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印刷2011/02/14 15:47

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第294回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜フィルム・ノワール編

奥谷海人のAccess Accepted

 Rockstar Gamesから2011年5月にリリースされる予定の「L.A. Noire」は,最近では珍しい刑事もののアクションゲームであり,1940〜1950年代に流行した映画ジャンルの1つ「フィルム・ノワール」を大きく意識して作られている。西部劇,ゾンビ映画と続いてきた「洋ゲー世界を知るための基礎知識」シリーズ。今回はこのフィルム・ノワールについて紹介しよう。

第294回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜フィルム・ノワール編

 

ブームになった「フィルム・ノワール」とは,どのような映画か
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フィルム・ノワールスタイルは昔からゲームにも影響を与えていたが,「L.A. Noire」ほどそれを前面に押し出したものは少ないだろう

 Rockstar Gamesがリリースを予定しているアクションゲーム「L.A. Noire」の,Noire(表記は“Noir”のほうが一般的)は,「黒」を意味するフランス語で,読み方は「ノワール」。したがって,「ノイレ」などと読むと恥ずかしいので注意が必要だが,このノワールという言葉が一般に広まったのは,1940〜1950年代にハリウッドで盛んに作られていた映画ジャンル,「フィルム・ノワール」の人気によるものが大きい。
 ハリウッド映画なのになぜフランス語なのかといえば,その様式に注目したフランスの映画評論家が,それらをフィルム・ノワールと呼びはじめ,その言葉がアメリカに逆輸入されたという経緯があるからだ。もともとは,当時フランスで大人気だった,「Serie Noir」(黒シリーズ)という探偵小説ジャンルに由来するらしい。

 第二次世界大戦が始まる前のアメリカは,1929年に始まった世界恐慌から抜け出せずにあり,また戦争の足音が遠くから聞こえてくるという時代であり,ハリウッドで制作される映画にもそうした暗い世相が影を落としていたのだ。
 その一方,1930年代後半から映画撮影用のカメラや音響機材が小型化し,レンズやフィルムの感度が向上するという技術革新によって,暗い夜のロケ撮影が可能になってきた。それらの要因があいまって生み出されたのが,フィルム・ノワールというわけだ。

 フィルム・ノワールと呼ばれる映画の特徴はいろいろあるが,やはり夜の屋外シーンを中心に,それまでのハリウッド映画で扱われることが少なかった,「欲望」「裏切り」「嫉妬」「冷酷」といった人間心理の暗黒部分をテーマに,殺人やそれにからむ刑事や犯罪者にスポットライトを当てた作品が多い。
 このほか,主人公が必ずしも善人ではなかったり,謎めいた「悪女」(Femme Fatale)が登場したり,舞台が大都会であったりという共通点も少なくない(もちろん,例外も多いが)。また,主人公のモノローグでストーリーが進められることが多い。

 戦前のフィルム・ノワールとしては,ジョン・ヒューストン監督の「マルタの鷹」(1941年),フランク・タトル監督の「拳銃貸します」(1942年),ビリー・ワイルダー監督の「深夜の告白」(1944年)などが有名だ。ビリー・ワイルダー監督はナチスに追われたユダヤ系移民だが,彼らがもたらしたドイツ表現主義の影響は強く,フィルム・ノワールに大きな影響を与えたといわれる。
 それに続いて,アルフレッド・ヒッチコック,オーソン・ウェルズ,そしてニコラス・レイなどのイギリス/アメリカ出身の名監督達も,競うようにフィルム・ノワール作品を発表し,ブームは過熱していったのだ。

 

ゲームにも影響を与えた,フィルム・ノワール
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ヒット作とはいえないが,「Noir: A Shadowy Thriller」は,なぜか筆者の脳裏に強く焼き付いているゲームの1つだ。白黒の静止画像(つまり写真)をポイント&クリックしていくというもので,当時流行の「マルチメディアゲーム」だった。ゲーム内で見られるムービーも,自主制作風のチープなノワール映画といったところだった

 1950年代後半にピークを迎えた白黒映画というイメージが強いフィルム・ノワールだが,そのスタイルは現在の映像作品にも脈々と受け継がれている。例えばリドリー・スコット監督の名作「ブレードランナー」(1982年)が単なるSFではなく,フィルム・ノワールの流れを汲むものであるということはよく指摘される。ナイトシーンを中心にした画面作りだけでなく,美しい女性(正確にはアンドロイドだが)の登場や,主人公が殺し屋であるところなどが,広義のフィルム・ノワールだといえるだろう。

 また,1980年代に香港で制作された一連のアクション映画は,「香港ノワール」などとも呼ばれており,ジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」(1986年)などは,ゲーム表現にも大きな影響を与えている。
 影響を受けたタイトルの代表的な例としては,2001年にリリースされた「Max Payne」が挙げられるだろう。夜の大都会を舞台に,たった1人で強大な犯罪組織に復讐をするという物語が主人公のモノローグによって進んでいくところや,二丁拳銃/スローモーションの多用など,フィルム・ノワールの要素だけでなく,ジョン・ウー作品でおなじみのスタイルが随所に取り入れられている。最近の作品でも「The Saboteur」「Alan Wake」,そして「Heavy Rain」といったようなタイトルに,こうしたフィルム・ノワール的な手法が使われており,もはや大人っぽいゲーム演出には不可欠だといえそうだ。

 ゲームに"フィルム・ノワールもの"というジャンルはないが,ポイント&クリック型アドベンチャーが盛んに作られていた欧米ゲームの黎明期,探偵を主人公とした作品やスリラーなどにその影響が見られるようだ。筆者が調べた限り,アメリカで最も古いノワールゲーム(と呼べそうなタイトル)は,Mac向けにリリースされた「Deja vu: A Nightmare Comes True」(1985年)ではないだろうか。この作品は,1941年のシカゴを舞台に,元ボクサーの私立探偵が犯罪を追っていくというフィルム・ノワール的な雰囲気の強い作品で,その後のアドベンチャーゲームにも大きな影響を与えたという。

 フィルム・ノワールのスタイルを継承したゲームが多く制作されたのは,1990年代中頃以降のことで,PCの性能が向上し,メディアがCDとなることでゲーム表現の幅が広がったことに由来するだろう。タイトルもそのままな「Noir: A Shadowy Thriller」(1996年)では,モノクロ画像を多用しており,また,LucasArts Entertainment作品の中でも有名な「Grim Fandango」(1998年)でもフィルム・ノワールの影響は濃厚だ。また,1999年の「Discworld Noir」や「Nocturne」といった作品も,典型的なノワールゲームと呼べそうだ。

 L.A. Noireがまだリリースされていないので,同作にどれだけノワール映画へのオマージュが込められているのかは分からないが,西部劇へのさまざまなリスペクトが含まれていた「Red Dead Redemption」を作り出したRockstar Gamesの作品だけに期待は大きい。
 したがって,今回もあらかじめノワール映画を見ておくと,その世界観により没入できるだろう。あの映画で見たシーンだ,というようなものがゲームに出てくるかも知れない。というわけで,いつものように,ぜひ見てほしいフィルム・ノワール作品をいくつか紹介してみよう。

 

奥谷海人の選ぶ,名作フィルム・ノワール
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サンセット大通り(1950年)
 ビリー・ワイルダー監督の代表作の1つで,フィルム・ノワールの名作中の名作といわれる映画。サイレント映画時代の大女優,ノーマの復帰を賭け,主人公の売れない脚本家ジョーが彼女の邸宅に住み込みで脚本を書くうち,ノーマと愛人関係になり,やがてそれが悲劇を招く……といった物語。欲望,悪女,殺人など,フィルム・ノワールの要素のすべてが含まれている。
 1940年代のロサンゼルスを徹底再現しているといわれるL.A. Noireには,もちろんこのサンセット大通りも登場し,さらに映画の登場人物(もしくはオマージュされたキャラクター)が登場するというウワサもある。

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現金に体を張れ(1956年)
 フィルム・ノワールとしては後期に属する映画で,名監督として知られるスタンリー・キューブリック監督のハリウッドデビュー作でもある。「The Killing」という原題を持つこの作品は,人を殺すことなく競馬場の売り上げを強奪しようと計画した男達が,次第に結束を乱し,破滅に突き進んでいくという内容で,低予算ではあったがキューブリック監督らしい巧みな脚本やカメラワークが光る作品だ。
 「レザボア・ドッグス」などにも影響を与えたといわれるが,映画のならではの緊張感があり,これをゲームで再現するのはかなり大変そうだ。

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L.A.コンフィデンシャル(1997年)
 ラッセル・クロウやガイ・ピアースらの出世作ともなった「L.A.コンフィデンシャル」は,1950年代,危険な街と化していたロサンゼルスで,3人の警官が殺人事件を追っていくうちに警察内部の腐敗があらわになっていくというストーリーで,L.A. Noireの設定と重なる部分も少なくないようだ。L.A. Noireの主人公コール・フェルプスは,さしずめガイ・ピアースが演じたエドモンドといったところだ。
 「フィルム・ノワールを現代に再現した」と言われるL.A.コンフィデンシャルを,L.A. Noireが参考にしているのは,おそらく間違いないところで,L.A. Noireをプレイする前に必ず見ておきたい映画だ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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