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Unity Technologies CEOとOculus VR創設者らによる「Unite Japan 2014」基調講演をレポート。マルチプレイヤーゲームサポートなどUnity 5.xの話題も
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印刷2014/04/08 19:47

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Unity Technologies CEOとOculus VR創設者らによる「Unite Japan 2014」基調講演をレポート。マルチプレイヤーゲームサポートなどUnity 5.xの話題も

 2014年4月7日および8日の両日,Unity開発者のためのカンファレンス「Unite Japan 2014」が東京都内で開催さている。その初日には,Unity Technologies共同創立者兼CEOのDavid Helgason氏や,Oculus VRの創設者Palmer Luckey氏らによる基調講演が行われた。


コラボレーションが実現したUnityの発展


Unity Technologies共同創立者兼CEOのDavid Helgason氏
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 Helgason氏は,これまでのUnity Technologiesの活動はすべて「コラボレーション」だったとし,今この場にゲーム業界の一員として参加できているのは光栄なことだと語った。そんな氏による最初の話題は,Unityの創設期に関するものだった。
 それは2005年頃,Unityを発表し,その使い勝手を良くすることに明け暮れていた時期の話だ。Helgason氏は,Unityが世界にとって必要なものであるという自信が持てず,日々の作業に疲れ果てていたという。そんなとある日曜日に,コインランドリーでチョコレートを食べながら京劇を聞いていると,あるインスピレーションを受けたのだそうだ。
 そのとき食べていたチョコレートはエクアドル産で,チョコレート生産世界一の国から多くの人の手を経て,Helgason氏のいたデンマークに届いたものだった。京劇は,比較的高価だった初代iPodで再生されていたのだが,デンマークの貧乏な人でもそれくらいは手に入れることができたのだという。

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件のコインランドリー
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エクアドル産のチョコレート
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京劇
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懐かしのiPod

 そして,「これが100年前だったらどうだったろう」とHelgason氏は自分に問いかけたのだそうだ。チョコレートなどはきっと王侯貴族にしか口にできないものだったに違いない。京劇も,貴族にのみ許された楽しみだったかもしれないし,iPodについては,いくらお金を積んでも入手不可能だ。また,経済学者も言っているように,洗濯機というのは非常に経済効果の高い家電製品であり,生活で最も大変な労働を自動化してくれている。そういったものを可能にしたのはもちろんテクノロジの進歩と,さらにそれを共有していく文化のおかげだ。そう考えたとき,コペンハーゲンで最も貧しくても,昔の人よりはずっと豊かな生活をしていることにHelgason氏は気づいたのだそうだ。

 人とテクノロジがつながり,コラボレーションができればマジカルなことができる。それがUnityのインスピレーションの源泉なのだという。当時Unityが作っていたのは,分業のためのツールであり,コラボレーションに向けたツールだった。そのようなものを使うことで,人は「巨人の肩の上に立って」さらなる高みに達することができる。そのアイデアはパワフルなものだとHelgason氏は再認識したとのこと。

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 現在,全世界で何百万もの人がUnityを使っており,ライセンスやAsset Storeで利益を上げることができる。Unityのコアテクノロジに関わっている開発者は現在150人ほどで,これはゲームエンジンでは世界最大規模とのことだ。
 ちなみにAsset Storeは,3Dモデルの共有やトレーニングのためのプラットフォームとして作られた経緯があるのだが,最近になってAsset Storeにどの程度の価値があるのかを算出してみたのだという。
 例えばUltimate FPS Controller(UFPS)というパッケージは,20ドルで5000本以上を売り上げている。UFPSは,FPSを作る際のカメラコントロールをまとめたパッケージで,Battlefieldシリーズのカメラコントロールに関わった開発者が独立し,そのノウハウをまとめたものだ。これにはだいたい,熟達者の3日分に相当する開発工期を短縮する効果があるとのこと。そうして見た場合,このパッケージがあげた経済効果は,1万5000日分の工期短縮であり,業界に対する効果は非常に高いと氏は評価している。

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 そのような具合にほかのパッケージについても算出してみると,少なく見積もっても,年間合計2000億円ものコストが節約されていることになるのだという。
 なお,Kickstarterでのファンディングに成功した「Wasteland 2」は,ゲーム内のアセットをコミュニティから調達することで,予算以上の作り込みを実現しているとのこと。テクノロジの共有が進んだことで,非常に多くの価値あるものを低コストで使えるようになってきている。ゲーム開発者にとって,現在がいかに豊かな時代になっているかをHelgason氏は強調した。


拡大するマーケットプレイスにどう対応するか


Jussi Laakkonen氏
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 続いて,マーケットプレイスの変化に関する話が行われた。15年前であれば,作ったゲームの情報を多くの人に届けたいと思った場合,テレビの広告枠を買ってゴールデンタイムにコマーシャルを流すのが最も効果的だった。北米であれば1億人にリーチできる宣伝方法だ。
 それがApp Store/Google Playなどの登場後は劇的に変わっている。アプリストアで人気上位のリストに入れば即20億人にリーチ可能であり,さらに数年で50億人にまで広がることが予想されている。とはいえ,モバイルアプリの競争は激化しており,リストのTop10に入るのは極めて難しい。作ったゲームをどうやって見つけてもらうかは,業界全体の課題だと氏は語る。

 そして,少し前にUnity Technologiesに買収されたフィンランドの会社Applifierについても話が及び,ApplifierのCEOだったJussi Laakkonen氏が登壇した。

 Laakkonen氏は,EveryPlay(関連記事)を説明する前に,会場に向かってモバイルゲームを探す際にどうしているか,業界のプロではない奥さんや友達はどう探しているかと問いかけた。
 調査の結果では,モバイルゲームを探す際に一番多いのは「友達に聞く」,次いで「友達に見せてもらう」というものだったという。「App Storeなどで探す」「ゲームビデオを見る」というのも上位に入っている。

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 ともあれ,新しいゲームタイトルを探す際には,その場で見せるのが一番手っ取り早い。氏が例として挙げたのは,mixiの「Monster Strike」だった。そして,プレイムービーを見れば面白いことは分かるが,その面白さを言葉で説明するのは非常に難しいと氏は語る。ボールがああなってこうなってと説明するよりも,動いているところを見せるのが一番だというのは,納得できる人も多いだろう。
 クチコミか,App Storeで見つけるか,プレイ動画を見るかといった,主要なゲームへのリーチ方法のうち,EveryPlayはクチコミとプレイ動画を合わせ持ったものなのだという。会場では,モバイルゲームをプレイして動画を共有する過程を示すムービーが表示され,「Share」ボタンを押して,ムービーの情報を記述してアップロードするだけの手順がいかに簡単かということが示された。

Shareボタンを押すだけでプレイ動画をFacebookなどに投稿できる
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Unity 5.0以降の新展開


 続いてHelgason氏が再度登壇し,Unity 5.0について,さまざまな分野の専門家が総結集して作り上げられたものだと誇らしげに語った。Unity 5.0の開発にも多くのコラボレーションが必要で,まもなく出荷が開始されるが,もう少し調整が必要だそうだ。

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ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの高橋啓治郎氏
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 Unity 5.0の機能性説明は,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの高橋啓治郎氏から行われた。まずはグラフィックスに関する解説が行われたが,Unity 5.0では,グラフィックス関係にとくに力が入れられているという。

 内容については,GDCレポートで紹介したものと同様だが,物理ベースシェーダの良さについては,現在のものと比較してメリットを語っていた。
 曰く,これまではディフューズベースの物体にスペキュラーを乗せようとしても,ディフューズが強いと効果が見えないので,ディフューズを落とさなくてはならなかったり,ハイライトを強めていくと周りが暗くなるので,ディフューズを強くしなくてはならなかったりと,あちこちを行き来しての調整が必要だった。Unity 5.0では,それが一つのシェーダかつ,直感的なパラメータで操作できる。質感とパラメータが結び付いているので,解釈のぶれが出にくいなど,そのメリットを強調していた。

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さまざまな質感を一つのシェーダで表現したデモシーン
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ダイナミックに光源を変えたグローバルイルミネーションのデモ

旧タイプのシェーダによる操作例
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物理ベースシェーダによる操作例。光沢を増したり,表面をつや消しにしたりといった操作が独立でできる
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OpenRLを使ったグローバルイルミネーションのリアルタイム操作デモ
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 そのほか,OpenRLを使ったグローバルイルミネーションの確認をエディタ画面上で可能にした機能や,イメージベースドライティングの効果などがデモされていた。OpenRLによる処理は瞬時というわけにはいかないが,十分に実用レベルであり,下手をすると一晩かかっていたシャドウマップの焼き直しなどが,デザイナーによってコントロール可能になったことの価値を強く強調していた。

イメージベースドライティングの例
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 続いて,Unity 5.0に続く,5.xの話題がHelgason氏から行われた。まもなくリリースの5.0と並行して5.x用の機能の開発も行われており,今回は,それらの中から近い将来確実に入ってきそうな2つの技術が紹介された。
 一つは,マルチシーンエディティングであり,もう一つはマルチプレイヤーゲーム用のライブラリだ。
 マルチシーンエディタは,その名のとおり複数のシーンを同時にエディットできるというもので,シーンの管理がレベル内で簡単にできるようになるという。
 一方のマルチプレイヤーゲーム用ライブラリには,ホスティング/マネージングを行う機能や,通信の低レベルAPI,高レベルAPI,そしてマッチメーカーの機能が用意されている。リレーサーバーでファイアウォールを越えてアクセス可能にすることも可能で,オンラインゲームに必要な機能が一とおり揃えられている印象だ。ちなみに,この機能を開発しているのは「Ultima Online」の時代からMMORPGの開発に関わっていたベテランスタッフ勢であり,オンラインゲームの民主化にはかなり期待できそうだ。

 過去から現在,未来までグローバルな動きについて一とおり紹介されたのち,日本ローカルな動きについての紹介があった。一つは「Unity県人会議」で,もう一つは「ユニティちゃん」についてだ。

大前弘樹氏
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 県人会議は,地方イベントを行いたい人と,リソースを持った人を結びつけるお手伝いをするもので,発表を行った大前弘樹氏によると,日本では非常に勉強会が多く,また行いやすいのだそうだ。Unityが関わったものだけで,去年は83回の講演を行っていたという。しかし,都内でなら簡単なものも,地方に行くと会場の確保などが難しくなってくる。地方でのイベントも多く行ってきたユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのスタッフが,そのあたりの知見を生かして,地方イベントをサポートするための仕組みを作ったというところだろう。4月7日から活動を開始しているが,現在はまだイベントを登録したり支援プロデューサーの登録ができるだけだ。4月下旬からは,登録された内容をもとに支援要請などができるようになる。興味がある人は,公式サイトを見てみよう。

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 一方のユニティちゃんとはなにかというと,キャラクターを軸にコラボレーションや創作活動を支援するための仕組みだそうだ(関連記事)。これまでは使いたい3Dデータがあったとしても,ライセンスやフォーマットの関係で使えなかったり,グレーな状態のまま使わざるをえなかったりと,自由に使えるものがほとんどなかったと大前氏は語る。そこで,商用非商用を問わず,気軽に使えて改変もできるというかなり緩いライセンスのもとに作られたのがユニティちゃんだ。
 後半のセッションの内容もまとめて説明すると,ユニティちゃんの利用制限はかなり緩い。ユニティちゃんに政治・宗教的な主張をさせたり商用の成人コンテンツに使ったりといったことを除けば,ほとんど制限がない。商用利用でも,年商1000万円未満の企業であれば自由に使ってよいという。年商1000万円以上の企業が使っちゃダメかというと,そんなことはなく,研究開発やプロトタイプなどで使うのは自由で,商用で使う場合はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンに一報してくれば公認コンテンツにするのでちゃんと連絡してほしいとのこと。
 モーションや表情,ボイスなども入ったパッケージの配布が始まっているので,興味のある人はダウンロードしてみよう。

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Oculus VRが考えるバーチャルリアリティの未来


Oculus VRのPalmer Luckey氏
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 大前氏の発表に続いてHelgason氏が登場し,ゲーム業界ではエキサイティングなことがたくさん進行しており,未来を予見することがより重要になると話した。そしてそのような「未来」の一つとしてバーチャルリアリティ(VR)を挙げ,Oculus VRのPalmer Luckey氏を紹介した。

 Luckey氏の講演タイトルは「The Future of VR」だ。
 まず氏はUnityとの関係について,ほかのエンジンすべてを足したよりも多くのデモがUnityで作られていると,現在のOculus VRの成功はUnityに負う部分が大きいことを明らかにした。続いて自身について,「Matrix」「Virtual Wars」といった映画や「.hack」「攻殻機動隊」,最近では「ソードアート・オンライン」などのアニメが大好きな,根っからのVR好きだと紹介した。
 氏の動機はシンプルで,「最高のゲーム環境を作りたい」というものだという。就職後,思う存分最高のゲーム環境を揃えたためデート代がなくなって,なにやら彼女とトラブルがあったようだが,口うるさい彼女から逃げることも開発の原動力になっていたようだ。

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 現在のVRはまだまだ原始的なものだが,それでもコンシューマ向けのVRがようやく実現可能になってきたと氏は語る。Oculus RiftやSCEのProject Morpheusが同時期に出てきたのは決して偶然ではない,そのためのテクノロジが整ったのだと氏は語る。これまでもゲーム機にVRを取り入れようとする努力は数多く行われてきていた。それらがことごとく失敗したのは,テクノロジレベルが足りていなかったからだとLuckey氏は語る。
 現在ではスマートフォンなどの発展で,小型のモーションセンサーは非常に発達し,高解像度ディスプレイやハイパフォーマンスなGPUも登場している。ソフトウェア的にも,Unity 5を使えば非常にリアルなグラフィックスを実現できるようになるだろう。そういったテクノロジの進化抜きにVRは成立しない。冒頭でHelgason氏が言っていたのと同様に,20年前だったらスーパーコンピュータを使ってもできないことだ。
 Luckey氏は,VRをもっともっと発展させるため,将来的にMatrixやNerve Gearのようなものを実現するためにも,会場の開発者に向けてVRを一度体験してみてくれと呼びかけていた。

 ゲームというのはテキストの時代から,表示の限界に挑戦していたと氏はいう。そして,2Dができるようになったら2Dで,3Dができるようになると業界はそこに飛びつき,ハイデフグラフィックスが当たり前になってきて……と,ゲームの進化は続いている。しかし同時に,その速度は鈍ってきていると氏は指摘する。新しいゲームとはいっても,1年前のタイトルとそんなに違いはない。さらに2年前,3年前のゲームと比べてもそんなに大きくは違わない。そして,VRはそういった閉塞感を打ち破る切り札だとLuckey氏は語る。

 話は少し変わり,氏は「よくある」ゲームコントローラを挙げ,ゲーマーにはお馴染みのものだが,普段ゲームをやらない人には非常に使いにくいデバイスであることをあらためて説明した。また,モバイルゲームを挙げ,なにも分からない人でも遊べるように作ってあるそれらのゲームが,非コアゲーマー層(=一般層)の支持を得てゲーム市場を大きく広げていることを指摘した。
 また,VRのゲームでは入力が非常に重要になるのだと氏は語る。VRでは,自然に手を触れて操作できるようなものが望まれる。Oculusも研究を始めたとのことだが,マウスやゲームパッドのようなものではなく,よりナチュラルなインタフェース,世界の中に手を差し伸べて,インタラクトできるようなものでなくてはならないと氏は主張していた。VRにはまだまだ課題は多い。

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 VRは開発者にもさまざまなものを要求する。フレームドロップはダメで,30fpsもダメ。60fps,それもアンバッファ(ダブルバッファリングしない?)でV-Sync ONでの描画が最低限で,DK2では75fpsになっており,製品版では90fpsが予定されているという。パフォーマンスの最適化は必須となり,グラフィックスクオリティを落とすような選択をしなければならないこともあるだろう。普通のゲームだったらフレームレートが落ちてもイライラするだけだろうが,VRの場合は3D酔いの原因となる。

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 もう一つ,VRではゲームの移植はほぼ不可能だろうと開発者に向かって釘を刺していた。Unityはマルチプラットフォームのゲームを得意としているのだが,主にインプットデバイスが違うとゲームの移植は困難であることを,KinectやWiiといったモーションコントローラや,スマートフォンなどのタッチデバイスを例に説明していた。GDC 2014のSCEのMorpheusインタビューでは,Riftからの移植にさほど手間はかからないだろうという見通しが述べられていたのだが,Riftが想定しているインプットデバイスはかなり異なったものになるということだろうか。
 同時に,VRではインプットデバイスや性能への最適化がされたゲーム設計が必要で,最初からVR用に作られたゲームに勝るものはないという持論を述べていた。欧米のRift対応ゲームが,すでにある3Dゲームの出力をRift対応にしようとするものが多いのに対し,日本のインディーズで作られているゲームは根本から発想が違うものが多いと,日本の開発者に対する期待を表明していた。それもあってか,日本での活動を強化していくことを明らかにし,まずOculusの日本法人を立ち上げることにしたと発表した。続いて,DK2の出荷では日本への発送分を最優先にすると発表し,会場から喝采を受けていた。

 Luckey氏は,VRは世界を変えるメディアになりうると訴えた。書籍やテレビ,映画,モバイルゲームなどといったものは,今後進化を続けたとしても限界があり,現在と大きく変わったものにはなりようがない。しかしVRが目指すのは現実そのものであり,そこまで到達するにはまだまだ長い道のりが必要になる。現状では荒削りでも,いずれは現実そのもののVRが登場してくるだろうと氏は語る。そのとき,すべてのメディアは最終的にVRに帰結し最終的なプラットフォームになるだろうと,VRの未来を予測し講演を締めくくった。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン公式サイト

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