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[GDC 2009#番外編]企業家や投資家達がゲーム業界についてみっちり語り合った「GamesBeat 2009」
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印刷2009/03/25 20:48

イベント

[GDC 2009#番外編]企業家や投資家達がゲーム業界についてみっちり語り合った「GamesBeat 2009」

画像集#001のサムネイル/[GDC 2009#番外編]企業家や投資家達がゲーム業界についてみっちり語り合った「GamesBeat 2009」

 3月24日,サンフランシスコ市のミッションベイ・カンファレンスセンターにおいて,今年が初めてとなる「GamesBeat 2009」が開催された。この会合は「Game Developers Conference」(GDC09)と並行する形で行われており,参加者もほぼ重複している。しかしGDCや,開発者団体のIGDA(International Game Developers Association)と直接の関係はなく,一つの独立した業界イベントなのである。

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 このGamesBeat 2009は,開発者のための開発者によるGDCとは異なり,ゲームビジネスや経営者にフォーカスしたイベントである。主催は「VentureBeat」というビジネス系のオンライン誌であり,在籍するゲーム系ライターとして非常に有名なDean Takahashi(ディーン・タカハシ)氏が,このイベントのモデレーターとして腕を奮っている。

 参加者は200人程度だが,タカハシ氏とコンビを組んで壇上に上がったGas Powered GamesのChris Taylor(クリス・テイラー)氏のほか,元マイクロソフトでXboxの制作を主導したSeamus Blackley(シーマス・ブラックレー)氏,元Sony Online Entertainment社長John Smedley(ジョン・スメッドレー)氏,さらにはPC Game Allianceを率いるIntelのRandy Stude(ランディ・ストゥード)氏などの有名人が集結。これに,背広を着た若手投資家や企業家が加わり,まさに北米ゲーム業界の“エリート集団”と形容できる面々が揃った。


“元”メジャーリーグ投手,カート・シリング氏の思い


 セッションの一つで興味を惹いたのが,ゲームを開発する大リーグ選手として,以前筆者がインタビューしたこともあるCurt Schilling(カート・シリング)氏の公開インタビューだ。

「野球は私の前から存在し,私の後にもずっと続いていく。ボールを手渡されて,勝つためにすべてのことをやったつもりだ」と自身のブログで引退表明したばかりのカート・シリング氏。今後は,ゲーム業界人として存分に活躍してくれるだろう
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 怪我に悩まされてきたシリング氏は,奇しくも前日に大リーグから引退することを表明したばかり。「ずっと昔から,この日が来たあとレストランやカーディーラーの経営者にはなりたくないと思っていた」と話していたが,このレストランやカーディーラーというのは大リーガーが引退後に進む業種の,非常にステレオタイプなものであって,シリング氏自身の比喩には大きな意味合いはない。
 しかし,引退するというのは,長年にわたりトップクラスのピッチャーとして大リーグに君臨し続けた現在42歳のシリング氏にとっては,相当の覚悟があったはず。このインタビューでも,「MMORPGを開発したいという思いは,もう7年ほど前から持っていたことで,自分のアイデアを書き連ねたノートパソコンを持ち歩いて,常に起業のチャンスを窺っていた」と話していたのは印象的だ。
 6〜7年前というと,シリング氏は例年のように20勝を上げていた絶頂期の頃。そんな話を聞きながら,少しずつ年を重ねていくスポーツ選手の複雑な思いというものが筆者にも伝わり,なんとなく感慨深いものだった。

 さて,シリング氏の38 Studiosが開発中の,コードネーム「Copernicus」として知られるMMORPGに関しては,今回も残念ながら具体的な発表は行われないままだった。「World of Warcraftの成功に,どう立ち向かっていくのか」という質問に対して,シリング氏は「我々は,1200万のプレイヤーを獲得するためにゲームを作っているのではない。良いゲームを作り出して多くのファンに受け入れられることが一番の成功だと思う。38 Studiosは,それを達成できるモノを持っている」と,謙遜しつつも非常に肯定的に見据えている様子だった。


未来のゲームは“楽しい”以外の感情をプレイヤーに与えることができる!?


 GamesBeat 2009は,その多くが複数の業界人を壇上に上げて,モデレーターが進行を務めるという,パネルディスカッション方式によるものだった。その中でも,とくに印象に残ったのが,「Metaplace」で知られるAreaeのRaph Koster(ラフ・コスター)氏や,「flOw」や「flOwer」などPLAYSTATION Networkで大きな話題を呼んだ作品で知られる,thatgamecompanyのJenova Chen(ジェノヴァ・チェン)氏らによる,「The Future of Games」という講義だ。

ジェノヴァ・チェン氏(左)とラフ・コスター氏(右)
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 この講義で,まず論客で知られるコスター氏が10年後のゲームについて聞かれ,「10年後? じゃあ10年前について考えてみると,3Dゲームを作れる才能のある開発者なんてほとんどおらず,マルチプレイヤーゲームやMMORPGで金儲けできるなんて誰も思っていなかった。Webゲームなんてなかったでしょ。歴史は,時間が経つほど急速に変化していくことを考えると,10年後なんて誰も予測はできないでしょう。ただ言えることは,今トレンドとされるものの中には,必ず成功していくものがあるはずということ。もっともっとソーシャルになっていくのは間違いないかもしれないね」と答えた。

 さらに踏み込んで,ゲームの新たな可能性を示唆したのがチェン氏である。彼は,映画がただのエンターテイメントから,芸術という分野に移行したという映画史を語りつつ,「会ったばかりの人にゲームのことを聞いても,ゲームなんてしないとか,ゲームは嫌いとはっきり言う人もまだいる。でも,映画のことを嫌いと言う人なんてほとんどいないでしょう? ゲームがそういうステータスになる日は近いし,そのときには映画がホラー,ウェスタン,サスペンスなど複雑なジャンルを生んでいったように,ゲームも撃って壊して並べるだけの“楽しい”というシンプルな表現を追求する時代は,終わるんじゃないでしょうか」と語った。


ソーシャルネットワークは,ゲームではない


ベンチャー投資家達のディスカッション。去年一年間で,世界中で9億ドル(約850億円)という投資が行われたらしい
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 このGamesBeatに参加して,閉会の時が近づくにつれてようやく気付いたのは,このイベントに参加している人々は,オンラインを媒体,もしくは流通手段にしている業界関係者ばかりであったということだ。既存のプラットフォームに依存したり,パッケージ販売に固執したようなゲームソフトは,GamesBeatの参加者の中では,すでに過去のものと捉えられつつあるのをヒシヒシと感じたのである。
 例えば,GamesBeatには,投資会社や業界アナリストといった背広組も多く参加していたが,ゲーム向けの投資会社として知られるNorthwest VenturesのTim Chang(ティム・チャン)氏は,「我々投資家の視点で見れば,すでに成功したビジネスはあまり魅力的じゃない。ミュージシャンを考えれば分かりやすいと思うけど,投資家はトレンドとして業界そのものを引っ張れるような才能を探し,ひいてはレコードレーベルの設立やマーケティング活動にも出資して育て上げ,そこから高いリターンを得るものだ。ゲーム開発者も,ゲームだけのことではなく,ビジネスやマーケティングのロードマップも考察する能力を身につけなければ,新たな投資を呼び込むことは難しい」と話している。

マーク・ピンカス氏(右から二人目)ら,ソーシャル・ネットワークやコミュニケーションツールでのし上がった企業家集団
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 参加者の中で「ソーシャル・ネットワークは,ゲームプレイではなくマーケティング・タクティック」と語るのは,Lightspeed Venture PartnersのJeremy Liew(ジェレミー・ルー)氏
 FacebookやMySpace向けのゲームで,一日800万人というアクティブユーザーを獲得するZynga代表のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏は,「マーケティングというよりも,顧客を引き寄せるための道具というべき」と話すが,いずれにせよ,彼らにはゲームやゲームプラットフォームを制作しているという思い入れはそれほどないようだ。
 史上初のプロゲーマーといわれ,現在はRaptrというゲーマーのコミュニケーションツールを開発するDennis Fong(デニス・フォン)氏も,「ソーシャル・ネットワークのミニゲームは,パズルだとかトランプだとか,ゲームそのものは使い古されたもの。使い古されたというのは,愛されているからという見方もできると思うけど」と,ソーシャル・ネットワーク・サービスはゲームそのものに革命を起こしているのではないことを示唆していた。

 10年後,ゲーム業界はどのような姿になっているのだろうか。GamesBeatからの帰路,そんなことを考えずにはいられなかった。
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