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「放課後ライトノベル」第102回は『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』で,冴えないあの子を誰もが憧れるメインヒロインに!
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印刷2012/07/28 10:00

連載

「放課後ライトノベル」第102回は『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』で,冴えないあの子を誰もが憧れるメインヒロインに!



 先日,「連載100回を記念してジュースをおごってやろう」と担当氏に呼び出されたので喜び勇んで出向いたところ,開口一番「やっぱね,この連載がもうひと伸びするためには,君たちはキャラが薄いよね」と酷いことを言われ,さらには「次回までにスキンヘッドにして,革ジャン着て来い」「プロテインがぶ飲みして強靭な肉体を作れ。あるいは新宿二丁目に通え」と適当なアドバイスの連発。

 「そんなことやっても,ほかの連載陣とキャラが被るだけじゃないですか」と言おうとしたものの,そこは厳しい社会のカースト。反論は一切許されず,正座したまま3時間ほど過ごすはめに。あれっ,連載100回を祝ってくれるんじゃ……? とはいえ,確かに我々のキャラが立っていないというのは大きな問題である。

 だが,そう簡単にキャラを立てる方法などあるのだろうか? とりあえず語尾に「にょ」とか「りゅん」でもつけてみるか……と,新しい方向へ足を踏み出した原稿がつっ返され,途方に暮れていたところ,まったくヒロインのキャラが立っていないライトノベルがあるという噂を耳にした。
 これはさっそく読んで参考にしなくては! というわけで,今回の「放課後ライトノベル」では,美少女ゲーム界で人気を博しているシナリオライター,丸戸史明のライトノベルデビュー作『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』を紹介する。

 だけど表紙の女の子はツインテールにメガネにジャージにドヤ顔と,すでにキャラ立ってない? え,この子がメインヒロインじゃないの!?

「放課後ライトノベル」第102回は『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』で,冴えないあの子を誰もが憧れるメインヒロインに!
『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』

著者:丸戸史明
イラストレーター:深崎暮人
出版社/レーベル:富士見書房/富士見ファンタジア文庫
価格:609円(税込)
ISBN:978-4-8291-3787-1-C0193

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●ギャルゲーのような運命の出会い……だがそこには大きな罠が


 面白いアニメがあれば,教師に直談判して学校で上映会を開き,好きなライトノベルが出れば,読書用,布教用,保存用に3セット購入する,オタクの鑑の高校生・安芸倫也(あきともや)。世間は春休みながらも,人気アニメのBDボックスを買うため新聞配達に精を出す倫也は,桜の花びらが舞う坂で一人の少女を見つける。

 少女が帽子を風に飛ばされ困っていると気づいた倫也は,急いで帽子を救出。名前も聞かずに少女と別れた倫也だったが,その出会いに運命的なものを感じ,その晩に彼女との出会いをモチーフにしたゲームの企画書を作り始める。しかし,消費型オタの根気は短い。3日もするとすっかり忘れて,平常運転のオタ生活へ。そんな出会いから1か月後,放課後に友人とゲームを買いに行こうとしていた倫也は,クラスメイトの女子から声をかけられる。

蓮見先生が安芸くんのこと探してたよ。すぐに職員室に来て欲しいんだって

 もしかしてフラグが立ったのかと思ったら,実に事務的な用事だ。世の中やっぱりこんなもんですよねー,と思ったところで,用事を言い付けたクラスメイトの女子が別れ際に言う。

この前、ありがとね
はぁ、何が?
ほら、春休みの時,帽子拾ってくれたじゃん。白いベレーの
あ〜、そうだっけ……? ごめん全然覚えてないわ

 ……あれ?
 そう,目の前の名も知らぬクラスメイトこそが,1か月前に運命的な出会いをした少女だったのだ! こうして劇的な(?)再会を果たした2人だったが,彼女はある大きな問題を抱えていた……。


●キャラ立ちのしないメインヒロインと,個性的なサブヒロイン×2


 無事に少女と再会した倫也は,その少女・加藤恵(かとうめぐみ)を喫茶店に連れ出す。改めて見る加藤は,普通に可愛い。にも関わらず,1か月近くも一緒のクラスだった加藤の存在に,なぜ倫也は気づかなかったのか。その原因について,加藤は「やっぱ地味なんだよね、わたし」と自嘲する。しかし,倫也はそんな彼女の意見を力強く否定する。

加藤……お前は、地味なんかじゃない!

 なかなか主人公っぽいセリフだ。だが,彼女をフォローするのかと思いきや,そのあとが酷かった。

地味ってのはな、それだけで強い個性なんだよ! 強烈なキャラクターなんだよ!
お前はキャラが死んでいるんだよ!
ただ単にキャラが立ってないだけなんだよ! 中途半端なんだよ!

 と,ダメ出しを連発。そう,加藤はヒロインなのに,致命的なまでにキャラが立っていないのだ。1巻めから表紙をほかのキャラに奪われている時点で,すでにつらい。しかも地の文では「加藤」と苗字で表記されているというのも,かなりマイナスだ。

 だが,倫也は諦めない。こうしてまた創作意欲が掻き立てられるような出会い(というか再会)があったのに,このまま終わらせるなんてありえない。そこで倫也は翌日,加藤に1枚の紙を渡す。それは,彼が一度は投げ出したギャルゲーの企画書。倫也は今度は,加藤本人をヒロインにしたギャルゲーを作り,彼女を誰もが嫁にしたがるメインヒロインに仕立て上げようと考えたのだ。かなり明後日の方角を向いたアイデアだが,それに対して加藤は激怒も号泣もせず,あっさりオーケーを出す。キャラだけでなく,主体性もちょっと薄い。

 しかし,単なる消費型オタだった倫也に独力でゲームが作れるはずがない。そこで倫也は校内の知り合い,澤村(さわむら)・スペンサー・英梨々(えりり)と,霞ヶ丘詩羽(かすみがおかうたは)の2人に協力を頼む。

 英梨々は本作の表紙になっている女の子。英国人と日本人のハーフで美術部のエース。しかも倫也とは幼馴染みで,隠れオタ。さらには頭のツインテールに恥じないツンツンっぷり。
 一方の詩羽は倫也より一つ年上の上級生。1年生の頃から学年トップの成績をキープし続けている秀才で,さらには演劇部の脚本も手がける文才の持ち主。そのうえ,毒舌と誘惑を絶妙に絡めながら,倫也をいたぶる魔性の女。
 しかも2人には学校内では隠している秘密まである。どちらも物凄くキャラが立っているぞ! 倫也は無事にそんな2人の協力を得られるのか!? そして,まったくキャラが立ってない加藤の運命やいかに!


●メインヒロインの栄冠は誰の手に!? 負けるな加藤!


 しかし,冷静に考えればメインヒロインよりもサブヒロインのほうが目立っているライトノベルはたくさんある。あえて誰とは言わないが,新章が絶好調続刊中の,あの大食いシスターとか。けれども実際のところ,その手のヒロインは別にキャラが立っていないわけではない。ちょっとほかのヒロインが活躍しすぎるために,出番が減って相対的に影が薄くなってしまうだけなのだ。

 それに比べて,本作の加藤はしっかりと出番があるにも関わらず,いまいちキャラが立っていない。そんな存在感の薄い娘をメインにして,面白い物語にできるのか? ……できるのである。その秘密は,美少女ゲーム界で腕を鳴らした作者の会話劇の妙にある。

 重度のギャルゲーオタである倫也と,あくまで一般人の加藤の会話は当然どこかかみ合わない。しかし,そのちぐはぐな会話が不思議とテンポ良く進み,いつの間にか読者を引きずりこんでしまう。また,倫也のキャラが無駄に濃いので,加藤のキャラの薄さとフラットな対応によって,ちょうど良い具合に両者のバランスが取れている。

 さらに,美少女ゲーム関連のネタが充実しているのも大きな特徴。冒頭から,いかにもダメなオタクが考えましたと言わんばかりの,ろくでもない企画書が登場するわ,中盤では女の子を家に連れ込んで,徹夜でとき○モをプレイさせるわと,やりたい放題。また,日常の会話にも「ギャルゲーあるある」とでも言うべき小ネタが挟まれている。ギャルゲーマーは必読だ。

 そして,本作で何より気になるのは,誰がメインヒロインの座を射止めるかということ。作者がこれまでメインに活動してきた美少女ゲームなら,きちんと全員分のエンディングが用意されるはずだが,本作は選択肢なしの一本道のライトノベル。メインヒロインになれるのはただ一人。

 普通に考えれば,やはり「冴えない彼女」こと加藤恵なのだろうが,初っ端から表紙をほかのキャラに奪われた時点でそんな常識は通用しない。また作中には,『恋するメトロノーム』というライトノベルが登場するのだが,その作品は「2巻から現れたもう一人のヒロインを主人公が選ぶ」という衝撃の展開となっており,今後の物語が一筋縄でいかないことを示唆しているようにも感じられる。

 1巻の時点で,すでに見どころ十分なのだが,あくまで物語は始まったばかり。今後,4人の関係がどのように進展するのか? ゲームは無事に作られるのか? そして加藤さんは2人を押しのけヒロインになれるのか? いろいろと続きが待ち遠しい一作である。

■ほかにもいる,美少女ゲーム出身のライトノベル作家

『人類は衰退しました』(著者:田中ロミオ,イラスト:戸部淑/ガガガ文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
「放課後ライトノベル」第102回は『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』で,冴えないあの子を誰もが憧れるメインヒロインに!
 今回紹介した丸戸史明は,美少女ゲーム界では「世界でいちばんNGな恋」「WHITE ALBUM2 -introduction chapter-」など,何本ものヒット作を生み出した人気作家。近頃では美少女ゲーム出身の作家が,ライトノベルでも活躍するケースは多い。
 例えば,TVアニメが現在放映中の『人類は衰退しました』の作者,田中ロミオもその一人。妖精さんたちとのほんわかした交流を描いた同作は美少女ゲームとは縁遠いように思えるが,癖のある文章と,作品全体から滲み出る黒いユーモアは健在。『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』の映画化も控えており,今後も要注目だ。
 同じく,TVアニメが放映中の『だから僕は、Hができない。』(富士見ファンタジア文庫)の橘ぱんも美少女ゲーム出身。こちらは全体的にエロエロな感じのラブコメ&バトルもので,美少女ゲーム出身というのが大変納得できる。また,『彼女がフラグをおられたら』(講談社ラノベ文庫),『ここから脱出(で)たければ恋しあえっ』(角川スニーカー文庫),『10歳の保健体育』(一迅社文庫)と,さまざまな出版社で精力的に活動する竹井10日のような作家もいる。ほかにも以前に紹介した虚淵玄や竹宮ゆゆこなど,美少女ゲーム出身の人気作家は数多い。面白いライトノベルを発掘したければ,書店の棚ばかりではなく,美少女ゲーム方面にも目を光らせてみよう。

■■柿崎憲(ライター/ときメモは2の会長派)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「男色ディーノ選手も書いているとおり,ときメモってのは,一部の世代の人間には避けては通れない存在なんですよ!」と,口角泡を飛ばす柿崎氏。うっとおしいので適当に聞き流していたら,次第にヒートアップしたのか「藤崎詩織に『一緒に帰って,友達に噂とかされると恥ずかしいし…』と言われずに一人前になった奴なんていないんですよ!」と,頼みもしないのに持論を展開。これだからオタクってやつは……。
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