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Access Accepted第451回:苦境に立つ“ゴッドゲームの父”ピーター・モリニュー
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印刷2015/02/23 12:00

業界動向

Access Accepted第451回:苦境に立つ“ゴッドゲームの父”ピーター・モリニュー


 「ダンジョンキーパー」「フェイブル」などを開発し,また「ポピュラス」のヒットにより“ゴッドゲームの父”とも呼ばれるイギリスのゲームデザイナー,ピーター・モリニュー氏が,最近,ファンやメディアからの集中砲火を浴びている。開発に2年近くもかけながら,いまだに多くのフィーチャーが実装されないままのPC向けシミュレーションゲーム「Godus」への不満が,ここへ来て爆発したという形だ。今週は,そんなモリニュー氏の近況についてお伝えしたい。


「Godus」はどうなったのか?


 1989年に「ポピュラス」をリリースして以降,Bullfrog Productions時代に「ダンジョンキーパー」「テーマパーク」などを開発,さらにLionhead Studiosでは「ブラック&ホワイト」「フェイブル」といった人気シリーズを手がけてきたピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏は,すでに35年以上のキャリアを持つイギリスの著名なゲームデザイナーだ。
現在,22Cansを率いるピーター・モリニュー氏。「Godus」プロジェクトが進行していないことから,メディアやゲーマーの批判を浴びている
 神となったプレイヤーが壮大なパワーを発揮し,ゲームの世界に暮らす無数の人間達に影響を及ぼす世界初のゴッドゲーム「ポピュラス」の強い印象から,“ゴッドゲームの父”などと呼ばれることもある人物で,ゲーム業界に限らず,一般のメディアからもその新作や言動が注目されている。

 そんなモリニュー氏が最近,海外のメディアやファンからの批判にさらされているのだ。理由は,モリニュー氏の率いるデベロッパ,22Cansの新作「Godus」について同氏が「開発の指揮を別の社員に任せ,自分とコアメンバーは新しいプロジェクトに移る」とビデオメッセージで発言したことだ。
 この新プロジェクトは「The Trail」と呼ばれており,今のところ詳細は分からないものの,2014年末からモリニュー氏が時折触れていた作品だ。すでにスタッフの多くが「Godus」からそちらに移行しているとのことで,事実ならファンが怒るのも無理はない。

 ポピュラスの「精神的後継作品」とされる「Godus」は,2012年12月,クラウドファンディングサイトのKickstarterで約52万ポンド(約9540万円)の開発資金調達に成功したPC向けのシミュレーションゲームだ。当初は,9か月後の2013年9月にリリースされる予定だったものの,アーリーアクセス版をSteamでリリースして以降はアップデートの更新頻度が鈍り,最近では目立った進展が見られない状況に陥っていた。
 同社は,PC版「Godus」の開発を進める途中で,モバイル版の開発に力を注ぐ戦略に切り替え,2014年8月にはFree-to-Playのモバイル版がリリースされた。しかし,PC版では今に至るも,「戦闘」や「マルチプレイモード」といった,当初発表されていたフィーチャーが実装される気配がなく,そんな折,まるで困難なプロジェクトをほかの社員に丸投げするような発言が行われたため,さまざまな批判がわき上がることになったのだ。

モリニュー氏のファンの多くはPCゲーマーだと思うが,会社の経済的な事情からモバイル版「Godus」に労力をつぎ込む必要があったという
Access Accepted第451回:苦境に立つ“ゴッドゲームの父”ピーター・モリニュー

 状況をさらに悪くしたのは,モリニュー氏がビデオメッセージ公開の前後に受けたと思われるインタビュー記事だった。掲載したのはイギリスのメディア「Rock, Paper, Shotgun」で,内容は,最初から「あなたは,病的な嘘つきなのですか?」という質問をぶつける,メディアとしては例を見ないほど辛辣なものだった。
 普段は温和な口調のモリニュー氏だが,さすがに憤慨したらしく,売られたケンカを買うような形で激しいやりとりになり,それが一字一句書き起こされている。
 この記事はたちまち拡散し,その過程で「22Cansは開発者の流出で崩壊状態」とか「新人にゲームを押し付けて,すべてのメンバーが次のプロジェクトに移った」など,真偽の定かでない噂が一人歩きするようになった。
 業を煮やした22cansは,複数のスタッフが「Godus」に関わっていることを証明するため,オフィスの様子をTwitchでライブストリーミングし始めたが,メディアの追及は静まっていないようだ。


ファンからも見放されつつある,ゲーム界の巨匠


 筆者もKickstarterのバッカー(出資者)の1人として,アーリーアクセス版を購入して遊んでいるが,筆者を神と崇めるフォロワー(ゲーム中の人類)をいくら増やしたところで,それ以上ゲームを進める要素が存在しない。本来ならそれが,上記の「戦闘」や「Hubworld」と呼ばれるマルチプレイモードになるはずだったのだが,Game Developers Conference 2014でデモが公開されて以降,1年近くも新しい情報が公開されていない。
 ここ数か月は,Steamのレビューでも悪い評価が目立っており,新しいプロジェクト「The Trail」の企画が初めて明らかになった2014年12月以降,中指を立てたアスキーアートが掲示板に掲載されるなど,悪意の感じられるコメントが増えてきた。レビューを見る限り,100時間以上もプレイしたうえでネガティブな評価を下しているプレイヤーもおり,事態は深刻だ。

新たなチームリーダーとしてコンラッド・ナシュジンスキー氏(左)を紹介する,モリニュー氏(右)とジャック・アトリッジ氏(中央)。22Cansは,こうしたビデオダイアリーを50本以上も公開して,ファンにさまざまな情報を伝えてきた

 ピーター・モリニュー氏と,ゲームデザイナーのジャック・アトリッジ(Jack Attridge)氏に代わって,問題山積の「Godus」を任されたのは,コンラッド・ナシュジンスキー(Konrad Naszynski)氏という人物だ。もともと,Kickstaterのバッカーだったゲーマーで,思うような作品にならないことに業を煮やしてモリニュー氏に直談判し,1年前からインターンとして「Godus」の開発に関わっていたという。この経歴を見ただけでは,「Godus」の将来を託すに値するほどの人物とは考えにくいし,それが不安につながるのは当然とも思える。

 ナシュジンスキー氏はファンのそうした不安や批判に対して,今後の方針と自分の思いを公式フォーラムで語っている。同氏は,自分も以前から毛嫌いしていたモバイル版へ力を入れることについて,小さな会社が利益を得るための現実的な手段であると弁解すると共に,今後はSteamの紹介ページに記されているフィーチャーの開発を優先させること,さらにメーカーとしての信用を取り戻すために開発を今後も継続していくことなどを述べている。ファンの中には,そうした発言を肯定的に捉えている人も少なくないが,実際問題として,現状から,モリニュー氏というブランドを抜きに「売れるゲーム」に仕上げていくのは至難の業だと筆者には思える。


オーバープロミスとゲームに対する情熱


 ピーター・モリニュー氏は,これまでも自分の行ったオーバープロミス(過剰な約束)のためにゲーム開発に手こずったり,結局は約束が実行されることなくゲームが発売されてしまったりといったことを繰り返してきた“常習犯”である。これは,モリニュー氏のファンにとって周知の“事実”だろう。
 Bullfrog Productionsから独立後,当時としては破格といえる約5年をかけて制作した「ブラック&ホワイト」(2001年)だが,モリニュー氏は,続編である「ブラック&ホワイト 2」(2005年)の発表時,前作が約束したほどの出来ではなかったと語っている(しかし,2は前作ほど良い評価を受けなかった)。「フェイブル」(2004年)でも同じで,続編が発表されるたびに,前作で約束したフィーチャーをすべて盛り込めなかったことを謝罪し,新作に過剰な期待を抱かせかねないオーバープロミスをしてしまうのだ。

モリニュー氏のオーバープロミスで思い出されるのが,「Kinect」向けのタイトルとして2009年に公開された「Milo&Kate」だ。のちに,ただ映像を編集したものであることが判明し,多くのゲーマーをがっかりさせた
Access Accepted第451回:苦境に立つ“ゴッドゲームの父”ピーター・モリニュー

 古い話だが,筆者が2006年に行ったインタビューでモリニュー氏は「僕は興奮すると,どんどんしゃべってしまう性格だから,ファンに過度の期待を抱かせてしまうことについては反省している」と述べており,そういう性格であることは自覚しているようだ。もっとも,ファンやメディアもそれなりのフィルターをかけて彼の言動を受け取っており,「いつものことだし,彼に限ったことでもない」とする著名なゲームジャーナリストもいる。
 当時の記事を引用すると,モリニュー氏のオーバープロミスは彼の“ゲームに対する情熱”であり,悪く言うなら,行きすぎたファンサービスだ。そんな氏に対して,人格を否定するような質問で相手を怒らせることを狙い,その様子を事細かに書き起こすRock, Paper, Shotgunの姿勢に対して,筆者個人は疑問を感じる。

新規プロジェクトについて語るときのモリニュー氏の表情はとても楽しそうで,秘密を隠せない子供のようだ。大きな話で夢を与えてくれるモリニュー氏が,再び我々の前に姿を現すことはあるだろうか
 筆者はこれまで,ゲーム開発者会議などで発言するモリニュー氏を何度も取材している。たとえまったく形にもなっていないプロトタイプでも,モリニュー氏のビジョンと語り口にかかれば,それがまるで次世代のゲームであるように感じられ,そんな予感から,若い開発者達が熱狂して拍手喝采する……という場面を何度も見てきた。事の是非はともかく,彼はゲームだけでなく,ある種の夢を売ることもできるエンターテイナーなのかもしれない。

 このように,モリニュー氏が自分の作品に過剰な約束をするのは昔からのことだが,クラウドファンディングやアーリーアクセスを使用した今回は,勝手が違ったようだ。これまで彼に資金を提供してきたのは,Electronic ArtsやMicrosoftなどのパブリッシャ,つまりリスクを承知したプロだったが,今回は一般の人々なのだ。約束の重さも違う。

 モリニュー氏はRock, Paper,Shotgunのインタビューで,「僕はもう,ゲーム業界では評価されていない」とし,またThe Guardianのインタビューでは,今後メディアへ露出してゲームを語るようなことはしないともしている。
 22Cansの経営があり,また新規プロジェクトに着手したばかりなので,このままゲーム業界から離れてしまうことはなさそうだが,“大風呂敷”のモリニュー氏が,しばらく姿を見せなくなってしまうかも知れないというのは,個人的には悲しいことだ。厳しい状況にあるのは間違いないが,昔からモリニュー氏を知る1人として,同氏の復活を期待してやまない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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