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Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ
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印刷2012/10/29 12:00

業界動向

Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ

 アジア発のビジネスモデルであるFree-to-Play(基本プレイ料金無料)のMMORPGは,ここ数年で欧米ゲーム市場でも一般化し,月額課金では成功しないという声もちらほら聞かれるようになった。今回は,2012年の欧米MMORPG市場をにおける,Free-to-Playのトレンドを追ってみよう。


MMORPGファンにとって嬉しい1年間


 Blizzard Entertainmentは,2012年9月25日にリリースした「World of Warcraft」の拡張パック「World of Warcraft: Mists of Pandaria」が発売初週で270万本のセールスを記録し,世界合計のアカウント数が再び1000万台に達したことを明らかにした。前回の拡張パック「World of Warcraft: Cataclysm」の330万本には届かなかったが,アジア地域でもほぼ同時に発売したことや,「Diablo III」とのタイアップなどにより,「世界最大のMMORPG」の面目は保った格好だ。
 Activision Blizzardは,2012年4月〜6月の営業報告においてWorld of Warcraftのプレイヤー数が910万に下降したことを公表しており,業界は「サービス開始から8年目となり,さすがに人気は下降しつつある」と観測したが,それを見事に覆した形だ。

2012年9月25日にリリースされた「World of Warcraft」の拡張パック「World of Warcraft: Mists of Pandaria」
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ

 2011年後半から現在までは,MMORPGファンにとって豊作の1年間だった。2011年12月にBioWareの「Star Wars: The Old Republic」がスタートし,翌2012年7月にはFuncomの「The Secret World」が,そして8月には「Guild Wars 2」がローンチ。今後も,11月に「Rift」の拡張パック第1弾「Rift: Storm Legion」がリリースされる予定だ。

 とはいえ,正式ローンチしたタイトルの中には,期待どおりの結果を出すことのできなかったものもある。
 Star Wars: The Old Republicはサービス開始後,MMORPG史上最速でアカウント数100万を獲得したが,170万人をピークにその後は減少を続け,現在では相当数のプレイヤーが料金の支払いを止めてしまったという。そのためか,9月にサーバーを統合したほか,BioWare Austinの開発チームも縮小されており,最近ではプロデューサーのリック・ヴォーゲル(Rick Vogel)氏が,Battlecry Studiosに移籍したというニュースも流れた(関連記事)。
 さらに深刻なのがThe Secret Worldで,パッケージの購買者は約20万人と発表されており,無料期間の1か月を過ぎたあとは,さらにプレイヤーが減っているはずだ。話題が集中した「Diablo III」や,近い時期にローンチしたGuild Wars 2のあおりを受けたとも考えられるが,Funcomはスタッフの刷新を行うなどの対策を講じているところであり,今後も継続的な改革が行われることになるだろう。

Funcomの「The Secret World」は,現代に伝わる民間伝承や都市伝説などが,実はすべて事実だったというテーマの作品だ。ハイレベルなグラフィックス,そしてスキルベースのゲームシステムなど,さまざまな面で独自性が光るが,アカウントの獲得にはかなり苦戦している様子だ
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ

 こうした状況の中で好調なのがRiftで,サービスを行うTrion Worldsは,2011年内にすでに100万アカウントを超え,収益が1億ドル(約80億円)に達したことを発表している
 また,Guild Wars 2は,ローンチから2週間で予約を含めて約200万本を販売し,現在,同時アクセス数はピークタイムで約40万人におよぶという人気ぶりだ。
 Star Wars: The Old RepublicとThe Secret Worldの不調と,Guild War 2の対照的な結果を考えるとき,目がいくのがビジネスモデルの違いだ。Guild Wars 2は前作同様,製品や拡張パックを買うだけで,それ以降はすべて無料でプレイできるというビジネスモデルを採用しており,月額課金というビジネスモデルは使っていない。


加速するFree-to-Playへの流れ


 ご存知のように,欧米のオンラインゲーム,とくにPCオンリーでリリースされるゲームのほとんどはFree-to-Playモデルの採用を推し進めている。
 かつては,「EverQuest II」「City of Heroes」「Dungeons & Dragons Online」のように,時間が経って古くなったタイトルのサービスの一環として,あるいは,人気が出ないために苦肉の策として採用するというイメージが強かった基本料金無料のタイトルだが,「Team Fortress 2」などのオンラインFPSや「World of Tanks」のようなアクション,さらには「League of Legends」といったストラテジーゲームなど,それぞれのジャンルでFree-to-Playを採用したタイトルが成功を収めたことから,欧米でも広く認められるようになっている。

「Rift」の拡張パック第1弾「Rift: Storm Legion」は,2012年11月13日にリリースされる予定だ
画像集#006のサムネイル/Access Accepted第362回:MMORPGに見る,欧米ゲーム業界のFree-to-Playモデルへの流れ

 そうした状況にあって,欧米MMORPGの変化は遅かった。World of WarcraftやStar Wars: The Old Republic,Riftなど,一定のレベルまでは無料でプレイできるが,それは「お試し」以上のものではなく,ギルドに参加してゲームの奥深くまで楽しむといったことはできなかったのだ。タイトルが企画された段階で月額課金が主流だったということもあるだろうが,MMORPGの制作者達は,なかなかFree-to-Playのビジネスモデルに踏み出せないでいた。

 ちなみに,Free-to-Playというビジネスモデルはコンシューマ市場にも広がっており,トイロジックが開発した「Happy Wars」(ハッピーウォーズ)が,基本料金無料(ただし, Xbox LIVE ゴールド メンバーシップが必要)のタイトルとして2012年10月12日,Xbox LIVEで配信されている。Xbox LIVE史上初めてとなるFree-to-Playのタイトルが日本産であることもキャッチーだが,Microsoft Studiosはハッピーウォーズに続いて,2013年にアクションRPG「Ascend: New Gods」を,Free-to-Playのゲームとしてリリースすることを発表している。Xbox LIVEでこのビジネスモデルが確立すれば,多くのサードパーティがそれに続くことになるだろう。

 一方のSony Computer Entertainmentも,「DC Universe Online」「Free Realms」をローンチして,Free-to-Playのタイトルの手応えをつかんでいる。開発元であるSony Online Entertainmentによれば,DC Universe Onlineでは先行リリースされたPC版を超え,実に70%のプレイヤーがPlayStation 3からアクセスしているという。

Xbox LIVE向けとして初めてFree-to-Playでリリースされた「Happy Wars」。「Happy」と「War」という,相容れない言葉が重なるタイトルだが,画面写真を見る限り,かなりハッピーなイメージだ。コンシューマ市場におけるFree-to-Playタイトルの試金石として,どのような結果を残すだろうか
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 話を戻すと,Star Wars: The Old Republicのアカウント数低下を受けたElectronic Artsはついに,同作を2012年秋から基本料金無料のビジネスモデルへ移行することを明らかにした。有料のプレミアムアカウントと比べれば制約もあるが,現行のレベルキャップの上限までキャラクターを成長させられるなど,ファンには嬉しい仕様になっている。

 実はElectronic Artsは,2008年にFree-to-Playタイトル専門のEasy Studiosをストックホルムに設立するなど,早くからFree-to-Playに取り組んでいたメーカーで,2013年には人気RTSシリーズの最新作「Command & Conquer Generals 2」を完全無料でリリースする予定だ。ビジネスモデルの変更でStar Wars: The Old Republicが再生すれば,今後,同社のMMORPGがすべてFree-to-Playになる可能性は高い。

月額課金のMMORPGとしてスタートして以来,1年を経ずしてFree-to-Playになった「Star Wars: The Old Republic」。Star Warsのブランドネームに加え,実績のある開発陣,そして巨額の資金をつぎ込んだ期待作だったが,MMORPGビジネスは本当に難しい
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 ここで詳しくは書かないが,Free-to-Playにはメリットもあれば,デメリットもある。しかし,欧米ゲーム業界にFree-to-Playの波が押し寄せているのは間違いなく,最後の牙城ともいえるMMORPGもその波に洗われつつあるようだ。ゲームが無料で手に入る時代になれば,ゲームビジネスのあり方も大きく変わっていくに違いない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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