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PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
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印刷2013/07/23 15:43

イベント

PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート

画像集#001のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
 デジタルハリウッド大学は2013年7月20日と21日の2日間,ゲーム開発イベント「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」を,東京・千代田区の同大学駿河台キャンパスにて開催した。このイベントは,一般募集で集まった参加者が即席のチームを組み,30時間でPlayStation Mobile(以下,PSM)のゲームを開発するというもの。

 PSMは,PS VitaやAndroid OSなどのシステム向けにコンテンツを配信するソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)の取り組みで,今回のイベントもSCEがバックアップする形で開催された。本稿ではその模様をレポートしよう。

画像集#002のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート


SCEが本気で取り組むインディーズゲーム開発者育成


 本イベントは,デジタルハリウッド大学の香田夏雄准教授とSCEの伊東章成氏が企画したもの。香田准教授は2012年に同大学にてゲーム開発ツールUnityを使ったGameJam「Unity Game Jam 2」などを開催している。

 SCEの伊東氏によると,開催のきっかけは「香田氏と盛り上がったから」とのことで,詳細は語られなかったが,SCEのスタッフによると,PSMの開発者人口を増やし,インディーズのゲームを育てていきたいという意向があるとのこと。
 iOSやAndroidに流れている個人レベルのゲーム開発者を,今回のようなイベントをきっかけにPSMへ取り込んでいこうということなのだろう。実際に本イベントに対するSCE社内の注目度は高いようで,PSM担当のみならず,経営部門のスタッフも視察に訪れていた。

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SCE 伊東章成氏
画像集#005のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
デジタルハリウッド大学 香田夏雄准教授

 本イベントでは36名の参加者がA〜Hの8チームに分かれ,30時間でPSMのゲームを開発した。また,SCEからもPSM推進担当の浅野剛史氏とPSMのSDKを開発している西野元章氏が特別チームとして参戦。参加者と共にゲーム開発に取り組んだ。

 参加者は10代〜40代で,スキルも開発初心者からプロのクリエイターまで幅広い層となっていた。チーム構成は申込時に登録した開発スキルを元に決定され,各チームにプログラミングとCGデザインスキルを持つスタッフが必ず1人は割り振られたほか,サウンドデザイナーやゲーム企画担当なども分散してチームに配属されるなど,各チームのスタッフが自然に1つの開発部隊として機能するようになっていた。

 スケジュールは以下の通り,7月20日18:00の段階でゲームの企画を決定し,翌21日11:00にはアルファ版を制作して,16:00までにゲームを作り込んで完成させなければならないというなかなか厳しいもので,ほぼすべてのチームが徹夜でゲーム開発に取り組むことになった。

【開催スケジュール】
7月20日
10:00 主催挨拶,イベント案内事項説明 チーム発表,テーマ発表
11:00 ゲーム制作スタート
18:00 中間発表I
7月21日
11:00 中間発表II
16:00 ゲーム制作終了 審査開始
17:00 完成発表

SCEチームの浅野剛史氏(左)と西野元章氏(右)。PSMの担当自らが一般参加者と一緒にゲーム開発に参戦
画像集#003のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート


まさかの“猫かぶり”? 8チームが中間発表Iでユニークなゲームプランを発表


 テーマは「心あたたまるゲーム(WarmApp)」と発表され,予定通り11:00に開発が始まった。まず決めなくてはいけないのが,テーマをいかにゲームとして表現するかという企画の部分だ。
 また,開発の作業分担やスケジューリングも話し合う必要がある。この最初の作業がゲーム開発全体を左右すると言っても過言ではない。最初の目標は,7時間後の中間発表Iとなる。

 各チームのテーブルを見ていると,紙にアイデア出しをしているところが多かった。マインドマップのように関連する内容をつなげていくチームもあれば,アイデア要素を羅列するところもあり,これだけでも開発手法は千差万別だ。

 開始後1時間経過した段階で,チームEがゲーム企画をまとめてゲームキャラのモデリングに入り,チームAはゲームの画面デザインをほぼ終えてPS Vitaの上にイメージ図を置いてチェックなどをしていた。

画像集#007のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
チームGはテーマである「WarmApp」を中心にしたマインドマップで企画を練る
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チームEは早々にキャラクターのモデリングを開始していた
画像集#008のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
チームAはPS Vitaの上にゲーム画面を描いた紙を置くというアナログ的な手法でイメージを確認

 そして18:00の中間発表1で,各チームがゲームの企画を発表した。
 チームAは,お年寄りに席を譲るゲームを「席譲神」と名付けて,ゲーム画面のデザインまで披露。
 チームBは心温まるというテーマを子猫が母親の元に帰るゲームで表現するとのこと。こちらもゲーム画面のデザインを発表した。
 チームCは,飼い主と離ればなれになった猫が飼い主の元に帰るというゲームで,チームBとまさかの猫ネタ被りとなった。このチームはゲーム開発初心者が多かったためか,企画内容のスライドのみとなった。
 チームDはなんと12個も出た企画案から絞った2つのゲームを作ってみるという驚きの発表をし,ゲームの画面デザインを披露した。
 チームEのゲームはウォーム(暖かい)をワーム(虫)とかけて「虫が蝶になるギャップ萌え」で心を暖かくするというコンセプト。モデリング中のキャラクターを発表した。
 チームFは綿毛で飛ぶ種子がテーマ。障害を乗り越えた種子を荒廃した土に着地させて土地を豊かにするというゲームにするとのこと。この段階ではゲームイメージを写真として出したのみだった。
 チームGが作るのは,江戸の長屋を舞台にした人と人との助け合いを描くゲーム。ゲーム画面はまだイメージ図だったが,アイデア出しの手法がユニークで注目を集めた。
 チームHは「心温まる」というテーマを和み,癒やし,可愛い,と解釈して,キャラクター育成ゲームを企画。完成度の高いキャラのモデリングデータが発表された。

 そして注目のSCEチームは,「THE指摘(仮)」というタイトルと「サラリーマンがいつか出くわすであろう悲劇を描く!」というコンセプト以外は明らかにせず,どんなゲーム内容かは謎のままだった。コンセプトとデザインを担当している浅野氏は,参加者の開発レベルの高さに驚きの色を隠せないようだった。


一晩たったらゲームがPS Vita上で動いていた


 翌日は開発ルームがデジタルハリウッド大学の教室から同校のイベントホール「駿河台ホール」に移動。11時の中間発表IIでは,ほとんどのチームがPS Vitaで実機デモを行えるレベルまで開発を進めていた。
 とはいえ,各チームには,PCが不調になったり,PS Vitaにデータが上手く転送できなかったり,プログラムがPS Vitaで正常に走らなかったりといった,さまざまなトラブルがあったようで,多くのチームは夜中の3時頃まで開発を続け,早朝に仮眠を取ったあと,さらに中間発表IIに向け作業することになったようだ。
 その中間発表IIは以下のような内容となっていた。

 チームAの「席譲神」はPS Vitaで遊べるレベルまで完成。神の視点から,電車内で席を譲る人と座る人を選び,次の駅に着くまでにどれだけ席を譲れるかを競うゲームだ。キャラクターデザインこそ完成していないものの,タイトルロゴのデザインが秀逸で,車窓がスクロールしたり,電車が駅に到着するアニメーションが入ったりと,この時点でゲームとしての完成度の高さを期待できそうだった。

 チームBのタイトルは,縦スクロールで猫が障害物を避けながら進んでいく「母猫をたずねて300メートル」。チームCとの猫対決を意識してか,コンセプトを変更し,1匹から100匹の猫を行進させ,障害物にぶつからず,できるだけ多くの猫が生き残れば高得点というゲームにするとのこと。PS Vita上では1匹の猫が行進し,左右から来る車などの障害物を避けるというデモが行われた。調整が必要な部分もあるようだが,タイトルからエンディングまで一通り完成。なお,チーム名は通称“フリスキーズ”としたようだ。猫大好き?

 チームCは「I am back!」というタイトルの2D横スクロールゲームをシミュレータ上でデモ。開発環境の整備に苦労し,まだゲームとしては猫が動くだけのレベルだったが,その動きが可愛らしかった。

 チームDが発表したのは2匹のペンギンを所定の場所まで移動させるゲームで,すでにPS Vita動作していた。ペンギンは氷の上を滑り,壁かもう1匹のペンギンに衝突するまで止まれないので,それを利用してお互いが協力して所定の場所を目指す。左右のボタンで2人のプレイヤーがそれぞれのペンギンを操作するユニークな操作方法には会場からも驚きの声が上がっていた。

画像集#010のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
2人で遊ぶというコンセプトとゲームシステムの基本部分が完成していた

 チームEは「TRANSWARMER」という名前の,某ロボット映画をオマージュしたタイトル。とことんネタにこだわるつもりのようだ。ゲーム内容は,芋虫を操作して火の手から逃し,美しい蝶へと変化されるというもので,PS Vitaを縦にして使うというユニークな仕様だった。

画像集#009のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート

 チームFの「わたんぼの旅」は,操作感や雰囲気を大切にしたいとのことで,タッチ操作のみで,文字情報をできるだけ入れないというコンセプトのタイトルだ。PS Vitaで綿毛のようなキャラが飛ぶデモを披露したが,綿毛の動きがリアルで,独特の世界観があるグラフィックスがいい味を出していた。

 チームGはPC上のシミュレーション環境での画面デザインとグラフィックスデザインを発表。長屋の雰囲気が暖かみのあるイラストで表現されていた。グラフィックス担当のスタッフが風邪でダウンしてしまい,ほかのチームよりも少ない3名でここまで進めている。

 チームHがPS Vita上のデモを披露したのは「My Darling」。3D空間にいる熊のような3Dキャラをタッチすると,そのキャラが反応して腕を上げるなどの動きが確認できた。キャラクターの動きがコミカルで,まさに心が温まる内容だ。キャラモデラーとプログラマーのスキルの高さが光った。

 SCEチームはまたまたゲーム画面を出さず,浅野氏が手書きの仕様書を公開した。
 浅野氏によると,参加者のお手本になるような質の高いゲームにはなっていないようで,「みなさんのクオリティが高すぎて焦る」,「夕食時にSCEメンバーにいろいろ言われてへこむ」などと語っていた。
 しかし,SCEでPSMを開発しているスタッフとはいえ,開発メンバーは浅野氏と西野氏の2人のみ,さらに参加者のバックアップ役として疑問に答えたり,トラブル相談に乗ったりする必要もあるため,割ける時間は限られており,仕方がない面もある。
 ただ,浅野氏は想定以上にゲームの出来に差があって焦っているようだった。

画像集#011のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
参加者を見ていて開発者魂が触発されたのか,香田准教授もゲームを披露。人形や猫が火の上を飛び跳ねるという,少し暖かすぎる設定に目が行きがちだが,実は物理演算を使った高度なプログラミング技術が使われている。


いよいよ完成。特別審査委員に上田文人氏が登場


 そして16:00になり開発が終了。各チームは少しでも完成度を上げようと最後の最後まで熱心に作業を続けていた。
 開発終了と同時にゲームの審査がスタート。審査委員はSCEの多田浩二氏香田准教授,スタッフとして応援に駆けつけたアクティブゲーミングメディアの伊藤雅哉氏。そして特別審査委員として「ICO」「ワンダと巨像」のゲームデザインで知られる上田文人氏が登場し,各チームを回ってメンバーから説明を聞きながら,出来上がったゲームを熱心にプレーしていた。
 各チームの開発結果は以下の通り。

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特別審査委員の上田文人氏(左から2人目)

 チームAの「席譲神」はキャラクターにもバリエーションができ,スコアなども実装してゲームとして遊べるレベルまで完成。若者が老人に席を譲ると高得点になるなど,キャラの組み合わせによってスコア評価が異なるというゲーム性もきちんと出ていた。

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チームA制作の「席譲神」

 チームBのゲームは,1匹の猫を操作して障害物を避けて通るという基本部分は完成したものの,100匹の猫が行進するという部分は未実装。また,タイトルは「母猫をたずねて300メートル」だがマップは80メートルのみと,やや未完の部分もあるが,構想はしっかりしており,さらに時間を掛ければいいゲームとなりそうな印象を受けた。

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チームB制作の「母猫をたずねて300メートル」

 チームCは,横スクロールのマップ部分が完成しておらず,猫が左右に動いてジャンプしたり,猫が弾のように猫を投げたりといった動作が実装されるに留まった。
 しかし,猫キャラの動きがスムーズで,ゲーム開発経験がないメンバーもいながら,ここまで作れたのは奮闘したと言えるのではないだろうか。

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チームC制作の「I am back!」

 チームDは最後になって,タイトルが「ESCAPE PENGUINS!」と決定。グラフィックスに未完成の部分もあるが,全9ステージを2人プレーで遊べる本格的なゲームとなっていた。審査委員たちが思わず解き方を考えながら熱中するほど,ゲームとしての完成度の高さが光っていた。

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チームD制作の「ESCAPE PENGUINS!」

 チームEの「TRANSWARMER」は,若干バグが取り切れていなかったが,芋虫が木を昇って蝶になるというゲーム部分は完成していた。キャラクターのデザインや動きの完成度が高く,何よりPS Vitaを縦に使うというのが,ほかのチームにないユニークな発想。ぜひ最後まで完成させて欲しいところだ。

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チームE制作の「TRANSWARMER」

 チームFはタイトル名が「Grow」となった。全3ステージが完成しており,グラフィックスとBGM,そしてゲームストーリーの調和は全チーム中でトップレベル。審査委員たちも3ステージすべてプレーするなど,ゲームを楽しんでいた。

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チームF制作の「Grow」

 チームGの「長屋」は,基本的な動作部分こそ実装できたようだが,残念ながらキャラクターグラフィックスの一部などが間に合わなかったようだ。風邪を引いたメンバーともメールでやりとりをしながら,なんとか開発を続けたようだが,ほかのチームより不利だったのは否めないところ。
 とはいえ,江戸の雰囲気が十分に出ているコミカルなキャラクターや,ゲームのシステムは十分にゲームとして面白そうな雰囲気を出していた。未完なのが惜しまれる作品だ。

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チームG制作の「長屋」

 チームHの「My Darling」は,可愛らしい熊がタッチ操作で立ったり,座ったり,手を振ったりと,さまざまな動作をするようになっていた。また,モーションをする度に子供の笑い声がして,癒やし効果満点。もう少しモーションが追加されれば,ペットゲームとして十分に楽しめる内容になりそうだ。こちらも,開発を続けて完成形がみたいと感じた作品。

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チームH制作の「My Darling」

 そして最後まで引っ張った,チームSCEの「THE 指摘」。どんなゲームか謎に包まれていたが,ようやくゲーム画面が登場した。
 「これから社長と一緒に,他社のお偉いさんと会食だ。何か違和感があるぞ! 会食で社長が恥をかかないように,心を鬼にして指摘しなければっ!」という内容のメッセージが流れ,しかめっ面の社長と思われるキャラが登場。鼻毛が出ている,ズボンのチャックが空いているなどの,会食するには恥ずかしい部分をタップすると「ソコッ」というメッセージが出て指摘できるというゲームで,恥ずかしい部分を全て指摘するとクリアとなる。

画像集#021のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
SCE浅野氏と西野氏が制作した「THE 指摘」。

 確かに参加者の作品と比べると,ややネタ優先とでも言うような作りで,面白いもののゲーム性の高さはあまり感じられない。とはいえ,浅野氏と西野氏の本来のミッションは,イベントの運営と参加者の開発サポート。参加者たちと競うのではなく,少しでも会場の雰囲気を和ませようという意図で作られたもののようだ。


優勝はPS Vitaを2人で遊ぶユニークなゲームを開発したチームD


 そして,SCEの伊東氏から審査結果が発表され,審査委員長のSCE多田氏から選考ポイントが述べられた。審査はテーマの表現度,オリジナリティ,完成度の3つのポイントが重視されたとのことで,以下の3作品が受賞となった。

1位:チームD「ESCAPE PENGUINS!」
 ゲーム本編のロジックの完成度が高いこと,ステージの出来の良さ,続きを遊びたいというゲーム性の高さ,1台のPS Vitaを肩を寄せ合って遊ぶという心温まるプレースタイルもテーマに合っているとのこと。

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優勝したチームDのメンバー。左からプランナー吉武さん,グラフィッカー ブロ ジョンさん,メインプログラマー畑さん,テクニカルアーティスト酒井さん,サブプログラマー岡村さん

2位:チームF「Grow」
 テーマ性とオリジナリティで受賞。心温まる世界観と完成されたBGMが評価ポイントとなった。

3位:チームA「席譲神」
 テーマ性と完成度で高得点を獲得。


イベントを実施して一番感動したのはSCEスタッフだった


 イベントの最後に,特別審査委員の上田氏をはじめとするスタッフが挨拶した。参加者たちがPSMのゲームをここまで作り上げたという事実は,スタッフにとっても驚きで,同時に感動するものだったようだ。

特別審査委員 上田氏:
 開発時間がわずか30時間と聞いて,ほとんど完成しないかと思っていたが,予想以上の完成度で驚きました。30時間ゲームを作ったというのは,今後物を作るうえで役に立つ経験だと思います。こういうイベントはSCE社内でも実施したほうがいいですね。

画像集#023のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
有名クリエイターだけあり,上田氏が審査委員として登場したときには参加者からどよめきが起こった

審査委員長 SCE多田氏:
 みなさんのゲーム作りの思いが強く伝わってきて,とても感動しています。SCEはもっとみなさんがゲームを開発しやすい環境を提供する必要があると思いました。私はSCEに入社して16年間制作の仕事をやってきましたが,ゲームは1人では作れません。いろいろな作品や人との出会いがあって初めて作れるものです。今回もいろいろな出会いがあったと思いますが,それを大切にして,また素晴らしいゲームを作ってください。

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中間発表ではコメンテーターとして各チームを励ました多田氏

PSM推進担当 浅野氏
 今回はすごく楽しい機会を与えていただいて嬉しいです。
 PSM立ち上がってまだ1年しか経っていませんが,どんどんいいアプリが出てきていて,開発者のみなさんと一緒にPSMも育っています。今回開発したゲームはぜひ販売まで行って欲しいですね。
 イベント前はみなさんのゲームが完成しないのではないかと心配していましたが,開始6時間でモデリングやゲーム画面が出てきて,鳥肌が立つほど感動が止まりませんでした。

 PSMのスタッフは今後も同様のGameJamに関わっていきたいと語っており,今後も同様のイベントが開催されそうだ。
 GameJamは自分のスキルアップになるのはもちろん,ゲーム開発の仲間とも知り合える貴重な機会だ。多田氏も述べていたが,ゲーム開発はひとりではできない。ゲームクリエイターを目指すなら参加して損はないはずだ。
 今回のイベントでも,チームDのメンバーが受賞時に自然と肩を組み合って喜んでいた姿が印象的だった。30時間前は見知らぬ他人だったのが,一緒にゲームを開発したことで共に戦った絆を手に入れた。参加者達にとってこの絆は今後の大きな財産となるだろう。

画像集#025のサムネイル/PS Vitaで動くゲームをわずか30時間で開発。その完成度に上田文人氏も驚いた「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」をレポート
参加者とスタッフ全員で記念撮影。どの参加者も思い出に残る貴重な経験ができたようだ

PlayStation Mobile公式サイト

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