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やっぱり小学生は……。「放課後ライトノベル」第97回は『天使の3P!』で天使の歌声をプロデュースするよ!
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印刷2012/06/23 10:00

連載

やっぱり小学生は……。「放課後ライトノベル」第97回は『天使の3P!』で天使の歌声をプロデュースするよ!



 最近,久しぶりに新作ゲームをプレイしている。PlayStation 3の「TOKYO JUNGLE」だ。事前情報からバカゲーを想像していた人もいるかもしれないが,蓋を開けてみたら,これがなかなか骨のあるアクションゲーム。「食って,生きる」を地で行く,本気のサバイバルが仮想体験できる。生き馬の目を抜く現実のサバイバル生活に疲れたら,トラかライオンあたりになって渋谷の街を舞台に大暴れしてみるのもいいだろう。

 もっとも,長くプレイすればするほど(=長く生き残るほど)難度が高くなり,1回のプレイでかなり神経をすり減らすので,あまり根を詰めずに気楽にプレイするのが正解。とくに,あちこちスモッグだらけになると食べ物がすぐに腐るようになり,普通に食事をとるのにもひと苦労するように。水だけで何年も生きようとする動物たちはまるで仙人のようで,そのうち悟りでも開くんではないかと(自分でやっていることながら)思わず涙が……。

 そんな“悟り”とはおそらくまったく何の関係もないのだが,今回の「放課後ライトノベル」では小学5年生の女子3人によるバンドもの『天使の3P!』を紹介する。タイトルの「3P」はもちろん,さんぴ……ではなくスリーピースと読むらしいですよ。そうだよね,女の子3人に主人公1人だと(自粛)。

やっぱり小学生は……。「放課後ライトノベル」第97回は『天使の3P!』で天使の歌声をプロデュースするよ!
『天使の3P(スリーピース)!』

著者:蒼山サグ
イラストレーター:てぃんくる
出版社/レーベル:アスキー・メディアワークス/電撃文庫
価格:535円(税込)
ISBN:978-4-04-886627-9

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●引きこもり高校生,小学生女子に熱烈指導!?(※音楽の)


 中学時代から3年近く不登校を続けている貫井響(ぬくいきょう)。かろうじて合格した高校にも行かず,家に引きこもってばかりいる彼の趣味は,暇に飽かして始めたギターと,「ひびきP」として自作の曲を動画サイトにアップロードすること。そんな彼のもとにある日,五島潤(ごとうじゅん)と名乗る相手からのメールが届く。

 「会って話がしたい」と言う相手を警戒しつつも,これが自分を変えるための最後のチャンスではないかと考え,承諾の返事を返す響。約束の日,待ち合わせの場所にやってきた響は衝撃を受ける。そこにいたのは,年齢にして10歳,小学5年生の女子(しかも3人!)だったのだ。

 彼女たち――潤と,紅葉谷希美(もみじだにのぞみ)金城(かねしろ)そらの3人の願いは,「自分たちが暮らしている教会の礼拝堂で響の曲を演奏し,ライブをやりたい」というもの。そして3人は,響に集客のための手伝いをしてほしいと頼み込む。躊躇する響に,3人の小学5年生は――

「…………受けてくれたら、ちょっとだけなら触って良いわよ」(希美)
わ、私も……響さんの自由にして頂いて構わない、ですっ」(潤)
叩きたい? 叩く? 良いよ、叩いて」(そら)

 ……おまわりさんこっちです!


●清く心洗われる,天使たちの奏でる音色


 そんな犯罪一歩手前な(?)やり取りを経て,3人に協力することになった響。ライブ会場となる教会の礼拝堂は,30人ほどが集まればいっぱいになってしまう狭い空間。3人が学校の友達に声をかければすぐに集まる……と思いきや,事はそう単純ではなかった。ところで上で3人が触ったり,叩いたりしてもいいと言っているのは,彼女たちが使用しているヴィンテージものの楽器のことなので,何がどうとは言わないが大丈夫だ。

 潤たちに協力していく中で,響は彼女たちが抱える事情や,その胸の内を知る。彼女たちがライブをやりたいと言い出した,本当の理由も。それは,まだ生まれてからほんの10年しか経っていない少女たちが抱えるには重すぎる,切実なものだった。しかし,もしライブがうまくいかなかったら,彼女たちのその純粋な想いはきっと壊れてしまう。そう考えた大人は,響に,潤たちをあきらめさせるよう促す。

 世間的に見ればまだまだ子供でも,潤たちから見れば高校生の響は十分に大人だ。それこそ,最後の望みをかけて頼られるほどに。大人と子供の間で揺れ動きながらも,響は最後に1つの決断を下す。それは彼が,家に閉じこもって腐っていた自分を変えようと動き出した瞬間でもあった。

 少女たちが勇気を振り絞って踏み出した,あまりにささやかな一歩。小さな願いから始まったそれがいつしか,大人の諦念も,学校の友達の偏見も,彼女たち自身の臆病ささえも変えていく。万感の想いを,歌と演奏に込めて,少女たちは力強く曲を奏でる。3つの心が1つになったアンサンブルは,実にピュアで美しい。


●楽園は,きっとそこにある


 とまあ,そんなふうに感動的でハートフルなシーンも多々ある『天使の3P!』だが,実際読んでいると,そうしたストーリーよりも小学5年生の少女たちの入浴シーンのほうが強く印象に残るのもまた確かだ。

 というのも,著者の蒼山サグは「小学生って最高だな」の台詞で多くの紳士たちを騒然とさせたロ……スポコン小説『ロウきゅーぶ!』の書き手。小学生の女子を書かせたら今日のライトノベル界で右に出る者はいないと言える作家だ。小6から小5へと,『ロウきゅーぶ!』より年齢が1つ下がった本作でも,そのセンスは衰えるどころかますます磨きがかかっている。それは,本文冒頭で紹介した台詞などを見ても明らかだ。

 少女たちから身体を張った熱烈なアプローチ(=ライブへの協力依頼)をされても,簡単には首を縦に振らない響は一見すると紳士の鑑だが,騙されてはいけない。地の文でしれっと「全裸の妹を抱ける喜び、プライスレス」とか独白しているあたり,奴は本物。妹は潤たちの同級生で,つまりは同じ小学5年生だ。また,前述した「小学生って(略)」の台詞は本作にもしっかり登場する。

 このご時世にこのタイトルといい,さまざまな意味で挑戦的な『天使の3P!』。あとがきに曰く「3Pにも味をしめたので、ぜひまた近いうちにやりたいです」とのことなので,紳士諸君は来るべき再会の日に備えて全裸で待機していただきたい。風邪ひくなよ!

■紳士じゃなくても分かる,蒼山サグ作品

『ロウきゅーぶ!』(著者:蒼山サグ,イラスト:てぃんくる/電撃文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
やっぱり小学生は……。「放課後ライトノベル」第97回は『天使の3P!』で天使の歌声をプロデュースするよ!
 著者の蒼山サグは1981年生まれ,秋田県出身。小学生女子バスケットボールを主題に置いた『ロウきゅーぶ!』で第15回電撃小説大賞・銀賞を受賞し,2009年に小説家デビューを果たした。
 憧れの先輩の背中を追って,七芝高校バスケットボール部に入部した長谷川昴。だが入部直後,その先輩が顧問の娘(11歳)と恋愛関係にあることが発覚,それによってバスケ部は1年間の休部を言い渡されてしまう。失意の昴のもとに,小学校で教師を勤める叔母がもってきたある依頼――それは,小学生女子バスケットボール部のコーチをしてほしいというものだった。だが,件のチームはバスケ未経験者ばかり。果たして昴は,少女たちに手取り足取りあれこれと教え,立派に(プレイヤーとして)育て上げることができるのか?
 女子小学生という,これまでになかった要素を加えることで,『SLAM DUNK』に代表される既存のバスケットボールもののイメージを大きく覆し,スポーツもののヒット作が少ないライトノベルの中で異例のヒットを記録。2011年にはTVアニメ化を果たし,それに際して主役となる少女たちを務める5人の声優によるユニット「RO-KYU-BU!」も結成された。

■■宇佐見尚也(ライター/年上スキー)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「あんまり強調すると,いろいろまずいんで」とあらかじめ釘を刺しておいたので,「今回の原稿はいかにロで始まってリで終わる2文字の言葉を書かずにまとめるかに力を注ぎました」と胸を張る宇佐見氏。続けて「そんな筆者の苦労が少しでも伝われば幸いです。具体的には潤たちの胸の(以下略)」と語り始めたので,大惨事になる前に慌てて当て身を食らわせておきました。セフセフ。
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