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「World of Tanks」の新モード「ヒストリカルバトル」の実装意図と背景を説明するレクチャーが実施。Militariaを巻き込んで,さらなるレベルアップを目指す
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印刷2014/05/16 12:05

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「World of Tanks」の新モード「ヒストリカルバトル」の実装意図と背景を説明するレクチャーが実施。Militariaを巻き込んで,さらなるレベルアップを目指す

 ウォーゲーミングジャパンは2014年5月9日,「Wargaming and Militaria」と題したメディア向けのレクチャーを実施した。これは,ベラルーシのWargaming.netが開発/運営するマルチプレイ戦車アクション「World of Tanks」の9.0アップデートで実装された新機能「ヒストリカルバトル」について,その実装意図と背景を説明するという内容だ。

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 4月10日に掲載した記事でもお伝えしたように,ヒストリカルバトルとは,第二次世界大戦で実際に行われた戦闘をテーマにしたモードで,プレイヤーは戦史に沿った車両を使い,実際の戦場をイメージしたマップで戦うことになる。今のところ「クルスクの戦い」「バルジの戦い」,そして「春の目覚め作戦」の3つが用意されている。
 すでにヒストリカルバトルを体験した人も少なくないと思うが,そもそもヒストリカルバトルとは何か? どういう意図を持って作られたのか? というあたりに疑問を持っている人もいるかもしれない。そうした疑問に応えるべくレクチャーを担当したのは,ウォーゲーミングジャパンでミリタリーアドバイザーを務める宮永忠将氏で,宮永氏は今回のヒストリカルバトルの実装についても,深く関わっているとのことだ。

ウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザー,宮永忠将氏。個人的な夢としては,大和型戦艦三番艦を空母に設計変更した空母「信濃」の沈没位置特定とのこと。1944年11月に米潜水艦の雷撃を受けて,和歌山県潮岬沖に沈没した信濃だが,沈没地点の深さが6000m以上あるため詳しい調査は行われていない。もっとも,排水量約6万トンという大型船であるため,引き上げはさすがに不可能だ
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 宮永氏はまず,Wargamingが現在取り組んでいる「超重戦車マウス 復元プロジェクト」について紹介した。話がヒストリカルバトルから飛んでいるような気がするが,ちゃんとつながるので心配しなくても大丈夫ですよ。4月11日の記事でも紹介したように,これは,モスクワ郊外のクビンカ戦車博物館に収蔵されている「VIII号戦車マウス」をレストアするというプロジェクトで,エンジンを搭載して自走させることはもちろん,内装まで完全再現することが目的という本格的なものだ。
 設計図を含む資料の多くは失われたとされているが,多くのスタッフの努力により意外なところで見つかったりもしており,また,似た車両からの類推や工学的必然性などによってレストア作業が進められていると宮永氏は述べた。実際にマウスが機動すれば,1945年以来のことになり,それだけに,プロジェクト発表後のWargaming本社への問い合わせには,担当者が対応しきれないほど凄まじいものがあったという。

 ちなみに宮永氏によれば,マウスの存在を西側の専門家が知ったのは,それほど昔の話ではなく,グラスノスチ(情報公開)のおかげでフィンランドのメディアがクビンカにカメラを持ち込み,そのとき背後にチラっとマウスが映ったことが発端だったそうだ。ゴルバチョフ時代,1980年代のことだ。「こちら」の記事でも紹介したように,筆者もクビンカのマウスを実際に見た経験があるが,現用戦車よりもさらに大きいその風情は,まさに鉄の塊であり,まさかこれを動かそうと考える人がいるとは想像もしなかった。


 またこのほか,5月13日に掲載した記事でもお伝えしたように,バトル・オブ・ブリテン開幕直後の1940年8月26日,爆撃ミッションの帰路にイギリス空軍第264戦闘機中隊のボールトンポール デファイアント機に撃墜されて北海のグッドウィン サンズの底に沈んだドイツ空軍のDo-17 Z-2(ドルニエ 17)の引き揚げ作業にも,Wargamingは協力している。RAF(イギリス空軍)博物館には,すでに展示予定の特設ブースが用意されており,世界唯一の現存するドルニエ機の復元作業は順調に進んでいるようだ。写真を見る限り,引き揚げられた機体は原型を留めないような有様に見えるが,RAF博物館の公式サイトによれば,これほど部品が揃った例はかつてないのだという。

 さらに,ミャンマーのヤンゴン周辺に埋設遺棄された(という情報のある)スピットファイア戦闘機の発掘作業を支援するなど,Wargamingは世界中の軍事博物館や軍事記念館とのリレーションシップを強めている。


 こうしたことを行うのはなぜか? ゲームメーカーとしてのWargamingの立ち位置は,ほかのメーカーと変わるところなく,それはつまり制作したゲームを世界中のプレイヤーが遊び,さまざまなフィードバックを受けてゲームをシェイプアップしていくというものだ。
 だが,ほかと異なるのはWargamingの制作するゲームがすべてミリタリーをテーマにしたものであることだ,と宮永氏は続けた。登場する戦車にせよ戦闘機にせよ軍艦にせよ,すべて実物をモチーフにしており,そのため,プレイヤーの目には見えないところで多数の軍事博物館や専門家,マニアなどの協力を得ている。上記の数々のプロジェクトもその流れの中にあり,資料などで常にお世話になっているさまざまな軍事博物館や記念館に対する,Wargamingの返礼であると言えるかもしれない。

同社のゲーム制作には,多数の軍事博物館や施設,専門家の協力が必要だという。実際,「World of Warships」の制作にあたっては,ベラルーシから多数のスタッフが来日し,広島県呉市の「大和ミュージアム」にこもって資料収集を行ったそうだ
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 このような,ほかにはないミリタリー知識の集積を使って新たなプレイヤー層に訴求しようとする施策の一つが,ヒストリカルバトルだ。そしてその新たなプレイヤー層というのが,レクチャーのタイトルにもある「Militaria」であると宮永氏は言う。あまり聞き慣れない言葉で,辞書で調べると「軍事コレクション」などという意味もあるようだが,ここでは「ミリタリーマニア」,あるいはもっと砕けて「軍事オタク」と呼ばれる人々を指すという。
 つまり,ゲームに加えてミリタリーそのものにも興味がある人々をWorld of Tanksの世界に誘い,彼らの知識を活かしたフィードバックを得て,ゲームをさらにレベルアップさせようというのがヒストリカルバトルなのだ。

 ここで宮永氏は,用意された3つの歴史的な戦いについての説明を行った。詳しく書くときりがないので概略を紹介すると,まず「クルスクの戦い」は,1943年7月に起きた「プロホロフカの戦車戦」がモチーフになっている。


クルスクの戦い


「第二次世界大戦通史」原書房より
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 バクー油田を狙ったヒトラーのカフカス侵攻計画は,スターリングラードの第6軍全滅で頓挫したが,続くソ連軍の反撃も第三次ハリコフ攻防戦の敗北により停止し,両軍は息を切らして対峙することになったが,そこまでの戦いの結果,戦線にはクルスクを中心にした巨大な突出部ができていた。ドイツ軍にとっては自軍の戦線にできたこの突出部はきわめて危険であったため,これを南北から挟撃して包囲殲滅するという「ツィタデレ作戦を」発動した。当初,作戦開始は5月に予定されていたが,ヒトラーは「パンター」や「エレファント」などの新兵器の量産配備を主張したため,作戦の発動は7月にずれこみ,その間を利用してソ連軍は重厚な縦深防御陣地を構築し,ドイツ軍を迎え撃った。
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 ドイツ軍は歩兵約80万人,戦車約3000両,対するソ連軍は歩兵約130万人,戦車3600両を幅500kmのクルスク突出部に投入したことから,空前の戦車戦が繰り広げられた。ドイツ軍は南方からの攻撃を成功させたものの,プロホロフカでの消耗から攻勢限界に達し,米英軍が「ハスキー作戦」に基づいてシチリア島に上陸したこともあって,ツィタデレ作戦は半ばで中止された。数字の上では両軍痛み分けという感じだったが,それ以降,ドイツ軍は東部戦線での主導権を失い,防戦に回ることになった。独ソ戦の転回点としてスターリングラードを挙げる専門家は多いが,このクルスクの戦いだとする人も少なくない。
 ゲームでは,Tier 7のティーガーIが登場することが特徴的で,同じTierではそれほど強いという印象のない戦車だが,1943年の段階ですでに戦線に投入されていたことがティーガーIの凄みなのだと宮永氏は述べた。


バルジの戦い


「第二次世界大戦通史」原書房より
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 「バルジの戦い」は,第二次世界大戦末期の1944年12月,ドイツ軍が米英軍に対して行った大攻勢で,ドイツ軍が戦線を突破した状況が樽などのでっぱり(バルジ)に似ていたためこう呼ばれる。ドイツ軍の作戦秘匿名称としては,防戦を連想させて相手を混乱させる「ラインの守り」があるほか,主戦場から「アルデンヌの戦い」とも言われる。
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 西からは米英軍,東からはソ連軍に圧迫され,すでに末期状態にあったドイツ軍だが,ヒトラーは西方に対して大攻勢をかけて米英を撃破し厭戦気分に陥れる(あわよくば,ソ連に対する共同戦線を構築する)ことを狙い,なけなしの戦車軍を東部戦線から抽出して奇襲攻撃に出た。目的はマース川を越えてアントワープとブリュッセルを攻略し,北の英軍と南の米軍を分断することにあった。
 悪天候のため連合軍の航空機が飛べず,虚を突かれた米英連合軍は各地で敗退したが,ドイツ軍は要衝バストーニュの攻略に失敗し,さらに南方に展開していた米第3軍がすばやく方向を転換して北に向かったため,ドイツ軍の進撃速度は日を追って鈍り,ついには撤退を余儀なくされてしまった。
 ゲームでは,Tier 8のティーガーIIのほか,M10に偽装したパンターが登場する。対するアメリカ軍は,おおむねTier 6の戦車だ。


春の目覚め作戦


「第二次世界大戦通史」原書房より
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 「春の目覚め作戦」は,上記の2つの戦いに比べてややマイナーかもしれない。すでに米英軍はライン川を越え,ソ連軍もベルリンから100km以内に達していた1945年3月に発動された作戦で,この2か月後にドイツは無条件降伏することになるのだがら,まさに最後の火花のような戦いといえる。本土防衛に一兵でも欲しいという時期のはずだが,ドイツ最後の機械化部隊が向かったのは,ベルリンから遠く離れたハンガリーで,目的は戦争遂行に必要な石油資源を確保するためだというから,現実感の希薄さにいささか驚く。
 この,あまりにも意外な攻勢に当初,油断していたソ連軍は混乱したが,すばやく立ち直って反撃を加えた。雪解けの深い泥濘に足を取られたドイツの重戦車は,燃料不足も加わって次々に擱座し遺棄され,かくして,ドイツ最後の攻勢はなんの成果もなく終わりを告げたのだ。
 最末期の作戦ということもあり,ゲーム的にはドイツ,ソ連共に高Tierの強力な戦車が多数出てくることが特徴になる。

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 それぞれの説明が終わったあと,宮永氏は第二次世界大戦を通じて,次のヒストリカルバトルの舞台になりそうな戦いを紹介した。こちらもざっと説明するが,大規模な包囲殲滅戦となった1939年のポーランド侵攻では,戦闘の経過は興味深いものの,ドイツ側がI号戦車や38(t)戦車が中心で,ポーランド側に至ってはTKSなど,タンケッティと呼ばれる豆戦車が中心だったため,Tier 1以下の戦いになってしまう。実質的に戦車戦は起きなかったため,ゲームに採用するのは難しいだろうとのこと。
 ドイツがフランスに侵攻した西方電撃戦,続いてソ連に侵攻した直後の独ソ戦では,Tier 2〜Tier 4(ソ連がTier 5)の戦車が中心で,北アフリカでの戦いやスモレンスク攻防戦など,ヒストリカルバトルのモチーフになりそうな戦いも登場してくる。

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 1941年の終わりから1942年にかけては,Tier 3からTier 6の戦車による戦車戦が東部戦線と北アフリカで繰り広げられ,Tier 4からTier 8が主力になる1943年の戦いを経て,1944年6月のノルマンディー上陸作戦の頃にはTier 5〜Tier 8の強力な戦車が主力になる。イタリアを舞台にした山岳戦や,ミハエル・ヴィットマンを有名にしたヴィレル・ボカージュの戦い,そしてソ連軍がドイツ中央軍集団を壊滅させたバグラチオン作戦など,ヒストリカルバトルのテーマになりそうな戦車戦が非常に多い。
 果たして,次のヒストリカルバトルがどこになるのかを考えるのも楽しいだろう。遮蔽物が何もない北アフリカの砂漠は,戦車を操作する腕前とチームプレイが必要になりそうだし,北フランスでは,細い路地が複雑に入り組んだ市街戦のセンスが問われるだろう。低いTierの戦車しか出てこない初期の電撃戦も,やりようによっては面白いはずだ。


ヒストリカルバトルの課題


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 最後に宮永氏は個人的な意見として,現在のヒストリカルバトルに十分満足しているわけではなく,課題もあると述べた。
 まずは再現性で,ご存じのように本作には戦車以外の兵器は出てこない。その見切りのよさがWorld of Tanksというゲームの分かりやすさであり魅力でもあるのだが,それに対して実際の戦場には,歩兵や砲兵,さらに航空機がいて,それらが決定的な役割を果たした戦いも少なくない。
 戦場の規模を考えれば,こうした戦車のみの状況になることもそれほどおかしくはないのだが,雰囲気を高めるためのビジュアルがあってもいいのではないかと宮永氏は言う。さらにXbox 360版では実現されたものの,PC版ではいまのところ天候変化は再現されていない。視界の悪いモスクワ正面の雪中戦なども再現してほしいところだ。

 また,史実の勝敗が戦闘結果に反映されていないため,敗者側でチャレンジする動機が薄いとも感じており,何かしらのリワードが必要なのではないかと思っているそうだ。さらに,参加条件が厳しいことや,非力な車両を選ぶメリットがあまりないことも挙げたが,今後,そういう問題を解消していけるだけのポテンシャルがWorld of Tanksにはあると述べた。そして,ミリタリー好きのプレイヤーの積極的な関与や,意見の交換を経て,さらに魅力的なコンテンツになるように磨いていきたいとして,レクチャーを終了した。

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    World of Tanks: Xbox 360 Edition

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