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[COMPUTEX]MSIに聞く,129ドルのノートPC向けグラフィックス拡張ボックス「GUS」詳細。内部写真を世界初公開
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印刷2010/06/03 00:00

インタビュー

[COMPUTEX]MSIに聞く,129ドルのノートPC向けグラフィックス拡張ボックス「GUS」詳細。内部写真を世界初公開

Kiner Liu氏(Project Manager, Product Marketing, Marketing Department, MSI)。インタビュールームに向かう道すがら,「(発売に至っていない)同種の従来製品はコストなど制約が多すぎた」と述べていた
画像集#001のサムネイル/[COMPUTEX]MSIに聞く,129ドルのノートPC向けグラフィックス拡張ボックス「GUS」詳細。内部写真を世界初公開
 MSIは,COMPUTEX TAIPEI 2010で,ノートPCでデスクトップPC向けグラフィックスカードの利用を可能にする“グラフィックス拡張ボックス”,「GUS」(Graphics Upgrade Solution)を公開した。
 北米市場における想定売価が129ドルと,非常に現実的な水準に収まっている本製品。概要は,2010年5月31日の記事でお伝えしたとおりだが,今回4Gamerでは,MSIでグラフィックス製品の企画を担当するKiner Liu(キナー・リュウ)氏に単独で話を聞くことができたので,気になるその中身など,製品の本質に迫ってみたいと思う。


GUSの内部を世界初公開

気になる互換性情報も明らかに


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グラフィックスカードを搭載する本体から,ExpressCardとケーブルが生えているようなデザインのGUS
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Liu氏に分解してもらった
 先の記事でも紹介しているとおり,GUSは,ノートPCとデスクトップPC用グラフィックスカードを,ExpressCardのPCI Express x1で接続する製品だ。本体側にはPCI Express x16スロットを内蔵しており,ここに消費電力90WまでのデスクトップPC向けグラフィックスカードを差すと,GUSを外付けグラフィックスカードとして利用できるというのが最大の特徴になる。

 というわけで,読者も気になるだろうし,筆者も大いに気になっていた内部構造から,見てみることにしたい。
 下に示したのは,Liu氏に分解してもらった様子だ。端的に述べるなら「自作PCを組んだ経験があるなら造作もなく分解できるし,また,カードを差した状態で組み上げられる」印象。ちょっとネジの数は多めだが,どうということはないだろう。


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内部へアクセスするためには,(1)まず滑り止めのゴムを剥がし,4点のネジを外す
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(2)底蓋を外し,今度は表面のカバーを固定しているネジを外していく
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(3)カバーを外すのではなく,コネクタ側から先に,カバーから本体を引っ張り出していくイメージ
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(4)完了。2スロット仕様のグラフィックスカードが姿を見せた。組むときは逆の手順を踏めばOK

 MSIはブースで,「ATI Radeon HD 5670」(以下,HD 5670)搭載グラフィックスカードを内蔵した状態で,Core i3プロセッサ搭載のノートPCと接続し,「ストリートファイターIV」のデモを行っている。ブースでは,解像度1920×1200ドット,すべてのグラフィックスオプションを最高にしても,常時60fps前後を安定的に示してしたが,今回,分解してもらったGUSでも,搭載していたのはHD 5670カードだった。

カバーを外した状態。I/Oインタフェース部のネジを外せば,グラフィックスカードは簡単に抜ける
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そしてこれが,カードも取り外したところ。PCI Express x16スロットに目がいきがちだが,非常にコンパクトな基板にも注目したい。「MSIの研究開発部門と中国の工場関係者が連携して開発し,このサイズを実現できた」(Liu氏)
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GUSはUSBハブ機能を有しており,GUSにマウスやゲームパッドなどをつなぎっぱなしにしたりできるが(上),本体内部の基板には確かに,写真中央にあるコンデンサの右上にUSBコントローラを搭載していた(下)。なお,基板上に見えるスイッチは開発に使う信号制御用で,製品版では省かれるとのこと
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 この点,何かこだわりがあるのか聞いてみたところ「現時点で,最も高いパフォーマンスを引き出せるのがHD 5670だ」との回答。PCI Express x1接続となるGUSの場合,リンク帯域幅が最大のハードルになるが,HD 5670では,最大で16レーン接続比80〜90%のパフォーマンスを発揮できるのだという。

 市場には,(対応APIうんぬんを別にすれば)HD 5670以上の3D性能を持ちつつ,消費電力が90W以内に収まるカードが複数存在する。またそもそも,「90W」という消費電力制限も,GUSに付属するACアダプタの仕様によるものでしかなく,やろうと思えばより高い消費電力のグラフィックスカードにも物理的には対応できそうだ。
 しかし,これ以上の容量を確保して,より高速なグラフィックスカードを搭載できるようにしても,今度はx1接続のボトルネックが大きくなりすぎ,パフォーマンス向上のメリットを享受しにくくなるのだそうだ。

 その意味では,90W以内ならどんなGPUでもOK,というよりは,エントリーミドルクラス程度のGPUを搭載することが前提になっていると理解しておいたほうがいいかもしれない。

インタビューに同席していたMSIのスタッフにも協力してもらい,GUS内部のクリアランスをチェックしてみたところ。200mm程度までのグラフィックスカードなら利用できそうだ(※もちろん保証値ではないのでご注意を)
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ExpressCardとケーブルは完全に一体となっており,継ぎ目はない。当たり前といえば当たり前だが,ちょっと力を入れて引っ張ったくらいではびくともしなかった
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MSIブースのデモ機
 31日の記事で,本体とケーブル,そしてExpressCardは直結されていると紹介したが,実機でも確かに直結されていた。これは,ノイズによる信号の減衰対策もさることながら,着脱を可能にして接点を増やすと,ただでさえ狭いPCI Express帯域幅に,さらに負の影響があるためだという。

 気になるノートPCとの互換性について,Liu氏は「(ExpressCardスロットを搭載した)ほとんどのノートPCで動作する」と言い切る。
 GUSは,PCI Express x1を外へ出すだけなので,動作に特別なドライバを必要としないのが,高い互換性の確保につながっているのだろう。実際,「ブースのデモ機も,ATI Catalystドライバをインストールしただけで動作している。Afterburnerを使ったオーバークロックも可能」とのことだ。

 対応OSはWindows 7。このあたりは,WDDM 1.1で,複数の異なるグラフィックスドライバをインストールできるようになったのが大きいようである。「Windows XPだと,複数の異なるグラフィックスドライバを同居させられないためで,GUSは動作しない。Windows Vistaをサポートしない理由は……分かるだろう?(笑)」(Liu氏)

 ところで,氏の発言で気になった「ほとんど」という部分を突っ込んで聞いてみると,「ノートPCのBIOS側が対応していなければ動作しない」という答えが返ってきた。「例えば,BIOSレベルで4GBのメインメモリをサポートしないようなノートPCだと,GUSを差したとたんにクラッシュする」(Liu氏)。
 これは,いわゆる32bit OSの壁ではなく,あくまでもBIOSレベルの互換性問題だそうだ。一昔前のノートPCには,容量4GBまで対応するチップセットを採用しながら,PCレベルでは2GBしかサポートしないような製品があったが,そういった製品が対象となるようである。

写真左手前から,カバー,底蓋,基板を含む本体
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 また,NVIDIAの単体GPUを搭載したノートPCにAMD製GPU搭載グラフィックスカードを差したGUSを接続する,あるいはその逆のシチュエーションだと,一部で互換性の問題が発生するとのこと。発言を聞く限り,Switchable Graphics対応製品の一部のような気もするが,Liu氏はそのあたりを検証中としつつ,「基本的には,Intelプラットフォームで,グラフィックス機能統合型の(チップセットやCPUを搭載した)ノートPCを推奨する」という見解を示していた。

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 気になる出荷時期は,動作検証に慎重を期すことから,「まず9月に台湾で発売し,その後,世界市場では年内の発売を目指す」とのこと。シンプルなハードウェア仕様に起因する互換性の高さと,北米市場における市場想定売価129ドル前後――税制やロジスティクスのコストなども考慮すれば,日本では1万5000円前後だろうか――という手軽さとを踏まえるに,これはひょっとするとひょっとしそうだ。
 CPU性能的には十分なものを持っていながら,GPUを搭載しないという理由で3Dゲームが動作しなかった多くのノートPCを,3Dゲームに耐えられる存在へと昇華させる可能性を持ったGUS。その今後を,楽しみに,かつ注意深く見守りたい。

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