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Access Accepted第663回:求められる,古いゲーム作品を文化遺産として保存する取り組み
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印刷2020/10/19 00:00

業界動向

Access Accepted第663回:求められる,古いゲーム作品を文化遺産として保存する取り組み

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第663回:求められる,古いゲーム作品を文化遺産として保存する取り組み

 次世代コンシューマ機として2020年11月に市場投入されるPlayStation 5Xbox Series Xでは,その前の世代の機種向けにリリースされた何千本ものタイトルとの後方互換性がアピールされるなど,古くても良いゲームコンテンツが重要な資産として捉えられている。しかし,それ以前の20世紀に発売されたゲームとなると,遊べる機会は大きく減ってしまう。過去約10年にわたり,欧米ではこうした古いゲームソフトを保存しようという動きが進んでいるが,今回はそうした取り組みと意義について紹介しよう。


コロナ禍で移転し,再スタートを切るゲーム博物館


 カリフォルニア州オークランドに,「The MADE」と呼ばれるアール・デコ風の外観を持つ建物がある。正式名称を「Museum of Art and Digital Entertainment」といい,約40種類のゲーム機向けに4万本にもおよぶゲームソフトを保存し,それらを来場者に開放している。運営は同名の非営利団体が行っており,もともとは草の根的な活動だったが,2011年に非営利団体として正式にスタートした。

2年がかりで移転するというゲーム博物館「The MADE」(公式サイトより)
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 このゲーム博物館の特徴は,古いゲームを遊ばせて来場者に懐かしい気分になってもらうだけでなく,将来ゲーム業界で働くことを希望している学生や子供達にそのルーツを紹介したり,筆者のようなゲームジャーナリストが過去のゲームをリサーチできたりするところだ。ゲーム文化の流れを理解できる手軽な施設としては,ベイエリアで唯一の存在と呼べるだろう。スポンサーとしてGoogleやSony Interactive Entertainmentなど,カリフォルニア州に本拠を置く大手企業が名を連ねている

 12ドルの入場料を払うと展示されているゲームが遊び放題という,ほかのゲーム博物館では例を見ないシステムは,デジタルミレニアム著作権法(The Digital Millennium Copyright Act)に抵触する可能性もあった。これについては,近隣の大学などの協力を仰ぎ, 「フェアユース」と呼ばれる著作権侵害に該当しない利用であることを認めてもらうなど,これまで博物館として立派な運営を行ってきた。

 同施設は,ゲームを含むデジタルアートの復刻活動も行っており,2013年には,世界初のMMOゲームとして知られる「ハビタット」を開発したチップ・モーニングスター(Chip Morningstar)氏ランディ・ファーマー(Randy Farmer)氏,さらに富士通とも協力して,30年近くもプレイできなかった「ハビタット」を復活させた。同作は,「Neohabitat」として現在,オンラインで無料公開されている。

運営資金の80%は入場料で賄えているという,非営利団体としては健全な財務体質と思えるThe MADEだが,それ以外の資金を寄付に頼っているために,プレイする机やテレビなどはバラバラだ
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 そんなThe MADEだったが,新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月以降は閉鎖されていた。ところが8月になって,これが一時的なものではないことが公式Twitterなどで明らかにされた。オークランドの建物は賃貸であり,契約の更新で所有者との折り合いがつかなかったことに加え,コレクションが膨大になるにつれて施設が手狭になってきたことなどがその理由だ。

 そのため彼らは,より多くのゲームを恒久的に展示して実際に遊べる新しい施設に移転することを目的として,公式サイトの特設ページで寄付の呼びかけを行っている。とりあえず,膨大な数のゲームやハードウェアを適切に保管できる場所が必要になるようで,2年をかけて再オープンを目指すとのことだ。


前だけを見てきたゲーム業界にこそ必要な,
「温故知新」


 現在,ゲーム関連で世界最大規模と言われる博物館は,ニューヨークにある「The Strong National Museum of Play」だ。ボードゲームや人形などもコレクションする総合的な玩具の博物館だが,ゲームだけでも50万本ものコレクションを誇り,許可を得ればそれらの多くがプレイできる。
 そのほか,ドイツのベルリンにある「Computerspielmuseum」,イギリスのシェフィールドにある「National Videogame Museum」なども有名で,ユニークなところでは,ソビエト連邦時代のアーケードゲームを収集しているモスクワの「Museum of Soviet Arcade Machines」がある。観光の機会があれば立ち寄ってみたいが,こうしたゲーム博物館で昔のゲームの保存活動が進められているというのは個人的にも喜ばしいことだ。

ニューヨークと言ってもマンハッタン島ではなく,北のはずれ,オンタリオ湖岸のロチェスターという町にある「The Strong National Museum of Play」。ナイアガラ観光を予定しているのなら,ぜひここへも立ち寄ってみよう
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第663回:求められる,古いゲーム作品を文化遺産として保存する取り組み

 いよいよ「第9世代」とも呼ばれる次世代コンシューマ機の発売が迫ってきたので,いい機会だと,筆者は先日,物がぎゅうぎゅう詰めになった,ほとんど使っていない押し入れを大掃除した。すると,学生時代に購入したファミコンやセガサターン,さらに,投げ売りされていたので買ったものの,まだ封も開けていないAtari Jaguarなどが次々に出てきて自分でも驚いた。
 しかし,遊んでみようにもRCA端子やRF端子の付いたテレビはすでになく,モジュレータを買うことになる。いずれ,需要が少なくなればモジュレータも売られなくなるだろう。このように個人で昔のゲームをプレイするのはなかなか難しくなってきたようで,筆者と同じ状況に陥っているベテランゲーマーも多いはずだ。
 オークションで売ってもたかが知れているし,置いておくのもジャマなので,遊びたい人が遊べるように,博物館に寄贈してしまったほうが良いのではないかと考えている。

 「昔のゲームが当たり前にプレイできない」ことは,どんどんデジタル化が進められ,どの時代の映画や音楽でも自由に楽しめる映画産業や音楽産業と比べて,ゲーム産業の遅れている部分であるように思える。ハードウェアやソフトウェアの進歩に伴って,ゲーム産業は常に前を向いてきたが,The MADEのように,ゲーム産業の歩んできた歴史を知らない多くの若い人々に,古いタイトルが遊べる環境を与えることも,過去のゲーム作品を文化遺産とするなら重要なことであるはずだ。

The MADEが行った,「Unity 3D」を使った地元の子供達向けの無料授業の様子。コスプレ大会や講演会など,ゲーム関連のさまざまなイベントが行われる施設でもあった
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 振り返ってみれば,映画も同じ道をたどってきた。ただの消費文化と考えられていた頃は,フィルムが燃えやすい素材だったこともあって保管が難しく,古くなれば捨てられた。しかしフランスでは,現在でも世界最大のアーカイブを誇るシネマテーク・フランセーズ(La Cinémathèque Française)が今から90年ほど前の1936年に設立されて過去のフィルムや映画に関連する物品の保存を開始し,これらが第二次世界大戦を無事に切り抜けたことで,のちに再評価されるアメリカのサイレント時代の作品など,多くの名作が今でも鑑賞できる。
 そして,こうした保存作品が映画を志す若者達に影響を与え,「ヌーヴェルヴァーグ」と呼ばれる芸術運動が興るきっかけの1つになったとも言われている。

 その例になぞらえるなら,今や巨大産業に成長したゲーム産業においても,将来にわたってより良い人材を確保して進歩を続けていくために,多くの人々が昔のゲーム作品に触れる機会を増やすべきだろう。ゲーム博物館やゲームアーカイブの意味は,これからさらに大きくなっていくはずだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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