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印刷2009/07/03 11:16

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第224回:id Software買収劇で見える,独立系デベロッパの現状

奥谷海人のAccess Accepted

 ZeniMax Mediaによるid Software買収は,欧米のゲーム業界で大きな話題になった。プラットフォームの急激な拡大を続けてきたid Softwareと,未開拓ジャンルのライブラリを拡充したいというZeniMax側の思惑が一致し,実際には1年ほど前から話し合いが行われていたという。ただ,かつてMicrosoftの意向にさえ逆らうほどの“インディ魂”を貫いてきたid Softwareの独立性が失われることに対しては,業界関係者やゲームファンのなかで,複雑な思いを抱いている人も少なくないようだ。

第224回:id Software買収劇で見える,独立系デベロッパの現状

 

「Fallout 3」のBethesdaと「DOOM」のid Softwareが兄弟会社に
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現在,id Softwareが開発を進める「Rage」だが,すでに発表されているようにElectronic Artsから発売される予定だ。ZeniMaxブランドでリリースされていくのは「DOOM 4」からになりそうだとCarmack氏は語っている。ちなみにこのRage,FPSとカーアクションのハイブリッドになるとのことだが,Carmack氏の手になる「id Tech 5」エンジンの性能にも注目が集まっている

 6月24日,DOOMシリーズやQuakeシリーズなどで知られるid Softwareが,ZeniMax Mediaに買収されることが発表された。

 ZeniMaxは,Bethesda Softworksの創設者によって,ゲームパブリッシング機能を強化するために,1999年に設立された会社である。
 The Elder Scrollsシリーズの成功を軸に成長してきたデベロッパ,Bethesdaが,業績が悪化したInterplay EntertainmentからFalloutシリーズの権利を買い取って制作した「Fallout 3」の大ヒットで,二枚目の看板を手に入れたのも記憶に新しいところ。カナダのArtificial Mind & Movementが制作中の「WET」や,イギリスのRebellionの「Rogue Warrior」など,サードパーティの開発するゲーム販売にも積極的に力を入れている印象がある。

 買収されることになったid Softwareは,1991年に設立されて以来,長らく独立系デベロッパとして確固たるポジションを維持してきた名門メーカーだ。同社がFPS(一人称視点のシューティング)というジャンルを築き上げたことや,LAN/オンラインによる対戦を盛り上げてきたことなど,FPSの歴史に残した功績の数々は,いまさら説明するまでもないだろう。

 設立からしばらくの間,id Softwareは20人ほどの少数精鋭チームを維持して「自分達の作りたいものを作る」というインディな姿勢を貫いていた。3Dグラフィックスやマルチプレイモードといった技術/アイデアにおいて常に業界の最先端を走ると同時に,同社の設立者で,メインプログラマーでもあるJohn Carmack(ジョン・カーマック)氏は,幾度となくゲーム業界に対する忌憚のない意見を述べてきた。初期のDirectXがプログラマーの利益にならないという意見書をMicrosoftに送ったりなど,大手企業とも対等に渡り合ってきたのだ。

 そんなCarmack氏が率いるid Softwareでは,彼が制作したゲームエンジンにほかのプログラマー達がさまざまな要素を付け加えて仕上げ,その後,デザイナーやアーティスト達によって作品が具体化されるというトップダウン方式のゲーム開発を行っていた。一つのゲームの開発が終了すると,Carmack氏はホテルや自宅に数週間もこもって資料を読み漁り,次のエンジンのプロトタイプを一人で制作。その後,上記のサイクルが再び始まるという珍しい手法だ。しかし,ゲームデザイナーの何もしていない時間が多くなるなど,この手法は必ずしも効率が良いといえるものではなかった。

 

独立を保てなくなってきたid Software
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id Softwareが設立された1991年,まだオフィスもなく,アパートでゲームの開発していた頃の写真。左から,John Carmack氏,Kevin Cloud氏,Adrian Carmack氏,John Romero氏,Tom Hall氏,そしてJay Wilbur氏(今では,左の二人が会社に残っているのみだ)。おどけた様子の開発者達の若さが目立つが,18年経ってid Softwareは新しい時代を迎えることになった

 「Quake III Arena」(1999年)が発売されるとき,「初めて,自分がまったく関わらないコードが入ったゲームが出荷されることになり,非常に不安を覚えた」とCarmack氏が語っていたように,id Softwareはこの頃から会社の規模も大きくなり,ラインも複雑化していたようだ。現在では,Carmack氏が指揮をとる「id Tech 5」ゲームエンジンのR&Dチームだけでなく,発売が予定されている「Rage」とその後に開発が進められるはずの「DOOM 4」開発チーム,そしてローンチされたばかりの「Quake Live」のサポートチームや,モバイル向け部門などを合わせ,約200人という規模になっている。
 「大所帯となった会社や,社員の家族の将来にとってベストの選択はなんなのか」と考えた結果が,ZeniMaxという安定したパブリッシャの傘下に入るという決断であったのだと,Carmack氏はメディアのインタビューに答えており,会社規模の拡大が買収に応じた最大の原因だとしている。現状,トリプルA級のタイトルを開発するには膨大な予算と人員が必要であり,独立系デベロッパとして開発と経営,人事までを一括して行うのは難しくなってきたのだ。

 プレスリリースでZeniMaxは,「今後のソフト開発において,id Softwareにとって最適な環境作りをサポートしていく」と最大限のリスペクトを見せている。id Softwareは本社を移すこともなく,社名や開発体制も残されるということで,ゲーマー側の視点から見る限り,変化する部分は少なそうだ。実際,BethesdaはRPG,id Softwareはアクションといった棲み分けもできているし,id Tech 5という独自技術を使ってZeniMax傘下のメーカーがゲーム開発を行えるという,効率面での展望も開けている。

 もっとも,独立系デベロッパとして20年近く活躍してきたid Softwareが買収されてしまうということに対し,残念に思っている人も少なくないようだ。同社をカーマック氏とともに立ち上げ,1996年に退社したJohn Romero(ジョン・ロメロ)氏は,買収のニュースが流れた同じ日に「そんなひどい話があるのか」と怒りのコメントをTwitterに投稿して話題になった。もっとも,ZeniMaxは悪いウワサもとくに聞こえない優良なゲーム企業であり,Romero氏も「一時的なショックで感情的になり過ぎた」と後日謝罪している。
 今回のニュースを聞いて,Romero氏のようにショックを受けているベテランゲーマーもいるだろうが,結局独立系デベロッパが“独立系”でなくなってしまうというだけで,その経営基盤が買収によって強化されるのであれば,開発者にとってもゲーマーにとっても良い話だと思う。むろん,いくつかの例外的な事例も忘れてはいけないが……。

 

独立系デベロッパの光と影
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ZeniMaxの経営判断とBethesdaの開発能力によって,ゲーム史に埋没していたFalloutシリーズが見事に復活したのはご存じのとおり。経営面でZeniMaxのバックアップを受けることになったid Softwareは,これまでの知的財産を従来以上にうまく活用できるだろう。画像は,PC及びXbox 360でリリースされた「Fallout 3:Point Lookout」

 「独立系デベロッパ」の存在が大きな注目を集めている最近の北米ゲーム業界。実際に大きな成功を収めたメーカーも少なくない。「Steam」や「Xbox Live」などを通じたデジタル流通システムが消費者の間で一般的になっており,開発が短期間ですむカジュアルゲームやモバイルゲームが広く受け入れられるなど,下地は整ってきた。当座の開発資金とアイデアさえあれば,たとえパブリッシャとの契約がなくても,実質五人以下で会社は成り立つ。そうした小規模デベロッパが増えているのだ。
 こうしたインディーズ系ゲームの動きについては,2009年3月に行われたGame Developers Conferenceの記事にも詳しいので,そちらも参考にしてほしい。とくに巨大企業が見逃していたような分野で,少ない元手で大きなヒットが見込めるチャンスが増えており,「ローリスク・ハイリターン」を狙った開発者達が,アイデア勝負で奮闘しているのだ。

 現在も独立を守っている大手デベロッパとしては,「Gears of War」のEpic Gamesと「Half-Life」のValveが挙げられる。奇しくも,この両社はid Softwareに追随してFPS開発に乗り出したメーカーであり,いずれも,新規ビジネスの開拓や経営能力に飛び抜けたものを持っていた。前者は「Unreal Engine」というゲーム開発用ミドルウェアで,後者はSteamというデジタル流通システムで大成功を収めているのである。
 それに対し,たとえFPSジャンルを作り出した先駆者であったとはいえ,id Softwareはその後の市場の変化についていったとは言い難いかもしれない。最近は大ヒットからも遠ざかり,DOOMやQuakeというネームバリューだけで売れる時代でもない。Quake LiveやiPhone向け「DOOM: Resurrection」の制作は,新規市場の開拓を模索する試みだったのかもしれないが,結果が出るまでには時間も予算もかかるのだ。

 独立を保ちつつ規模を大きくすることがますます困難になってきた最近の欧米ゲーム業界。今回下した決断によって,名門id Softwareがどんな方向に進んでいくのか,ZeniMaxの手腕ともども注目していきたい。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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