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Access Accepted第687回:プレイヤーの持つ熱量がゲームをもっと面白くする。ファンたちの持つ“ゲーマー力”
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印刷2021/05/24 10:30

業界動向

Access Accepted第687回:プレイヤーの持つ熱量がゲームをもっと面白くする。ファンたちの持つ“ゲーマー力”

画像集#005のサムネイル/Access Accepted第687回:プレイヤーの持つ熱量がゲームをもっと面白くする。ファンたちの持つ“ゲーマー力”

 ゲームは楽しいものだが,ときおり大きな熱量を持ったファンによってその面白さが跳ね上がることがある。そうした人たちが持つパワーを“ゲーマー力”と筆者は呼んでいるが,ゲーム実況者やプロのプレイヤーたちも“ゲーマー力”を発揮している存在だ。そうした華やかな存在がいる一方で,草の根レベルで特定のゲームを支えるファンたちの存在も忘れてはならない。今回は,そんなゲームというエンターテイメントの魅力を感じさせるエピソードをいくつか紹介しよう。


ただでさえ面白いゲームが,“ゲーマー力”によってさらに面白味を増す


 ゲームは,一気に多くの消費者へと拡散していくという,映画や小説,漫画などにも通じる特性を持つ。特にゲーム市場がグローバル化した昨今においては,人気のゲームはほぼ同時に多言語で供給され,何百万,何千万人という人のエンターテイメントになるし,ここ最近はDLCやオンラインモード,そしてシーズン制の導入などによって,より長い時間楽しめるようになった。
 また,面白いゲームには人が集まり,それによってゲーム実況なども盛り上がり,人が人を呼ぶため,例えば「Fortnite」「DOTA 2」「マインクラフト」のようなロングセラータイトルが続出している。2013年にPlayStation 3とXbox 360でリリースされた「グランド・セフト・オート V」に至っては,「GTAオンライン」がリリースされたこともあって長寿化し,現役のまま世代を跨ぎ続け,11月11日にはPlayStation 5及びXbox Series X向けにもリリースされることがアナウンスされている。コンシューマ機において,かつてそんなタイトルは存在しただろうか?

「グランド・セフト・オート V」と言えば,最近Intelが独自開発のAIアップスケーリング技術を公開し,より現実感の強いゲーム世界を実演(関連リンク)している
画像集#001のサムネイル/Access Accepted第687回:プレイヤーの持つ熱量がゲームをもっと面白くする。ファンたちの持つ“ゲーマー力”

 特定のタイトルに人気が集まり,爆発的なヒット作が続くタイトルが生まれる一方で,リリース後にしばらくしてから,ゲーム実況などの“人づて”で人気を得るような作品もよく見かけるようになった。最近では「Among Us」「レインボーシックス シージ」のようなゲームを頭に浮かべるはずで,もちろん地道なマーケティングという企業努力もあるのだろうが,そうしたゲームを面白いと思うファンたちに支えられてきたからこそ,花を咲かせるチャンスに巡り合うのだろう。

 少し古い例ではあるが,「第359回:リビアで殉職したオンラインゲーマー」関連記事)で取り上げた「EVE Online」も,筆者にとっては忘れられないエピソードの1つだ。殉職した在リビア領事館の情報管理官だったプレイヤーのギルドが,コミュニティの活性化に大きく貢献し,「MMOで最も長期にわたるギルド間抗争」が繰り広げられただけでなく,当初は1万程度のサブスクリプションで,月額制のオンラインゲームでは失敗に近かった同作が,数年をかけて40万というアカウント数を誇る作品になった。「EVE Online」はサービス開始以来18年目となる現在でもプレイヤー数は落としておらず,熱狂的なファンたちに支えられ続けている。

 「EVE Online」ほどではないにせよ,ゲーム市場ではときおり,ファンの持つ力のすごさを感じることがある。ただでさえ面白いゲームがファンの熱量によってさらに面白味を増すという興味深い現象は,それこそローカルなゲーム大会がEVOへと成長し今の“eスポーツ”の発展に大きく貢献したように,エンターテイメントの価値を一気に上げる。筆者はそれを“ゲーマー力”と呼んでいるが,そうしたパワーを持つプレイヤーたちがたしかに存在するのだ。今回は,そんなゲーマー力を感じさせる,最近起こったエピソードを3つ紹介しておこう。


MMOゲームでもないのに大戦争をプレイするロールプレイヤーたち
「No Man’s Sky」


 「No Man’s Sky」は,ローンチ当初こそ限定されたゲームプレイや,発売前に公開されていた情報との乖離によって多くの批判を受けたが,その後Hello Gamesによる絶え間ない努力により,ファンからの支持を得られたことについては,本連載でも何度か紹介(関連記事)したとおり。そんな本作では,本来のゲームには用意されていない大戦争イベント「第1銀河間戦争」が勃発中だ。

画像集#002のサムネイル/Access Accepted第687回:プレイヤーの持つ熱量がゲームをもっと面白くする。ファンたちの持つ“ゲーマー力”

 そもそも「No Man’s Sky」には,最大4人までのオンラインプレイとドッグファイトが楽しめる機能が追加されているが,相手を攻撃してもそれほどのメリットはなく普段は他のプレイヤーと出会っても平和的にゲームが進むことが多い。しかし,“Galaxy 150”においては例外で,Vy’keenとGex(工業家/資本家),Korvaxにという勢力にプレイヤーたちが自主的に分かれ,戦争を繰り広げるという,完全なファンメイドのイベントが開催されている。プレイヤー主導で世界観を作り出し,それぞれが役割を演じて戦っているのである。
 星域では巡視が行われていたり,本格的な戦闘が繰り広げられているが,誰でもDiscordに参加して楽しめるようで,事前に連絡しておけば自由に航行できるといった紳士協定も結ばれている。最終的にどのような落としどころがあるのかは今のところは明らかではないものの,実は2017年にも「EVE Online」に影響を受けて銀河戦争が行われており,その時は2週間後に各勢力が勝利宣言をして終わるという,何ともほのぼのした終戦だったという。


広大なタムリエル大陸をたった一人のものに
「The Elder Scrolls V: Skyrim」


 自由度の高いゲームにおいては,その自由度の高さを利用したファンなりの遊び方がある。思い出すだけでも「Fallout 3」,「Dishonored」,そして「Undertale」など,筆者自身が誰もキルせずにゲームを終わらせようと奮闘し,結局挫折してしまったゲームはいくつもある。面白いのは,「NPCを含めてゲーム中の生物を全てキルできる」というゲームも存在し,筆者の知るところでは「Fallout」オリジナル作品が,その先駆けであったかもしれない。

 その系譜を継ぐ……のかどうかは知らないが,「The Elder Scrolls V: Skyrim」でも全てのNPCとクリーチャーをキルするのは可能だったようで,Redditユーザーのu/jaeinskyrimさんが,その証拠として幾つかのスクリーンショットを撮影し,Redditに投稿(関連リンク)したのだ。
 特定のダンジョンや地域をクリアするために,NPCと会話するといったクエストも多いゲームではあるので,一つ手順を間違えると詰む,なかなかに難しいプレイであろう。特定のMODを利用することでラクにクリアできるかもしれないし,実際にu/jaeinskyrimさんが全NPCをキルしたことを証明できるものもないのだが,投稿文のタイトルには「2,201人の(タムリエルの)住人」という具体的なキャラクター数を挙げており,多くの同志たちから賞賛を受けているようだ。

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翻訳されていないゲーム内の言語を独自で翻訳
「アサシン クリード: ヴァルハラ」


 オープンワールド型ゲームの中でも作り込みの深さで知られるのが「アサシン クリード」で,シリーズの中でも高い評価を受けることになった「アサシン クリード ヴァルハラ」では,ノルウェー出身であるバイキングの主人公“エイヴォル”が,ブリテン諸島を攻略するだけでなく,“ヴィンランド”として知られる北アメリカ大陸北東部にまで遠征することができるサイドクエストが存在する。

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 ヴィンランド自体は3つのミッションで構成されるクエストがあるのみで,それほど多くの探索エリアが用意されているわけでもないのだが,ネイティブ・インディアンのキャンプをウロウロし,彼らの日常生活を見聞きすることができる。面白いのは,イロコイ連合部族に属するオネイダ族にまつわるエピソードだ。彼らの話している言葉は英語にさえ翻訳されておらず,プレイヤーたちは彼らが何を言っているのかはわからなかった。
 ところが,シリーズのファングループであるAccess the Animusが,その内容が翻訳可能な実在する言語なのか疑問に思い,調査したという。その過程でモントリオールにあるモホーク族(イロコイ族の一部)の文化研究センター「Kanien'kehá:ka Onkwawén:na Raotitióhkwa Language and Cultural Center」から情報を得て,オネイダ族の言葉がモホークの言語「Kanyen'kéha」に非常に近いことを突き止め,そこから文字や発音を符号させていくことで翻訳することに成功したのだ。とくに,ストーンヘンジの謎に絡む謎の言語は,この文字が利用されていることが判明し,いつの時代にか北アメリカからブリテン諸島にわたった謎の勢力があったことを,ゲーム内で示唆しているということも突き止めた。
 彼らの翻訳の軌跡はYouTubeにて公開されているが,そもそもUbisoft Montrealの開発チームがそこまで入念にゲームを作り込んでおり,しかもそれをゲーマーコミュニティの発見に委ねていたことには,ただただ驚くばかりだ。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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