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稲船敬二氏,須田剛一氏,中 裕司氏,はしもとよしふみ氏,船水紀孝氏はどのようなスマートフォン向けアプリを作ろうとしているのか――Mobage新企画「スーパークリエイターズ」プレス発表会レポート
「スーパークリエイターズ」企画とは,既報のとおり,日本のゲーム産業の礎を築いてきた著名ゲームクリエイター達が,新たにゲームコンテンツを開発し,DeNAが運営するスマートフォン版「Mobage」向けアプリとして配信するというものだ。
会場では,この企画の主旨に賛同した以下の5名のゲームクリエイターが,それぞれの意気込みを述べ,企画・開発中のコンテンツなどを紹介した。
■登壇したゲームクリエイター(※五十音順)
稲船敬二氏(comcept 代表取締役/コンセプター)
須田剛一氏(グラスホッパー・マニファクチュア CEO/ゲームデザイナー)
中 裕司氏(プロペ 代表取締役社長)
はしもとよしふみ氏(マーベラスエンターテイメント 執行役員CCO)
船水紀孝氏(クラフト&マイスター 取締役)
許田氏は,世界市場における日本のゲームコンテンツが厳しい立場に置かれている現状に言及。そうした中で,今一度,日本のゲームの素晴らしさとゲームクリエイターの底力を世界に知らしめたいと述べる。
DeNAとの相互協力に合意した経緯については,“世界の厚い壁”を乗り越えるためだと説明。許田氏によれば,DeNAはスマートフォンというプラットフォームでの認知を高める役割を担うほか,ソーシャルゲームのノウハウやゲームエンジンなどの提供といった形で,本企画に協力していくとのことである。
なお,この企画に賛同してくれたゲームクリエイターは今回会場に集まった5名のほかにもいるとのことで,順次発表される見込みだ。
稲船氏は,これまでコンシューマゲームを牽引してきたと言えるクリエイター達が,スマートフォン用アプリを開発するという状況を「新しい時代の幕開け」と表現。
稲船氏は,従来のソーシャルゲームを過渡期と捉えていたそうで,「今回の企画によってソーシャルゲームは変わっていくだろうし,変えなければいけない。“スーパー”と銘打っているからには,並のものではダメ。僕達が作る新しいソーシャルゲームを,ぜひ皆さんにアピールしたい」と意気込みを語った。
また,「今まで作ってきたコンシューマゲームに縛られすぎてもダメ」と稲船氏は話す。氏曰く,昨今のコンシューマゲームの作り方にとらわれてソーシャルの良さは活かせないとのことで,シンプルなゲーム性と“人と繋がる”部分を重視しなければならない,と説明。コンシューマゲームのノウハウと,学んできたソーシャルゲームの要素を盛り込み,広がりのある展開を目指すと述べた。
稲船氏がプロデュースする新コンテンツ「JJ・ROCKETS(仮称)」についても,少しだけ紹介された。このコンテンツは,稲船氏自身に求められていることを熟慮して企画されたものとのことで,“稲船らしいゲーム”であり,かつソーシャルゲームとして成立するものになるという。
具体的にどのようなゲームになるのかという説明で,稲船氏は,自身が横スクロールタイプのアクションゲーム開発に長年携わってきたことを,“ヒント”として挙げた。
横スクロールタイプのアクションゲームは,すでにソーシャルゲームにも多数存在するが,ゲーム的に凝ればソーシャル性が薄れてしまう,シンプルなゲームにするとアクションが物足りなくなるという課題を抱えているという。
稲船氏が作る「JJ・ROCKETS(仮称)」はそれを乗り越えるものとなり,子どもから大人まで楽しめる“男の子っぽい”コンテンツと表現し,「稲船のゲームが好きな人なら,飛びつくようなものになると思います」と付け加えた。
また,キャラクターデザイナー出身である稲船氏は,ソーシャルゲームに登場するキャラクターは存在感が弱いと感じていたという。「JJ・ROCKETS(仮称)」では,キャラの魅力をアピールする要素も盛り込んでいきたいとした。
最後に稲船氏は,今回会場に集まった5名のクリエイターについて「仲間でもありライバル」と表現し,互いに1位を目指して切磋琢磨したいとまとめた。
必然的に日常におけるゲームの占有率が以前よりもはるかに高まっていることから,ゲームクリエイターにとっては大きなチャンスなのではないかと常々考えていたそうだ。そこで今回の企画を持ちかけられたときは,早々に参加を決めたという。
続けて須田氏は,「AQインタラクティブさん,マーベラスさんと一緒にやるのであれば,自ずとタイトルは一つになる」と前置きして,今回の企画で「NO MORE HEROES」シリーズを展開していくことを表明。
また,Mobageで展開するということから,「“ロワイヤル”をいただいて,『NO MORE HEROES ロワイヤル』を出したいと思っています(笑)」と,リップサービスとも本気とも取れるコメントで,会場を沸かせていた。
また「NO MORE HEROES」シリーズは殺し屋が主人公ということで,ソーシャルゲームでどこまでバイオレンス表現が可能かということや,海外での展開にも挑戦していくとのこと。
須田氏は,すでにソーシャルゲームのアイデアを100近く練っているとのことで,一つ一つ実現していきたいと意気込みを語った。ちなみに,須田氏自身は最近,Mobageの「ガンダムロワイヤル」にハマっているとのこと。5分間という短い時間で遊ばせる絶妙のバランスや,次のチャレンジに繋げていくという仕掛けなどを学んでいきたいとも話していた。
中氏は,プロペとしてリリースしたiPhone/iPod touch/iPad用アプリ「PD -prope discoverer-」などのコンテンツを開発していく過程で,「Unreal Engine」「Unity」といったゲームエンジンを使い,スマートフォンでもコンシューマゲームと遜色ないクオリティのグラフィックスを実現できることを実感したと述べた。
今回,AQインタラクティブとDeNAの協力を得ることにより,さらに大きな規模の企画にも挑戦できるだろうと,今後の展望を語った。
続けて中氏は,今回の企画向けに開発中のコンテンツは,位置情報連動型のものであり,育成要素を持った冒険タイプのゲームになると説明した。
また中氏は最近,2歳になるお子さんと,シンプルながらもコミュニケーションが取れるようになったことを,とても面白いと感じるようになったそうだ。そういった面白さをソーシャルゲームに組み込めないか,検討しているとのことだ。
また,中氏が提示した企画書は2本あり,いずれも好印象が得られていたので,もう片方のコンテンツについても,今後挑戦していきたいと述べた。
また,DeNAのソーシャルゲームに関するノウハウを投入することなどの理由から,同社のPCブラウザゲーム「みんなの牧場物語」とは異なる内容になるとも話していた。
また,はしもと氏は,先日ドライブに行ったとき,一緒に行った知人がソーシャルゲームにはまっていたというエピソードを披露した。なんでもその知人は,以前はまったくゲームを遊ばなかったそうだが,ドライブ中,パーキングエリアに入ったり,食事をするために店に入ったりするたび,ソーシャルゲームの操作をしていたという。
それを見たはしもと氏は,「今や本当にゲームが生活の一部になっている」と感じたとのことで,「そうした生活に根付くゲームを作りたい」と意気込みを見せた。
そのキーワードとなるのが「生ゲー」である。船水氏はこの“生”という言葉に“新鮮”“ライブ感”“旬”などの意味を込め,「旬な企画(ネタ)を,旬な時期に提供できるよう考えている」と説明した。さらに「ソーシャルゲームにおいて日々変わるプレイヤーの好みや難度設定の対応には,アーケードゲームの開発や,ゲームセンターの運営で培ったノウハウが活かせるのではないか」と展望を述べた。
30代後半の守安氏は,自身が会場に集まった5名のゲームクリエイターが作ってきた数々のゲームを実際に遊んできた世代であり,そういったゲームクリエイター陣が,Mobageでどのようなソーシャルゲームを展開していくのか,一人のゲームファンとして大いに気になるとコメントした。
また守安氏は,Mobageがソーシャルゲームに参入したのは2009年10月のことで,実はまだ2年にも満たないが,今や月間売上は100億円にも達しており,ソーシャルゲーム市場は急激に成長していると説明。同社が展開する「怪盗ロワイヤル」は日本で最も人気のあるソーシャルゲームといえ,この1年の売上は300億円にも達しているとのこと。
これは,コンシューマゲームタイトルを1本6000円とすると,500万本の売上に相当する計算で,今やソーシャルゲーム市場は,さまざまな意味でコンシューマゲーム市場と遜色ない規模になってきていると語った。
守安氏は,昨今はフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が勢いを増していることに触れ,スマートフォンでは操作性やグラフィックスがフィーチャーフォンよりも格段に上がるため,これまでコンシューマゲームと比較してソーシャルゲームを避けてきた層にもアピールでき,市場はさらに拡大するだろうと,展望を述べた。
守安氏はまた,スマートフォンでは世界共通仕様のプラットフォームとなるため,フィーチャーフォンと異なり,日本のゲームを世界に広めるチャンスと話し,「スーパークリエイターズ」企画を通じて「日本No.1だけでなく世界No.1を目指す」と,海外展開について,強い意気込みを見せた。
守安氏は,これまでコンシューマゲーム業界とソーシャルゲーム業界には温度差があったが,この企画ではお互いのノウハウを融合することで,新しい市場と価値観を構築していきたいとまとめ,発表会を締めくくった。
発表会中,登壇したクリエイター達から,どのようなタイトルになるのかあまり具体的な話は出なかったが,発表会後に行われた質疑応答では,2011年内のリリースを目指しているという話が出たので,詳細が判明する日もそれほど遠くはないと思われる。“スーパークリエイターズ”が提供するスマートフォン向けアプリがどのようなものになるのか,今後の動向に引き続き注目していきたい。
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