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Access Accepted第322回:新世代ゲームテレビの時代が到来か
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印刷2011/10/31 18:32

業界動向

Access Accepted第322回:新世代ゲームテレビの時代が到来か

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第322回:新世代ゲームテレビの時代が到来か

 「テレビゲームを遊ぶ」とはつまり,据え置き型のコンシューマ機をテレビに接続してプレイすることを指す。だが数年後,その意味は代わっているかもしれない。先日他界したスティーブ・ジョブズ氏が開発しようとしていた新しい形のテレビは,据え置き型のコンシューマ機がなくてもゲームが遊べる時代を実現するかもしれない。果たして,新しいテレビは我々の知るコンシューマ機の強力なライバルになるのだろうか。テレビとゲームの将来を考えてみよう。


新時代のテレビを構想していたスティーブ・ジョブズ氏


 ウォルター・アイザックソン氏によるスティーブ・ジョブス氏の公式伝記本「スティーブ・ジョブズ」が,ワールドワイドで一斉に発売された。ジョブズ氏の容態が悪化する前からアイザックソン氏はインタビューを重ねており,情報量が豊富で正確な内容の書籍になっている。その中でジョブズ氏が次世代のテレビについて興味深い話をしている。

 アイザックソン氏によれば,ジョブズ氏は非常に使いやすいテレビシステムを構想していたそうだ。iCloudを介してすべてのiOSデバイスとシンクロし,ボタンの多いリモコンを何本も手に取っていろいろな機器を操作したり,チャンネルサーフィンする必要のない,非常にシンプルなシステムだ。ジョブズ氏は,そのシステムがどういうインタフェースを持つべきなのか,その最良の方法をすでに見つけていたという。

2000年のMacWorldでAppleが「iMac」を発表したとき,ベージュや黒のケースばかりだったPCとは異なる,カラフルでキュートなデザインがユーザーの心を揺さぶった。Appleがもし,スティーブ・ジョブズ氏の意思を受けたテレビを開発しているとしたら,いったいどのようなデザインになるだろうか
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第322回:新世代ゲームテレビの時代が到来か
 果たして,ジョブズ氏が考えていた次世代のテレビとはどのような姿のものなのだろう。それは大きなiPadのようで,iPhoneやiPadで操作するのかもしれないし,モーションセンサーでユーザーの動きを感知する可能性もある。あるいは,iPhone 4Sで実装された音声認識プログラム「Siri」を採用するかもしれない……。などと,いろいろと夢の膨らむ話だが,実は,以上のジョブズ氏の構想はすでに具体化に向かって進んでいたようだ。
 公式発表ではないものの,Appleが2013年に次世代テレビを発表し,2014年に販売するという報道が北米のメディアで行われたのだ。Appleは,これまで「Apple TV」というセットトップボックスを発売していたが,予想されるのは「テレビに革命を起こす」というジョブズ氏の言葉そのままのものになるという。

 ここ数年,スマートフォンなどのモバイル機器が,携帯ゲーム機の地位を脅かしている。iCloudの使用が念頭に置かれている以上,ジョブズ氏のテレビがインターネットへの接続がデフォルトで組み込まれているのは間違いない。ここに,「OnLive」「Gaikai」のようなゲームオンデマンドのシステムが組み込まれたり,HDDが内蔵され,ゲームアプリをダウンロードできたりしたらどうなるだろうか?
 iPodが,携帯型デジタル音楽プレイヤーの製造/販売という枠を超え,音楽産業を巻き込んで発展したように,ジョブズ氏の次世代テレビは,テレビ局や映画産業だけでなく,ゲーム産業にも深く関わる一大事業に成長するかもしれない。


コンシューマ機がなくても,ゲームを楽しめる時代


 ネットに接続できるテレビとしては,パナソニックやソニー,SamsungやLGなどの製品がゲームアプリをプレイできる環境を整えている。ただし現状では,テレビのリモコンで遊べる簡単なものばかりで,ゲーマーには物足りない。
 もっとも,「Ice Cream Sandwich」という奇妙なコードネームで知られる最新のAndroid OSでは,USBコントローラがサポートされるというから,“Androidを搭載するテレビ”が増えれば,コントローラを作る周辺機器メーカーの参入は容易になる。

 こうしたネット接続型テレビ向けにゲームを配信する企業も出現しており,その中で存在感を見せているのが,PlayJamという,イギリスをベースにする企業。Free-to-Playタイプのソーシャルゲームを中心に展開するPlayJamのタイトルは,リーダーボードや支払いシステムなどもぬかりなく完備している。GameStopやAdobe,そしてSamsungといったメーカーが,このPlayJamに積極的に投資をしており,すでに500種以上のゲームアプリをラインナップし,トータルで実に6億ダウンロードを達成しているという。

インターネットに接続できるタイプのテレビでは,写真のように独自のインタフェースを持ち,わずかなゲームアプリだけが使用できるタイプが主流だ。だが,いずれは,多くのサードパーティのゲームを提供する,多機能/多目的テレビの時代がやってくる
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第322回:新世代ゲームテレビの時代が到来か

 PlayJamの資料によると,コンバージョンレート(無料でプレイし始めたプレイヤーが,実際にアイテムを購入したり,プレミアムサービスに入会する率)は,通常Facebookなどのソーシャルゲームで5%程度なのに対し,PlayJamの利用者は40%にもおよぶ高い率を示す。1人が,平均して1ゲームあたり1.5ドルほど支払っているという計算になるそうだ。アーリーアダプターが,物珍しさで試しているだけだという見方もできるが,この新しいサービスの将来性は十分に見込めそうだ。

 このPlayJamに関連するのが,北米を中心にDVDのレンタルサービスを展開するNetflixだ。同社はインターネットでオーダーされたDVDを,返信封筒つきの郵便で送るというサービスで業績を伸ばしたが,ブロードバンドの広がりによって,直接ダウンロードしてもらうというシステムに移行しつつある。現在では利用者の半数が,PlayStation 3やXbox 360に映画や音楽をダウンロードして楽しんでいるとのことだが,今後,ネット接続型のテレビが普及すれば,テレビに直接ダウンロードすることが普通になるかもしれない。

 プラットフォームホルダーのうち,任天堂は2012年内に「Wii U」を,ソニー・コンピュータエンタテインメントやマイクロソフトは2013年か2014年に新型コンシューマ機を発売すると予想されているが,Appleがジョブズ氏の意志を受けた次世代テレビがリリースされ,PlayJamのようなメーカーがそこにゲームを供給すれば,ゲーム業界とそれを取り巻く状況は大きく変貌するだろう。

 コアなゲーマーにとってはそれほど面白くないゲームアプリを安価に,かつ大量に売ったモバイル機器が,今や携帯ゲーム機のシェアを奪いつつある。次世代のテレビで同じことが起きないという保証はないはずだ。テレビという新たなゲームプラットフォームがゲーム市場に参入してくれば,新たな覇権争いが起きるかも知れず,ひいてはそれがゲーム業界全体を活性化させるだろう。したがって,ゲーマーとしてもAppleの作る新しいテレビには,今後も注目していく必要があるはず。それになにより,ジョブズ氏が生前,どのような構想を持っていたのか,それがどのように具体化されるのかが興味深い。

著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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