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[CEDEC 2014]七並べを遊ぶとAIが分かる! 「ゼビウス」の生みの親,遠藤雅伸氏のワークショップをレポート
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印刷2014/09/04 14:05

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[CEDEC 2014]七並べを遊ぶとAIが分かる! 「ゼビウス」の生みの親,遠藤雅伸氏のワークショップをレポート

 神奈川のパシフィコ横浜にて,本日(2014年9月4日)まで開催されているCEDEC 2014。ゲーム開発者向けのイベントということで,高度な技術論にじっと聞き入るというイメージが強いが,中には体験と学習が合わさったワークショップなどがあるのも,魅力の1つだ。9月3日には,東京工芸大学芸術学部の教授にして,「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」などの生みの親でもある遠藤雅伸氏による,「七並べで学ぶゲームAIの働き〜今さら聞けないAIって何?〜」というワークショップが実施されていたので,これをレポートしよう。

遠藤雅伸氏
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ワークショップは立ち見が出るほどの盛況に
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各テーブルには,ジョーカーを抜いたトランプと,プレイヤー各人のパス可能回数を示すチップが配られた


 今回のワークショップのテーマは,ひと言で表わすと「七並べを遊ぶことで,自分の思考をAI化する」というもので,「良くできたAIとはどういったものか」を体感できるという内容だ。
 遠藤氏はまず,「AIとは何か」という基本的な部分から説明を開始した。AIとは人工知能のことで,「コンピュータで作られた,人間と同様の思考の働き」のことである。ゲームにコンピュータが導入され,対戦相手をAIが肩代わりするようになったことで,対戦ゲームを1人で遊ぶことが可能になった。
 また,AIにより,パラメータの数値(例えば攻撃力や防御力など)の高低だけではない個性を表現できるようにもなっている。ゲームを遊んでいて「このAIは汚い,ハメ技を使ってくる!」と叫びたくなった時などが,個性が表現されている良い例だ。ハメ技を使ってくるように設定されたAIにより,「こいつは汚いヤツだ」という個性が生まれているのである。

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 AIは,判断材料を集めて分析して行動を決める。突き詰めるところアルゴリズムであり,「考え方の手順を定めることで,問題解決するという流れ」があると遠藤氏は説明する。これを体感するため,今回は「判断材料が少ない」「与えられた情報に揺らぎがない」「必勝法がない」「ルールが簡単で広く知られている」という観点から,七並べを行うことになった。

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 まず,受講者たちは4人ずつテーブルに着席し,そこにトランプと,各人がパスした回数を示すチップ,そして自分の思考を書き込むシートを受け取る。
 そして4人で七並べをするのだが,ただ遊ぶだけではなく「どういった理由でカードを出したか(出さなかったか)」をシートに記入していく。パスは3回までで,3回パスした状態で出せるカードを持っていないと,そのプレイヤーは脱落となるというルールだ。
 まずは会場で配られたシートを見てほしい。

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 シートには,七並べの原則ともいえる,カードを出す時の基本的な条件だけが書かれている。このまま実行した場合は,「場の札とつながるカードがあれば無条件で出す」だけのプレイヤー(AI)になるというわけだ。もちろん,これだけでは個性あるAIとは言えず,そもそも対戦相手として弱すぎるので,自分なりにカードを「出す」「出さない」条件を書き込んでいくのだ。
 「A・K」「2・Q」「3・J」「4・10」「5・9」「6・8」が組となっているのは理由がある。七並べは「7」を中心に,「6・5・4・3・2・A」「8・9・10・J・Q・K」という順番にカードを並べ,自分の手札を減らしていく遊びだ。つまり,戦略を決める上で重要なのは,自分の手札が中央の「7」から何枚目に相当するかということ。「7」からの距離と言い換えてもいいだろう。つまり,「6」と「8」は「7」から1枚目という意味で戦略的に同じ意味を持つ。「5」と「9」は共に「7」から2枚目。「4」と「10」は3枚目……ということで,「7からの距離が同じ数字」がひとまとめにされているというわけだ。このような「7を中心とした対称性」も,今回七並べが選ばれた理由の1つであるという。

七並べの様子。筆者は「とにかくカードを出す」ことを重視したため,見事に脱落
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筆者のシート。ワークショップの主旨を理解していない上に記述も曖昧,しかも妨害が重要な七並べで「カードを出す」ことを重視した条件が並ぶ。これでは勝てるはずがない
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 最初の対戦では,筆者は「とにかくカードを出す」ことを重視して進めていったが,結局は最初に脱落してしまった。七並べで大切となる「ほかのプレイヤーへの妨害」,つまり「出せるカードがあるのにあえて出さないことで,ほかのプレイヤーがカードを出せないようにする」という考えがなかったからだ。これでは,とてもゲームを遊ぶ人に満足してもらえるAIとは言えない。ただのカモだである。

 そこで次は「とにかくカードを出さずに邪魔をする」ことを考え,「こういう場合はカードを出さない」という条件をシートに加えていった。具体的には,「例え6・8を持っていても,自分の手札にそれ以降のカードがない場合は出さない」「4・10を持っている場合,ほかの人がまだ出せるカードを残しているなら出さない」といった感じだ。こういった条件を付け加えてプレイを進めると,今度はほかのプレイヤーがパスをする回数が目に見えて増えた。結局1位にはなれなかったが,少しは手応えのあるAIらしくなったというわけだ。

 ここで同じテーブルのプレイヤー同士でシートを見せ合うと,かなり内容に差があることが分かった。ほかのプレイヤーのシートには,「自分の手札に同じマークのカードが多い場合は,6や8といったカードを出す」というような,自分に有利になるならカードを出すという条件や,「場に1枚しか出ていないマークのカードに関しては,パスの回数がギリギリになるまで出さない」という,妨害を主目的とした条件もあったのだ。
 中には「6・8など,7に近いカードを持っていて,自分がそれ以降のカードを持っていない場合は,パスの回数が2回までならパスする。2・Qなど,7から遠いカードの場合は1回」というように,かなり細かな条件分岐を書き込んだプレイヤーも見られた。興味深いのは,書き込んだ条件が多いプレイヤーほど,強い傾向があったということ。なるほど,これがAIの違いというものか。

ほかのプレイヤーのシート。自分が7に近いカードを持っている場合はギリギリまで妨害するなど,細かな条件が並んでいる
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 最後に,お互いにシートを交換しあい,「ほかのプレイヤーが作ったAIに則ってプレイする」という試みを行った。書き込まれた条件を見ながら「今の手札から出せるのは10だけで,“10以外に出せるカードがない限り10は出さない”という条件から見ると,10を出さなければならないんだな」……といった具合にプレイを進めていくと,AIが行動を決める流れというものが理解できて面白い。自分でプレイしていたときよりも,ほかの人のシートを使ったほうが順位も上になり,AIが勝負に及ぼす影響は明らかだろう。AIとは状況を判断する条件の集まり。条件の設定次第で,筆者のようなカモにも,ほかのプレイヤーのような強いAIにもなり得るのだ……ということを体感した時点で,ワークショップは終了した。
 今回のワークショップは,自宅でも簡単にできる内容なので,興味の湧いた人はぜひ友達を集めて試してみてほしい。

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