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Access Accepted第360回:一時代の終わり。転換期を迎えたBioWare
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印刷2012/10/15 12:00

業界動向

Access Accepted第360回:一時代の終わり。転換期を迎えたBioWare


 2012年9月18日,「Mass Effect」シリーズや「Star Wars: The Old Republic」で知られるBioWareの創立者だった2人の業界人が退社を表明した。ファンに愛されるゲームメーカーとして知られているBioWareも,起業から18年。今回は,BioWareがどういう経緯でゲーム業界に乗り込み,どのように栄光をつかんできたのか,彼らの過去と現在を紹介したい。


3人の医学生が設立した,正統派RPGの制作会社


BioWareの創設者であり,退職の意志を表明したCEOのレイ・ミュージカ氏(右)と,ゼネラルマネージャーのグレッグ・ゼスチャック氏(左)。「人間的な会社」をモットーにしたBioWareの面倒見のいい経営者として知られ,カナダのエドモントンという地方都市にありながら,良作を次々と生み出したBioWareを引っ張ってきた
Access Accepted第360回:一時代の終わり。転換期を迎えたBioWare
 2012年9月というのは,任天堂がWii Uの正式発売日やローンチタイトルのラインナップを明らかにし(関連記事),東京ゲームショウ2012が開催され,さらにソニー・コンピュータエンタテインメントが薄型PlayStation 3を発表するなど(関連記事),なにかと賑やかな月となったが,そのためか,日本だけでなく欧米でも反応が静かだったのが,BioWareの創立者でもあるレイ・ミュージカ(Ray Muzyka)氏と,グレッグ・ゼスチャック(Greg Zeschuk)氏が同社を退社するというニュースだ。
 9月18日に欧米メディアが伝えたところでは,2人は,しばらく休暇を取ったあと,ゲーム業界とは異なる道へそれぞれ進んでいくことになるという。開発者ではなく経営者でありながら,ゲーム業界関係者や多くのゲーマーから深く信頼されていたという珍しい立場の2人は,まだ働き盛りの40代。今のところ目立った反応はないものの,彼らが業界を去ることを悲しむゲーマーや業界関係者も多いのではないだろうか。

 本連載の読者で,カナダのデベロッパであるBioWareの名前を知らない人は少ないだろう。「Baldur's Gate」「Mass Effect」「Dragon Age」シリーズ,さらに「Star Wars: The Old Republic」などで知られる同社だが,まず,その生い立ちと歴史を簡単に紹介しよう。
 BioWareは1994年,当時アルバータ大学の医学生だったミュージカ氏とゼスチェック氏,そしてオーガスティン・イップ(Augustine Yip)氏によって設立された会社だ。3人は研究室で使用するためのコンピュータプログラムを共同で作ったことで知り合い,親交を深めていった。
 彼らはまた,テーブルトークRPGにも熱中しており,毎晩誰かのアパートの一室に集まってはゲームをプレイしていたという。彼らの処女作である「Shattered Steel」(1996年)は,「MechWarrior」や,いくつかのミニチュアRPGに影響を受けていると言われる。
 その後,医療従事者を目指すことを改めて決断したイップ氏は,Shattered Steelのリリースを終え,BioWareから去っていった。

 Shattered Steelの開発にあたっては,当時アメリカのゲーム業界で大きな勢力を誇っていたパブリッシャ,Interplay Productionsの全面支援があり,続く1998年,BioWareとInterplayの二人三脚から生まれたのがBaldur's Gateだった。日本でも知名度の高いRPGシリーズだが,当時BioWareはShattered Steelに続く「Battlefield: Infinity」というメカ系のRPGを開発中であり,そこへInterplayがゲーム化権を取得したばかりの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の話を持ち込み,その結果,Battlefield: Infinityを作り直して,舞台をフォーゴトン・レルムに移し替えたBaldur's Gateが生まれたという。

BioWareの出世作といえばやはり,「Baldur's Gate」だろう。このあと,「Baldur's Gate II」や「Neverwinter Nights」「Star Wars: The Knights of the Old Republic」など,正統派RPGを次々に成功させてファンのハートをつかんでいった
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 1990年代後半には3Dグラフィックスが大きく進歩し,また「Diablo」のようなシンプルでアクション性の高いRPGが流行していたが,Baldur's Gateは2DグラフィックスのPC専用ゲームでありながら,約200万本のセールスを記録する大ヒット作になった。あまりにも成功したので,Interplayは独自の開発チーム,Black Isle Studiosを社内に編成して「Planescape: Torment」「Icewind Dale」などのD&D系のRPGをリリースするが,やがて経営危機に陥ったInterplayは,報酬の未払いなどでBioWareとの関係を悪化させたまま倒産してしまった。


ゲーマーに愛されるゲーム作りで,さらに飛躍


 D&Dシリーズの成功と着実なゲーム開発でファン層を築き上げたレイ・ミュージカ氏とグレッグ・ゼスチャック氏のコンビは,Interplayとのイザコザなどで資金面では苦労していたが,その後,Atariと組んだ「Neverwinter Nights」,LucasArts Entertainmentとの「Star Wars: The Knights of the Old Republic」,そしてMicrosoftとの「Jade Empire」やMass Effectなど,ヒット作を連発する。
 まだ「インディーズゲーム」という言葉が市民権を得ていなかった2000年代初めのゲーム業界において独自路線を貫くBioWareはまさに「インディーズ開発者の星」であり,ミュージカ氏も開発者会議などで,独立を維持する経営方針について何度となく語っていた。

 ところが2007年,Mass EffectがMicrosoftからリリースされた直後,BioWareはElectronic Artsによって買収されることになる。総額8億6000万ドルという,それまであまり例のない高額買収だったが,資金をBioWareに提供していた投資会社がElectronic Artsに買収されるという,ワンクッション置いた形の買収であり,ミュージカ氏とゼスチャック氏にとっては寝耳に水だったかもしれない。一方で,大手パブリッシャの力で資金面の苦労をなくし,ゲーム制作に集中するという選択肢も以前から視野には入っていたかもしれない。

 資金力がモノをいったのが,Electonic Arts傘下に入って1年も経たない2008年10月に発表された同社初のMMORPG,Star Wars: The Old Republicだ(関連記事)。
 開発は,Knights of the Old Republicの成功で親交の深まったLucasArts Entertainmentと共にかなり前から始まっていたはずで,制作発表時にはすでにα版が存在していた。また,発表以前からMMORPGジャンルでは有名な開発者達を数多く雇い入れており,その頃のBioWareは,まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。BioWare作品なら買って損はないというイメージも,欧米のRPGファンの間ではすっかり定着していた。

IGDA(International Game Developers Association)の運営にも手腕を発揮していた2人は,2004年のGame Developers Conferenceで「生涯功労賞」を受賞した。この賞は,任天堂の宮本 茂氏や横井軍平氏,「Ultima」のリチャード・ギャリオット氏らも受賞した権威あるもので,それを経営者側の人間が獲得したのだからすごい話だ
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 ところが,そんな黄金時代は長く続かない。作品に対するファンの評価は,2011年3月にリリースされた「Dragon Age II」以降,翳りを見せ始めるのだ。

 BioWareの作品は,洗練されたストーリーや,コアプレイヤー向けの凝ったシステムから生まれる濃いゲーム体験が特徴だった。しかし,Dragon Age IIはビギナーでも楽しめるアクション寄りのゲームであったため,そこに,これまでのBioWareファンは違和感を感じたようだ。また,ゲーム世界で移動できる地域が予想より狭かったため,ダウンロードコンテンツで地域をアンロックしていくというシステムも反感を買ってしまうことになった。
 DLCを使ったビジネスモデルの功罪について,ここでは深く取り上げないが,BioWareはDLCビジネスを開拓したメーカーの一つでもある。とはいえ最近,「最初から製品に入っているべきエピソードやゲームモード」が別売りされることに対するゲーマーの不満は高まっており,そのことに対しては,とくにBioWareが槍玉に挙げられることが多いという印象を受ける。


Mass Effect 3のエンディングに絡む大騒動


 そんなBioWareに対するファンの気持ちを決定づけたと言えるのが,2012年3月にリリースされた「Mass Effect 3」だった。欧米を中心にした騒動については耳にした人も多いはずだが,簡単に説明すると,Mass Effect 3が「シリーズを通じて築かれてきたストーリーの積み重ねを,エンディングで台無しにした」として,一部のファンが憤激したというものだ。エンディングに矛盾が多い,エンディングを変化させる選択肢が乏しい,これまで解説されてきたことと違う,といった意見が彼らから聞かれた。
 ファンの中には,最後を変えてほしいとメーカーに要望するだけでなく,訴訟を起こす人まで現れた。詳しくは書けないが,ゲームのエンディング直後に出てくる,「DLCを買って,今後も伝説を作り上げていきましょう!」というメッセージに切れたファンも少なくなかったという。

「Star Wars: The Old Republic」のローンチ記念に,NASDAQ証券取引所に呼ばれ,コスプレで閉会を告げるベルを鳴らしたミュージカ氏とゼスチャック氏 (Star Wars: The Old Republic公式サイトより)
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 ゲームの結末に満足できなかったからといって,それを作り変えろと訴えるのは,さすがの訴訟大国アメリカならではだ。エンディングがおかしいといって告訴された映画や小説はおそらくないだろうし,一部のファンが騒いだからといって内容を作り変えるのは,あり得ないことだろう。

 とはいえ,映画や小説と異なり,三部作のエンディングを迎えるためにファンは100時間を超える自分の時間を投資しており,RPGという性質上,キャラクターに対するエモーショナルなつながりを感じるプレイヤーも多い。さらに,Mass Effectシリーズの一つの特徴として,プレイヤーの意思がストーリーを変化させることが挙げられ,エンディングで「突然のように,主人公の力ではどうしようもない」新事実が判明し,「ファンの意思が反映されない」ような終わり方は,やはりプレイヤーの不満を招く大きな要素だろう。

 BioWareらしいのは,この一連の騒動に対して,ミュージカ氏ら経営陣がクリエイターを100%擁護すると同時に,ファンの意見を呑む形で,「Extended Edition」と呼ばれる無料DLCを3か月後にリリースしたことだ。エンディングは作り変えず,状況をさらに詳しく説明するCGムービーを挿入するという,苦肉の策とも取れるやり方だったが,考え得る最も現実的な対処であり,この点については評価されてしかるべきだ。

350万本のヒットとなった「Mass Effect 3」だが,メタスコアを見ると,メディア評価は前作同様の90点超えなのに対して,ファン評価は10点中4〜5点と開きがある。「Extended Edition」はリリースされたが,批判的なファンは現在も少なくないようだ
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 ミュージカ氏とゼスチャック氏の早過ぎる退職は,以上のMass Effect 3問題に対する引責辞任ではないとされているが,ただ,200億から300億円もの予算を投じて開発したというStar Wars: The Old Republicも,サービス開始時こそ100万を超えるアカウントを獲得したものの,その後,新規ユーザー獲得には苦労しており,現在BioWare Austinでは多くの開発者が解雇されている。新作タイトル「Dragon Age III: Inquisition」の制作が発表されたばかりだが,BioWareが困難な時期に直面しているのは間違いなく,両氏の退社によって一つの時代に区切りを付けようという意図があるのだろう。

 創立者であり,かつ経営者であった2人が辞めたあと,どのような体制になるのか,あるいはどのような方向へ進んでいくのかは現段階では分からない。筆者のような古くからのゲーマーにとっては,1990年代に独自性を発揮したものの,その後,時代の波に逆らえずに大手パブリッシャの傘下に入り,やがて歴史の中に消えて行った,Origin SystemsWestwood StudiosBullfrog Productionsなどの姿が思い出されてしまうが,BioWareがこの転換期をうまく乗り切り,以前のように優れた作品を次々に作り出してくれることを期待したい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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