,SCEが「Project Morpheus」(以下,Morpheus)を発表して注目を集め,Oculus VRの第2世代開発キット(以下,DK2)がリリースされて,より現実的な形でのVRの展開が見えてくるようになった。
 Xbox Oneを擁するMicrosoftも「Project NEO」というVR HMDを開発中と伝えられており,業界はこぞってVRに新天地を求める勢いだ。来年にはもっと本格的な展開が期待されている。

 表示デバイスの進化はゲームにとって非常に大きなブレイクスルーとなりうる。多くのゲームデバイスはテレビというデバイスの制限で表現力に限界があったのだが,ハイビジョンの普及から,いわゆるHD化が進み近年では表示画質はかなり向上している。ただ,これも従来の延長線上の展開にすぎず,情報量は増えたものの,表現力という点では劇的に進化したというわけではなかった。
 ニンテンドー3DSは表示デバイスに立体表示を標準採用し,新しい表示方式での先鞭をつけた。奥行きのある画面は,それなりに新しい体験をもたらしたが,残念ながらゲームで立体表現があまり生かされているようには思われない。
 そんな状況で登場したVR HMDは,本格的なVR体験を実現し,ゲーム表現の幅を大きく拡大しようとしている。これらのデバイスはどこが画期的でどのような特徴や問題点を持っているのか。現状を示すトピックを年の終わりにまとめておきたい。

●記事中で使用する略称一覧
 Rift(Oculus VR製VR HMD「Rift」全般)
 DK1(Oculus Rift Development Kit)
 DK2(Oculus Rift Development Kit 2)
 Morpheus(Project Morpheus)
 Cardboard(Google Cardboard)

 まずは仕組みからだ。
 普通の人であれば,「近くのものは大きく見えて,遠くのものは小さく見える」というのは至極当たり前のこととして理解していることと思う。直接目で見ることと,レンズを通したり,レンダリングしたりといった間接的な映像では少し違いが出てくるので,そのあたりから考えていこう。

 例えば,横に果てしなく長い壁があったとして,それを正面から見たときにどのようになるだろうか。実際の視野では,視点から近い正面に比べて,距離の遠い端のほうはいくぶん小さく見え,上端と下端は軽く孤を描いて見えるはずだ。それは,画像が歪んでいるのではなくて,自然な遠近感が付いているだけなのだが,現象としては少し丸みが付いた感じになる。しかし,体感としては歪んでいるとは感じない。
 ゲームなどで使われる直交座標系での透視変換だと,これが少し変わってくる。Z座標が同じなら透視変換をしても画面の中央と端での差は生じない。

Rift
Unityでの検証シーン。横に長い壁を作る
Rift
実行結果
Rift
標準カメラの視野角60度に対し,広角の120度を設定して描画
Rift
「その頂点数じゃ」と思われる方のために

 視野角が小さいうちはとくに問題がないのだが,視野角が広がると表示はおかしくなる。3Dゲームを極度に横長のウィンドウ表示にしたりすると,端のあたりは大きく引き伸ばされたように見えるのに気づいた人もいるはずだ。マルチディスプレイでゲームをしたりすると,やはり端のあたりはひどいことになりがちだ。

3画面モードでプレイ中の「Left 4 Dead 2」。右にいるキャラクターの左右の腕の太さに注目
Rift

 角度を基にした極座標系で変換するとこのような問題は発生せず,自然な歪みが出てくる。VR HMDでは原則的にこちらが使われている。イメージ的には,視点を中心にした背景球にレンダリングするような感じになる。
 最近のVR HMDでは,魚眼レンズ並みの広視野角で,直交座標系のままレンダリングした画像をディストーション処理で極座標系に変換し,それをスクリーンに表示して,レンズで拡大するという手法を取る。スクリーンに表示された画像自体を見ると丸く歪んで見えるだろうが,レンズで適正な視野角になるように補正するとその歪みが取れるという理屈だ。

Riftのレンダリング画像。この状態で表示され,レンズで拡大表示される
Rift

 すでに結構な数が世に出回っているRiftの実物を見ると,多くの人はあまりに単純な構造に驚いた(or 驚く)のではないかと思う。主要部品としてはスクリーンとレンズ1個があるだけなのだ。それでいてほとんど歪みのない映像が再現されることにも驚くだろう。視点とスクリーンの位置がきっちり固定されているため,かなり良好な擬似全天球映像が再現できるのだ。


VR HMDの画像歪み


 Morpheusのほうはこちらのインタビューにもあったように,少し丸みが残る傾向にある。さほど近距離にオブジェクトのないデモでは気づきにくかったのだが,「サマーレッスン」を見ると部屋の中は丸く歪んだ感じになり,キャラにも丸みが出る。
 PS4から出力される信号をプロセッサから第三者用に出力するコミュニケーションディスプレイの映像はほぼ歪みなく見えるのだが,HMD側では歪みが残っているのだ。近くのものが大きく見え,全体に丸みが出ることがインタビューでも報告されている。これは広角レンズの特性が残っていることを意味しており,レンダリング時の視野角の設定が接眼側のレンズの特性と合っていないとしか思えない。丸みが付くことを前提にするなど,デザイナーも苦労しているようなので,早期の是正を望みたいところだ。

 では,Riftは正確かというと,残念ながらこちらも完全ではなく,遠近感が強調される傾向にある。これも少し広角レンズ効果が残っている,つまりレンダリング時の画角と再生時の視野角が揃っていないことを意味している。
 調べると,DK1とDK2では微妙に視野角が違い,DK2のほうが狭くなっているらしい。なんとなくDK1の設定のままでシステムが作られていることが原因ではないかという気がするのだが,現状では確証はない。少なくともDK2では無視できない影響が発生している(※遠近感を強調するためにわざと設定している可能性もある)。体感を悪化させているので,これもなんとかしてほしいところだ。

 両眼で見てそのまま拡大するので,これらのVR HMDで試用されるのは,左目用画像の隣に右目用画像を置いたサイドバイサイドタイプのフォーマットとなる。「横並びだと境界部分が見えたりしないのか」という疑問を抱く人もいるだろう。実際には結構マージンを取ってレンダリングされているので,見えるのは端の部分を除いたエリアとなる。Riftは,Windowsでの拡張ディスプレイとして登録することも可能なのだが,その場合,画面端のアイコンやツールバーなどはほぼ操作不能になる。覗き込んでもそこまで見えないのだ。
 左右の目用の2枚の画像をかなり大きめにレンダリングし,ディストーション処理をして1枚の画像にして表示するというのがだいたいの流れとなる。


RiftとMorpheus:その違いは?


 現時点で発表されているゲーム用のVR HMDにはRiftとMorpheusの2種類がある。まあ,すでに市販されているものとしてSAMSUNGのGear VRもあるのだが,モバイル専用なのでここでは除外しておく。

次世代Rift試作機「Crescent Bay」では3Dサウンド技術が搭載される。ちなみに,DK2のコードネームはCrystal Coveで,いずれもダイビングの人気スポット名になっている。VR空間にダイブするためのデバイスという位置付けなのだろう
Rift
 さて,RiftとMorpheusはどちらも開発段階のものであり,Riftは2世代めのDK2が主流で,すでに次世代の「Crescent Bay」(クレセントベイ,開発コードネーム)も発表されている。一方のMorpheusも,細かくあちこちがアップデートされているという(関連記事)。よって,一般消費者が手にする時点での製品とは異なるだろうが,現状での印象を挙げておこう。といっても手元にMorpheusを調達できないので,そちらについては試用時の印象をもとに語ることになる(GDC 2014で2回,CEDEC 2014,サマーレッスンと4回体験している)。

 視野の広さに多少の違いはあるのだろうが,どちらもほぼ全視界を乗っ取る時点で機能的にあまり差はないと考えていいだろう。体験としてはどちらも同程度のVRが楽しめる。
 装着感でいうと,印象としてはDK2はDK1よりシビアな感じがしている。発表会場で用意されているDK2ではうまく合わないことも多い。
 個人的に試していても,最適設定に追い込むのは少し手間がかかる。ただし,きっちり決まればあとは問題ない。位置ずれが起こると画像のにじみが簡単に発生するのだが,これもきっちりバンドを固定すればさほど問題にはならないだろう。きちんと見える状態に持っていくことさえできれば,だが。

 一方のMorpheusは何度か触っただけだが,いずれもとくに問題なく使用できたので,扱いやすいと言ってよいのだろう。Morpheusはレンズ部分の撮影を許可してくれないのだが,軽く見た限りではそれほど特殊なようには見えなかったものの,なにか工夫がこらしてあるのだと思われる。
 吊り下げ型なのとスクリーン面がやや遠いので,きっちり固定できるDK2と比べると,頭の揺れなどでの影響は大きめだ。

 DK2ではメガネをかけての使用はかなり難しい。設定にもよるが,接眼レンズは最短で眼球から数mmの位置にくる。そのため,接眼レンズにはノーマルなものと近視用の2種類が用意されている。あとはレンズの位置で焦点を個別に合わせることになる。
 Mnorpheusは,ヘッドバンドとHMD部分が分離した構造になっているので,メガネをつけていても大丈夫というのが一つのウリになっている。原理的に,接眼レンズの特性に従って逆変換をかける形でディストーションが行われるので,間にレンズが1枚入ると結構マズいような気はするのだが,とくに問題にしている人はいないようだ。

Riftでは色収差を考慮してRGBごとのディストーションが行われているので,元画像では色ずれが発生している
 画質面はどうだろうか。どちらもパネルには1920×1080ドットのいわゆるフルHD解像度のものが使われており,それを右目と左目で分割して利用する。個人的な意見では,どちらとも解像度に関してはもう一声ほしいところではある。
 DK2では応答性に優れた有機ELディスプレイが使用されている。残像があるかないかというと,後述のようにかなりあるのだが,パネルの特性としては高速型が使用されている。リフレッシュレートは75Hzだ。ただし,DK2は,見た目ではっきり分かるほど開口率が低く,粗い画像になる。率直に言えばわりと残念な感じだ。


 視界は素直な感じで,前述のように遠近感がやや強調されているものの,画像の歪みは少ない。レンズによる色収差を解消するため,レンダリング画像に色ずらしが行われているのだが,ちょっとずらしすぎで,最終画像ではレンズ特性とは逆方向に色ずれが発生している。

 対するMorpheusでは液晶パネルが使われているのだが,見た目に気になるところはない。CEDEC 2014の講演で吉田修平氏は開口率の高さに言及していたが,実際にきめ細かな映像であり,全体的な品位は高い。前述のように遠近感の強調と樽型の歪みがあるものの,とくに色ずれなどは発生していない。ただし,リフレッシュレートは60Hz止まりなので,動的解像度や追従性では一歩劣っていることになる。PS4を前提とする以上は,リフレッシュレートの引き上げは難しいのかもしれない。

 現状では動き重視のRiftと画像重視のMorpheusといった感じだが,どちらもまだ最終仕様ではないので,傾向程度に捉えておこう。パネル部材ではどちらもスマートフォンないしタブレット用のものを流用していると思われるので,いきなりどんとスペックが上がってもまったく不思議ではない。


VR HMDが拓く新たな地平と新たな問題


 さて,長年VR分野を追いかけていた関係で,HMDなどにはある程度分かっていたつもりでいたのだが,8月頭にDK2を入手して実際に使ってみると,まだまだ認識が浅かったと痛感させられている。VR HMDについては,個人ではとても手の届かない値段の本格的な製品なども体験していたのだが,それらと比べてもDK2がもたらす臨場感は圧倒的だったのだ。
 ただし,その圧倒的な臨場感がもたらすものは必ずしもよいことだけではない。ありていにいえば,酔いやすいのだ。

 一般的に言って,これは画面が大きいほど起きやすい。目に入る画面の揺れが多くなるのだから当然の話だろう。大型テレビに密接して画面を見ているときに,急に画面が移動すると,身体の揺れを感じる場合がある。視覚誘導自己運動感覚という奴だが,これも画面が大きいほど起きやすい。視界は運動感覚に大きな影響を与えるのである。

 さて,VR HMDでは,画面の大きさというか,視界のほぼ全域が画像で占められる。完全な人間の視界すべてではないが,だいたい水中メガネをつけたときの視野だと思えばよい。
 それくらいまでいくと,ちょっと本格的なVR HMDよりも顕著なことが起きてくる。画面を見ているという感覚はなくなり,視界が人工的映像に置き換えられたと身体が認識してくるのだ。まさにVRの世界ではあるのだが,そうなると「酔いやすいね」といったレベルではなく,視界が身体感覚にダイレクトに影響を与えるようになる。実際の視界に匹敵するような破綻のない3D映像でないと,大きな違和感が生じて身体感覚に跳ね返ってくるのだ。没入度が非常に高い分,反動も大きく,これが現在のVRコンテンツ作成での最大の障害となっている。

 GDCでのOculusのセッションが「どうすれば酔いにくいか」で占められていたり,CEDECでのSCE吉田修平氏の講演や,サマーレッスンでのバンダイナムコゲームス原田氏のインタビューも,そのあたりに多くの言葉を費やしていた理由はここにある。全視界型のVR HMDは「凄いけど危ない」というのは,体験した人多くの人が抱く感想ではないだろうか。

 話は変わるが,VR対応とは,ジャイロセンサーなどを搭載していて,頭の動きに追従できるという部分が大きいのだが,VRではなく,単なる「立体視対応HMD」として使うとどうなるのか? 世の中には立体視コンテンツも多いのだから,そのビューアにしたり,普通の3Dゲームの立体表示用だけで使うといったことはもちろん可能ではあるのだ。

 で,DK2入手直後に実際にやってみた。立体視対応コンテンツを再生する手段としては,「Oculus Overlay」というものが試験的に公開されており,多少無理やりになるが,サイドバイサイド型立体視対応画像にリアルタイムでディストーションを付けて表示できる。ただ,DK2には対応していないので,現在入手可能なDK2に適用するには,自己責任でバイナリエディタなどを使って,以下のように手動でパッチを当てる必要がある。

00001CA5: 00 → 80
00001CA6: 05 → 07
00001CB0: 20 → 38
00001CB1: 03 → 04

 調整は必要だが,これでYouTube 3Dチャンネルなどのコンテンツを楽しむことは可能だ。

 もう一歩進んで,既存の3DゲームをRiftで立体視表示できないだろうかと考える人もいるだろう。一般的なゲームでサイドバイサイド映像を出力させる方法はあるだろうか。このあたりは伝統的にNVIDIA製ドライバが強かった分野なのだが,3D Vision以前のNVIDIA製ドライバではさまざまなフォーマットの立体視映像が出力できていたものの,最近では赤青メガネと3D Visionにしか対応しなくなったので,サードパーティ製を導入するほかない。
 立体視対応テレビなどで実績のあるTriDefのドライバを使えば,既存の3Dゲームをサイドバイサイドで表示させ,このツールでRift対応にすることもできなくはない。これは体験版もあるので試すことは簡単だ。

 で,実際やってみたのだが,結論から言えば大失敗であった。まず,解像度が足りないので,ゲーム内の文字はほぼ読めず,また画面の端は表示範囲外なので,ゲームに必要なショートカットアイコンやメニューがほとんど操作できない。なにより,視界をほぼ乗っ取られることの意味を軽く考えすぎていた。
 3Dゲームなのに頭の動きに追従しないというのは,もの凄いストレスになり,ちょっとした動きで簡単に気持ち悪くなる。真正面に進んでいるうちはまだよいのだが,方向を変えたり,横に進んだりすると違和感が非常に大きい。クリック移動など,カメラコントロールの主導権がプレイヤーにあるとは限らない場合はとくにひどい。つまり,日本で一般的なオンラインRPGなどをプレイするのはかなり無謀だった。

 「World of Warcraft」などでは早くからRift用のMODが出ていたのだが,そういうものがない場合,VR HMDはVRだけで使うべきというのが現状の結論だ。極端な話,ヘッドトラッキングがない場合は「静止画でも酔う」と考えてもらっていい。


不完全な視野が3D酔いを誘発する


 一般に「3D酔い」と呼ばれる現象について,原因としては,

  • フレームレート不足
  • レイテンシ
  • 視差
  • 歪み

などが挙げられる。

 筆頭はフレームレートで,とくに首振りなどに対する追従(ヘッドトラッキング)が不自然になると没入感は損なわれる。そういった操作に対するレイテンシ自体も少ないほうが望ましい。その点,DK2では75Hzのフレームレートが実現されており,Riftの製品版では90Hzが予定されているという。自然に視界をめぐらすことで世界の広がりを確認できることがVRの醍醐味の一つなので,頭部の動きへの追従性を最優先とした対応は,別に間違いというわけではない。

 Oculus VRのアプローチからすれば,60fpsのMorpheusなどは論外ということになるだろうが,個人的にはこの手のデバイスでフレームレートによる違和感はさほど感じたことはない。動きが大きいと気になるのかもしれないが,動かなくても気になる部分のほうが重要ではないだろうか。

 視差や歪みは,視界の根本的な質に関する問題だ。視差が異なると遠近感が変わり,距離感やものの大きさがつかめなくなる。歪みがあると,とくに視野を移動したときに違和感がきわめて大きい。とにかく現実の視野と違う部分はことごとく阻害要因となりうるので,「不自然だね」で済んでいるうちはいいのだが,この手の機器ではダイレクトに身体的不快感に跳ね返ってくるところが難点となる。

 しかし,これらはフレームレートのような,性能的な限界がある問題ではなく,システム設計の部分で大半がカバーできる比較的対処しやすい問題であろうと思われる。例えば,視差については,根本的な数値を正確に合わせて多少の調整の余地を作れば大半解決する。歪みも,レンズのクセが分かればディストーション処理の側で吸収できる問題である。にもかかわらずなおざりにされている現状が残念だ。
 要点は,とにかく「視野をすべて奪う以上は瑕疵のない代替視野が求められる」という一点に集約されるのだが,現行の2製品の設計やソフトウェアではまだまだ甘い。


Riftのフレームレート管理は特殊?


 VR HMDの体感への悪影響についてはフレームレート神話ができつつある。実際,あちこちでこういった話をしてみても返ってくるのは「それはフレームレートが……」という話ばかりである。個人的には,フレームレート以外の部分の違和感のほうが大きな問題だと感じているのだが,残念ながらあまり共感してもらえないのが現状だ。

 問題のフレームレートだが,Riftでは一定値をキープするために,ちょっと変なレンダリングがされている。「Time warp」と呼ばれる技術が適用されている影響と思われるのだが,少なくともバージョン0.42のドライバでは明らかにおかしな挙動を示していた(※バージョン0.43で改善されたのを確認済み)。

 具体的には,通常,

1-2-3-4-5-6

のような順番でレンダリングされるフレームがあるとして,なぜか,

1-2-3-4-2-6

のように途中でステップバックしながらレンダリングされていたのだ。当然ながら,ひどいガタツキが発生していた。
 執筆時点での最新ドライバであるバージョン0.44でも,フレームレートを上限60fpsの状態で実行すると大きなガタツキが観測される。きっちり60fpsがキープされていても,出力されているのはどう見ても60fpsでレンダリングされた映像ではない。
 また,75fpsで出力されているはずの映像を見ても,体感的に「55fpsくらい?」と思うようなものも見受けられる。HMDの向き変更に対しては75fpsで対応するが,コンテンツのレンダリングは同期していないという感じである。応答性を上げる技術としては優秀だが,なぜか映像がブレることがあるのが難点だ。比較的ちゃんと動いている状態でも,現状では「残像が少ない有機ELディスプレイって?」と首をひねるくらいに残像が発生している。

 Time warpの詳細については明かされていないのだが,動作内容を考えるに,レンダリング済みの画像からトリミング位置を変更して表示する技術ではないかと予想している。レンダリングされた内容自体については頓着していない結果がブレになっているのではないだろうか。これにより追従性は上がっているのだろうが,デメリットも大きいように思われる。


VR体験に適したRift用デモ


 一般開発者にクローズドなMorpheusと違って,Oculus VRの開発者サイトでは日々世界中の開発者が作ったプログラムがアップロードされている。玉石混交というか,片っ端から試していると結構つらい思いをするのだが,どういったものが向いているのだろうか。

 仮想空間をさまよう移動系は,VRゲームでの一つの理想像であり,将来的には期待される分野だが,現状ではあまり適しているとはいえないコンテンツとなっている。
 バンダイナムコがほぼ移動のない「サマーレッスン」を作り,ユニティがデモで使っているのも「ユニティちゃんライブステージ」をVR化したものだったりするのは,ある程度必然だと考えている。あまり動かなくて済むゲームが最善なのだ。

サマーレッスン
Rift

 現時点で,開発者用ということにはなっているが,DK2は350ドルでほぼ誰でも購入できる。余裕がある人はぜひ体験してみることをお勧めしたいので,その際に有用ないくつかのデモを紹介しておこう。

 まず,ベストなVR体験の一つには「SlightLine」というデモが挙げられるだろう。Direct Modeでしか動かないなどちょっとした注意はあるが,コンフィギュレーションツールでのデモのあとに試すべき一作といえる。「The Chair」という副題が付いているように,プレイヤーは基本的に椅子に座ったまま動かない。しかし,頭をめぐらせるたびに新しいシーンが展開していくという仕様になっている。

Rift
Rift Rift

 もう一つ,著作権絡みの問題から,紹介したものかどうか悩んだのだが,現状のRiftで最高のVR体験ができるものの一つとして「Miku Entertainment Sphere Stage」を挙げておく必要がある気がする。なんのことはない,Mikumikudance(樋口M氏開発)のデータを再生するだけのソフトなのだが,あまり視点を動かさなくて済むのはもちろん,すでに完成されたデータが使用されているので基本的な映像クオリティは非常に高い。現状では「VR空間でのキャラクターの可能性」というものをいちばん分かりやすく体験できるコンテンツだと思われる。

Rift

 普通に再生してもダンスする姿を眺められるだけなのだが,それでも「将来のキャラクターゲームはこんな感じになるのか」というのを感じることはできるだろう。さらに,パーソナルスペースの距離(だいたい1mくらい)にまで近付くと体験は少し変わってくる。DK2の解像度が低くて,遠いディテールが分からないというのもあるのだが,きっちりとフェイシャルアニメーションを作り込んでいるデータでは,キャラクターの存在感が段違いになることが感じられるはずだ。

 ベースになるのがアダルトゲームなのでこれも紹介したものか悩ましいところだが,Kissの「カスタムメイド3D」はRiftに対応した公式パッチを持つ数少ない市販ゲームの一つであり,隣に座った女の子を(そのような位置に調整すればだが)間近で感じることのできるコンテンツとなっている。既存のゲームの表示部分をVR化しているだけなので,実在感という意味では少し弱いのだが,可能性は見えてくるはずだ。
 VRでのキャラクターゲームは比較的作りやすく,かなりの需要もある分野なので今後多くの取り組みが出てくるのではないかと予想される。

「カスタムメイド3D」のVR表示例
Rift

 おそらくこういうのを「もっともっとリアルにしたらどうなるのか?」と考える人もいるだろう。
 Infinite-Realitiesというのは,日本のゲーム会社も多く使っている3Dスキャニングスタジオだが,高精度3Dスキャンしたモデリングデータとテクスチャで人体を再現したものをOculus Riftで見るとどうなるのかというのを実行ファイルで公開している。世の中の男性が一度は考えるようなことの,ほぼそのものといっていい。

Infinite-Realitiesによる高精度スキャンされた人体データのVRサンプルの一つ
Rift

 ただ,それをVRで見ても別にリアルなキャラだとは感じない人のほうが多いのではないだろうか。VR空間では,CGをよりリアルに体感できる。ゆえに動いてないモノの人間らしくなささ加減もリアルに感じとられると思っていい。動かないデータは単なるマネキンにすぎないのだ。

 これがモーションキャプチャデータで動けば(さほど難しくない),かなりのリアルさにはなるだろう。例えば「ダンス」というのは単なるモーションデータの垂れ流しでも不自然には感じられない種類のものであり,そこがマッチしているのが「Miku Entertainment Sphere Stage」や「ユニティちゃんライブステージ」だといえる。
 しかし,おそらくキャラクターゲームで求められる「リアルさ」は,モーションキャプチャだけでは実現できない類のものだろう。モデリングやモーションのリアルさが再現されればされるほど,振る舞いのリアルさが求められてくるはずだ。そこを一歩進んでキャラクターの自然な挙動を目指したのが「サマーレッスン」であるわけだ。形状や動きをリアルにすること自体は難しくない。高いハードルはその先にあるのだ。


さらに進んだVRの活用へ


 VR HMDの可能性を示すデモもいくつか紹介しておこう。
 「Janus VR」は,「バーチャルリアリティ空間を使ったネットワーク活用」における一つの実験ともいえるシステムだ。概念的に言えば,3D空間内に配置された部屋が一つのWebページのようになっており,空間内を移動することやオブジェクトへのアクセスでのハイパーリンクなどが実現されている。アバターを使ったチャットも可能だ。


 HTMLがWebページを記述するように,HTMLの拡張タグでVR空間を記述できることが特徴となっており,JavaScriptと組み合わせればゲームのようなものを作ることもできる。
 かなり酔いやすいデモになっているので,VR HMDで体験する際は注意が必要だろう。幸い,VR HMDがなくてもアクセス自体は可能なので,興味がある人はそちらから試してみるのがいいだろう。

 最初に紹介した「SlightLine」もそうだが,標準のデモであるOculus Configration Utilityから起動される机のデモは,多くの人に影響を与えているようだ。ごみごみとしたオフィス内のはずが,広い静謐な空間に移動でき,そこでそのまま仕事ができれば能率が上がるのではないかという気分にもさせてくれる。しかし,机の上にある鉛筆やキーボードを使いたくても,それは単に置いてあるだけのオブジェクトにすぎず,作業を行うことはできない。
 それを打開するための一歩となりうるのが,WindowsのデスクトップをVR空間に持ち込める「Virtual Desktop」だ。

メインディスプレイのデスクトップ(左)とVirtual Desktopでの表示(右)の様子。標準設定では文字が読めなかった
画面表示角度を222度に設定。文字が読めるようになった。画面に囲まれた感じだ
Rift

 これを使うと,現在使用しているメインディスプレイの画面がそのまま取り込まれて表示される。湾曲画面にすれば,移動しなくても端のあたりまであまり歪まずに表示できる。

端の部分。かなり湾曲していることが分かる
Rift

 普段使用しているのが4Kディスプレイなので,文字を綺麗に読めるくらいに設定すると,目の前にえらく巨大な壁がそびえ立つ結果になってしまったのだが,これはこれで悪くない。まあ,行えるのは表示だけなので,タッチタイピングの達人でもVR HMDを付けたまま作業をするのは困難だろうが。とにかくVR HMDの可能性を示す試みではある。


手がほしい……


 出力デバイスとしてのVR HMDはかなり画期的な効果を持つものとして開発が進んでいるが,その一方で不足が指摘されるのが入力デバイスである。Riftを使った人の多くは,切実に「手がほしい」と思うことだろう。

 Morpheusであれば,PS Moveによってある程度はVR空間に直接アクセスできるのだが,先ほど挙げたような,VR空間内のキーボードでタイピングするような用途には適していない,世の中にはサイバーグローブ(関連記事)のような指の動きを取れる機器もあるのだが,民生用となるとまだまだ難しい。
 Oculus VR創設者のPalmer Luckey氏来日時の講演インタビューでも入力デバイスの必要性と,独自デバイスの開発についての話があったが,VR用出力デバイスは,後述のCardboardのように,もはや誰にでも作れるような段階にある以上,入力デバイスの差が今後の焦点となることは間違いないだろう。

 そんなところに出てきたのが,指先の動きを取ることで有名な「Leap Motion」だ。DK2にLeap Motionセンサーをマウントする器具とドライバを作り,DK2で手の動きを取ってみせたのだ。
 実際使ってみても「これだ!」的な感動のあるプロジェクトだった。


 実際には,ムービーのように綺麗に手が表示されるわけではなく,認識率がイマイチで自在に扱うというところまではいかない。それでも,自分の手(もしくは代替品)がVR空間に表示されるというのは大きい。

 なお,Leap MotionのVRキットにはいくつかのデモがあり,そのうちの一つは,両手の動きで移動方向や速度を調整するというものだった。ちょっと過敏気味で制御は難しく,油断するとびゅんびゅんと動き回るのだが,面白いのは,それでも不思議と酔わないことだ。
 自分の手で移動を制御している実感があることと,手自体があることがよりどころとなっているのだろう。悪路でもドライバーは酔わないのと似ているかもしれない。

 Leap Motionは,もうちょっと精度が上がれば,非常に有力な入力デバイスになるという確信を抱かせてくれたのだが,そんなときにKickstarterに登場したのが,Nimble Senseというデバイスだった。

Rift

 はっきり言って,やっていること自体はLeap Motionと大差がないのだが,最初からVR用に開発されており,空間内のものをつかむデモの様子などはLeap Motionと比べても一段上の印象であった。
 まあ,この手のデモ映像を鵜呑みにしてはいけないのだが,話半分でもかなりのものなので個人的に投資してみたところ,ある日突然プロジェクトがキャンセルされていた。なにごとかと思ったら,会社ごとOculus VRに吸収されていたのだ。

Rift

 正直半分眉唾だと思っていたのだが,Oculus VRが手を出したということは本物だったようだ。であれば,かなり画期的な入力インタフェースが実現されることが期待される。
 次世代RiftとされているCrescent BayにはNimble Senseを組み込むことなどは考慮されていないわけだが,GDC 2015あたりではさらに新モデルになってお披露目されるのかもしれない。

 この件については他社の動きにも注目する必要があるだろう。おそらくMicrosoftのProject NEOは,「Kinect」の技術でこのあたりをクリアしてくるはずだ。ソニーグループも画像認識ではトップクラス(ARや顔認識など)なのだが,キネマティクスでの実績はあまりないようだが,それでもやってできないとも思えない。
 はたしてVR世代の入力デバイスの本命が,こういった手の動きを直接取る形のナチュラルインタフェースになるのかどうか,来年の動向には注目だ。


Project NEO


Rift
 MicrosoftがXbox One用のVR HMDとして開発中と噂されているのが「Project NEO」だ。まだ正式発表されていないので,情報は不確かだが,ちょっと検索するだけでも,

  • 640×480ドット液晶画面
  • 2軸モーションセンサー
  • 視野角37度
  • アイトラッキング搭載か?

といった情報は引っかかってくる。
 出回っている写真を見る限り,非常に薄い本体と左右に分割されているであろう画面などが予想される。RiftやMorpheusとは違う方式であることは間違いない。形状からして両眼部それぞれに小さめの液晶パネルを埋め込み,レンズで拡大する方式ではないかと思われる。Rift以降の世代のVR HMDというよりは,従来型HMDにヘッドトラッキングを加えたものという雰囲気である。前述のように,Kinectとの連動は侮れないと思われるのだが,形状からして伝えられている視野角は妥当なところといえ,肝心の没入感は低いレベルに留まりそうだ。

 ライバルが広視野角製品を先行させているのに,狭い視野角のデバイスを発売する意味はあるだろうか? 一つには,価格の引き下げが簡単だということが挙げられる。普及させるためにはきわめて重要な要素である。また,没入度が低い分,3D酔いなどの危険度も下がるとは言える。「既存の3DゲームをHMD対応にしただけ」な感じのゲームは,RiftでもMorpheusでも忌避対象となるのだが,狭視野角であればさほど気を使うこともないかもしれない(まあ,解像度が低すぎるのでゲーム自体の流用は難しいだろうが)。
 とにかくまだ噂レベルの話題なので,真偽を含めて続報を待ちたい。


Google Cardboard


これがCardborad。ダンボール製のHMDで中にスマホが入っている
Rift
 Google Cardboardは,Googleが発表したVR HMDシステムである。最大の特徴は「ダンボール製」なので,とても低コストであることだ。元々,Googleの「業務のうちの10%は好きなことやっていいよ」という制度から生まれたものだそうで,実際のところ「ちょこっと作ってみた」という感じなのだろうが,そこからSDKやマーケットを次々と展開していくのがGoogleの凄いところだ。

 Riftを見たときに「これってスマホ(タブレット)にレンズ付けるだけでいいじゃん?」と思った人はいるのではないだろうか。まあ,実際のところ当時は私も100円ショップでフレームに使えそうなものを物色したり,専門店でレンズを見繕ったりしていたものだった。
 そうこうしているうちにKickstarterで同様なプロジェクトを複数見つけ,見栄えもマシだったので自作はやめていくつかに投資してみたのだが,まあ,どれも進展がない(笑)。だいたい半年から1年で形が変わるものに対して,きっちりしたフレームを作ろうというのが間違いだったのだろう(複数の機種に対応できるというものもあったのだが)。
 3Dプリンタで1個出力するならともかく,金型を作るとなると生半可な手間ではない。「3Dプリンタを持ってる人は勝手に作ってね」とデータを公開している利口な人もいるが,「ダンボールではさむだけでいいじゃん?」というGoogleの割り切りは見事だ。
 この手のアプローチで難関であったソフトウェア的な問題は,GoogleのSDKでほぼ解決されている。こうなると,スマホによるHMD(?)側の仕様はどうとでもなる。互換品を作るのは簡単なのだ。ちなみに最近のプロジェクトでは,このあたりが秀逸である。

 スマートフォンだとCPUやGPU性能に限界があるので,もの凄いゲームは期待できないのだが,VR体験としては,RiftやMorpheusとほぼ変わらないものが提供されている。変な歪みもなく,Time warpなど凝ったことをしない分,素直な映像である。
 Cardboardは,Googleの開発者イベントでは無料で配布されたりもしているのだが,一般人でもAmazonなどで互換品を購入できる。今回,Google純正のものとAmazonでも買えるハコスコ製のものを入手しているので,本来であれば組み立てていろいろしたいところなのだが,試す時間がなかったので割愛することにしたい。

Google Cardboard(左)とハコスコ製の互換品(右)
Rift

 繰り返すが,基本的なVR体験はRiftなどとほぼ変わらないので,DK2を購入するほどではないがVRに興味があって,大きめのAndroid端末を使っている人はこちらを試してみるのもいいだろう。これは基本的にAndroid中心で展開しているものだが,iOS用のSDKも提供される予定とのこと。
 VRなゲームをドライブするのはスマホでは微妙だが,表示自体はスマホで十分。カメラも使えるので,ARデバイスとしても期待できる。なにしろ潜在市場はデカいので一発ネタなどでも大当たりしたときの破壊力は計り知れない。案外,簡易なVRコンテンツが業界を引っ張っていく可能性もありそうだ。

Oculus VR公式サイト

Google cardboard公式サイト

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