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印刷2008/05/09 12:00

連載

奥谷海人のAccess Accepted

 “違法コピー”は,PCゲーム市場にとって大きな障害である。ブロードバンド回線の普及により,違法にコピーされたものが世界的に広がり,それに伴ってPCゲーム市場の規模縮小が続いている。最近では,PCゲームを専門に開発してきたメーカーが,コンシューマ市場へ参入するだけでなく,そちら側に基盤を移すような動きも見せ始めている。この市場の変化に,PCゲーム業界はどのように対応していくのだろうか。

違法コピーに頭を抱えるPCゲーム業界
あのCryTekまでが
PCエクスクルーシブの看板を下ろす

 このところ,PCゲーム市場の落ち込みが厳しい。「第161回:なぜPCゲームは売れなくなったのか?」でも書いたが,北米でのゲーム市場全体におけるPCゲームのシェアは,10.5%にまで下落した。この数字には,アメリカとカナダだけで300万人(世界全体では1000万人)という会員数を誇る「World of Warcraft」といったオンラインゲームや,ゲーム配信サービス「Steam」のような流通システムの売り上げは含まれていない。しかし,Game Developers Conferenceなどで出てくる欧米の開発者達の発言や,GameStopなど小売チェーン店でPCゲームの陳列棚が大幅に縮小されている現状を考えると,PCゲーム市場が縮小していくのをヒシヒシと感じざるを得ない。とりわけ,古くからのゲーマーは,目に見えるPCゲーム市場の衰退に淋しさを覚えるだろう。

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Crysisを開発したCryTek は,CryENGINE 2をXbox 360やPLAYSTATION 3用のゲームも開発できるマルチプラットフォーム・ミドルウェアとして売り出している。Yerli氏の「コンシューマ機であれば4〜5倍は販売できる」という発言は,Call of Duty 4やUnreal Tournament 3の販売数を参考にしているようだ。PCを起源にするFPSも,今ではコンシューマ機のほうが4倍売れるという現実は,実に悲しい

 2008年5月1日,「Crysis」を開発したCryTekのCEOであるCebat Yerli氏は,今後のCryTekタイトルは,PCエクスクルーシブ(独占)ではないと,ハンガリーのゲーム情報誌PC Playのインタビューに答えた。「(Crysisは)著作権侵害行為というとても大きな問題に直面しています。同じようなゲームなら,コンシューマ機であれば4〜5倍は販売できる。これは,我々にとって重要なレッスンだったし,今後はCrysisのようにPCだけで販売することはないでしょう」と,氏は不正ダウンロードによる違法コピーの横行によるダメージがCrysisの売り上げに影響したと分析した。

 不正ダウンロードが,PCゲーム市場が衰退した原因の一つだというのは,これまでも何度も聞かれた業界の声である。実際,Epic Gamesやid Softwareは早くからマルチプラットフォーム化の流れに乗っており,とくにEpic Gamesは「Gears of War」の成功により,メインターゲットをPCからコンシューマ機へと移した。

 また,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,CoD4)を開発したInfinity Wardも,不正利用者の多さに頭を悩ませている。発売元のActivisionは,「BitTorrent」を利用した不正ダウンロードにより,2007年10月の発売から約4か月の間に100万本に相当するCoD4が流出したと試算しているのである。しかも,これはたった一つのBitTorrentサイトの集計だというから恐ろしい。

 

被害が拡大する違法コピー

 違法コピーによる被害は,ここ最近は盛んに開発者側から聞かれるようになった。5月3日には,Epic Games副社長マーク・レイン(Mark Rein)氏が,オンライン誌TG Dailyで,オンライン認証システムが搭載されている「Unreal Tournament 3」へ,盗んだ/偽造した認証キーを利用したアクセス未遂が4000万回も行われたことを明らかにした。一人で何度も試みていた者がいるのだろうが,それを考慮に入れても相当な人数が無料でゲームを遊ぼうとしていたのだろう。このような不正行為がいかに蔓延しているのか,あらためて分かる事例である。

 違法コピーや海賊版の問題は昔からあった。PCゲームがフロッピーディスクで売られていた頃は,コピーは今よりも容易だったが,データの受け渡しを物理的に行う必要があったので,拡散するスピードがはるかに遅かった。しかし,ブロードバンド回線が普及し,数回のクリックだけで簡単にダウンロードできてしまうようになり,法も整備されていないことから,罪悪感をあまり感じずに不正を行っている人達が急増したのだ。

 さらに,不届きなテスターやレビューライターなどの手によって,発売前に正規版が流通してしまういわゆる“デイ・ゼロ海賊版”(Day Zero Piracy)による被害が,セールスの伸び悩みに直結するということは,かなり以前から指摘されていた。

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3月の時点で発表されている販売本数が120万本と,PLAYSTATION 3版も含め,盛り返した感のあるUnreal Tournament 3だが,不正アクセス未遂が4000万回というのは凄い話だ。不正ダウンロードの被害にあっているゲームの一つではあるが,7月には新しいキャラクターやスプリットスクリーンモードなどを追加したXbox 360版がリリースされる予定だ

 問題なのは,現在では違法コピーへの対策が,個々の会社に任されているという点だろう。2008年2月には,IntelやAMD,Microsoftといった会社が結集し,PC Gaming Allianceという団体を発足させた(関連記事)。しかし,ハードウェア搭載システムの規格化や市場調査の共有などが優先事項になっており,違法コピーへの対策は現状では期待できない。さらに,1か月に1度の定例会が行われているそうだが,これでは時代のスピードに対応できないだろう。

 また,これまでロビー活動に加えて違法コピーへの対策や啓蒙を行ってきたESA(Electronic Software Association)は, Activision Blizzard及びVivendi Gamesが脱退し,その影響力を低下させている。

 もちろん,コピープロテクションや不正ダウンロードの取り締まりを強化したからといって,そのままPCゲームの売り上げ向上に直結はしないだろう。例えば,Unreal Tournament 3の不正アクセス未遂が4000万回あったからといって,不正コピーがなければ,さらに4000万本も売れる可能性があった訳ではない。不正ダウンロードする人達の多くは,始めからお金を支払う意志がなく,無料でなら遊ぶということだろう。とはいえ,黙って見ているだけでは,PCゲームを専門に開発するデベロッパも減り,ゲームプラットフォームとしてのPCの価値は下がる一方だ。

 

不正行為への対策が急務のPCゲーム業界

 現在,PCゲーム市場を再建する手段として最も有望なのが,Steamに代表されるゲーム配信システムだ。Steamの認証システムが良く機能しているのは明らかで,「Team Fortress 2」や「Counter-Strike: Source」といったValveタイトルの不正コピーはあまり出回っていない。仮にダウンロードしたとしても認証されないだろう。

 Steamを運営しているValveは詳細を明らかにしていないが,「The Orange Box」(「Half-Life 2:Episode Two」「Team Fortress 2」「Portal」「Half-Life 2」本編「Half-Life 2: Episode One」のセット商品)は,発売から3か月でコンシューマ機版が150万本売れ,Valveは「PC版はそれ以上」ということを明らかにしているので,現時点で全プラットフォームを合わせて400万本近く売れた可能性が高い。オンラインFPSである「Team Fortress 2」の活況や,「Portal」の熱狂的な人気を考慮すれば,この数字は実数に近いと思われる。

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Steamといえどもどこかに穴はあるのだろうが,少なくとも発売前に正規版が流通してしまう「デイ・ゼロ海賊版」は今のところ完全に回避できており,デベロッパとパブリッシャにとって大きな魅力になっている。つい先日,ゲーム開発/販売総合ツール「Steamworks」も開発者向けに無料公開されており,PCゲーム用プラットフォームとして,さらに大きく成長する可能性が高い

 Steamは多くの支持を得ており,アカウント数は1500万に達している。パブリッシャの参加も増え,この2か月でEidos Interactive,Epic Games,そしてUbisoft Entertainmentといった大手が一斉にSteamにゲームの提供を開始し,そのライブラリを充実させている。またSteamは,大手のゲームだけでなく,「Darwinia」や「Audiosurf」といったインディーズゲームも配信し評価を得ているのも,人気の一因といえるだろう。

 Steamに参加していない大手パブリッシャも独自の路線を取り始め,Blizzard Entertainmentは5月6日,Steamのようなゲーム配信サービスを自社のオンライン販売サイト「Blizzard Store」で開始した。これは,「StarCraft II」を始めとする,発売予定のPCタイトルを不正コピーから守るための手立ての一つだと考えられる。

 さらに,Electronic Artsも不正コピーへの対策として,「The Sims 2」シリーズなどで使用されているコピープロテクト専用アプリケーション「SecuROM」の次世代版を,「Mass Effect」や「Spore」といった発売予定のPCタイトルに搭載することを発表した。こにれよって同2作のプレイヤーは,10日ごとにオンライン認証をしなければならなくなる。

 手段はさまざまだが,欧米のゲーム企業各社は不正ダウンロードをPCゲーム市場衰退の原因だと捉え,それに対する対策に本腰を入れてきたのが,鮮明になってきている。

 今後は,PC独占タイトルが減り,表に出てくるデータ上でのPCゲーム市場は縮小していくかもしれないが,オンラインゲームやダウンロード販売などが増えていくだろう。本格的なゲームを広告収入などで無料化させるといった新たな動きも出てきており,PCゲーム市場は大きな転換期を迎えたといえる。ゲーム業界を巡る激震の中で,ゲームプラットフォームとしてのPCはどこへ流れ着くのだろうか。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。高校生の長男がいるという知り合いから,「Grand Theft Auto IV」の購入に関する相談を受けた奥谷氏。テレビや新聞で盛んに暴力性が騒がれているのが気になるのだそうだが,奥谷氏は「心配なら自分で試してみるしかないだろう」と助言したらしい。数日後,奥谷氏が男性と出会ったのだが,何だかとても疲れていたという。どうやら,子供に内緒で,夜な夜なGrand Theft Auto IVをプレイするうちにハマッてしまい,購入後の週末はほとんど寝ていなかったというのだ。このままでは親子でゲームの取り合いが発生し,家庭崩壊へとつながるのではないかと心配した奥谷氏は,ゲーム機とソフト1本の追加購入を助言しようか迷っているそうだ。

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